お嬢様がGBNにいるわけないだろう!   作:プラ板の削りカス

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【速報】北極基地攻防戦、開始

 今回、リクくんを一喝するに当たって私が考えたのは、クリエイトミッションを利用することだった。

 別に普通のフォース戦でガチってもいいんだけど、重要なのは「楽しめる」ことだ。

 なにも相手を全滅させたり、フラッグ機を倒すことだけがGBNの楽しみではない。

 

 ミッション形式のバトル、ということで勝利条件を複数設けつつ、バトルがしたいリクくんにも納得してもらって、かつ私たちも気持ちよくなれる勝負をする。

 それが今回、クリエイトミッションで北極基地攻防戦を選んだ理由だった。

 しかし懐かしいわね、北極基地って響き。前世……というかバトオペ2じゃ、MS同士で殴り合う聖地みたいなものだったから。

 

「よし、これでクリエイトミッションも登録完了ね」

 

 GBNにログインした私たちは、クリエイトミッションの事前テストを終えて、リクくんたち、ビルドダイバーズを待ち受けていた。

 今回のミッションは私たちが防衛側で、リクくんたちが攻略側に回ってもらう。

 当然不利を背負うのは私たちだけど、ルカは逆境でこそ燃えるタイプだし、今のリクくんが抱えている「弱点」を炙り出すにはいい機会だからだ。

 

「お待たせしたのです、ミキ先輩、ルカ先輩、フィア先輩!」

「おっ、シナノちゃんも到着したのね……って、なんかリアルよりちっちゃくなってない?」

 

 主に背丈が。

 振袖を着ているけど、ちょっとぶかぶかな印象で、シナノちゃんのダイバールックだけ見ると、完全に少女を通り越して幼女に見えた。

 あと頭にケモ耳も生えてるし、なんかパルくんを彷彿とさせる──というか、パルくんよりも幼く見える。

 

「この姿は、シナノのおじい様が一番可愛がってくれた頃の姿をベースにしているのです。おじい様は内閣官房長官なので、最近はあんまり家に帰ってこなくて寂しかったのです」

「なるほどね、おじいちゃんのこと大好きなんだ、シナノちゃんは」

「はい、なのです!」

 

 しれっと内閣官房長官とかとんでもない単語が聞こえてきた気がするけど気のせい気のせい。多分、めいびー。

 とにもかくにも、シナノちゃんが来てくれたおかげで、新生「レディビルド」のお披露目準備は万全といったところだろうか。

 ピケストがいないのはやっぱりちょっとだけ寂しい気もするけど、そこはもう割り切るほかにない。

 

「ふふ……可憐だね、シナノは。改めて歓迎するよ。『レディビルド』にようこそ。今宵は純粋な闘争が織り成す交響曲(シンフォニー)を、ぼくたちと一緒に奏でようじゃないか」

「はわわ……あ、足を引っ張らないように頑張るのです!」

「ふふっ、なんだか妹ができた気分ですわね。ミキ?」

「そうね、フィアもこれでお姉ちゃんってとこかしら」

 

 フィアに顎クイされて真っ赤になっているシナノちゃんを微笑ましく、あたたかい目で見守りながら、私とルカは頷き合った。

 

「あ、いたいた! おーい、ミキさん、ルカさん!」

 

 そんなこんなでフィアがシナノちゃんを猫可愛がりしている間に、リクくんたちもログインしてくれたようだった。

 ロビーにビルドダイバーズが勢揃いだ。

 しかも、今日はハロボディのツカサくんが抱きしめられてるだけでなく、サラちゃんの頭に乗っかっているモルちゃんもいる。

 

「待ってたわよ、リクくん! そして久しぶりね、サラちゃん!」

「うん……ミキもルカもフィアも、元気だった?」

「はい♡ おかげさまでわたくしたちはすっかり元気ですわ。サラさんも、現実世界はどうですか?」

「うん……ルカたちのおかげで、とっても楽しい。だから、今日は……リクのために、ありがとう」

 

 サラちゃんは、控えめに頭を下げる。

 そうよね、リクくんの異変にサラちゃんが気づいていないはずがない。

 でも、控えめな性格だから、中々言い出せずにいたのだろう。リクくんもお嫁さんに迷惑かけるんじゃないわよ、全く。

 

