お嬢様がGBNにいるわけないだろう!   作:プラ板の削りカス

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【悲報】お嬢様、獄炎のオーガと出会ってしまう

 クジョウ・キョウヤにボコられて思ったことは色々ある。

 あのマジレス聖戦士の顔が歪むぐらいに苛烈な攻めで戦術を破壊できていれば、とか、純粋に今の私はEXVSからマニューバやら動きのセオリーを流用しているだけで、GBNに適合できているわけじゃない、とか。

 でも、なにより。

 

「あー、私もオリジナルのガンプラを作るセンスが欲しい!」

 

 放課後の旧音楽室で、私は旧校舎の空き教室からパチってきた机の上に立たせていたウイングガンダムに視線を向けつつ、叫んでいた。

 

「あら、ツミキはミキシングビルドをされたことがないのですか?」

「んー、まあ概ねそうよ。見たところルルカも同じでしょ?」

 

 前世じゃ主にディテールアップの方向性で頑張っていたから、私にはいわゆる「俺ガンプラ」を作った経験がないのだ。

 そして、それはルルカも同じだと踏んでいた。

 理由はいくつか推測できるけど、なにより本人が一番わかっているだろう。

 

「ええ、GPDで『俺ガンプラ』はコストパフォーマンスがよろしくありませんもの」

「それなー」

 

 基本的にGPDにおけるガンプラは、よほどの達人でもなければ消耗品扱いと考えていい。

 負けたら原則ジャンク行きで、勝っても相応に傷がついたり壊れたりするから、その度に「修理」して元に戻すのは手間がかかりすぎる。

 あるいは、同じキットを買い足してそこからパーツを補充するテセウスの船戦法もあるけど、オリジナル部分はどうしようもない。

 

 それでも同じガンプラを補修して、改造して使い続けられるのはイオリ・セイやリカルド・フェリーニとかあの辺の世界クラスの技量と愛がなければ無理な話だ。

 まあこの世界はビルドダイバーズだから、セイくんとフェリーニがいるのかはわからんけど。

 ああ、そうだ。ダイバーズだったら、この先会うことになるであろうシバ・ツカサくんも同じだったな。

 

「ですが、GBNでは実機が壊れる心配がない以上、一品モノの価値は様々な方面で上がっていきます……ツミキが危惧されている通り、今度来るのは、『俺ガンプラ』の一大時代ですわ」

 

 ふぅ、とルルカは悩ましげに溜息をついた。

 ゲームとしてGBNを触ってわかったことがある。

 それは、このゲームの自由度があまりにも高すぎるということだった。

 

 操縦も、レバガチャこそしていても、ほとんど思った通りに動いてくれるし、アニメでやっていたようなマニューバも難なくこなせる。

 Re:RISEでの描写を見る限り、関節にプラ板の削りカスが挟まっていたり、ゲート跡が処理しきれてないと不具合をきたすことがあるみたいだけど、基本は初心者にも優しい仕様なのだ。

 突き詰めれば突き詰めるほど金が飛んでいくGPDが廃れるわけだ。シバくん、悔しいだろうが仕方ないんだ。

 

「と、いうわけで! 今日は俺ガンプラを作っていくわ、ルルカ!」

「わぁ、素敵なお誘いですわ……♡」

 

 この日のために、ルルカには色々とガンプラを買い漁ってもらった──お金は当然私が払った──けど、威勢良く言った割に自信はない。

 何個ガンプラをジャンクにすることかと考えると、手が震えてくる。

 幸い、今世はガンプラの流通量が前世とは比べ物にならないぐらい多いからいいけど、前世で同じことをしようものならメルカ◯で割高なものを何個買わされるかわかったものじゃないからだった。

 

「三人寄れば文殊の知恵っていうし、なんとかなるでしょ。ダメ出しもいつも通りしてくれればいいし」

「ええ、わたくしたちは二人きりですけど」

「言えてる。それじゃ、作っていこっか。ルルカ!」

「はい、ツミキ……!」

 

