お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
キョウとハレちゃんの仕事ぶりは全く文句のつけようがなく、私は高難度サバイバルミッションに向けてなにも憂いることもせずにすやすやと寝られたかというと、そうではなかった。
ユリカさんの言う「課題」とやらを解くのにルカとGPDで実機をぶつけて細部を調整したり、キョウやヒロトくん、ツカサくんからアドバイスをもらったりして、結局仕上げるのに当日までかかってしまったのだから。
おかげで寝不足だ。でも、心の中にあったモヤモヤは晴れたから差し引きゼロといったところか。
「さーて、それじゃあお楽しみの始まりね」
「高難度サバイバルミッション……どのようなものなのでしょう、ミキ?」
「それについては私が完璧に説明する。高難度サバイバルミッションとは、レイドボスを制限時間内に倒すか、レイドボスから制限時間一杯まで逃げ切るかというサバイバルミッションの要素に、PvPの要素を加えたものだ」
ルカの問いに答えたのは、GBNでも現実と寸分違わないダイバールックをした、キョウだった。
「通常ではボスから逃げるかボスを倒すかは選択肢の一つで、タイムアップもしくはボスの討伐がクリア条件だが──今回の場合は、そこに『サバイバルポイント』というランキング要素が加わる。サバイバルポイントは時間の経過、ボスの討伐──もしくは、『参戦しているダイバー』を撃破したときに加算され、撃墜されるとゼロになる」
「要するに、無双ロワイヤルミッションにレイドボスが湧いたようなもんよ」
「完璧な要約だ、お嬢様。レイドボスも無論強化されている。どの選択肢を取るかはルカ様の自由だ」
要するに、時間いっぱい逃げ回るか、協力してボスを倒すかの二択だったサバイバルミッションに、さらに対人要素を加えることでより「協力的な選択肢」を狭めているのが、高難度サバイバルミッションだ。
おまけにスタート位置はランダムで決定されるし、ボスの耐久値も通常と比較して跳ね上がっている。
自分以外の誰かを信用するのが極めて難しい条件下で、その場その場に応じた最適な選択肢をとって戦い、生き残ることを、私たちは求められているのだ。
「理解しましたわ。要するに立ちはだかる相手と片っ端から交わっていけばよろしいのですね? ふふっ……なんだか、疼いてきましたわ♡」
「あんたならそうなるわよね」
ルカの刹那的な衝動に任せた攻略法は、生き残れる前提なら特に問題はないけど、高難度と称したミッションでは徹底的に心を折りにかかってくるのがオンゲの常だ。
恐らくはチャンプも嬉々として参加してくることを考えれば、「この戦場にはチャンプがいる」という前提を置いた上でバランス調整を行う必要がある。
つまるところ、チャンプにヌルゲーと思われないような難易度を基準値にする──私たちみたいな一般ダイバーにとってのハードルは青天井。
「……ま、だからこそ唆るんだけどね」
「ミキさん、ルカさん、フィアさん!」
ぞくり、と背筋を伝った武者震いを抱きしめるように自分の背中に腕を回していると、リクくんがやってきた。
リクくんの瞳には以前のような焦りや迷いはなくて、北極基地での戦いがいい方向に進んでくれたんだと安堵する。
それに、ビルドダイバーズのメンバーも増えたみたいだし。
「ごきげんよう、リクくん。男子三日会わざればなんとかっていうけど、一皮剥けたみたいね」
「はい! 俺……自分の『好き』って気持ちを見つめ直すために、ダブルオースカイをもう一度ブラッシュアップしてみたんです!」
「ふふっ、感じるよリクくん。きみのガンプラから迸る、今すぐに、どこまでも高く飛んでいきたいという気持ちを」
「フィアさんにはわかっちゃいますよね! 俺の──」
「おっと、そこから先は戦場で会ったときのお楽しみにしといてくれるかしら?」
大方、ダブルオースカイからさらにブラッシュアップされたってことは「アレ」が前倒しでのご登場ってことになるんだろうけど。
それはそれとして、リクくんの新たな愛機を拝むなら直で拝んでみたい。
もしかしたら、私の知らない機能とか武器とか搭載されてるかもしれないし。
「わかりました! 俺も、ミキさんたちと戦場で会えるのを楽しみにしてます!」
リクくんはそれだけ伝えると、踵を返して走り去っていった。
若いっていいなー。
いや、私も花の女子高生だけども。
「わかってるとは思うけど、今回のミッションはスタート地点が完全ランダムよ、フォースを組んでようがフレンドだろうがお構いなし。だからリクくんと会うとか以前に私たち四人がそもそもバラバラになる前提でいた方がいいわ」
「承知している、お嬢様。今回の高難度サバイバルミッションに当たって完璧な行動パターンを構築してきた」
「キョウは仕事熱心だね……要するに自分の身は自分で守る、ということでいいかい、ミキ?」
「そうね。ルカみたいに全方位に喧嘩売ってもいいけど、いつもみたいなアフターフォローはできないし、長丁場になるわよ。覚悟はできた?」
ここまで言っといてなんだけど、答えはもちろん予測済みだ。
『もちろん!』
声を揃えて答える三人の返事が、予想と同じであったことを喜びつつ、私もまた不敵に唇の端を吊り上げる。
「それでこそ『レディビルド』よ! 途中で死のうがなにしようが、全部曝け出して、全力で楽しんでやろうじゃない!」
「ああ、最高に殺伐とした修羅場……想像するだけで果ててしまいそうですわ……♡」
「ぼくも……一人でも戦い抜けることを、『レディビルド』の一員だということを、この戦いで証明するんだ!」
「どんな事態にも完璧に対処してみせる。完璧なお嬢様のメイドとして」
私たちは握った拳を軽くぶつけ合って、互いの闘志を確かめながら、ミッションカウンターに向けて歩き出した。
鬼が出ようが蛇が出ようが知ったことか。
出てきたんなら戦ってやる。それが例え、チャンプという災害級の化け物だったとしても、あるいはまだ、私が見たこともない猛者たちだとしても。
もう、憂いもなければ、恐れもない。
私とライトニングゼロのコンディションは120パーセントなのだから。
だから──最高に疼いている、今という瞬間を、この刹那を楽しみ尽くすんだ。
半年近く失踪してて申し訳ありませんでした……