「俺のため?」

「別にリクくんのためじゃないわ、やるからにはガチでやらせてもらうわよ。龍虎祭でタイガーウルフさんを打ち破った実力、見せてもらおうじゃない!」

「そういうことなら……はい! 俺、全力で戦って、ミキさんたちに勝ちます!」

「ふふ、気持ちが先走っておりますわよ?」

「ああ、ごめんなさい!」

「それに、勝つのはわたくしたちなので♡」

 

 ルカも煽りよるなー。

 効果は絶大だったのか、勝つ、という宣言を聞いた途端にリクくんの表情が険しいものに変わる。

 まあでも、これぐらいバチバチな方がちょうどいいってものよね。

 

「なら、俺は負けられない……皆も、今日のバトル、絶対に勝とう!」

『おっ、おー!』

 

 リクくんへの返事に僅かなラグがあったわね。

 それにアヤメさんとツカサくんとコーイチさんはちょっとだけ心配そうだったり、冷めた目をしていることにリクくんは気づいていなかった。

 これは重症ね、だったら──とびきり強い処方箋を出してあげないといけないわね!

 

 

 

 

 

 

 案の定とでもいうべきか、リクくんが取った作戦は、随伴機としてユッキーくんとアヤメさんをつけた上で、真正面から突撃してくるというものだった。

 コーイチさんとツカサくんをモモちゃんの護衛につける形で、別ルートからの攻略を伏せ札にしたつもりなのだろうけれど、甘い甘い。

 ピケストという優秀な遊撃役を失ったのは痛いけど、その分シナノちゃんという優秀なタンク役が加入してくれたおかげで、正面凸には正面凸で返せるようになったのよねぇ!

 

「行くわよ、ウイングガンダムライトニングゼロ! 今日があんたの……初めての戦いなんだから!」

「ふふっ、参りましょう。ハイゼンスレイ・ラーⅢ。さあ……派手に暴れようぜぇぇぇっ!」

 

 私はウイングガンダムゼロをベースにした新機体を、そしてルカはハイゼンスレイ・ラーⅡをベースにアリュゼウスのシェルフ・ノズルやファンネル・ミサイルを組み込んだ新機体を駆って、真正面のクレバスから突撃してくるリクくんたちに迎撃の一斉射を浴びせかけていた。

 

『くっ、弾幕が分厚い……! ユッキー、突破口を開ける!?』

『任せて! シグマシスキャノンで……!』

『援護するわ』

「させないのです!」

 

 私たちの一斉射撃を回避したリクくんは、ユッキーくんとアヤメさんを前に出す形でカウンターを狙ってくる。

 だけど、それも織り込み済みだ。

 小型メイスを交差させ、シナノちゃんのグシオンリベイクフルシティをカスタムしたガンプラ──「ガンダムグシオンリベイク・朧火」が、ナノラミネートアーマーの特性を遺憾なく発揮して、真正面からシグマシスキャノンと種子島雷威銃を受け止め、背中に装備されているレールキャノンで迎撃を行った。

 

『くっ……ユッキーとアヤメさんはツーマンセルを崩さないで! 俺とダブルオースカイが、突破口を開く! トランザムインフィニティ!』

「ただ受け止めるだけがタンク役の役目ではないのです! リミッター解除!」

 

 よしよし、リクくんはシナノちゃんが食い止めてくれているわね。

 しかし、切り札ともいえるトランザムインフィニティをこんなに早く切る辺り、本当に焦っているのね。リクくんらしくない。

 だったら、私たちがやるべきことは。

 

「フィア! 久しぶりにあんたの出番よ!」

「ふふっ、任せてくれたまえ! ぼくはずっとこのときを待っていた……さあ、フィン・ファンネルたち! 殲滅のアルモニーを奏でよう!」

『ミキさんたち、完全に基地の守りを放棄して俺たちを倒しにかかってる!? そんな、めちゃくちゃだ! アヤメさん、サイコミュジャックを……!』

『無理よ、変形が間に合わないわ!』

 

 雪に紛れて隠れていたフィアのビートνガンダムが6枚のフィン・ファンネルを射出して、照射ビームの網にユッキーくんとアヤメさんを絡めとる。

 無理に突撃してくるからこうなるのよ。

 さあ、ルカ! あんたが最高に気持ちよくなれる瞬間よ!