 私たちは、素体にするウイングガンダムとヘイズル改に「盛る」ため、思い思いのガンプラを手に取って箱を開ける。

 ガンプラやってて、この瞬間が一番興奮するんだよね。

 まあ、大体は説明書読んで満足して積むまでがルーティーンなんだけど。

 

 

 

 

 

 

「半端なオ◯ニーを私に見せつけてんじゃねえ!!!! くたばれこの不燃ゴミがぁぁぁぁ!!!!」

『ひ、ひぃぃぃ! なんだこの蛮族!?』

 

 結論からいうと、ジャンクが増えただけで俺ガンプラは完成しなかった。

 家でこっそりGBNにログインしている私は、なんか声をかけてきたチャラそうな男ダイバーでストレスを発散するべくフリーバトルに勤しんでいた。

 我が家に当てがわれた私室が、完全防音で鍵もある個室でよかった。

 

 ヤエザクラ家のフィルタリングをすり抜ける工作はルルカにしてもらったおかげで、心ゆくまでGBNが堪能できる。

 私はそんなことを考える傍ら、チャラ男くんの∀ガンダムのコックピットをぐりぐりと足で踏みつけて、バスターライフルの銃口を頭に突きつけていた。

 結局、私のウイングガンダムは多少のディテールアップこそしているけどバニラのままだ。

 

『く、クソ……負けてたまるかよ、こんな無様な負け方をするぐらいだったら──』

 

 おっ、そのセリフはそろそろ原作の時期的に、「アレ」の前振りかな?

 

「困ったときのブレイクデカールか? ふざけやがって、そんなチ◯カスみてーなもんに頼ってんじゃねえよこのフニャチ◯野郎が!」

『な、なんでそれを……!』

「こちとらブレイクデカールの存在ぐらい知ってんだよボケ、勝ちてぇならてめーの腕磨いて出直してきな!」

 

 だけど、それはイヴの寿命を削るのでキャンセルだ。

 罵倒で動揺を誘って、私はブレイクデカールが発動する前にバスターライフルをコックピットにぶち込むことで事なきを得た。

 爆散した∀ガンダムを見下ろして、溜息をつく。

 

「ちっ、シケてやがる。所詮初心者狩り(スマーフ)野郎か」

 

 ルルカと戦っているときとはまるで違う。

 動きが素人むき出しで、勝てないと見たら必殺技として強化している月光蝶のスリップダメージ頼りで遅滞戦術を取るだけの相手だった。

 これでは興醒めもいいところだ。

 

 そろそろログアウトして寝るか、と思っていたときだった。

 

『うわああああっ!』

 

 聞き覚えのある声で、悲鳴が上がった。

 そして、一機のガンプラが私の前に滑り込んでくる。

 ダブルオーガンダムをベースに、初心者が作ったという設定にしてはあまりにも天才少年のセンスが溢れすぎている俺ガンプラ。

 

 間違いなく、リクくんのガンプラ(主人公機)の「ガンダムダブルオーダイバー」だった。

 

『その程度じゃねえはずだ! もっとだ、もっとオレに美味い肉を喰わせろ!』

 

 そして、吹き飛ばされてきた原因である、大振りなヒートソードを2本構えたGN-XⅣの改造機こと「オーガ刃-X」がずしん、と地面を踏み締め、遅れてやってくる。

 

「……ディナーには少々遅い時間だけど、深夜の背徳メシもいいものよね」

『あ? なんだ?』

「義もなんもないけど戦いたいから助太刀するわよ、リクくん!」

『その声……あのときのお姉さん!』

 

 このどうにも不完全燃焼な燻りを発散してくれそうな相手──「獄炎のオーガ」とのエンカウントに歓喜しつつ、私は弾切れになったバスターライフルを投げ捨てて、シールドからビームサーベルを引き抜いた。




あーあ、出会っちまったな
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