 

「ふふふ……ははは……あっはははは! つっまんねえなぁぁぁぁ!? 勢いがいいのは最初だけかよ! もしかしてテメェの自慢のガンプラは線香花火ですかぁ? それともシケちゃってるんですかぁ? なんも考えず前ブーしたってなぁ! 味方とセッションしようとしねぇからこうなるんだよ!!!!」

『うわああああっ!』

『きゃあっ……!』

 

 ビームの檻に絡め取られたジェガンブラストマスターと、RX-零丸に、ルカが放ったファンネル・ミサイルが直撃する。

 守りを捨てて枚数有利を確保したこっちを舐めんじゃないわよ。

 これでブラストマスターのサテライトキャノンは使えないし、脅威になる零丸のサイコミュジャックも封じたも同然だ。

 

 そうなれば、リクくんが取る手段は。

 

『コーイチさん、ツカサさん! フォローお願いします! 俺が……前線を切り開きますから!』

『待つんだリクくん、こっちからじゃすぐには……!』

『チッ、後手後手に回らされやがって……! 仕方ねえ、レベルソでフォローに行くぞ、このままじゃどの道リクのやつも討ち取られちまう!』

 

 そうよね。

 ツカサくんはなんだかんだでお人好しだからリクくんを見捨てられない。

 コーイチさんは押しが弱いから、押し切られてしまう。

 

 新生ビルドダイバーズの弱点は、個々の能力こそ突出して優秀だけど、その分原作と違ってまだ連携という点に未熟さを抱えているのだ。

 

『俺は負けない……チャンピオンに勝つまで、負けられないんだぁっ!』

「甘ぇぇぇぇよ!!!!」

『ッ!?』

 

 リクくんは私の背後を取ろうと、光の翼を全開にして、シナノちゃんを抜き去る形で強襲をかけてくる。

 だけど、それも読めていたことだ。

 司令塔の私を崩せば作戦が崩壊して乱戦になる。そこに一縷の望みを託すしかないものね。

 

「ルカ!」

「ええ、わかっておりますわ」

『くっ、動きが完全に読まれてる! 近づくこともできないなんて……!』

「いたいけな少年がわたくしの掌の上で踊り狂う……なんてたまらない光景なのでしょう! さあ! もっと! 単凸なんてかましてきたのですから、後先なんて考えずに激しく! 交わりましょう!」

『好きに……させるもんかーっ!』

 

 リクくんは、ロングライフルを照射する形でルカのファンネル・ミサイルを叩き落としていく。

 それでも、アリュゼウスのシェルフ・ノズルを移植したことで獲得した高い空中機動性から放たれる変則的な弾幕砲火にはついていくのが精一杯で、ジリ貧といった風情だった。

 私は無慈悲に、回避運動で手一杯のダブルオースカイに狙いをつけ、ツインバスターライフルのトリガーへと指をかける。

 

「残念だけど、ツカサくんの救援は間に合わない。これで終わりね」

『くっ……ダメだ、ダブルオースカイ! 俺は……負けちゃいけないんだ! 勝たないと! 勝って、チャンピオンに一歩でも──』

『それは違うよ、リッくん!』

 

 私がツインバスターライフルのトリガーを引いたそのとき、ビームの檻を強引に引きちぎるように、手足を犠牲にしながらも、ジェガンブラストマスターがダブルオースカイの前に躍り出た。

 

『勝つことが全てじゃないって……愛が重要だって、シャフリさんもマギーさんも言ってたじゃないか!』

『ユッキー……』

『……中々言い出せなかったけど、最近のリッくんはおかしいよ! 勝つことしか見てない! 一人で突っ走ってる! 僕たちを──仲間を、信じられなくなったの!?』

 

 カリドゥス複層ビーム砲でツインバスターライフルの一斉射を受け止めながら──しかし、出力不足で光の波に呑まれながらも、ユッキーくんは叫び続ける。

 

『僕たちだってビルドダイバーズだ! リッくんの引き立て役じゃない! うおおおおっ!』

『その通りよ、リク! 勝つことだけに囚われているあなたは……私の昔の仲間たちと同じ! 私は、今の仲間まで……ビルドダイバーズまで失いたくない、だから!』

 

 アヤメさんもまた、フィン・ファンネルが展開するビームの檻を強引に抜け出して、武装装甲八鳥に乗っかった。

 

『ミキさんは、ツカサさんが到着するまで、私(僕)たちが引き受ける!』

 

 いいねいいね、これだよこれ。

 私が待っていたのはこの展開なのよ。

 別に外からアドバイスすることで気づかせてあげることだってできるけど、リクくんには自分で気づいてもらう必要があった。

 

 まさか、損傷した機体を無理やり動かして迫ってくるユッキーくんとアヤメさんの特攻に心揺さぶられないはずもあるまい。

 本当は、誰よりも仲間想いで優しいリクくんが。

 そんなリクくんが、勝利だけを求めて修羅の道に堕ちていく姿なんて、見たくはないもの。

 

「さあ、リク様! 一騎打ちの時間です! 心が躍り、胸が弾みますわね……♡ 狂弾の舞踏会はまだ終わっていませんわ!」

『ユッキー……アヤメさん……俺……っ! ごめん! 二人を信じて、俺はルカさんと戦う!』

 

 既にボロボロなダブルオースカイを奮い立たせるように叫んで、リクくんはルカのハイゼンスレイ・ラーⅢに強襲をかけるけど、機体相性の悪さは歴然としている。

 それに、フィアだってまだ背後に控えているし、シナノちゃんも健在だ。

 さあ、この絶望的な状況をどう覆すのかが楽しみで仕方ないわね!

 

「さあさあ、さあさあさあさあ! もっと! 刹那的な衝動に──『好き』だけに身を任せ、踊り狂いましょう!!!!」

『うわああああっ!』

『アヤメさん、八鳥に僕も乗せて! 砲台代わりにはなるから!』

『任せなさい』

「仲間を信じる姿勢は美しいわね……でもこっちだってガチでやってんだ! 消し飛ばさせてもらうぜ!」

 

 武装装甲八鳥に騎乗したジェガンブラストマスターがカリドゥス複層ビーム砲と、腰のビーム砲を撃ちながら、アヤメさんの零丸と一緒に突撃してくる。

 時間稼ぎのつもりなんだろうけど、私は容赦しない。

 ツインバスターライフルの最大出力で半壊したブラストマスターと零丸を消し飛ばし、ルカの援護に回ろうとした、そのときだった。

 

『Battle Ended!』

『Winner:BUILD DIVERS!』

 

 システム音声が、ビルドダイバーズの勝利を告げる。

 一体なにが起きたのか。

 勝利画面を凝視すると、そこには。

 

『忘れてた? 私だってビルドダイバーズの仲間なのよ、リクくん!』

『モモ……!』

「あちゃー、してやられたか……」

 

 戦闘開始から愚直に水中エリアを通過して、防衛目標のシャトルへ攻撃を加え続けていたモモちゃんのモモカプルが、Vサインを形作っていた。

 ダブルオースカイとブラストマスター、零丸というビルドダイバーズの主要戦力は大破させたけど、なんだか試合に勝って勝負に負けた気分だ。

 でも、それさえどこか清々しい。

 

「私たちの完敗ね、ルカ」

「ええ……ですが、わたくしは楽しかったです、ミキ♡」

『楽しかった……』

「そ。結局ね、勝ちとか負けとか関係なく、何事も全力で楽しんだやつが一番強いのよ」

『そっか……ミキさん、俺』

「謝るなら私じゃなくてビルドダイバーズの皆にしておきなさい。それと! これからは絶対、手放すんじゃないわよ! 『楽しい』と『好き』って気持ち!」

『はい!』

 

 涙を拭って笑顔を浮かべたリクくんに、私もまた、にっ、と笑って親指を立てた。

 負けたのは悔しいけど。

 でも、最高に楽しかった。きっとビルドダイバーズの皆も同じ気持ちでいることを信じて、私たちはバトルフィールドを去るのだった。




ワクワクを思い出すんだ!
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