お嬢様がGBNにいるわけないだろう!   作:プラ板の削りカス

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【悲報】クソボス現る

 駆けつけ一杯とばかりにレイドボスへ挑もうと乱戦地帯に乗り込んだ私が見たのは、地獄のような光景だった。

 アプサラスⅢがレイドボスなのはわかっていたけど、魔改造されすぎている。

 あの貧弱な着陸脚がなんということでしょう、逞しいビグ・ザムの脚に置き換わっています、なんということをしてくれやがったのでしょう。

 

「お嬢様、地上はプラズマリーダーと拡散ビーム砲で地獄の様相だ。なるべく空中で戦うことを提案する」

「それはそうね、でもあの脚をなんとかしないと多分本体にダメージ入らない仕組みなんじゃないかしら、ビグ・ザムの脚だし」

 

 多分Iフィールドかなんかが展開されているのだろう。

 地上からサテライトキャノンをぶっ放したダイバーの一撃は見事に無力化されて、アプサラスⅢの耐久値はミリも削れていない。

 じゃあ素直にあの二本脚を攻略しましょうって話になってくると、焦熱地獄に弾幕砲火が待っているという。

 

 クソゲーか?

 しかも、高難度サバイバルミッションの仕様上「ダイバーをキルすればサバイバルポイントは手に入る」ものの、「ダイバーが減れば減った分だけレイドボスに対処できる戦力が減る」ときた。

 わかっててこの仕様を実装したんだから運営も底意地が悪い。燃えてくるじゃないの。

 

『クソッ、サテライトキャノンですら弾かれるのかよ!』

『弾が足りねえ! 誰かダインスレイヴ持ってねえのか!?』

『ダインスレイヴ仕様のグレイズでサバイバルミッションに来るやつがそもそもいねえだろ!?』

『とにかく空に逃げろ、地上はもうダメだ!』

 

 あーうん、これで空が渋滞してくると今度はなんか腕とか生えてくるんでしょ知ってる。

 大概は高難度と書いて簡単にクリアされたら悔しいじゃないですかと読む。

 運営が二の矢を用意していないはずがないのだ。

 

「さて、キョウ」

「完璧に承知した、お嬢様」

「流石はピケストが選んだだけあるわね……さあ、地上に突っ込んであの脚をぶった斬るわよ!」

「スピアヘッドの名は伊達ではないことを完璧に証明する」

 

 広範囲に展開されたプラズマリーダーでこっちが焼け死ぬのが先か、あの健脚を破壊してIフィールドを無力化するのが先か。

 最高に燃えてくるじゃない。

 キョウと私はツーマンセルを組んで、拡散ビーム砲の弾幕砲火を掻い潜りながら、アプサラスⅢの脚部へと肉薄する。

 

「悪いけどキャクブガーしてもらうわよ!」

「恨みはない。任務を完璧に遂行する」

 

 まずは小手調べに小太刀を構えて、突撃していく。

 キョウのムラサメ改「スピアヘッド」はカルキトラビーム重斬脚を展開して、私と同時にアプサラスⅢの脚部に切り掛かった。

 ──だけど。

 

「硬った……ぁ!」

「これは……完璧に想定外だ」

 

 小太刀が折れて、ビームキックを浴びせた「スピアヘッド」の左脚の膝から下が砕け散る。

 こいつ、あろうことか物理耐性まで備えてやがる。

 なるほど、各地に補給ポイントが設置されてる理由がわかった。

 

「こいつと長期戦させながら他のダイバーも敵に回せって? 最高にロックしてるじゃない……!」

 

 このアプサラスⅢは、少なくとも必殺技クラスの火力が複数発叩き込まれることを前提にして設計されていることもわかった。

 それが三体?

 ははっ、あんまりにもあんまりすぎて楽しくなってきたじゃない。

 

「とはいえ自己バフ系の必殺技を持ってる私じゃちょい不利ってとこか……物理耐性持ちでも関節部は脆くなる、つまりそこを一点狙いするしかなさそうね」

「承知した、お嬢様。しかしスピアヘッドは完璧に中破している、一度補給ポイントに戻ることを提案したい」

「そうね……いや、もっとスマートな方法があるわ」

「む……お嬢様が言うのなら完璧なプランなのだろう。それを完璧に実行する」

「完璧かどうかはともかく、簡単よ。『海賊』になるわ」

 

 私はレーダー上で明滅する大きな光点と、それに群がっている無数の光点を一瞥して、唇の端を不敵に吊り上げた。

 

 一際大きな反応の正体は、戦艦だ。

 なんでサバイバルミッションに戦艦で参加している酔狂な人がいるのかはともかくとして、いるんだから活用させてもらう。

 戦艦系ユニットの利点はいくつかあるけど、この場における最大のそれは、補給ポイントとして機能することだ。

 

 もちろん、作るのは大変なんて言葉じゃ済まされない。

 HGUCネオ・ジオングの二倍ぐらいある巨体をスクラッチしなきゃいけないんだから、自分でやるなら手間も暇も材料費も考えたくないレベルの領域だ。

 それを実現したことに敬意を表しつつ──使えるものは使う。どっかの全裸大佐の格言通りにやらせてもらうとしよう。

 

『ええい、他人に善性を期待した僕がバカだったとでもいうのか!?』

『うるせえ、この補給ポイントは俺たちが乗っ取った! 前線でバカやってるやつらがフラフラ吸い寄せられてきたところをハイエナしてやるって寸法よ……!』

 

 あの戦艦──多分サラミス級だ──を占拠してるのはゾロアットが大体6機とゲンガオゾが2機、ついでにザンネックが1機か。

 損傷した敵が相手とはいえ、それまであのサラミス級に近寄る実力者を撃破してきたんだから、腕前の方も確かと見ていいだろう。

 キョウは損傷が激しいから一旦下がってもらうとして、いけるか?

 

 いや──いくんだ。

 敢えて行く者が勝つ(フー・デアーズ・ウィンズ)

 異国の格言に従って、突っ込んでいこうじゃないの。

 

「海賊らしく……いただいていくわよ、補給ポイントを!」

「承知した、お嬢様を可能な限り完璧に援護する。いざとなったら私を盾にしてくれても構わない」

「それじゃ本末転倒でしょ! 死ぬんじゃないわよ、行くわ!」

 

 私はスラスターに点火、全力で前方向にブーストを噴かす。

 真正面からなにも考えずに突っ込んでくる相手というのは、実のところ意外と少ない。

 だから、単純な手であればあるほど引っかかりやすくなってしまう──ある程度実力を身につけたダイバーが、陥りやすい罠だ。

 

 私はそれを利用させてもらうことにした。

 あの中で一番脅威になるのはザンネックの狙撃だろう。

 元々の索敵能力と相まって、ザンネックの初撃を避けるのは困難だからこそ、あえて突っ込む。

 

『な、なんだ!? 真っ直ぐ、突っ込んでくるのか!?』

『落ち着け、ただ突っ込んでくるだけなら対処は──』

「元は量産機だが──私のスピアヘッドは一味違うぞ」

 

 フォランテスとビームライフルが破損していなかったキョウのスピアヘッドが、慌てるザンネックのダイバーに助言をしようとしたゲンガオゾのうち一機を、一斉射撃で撃ち抜いた。

 味方の撃墜により、更に動揺が広がることを見越しての援護だろう。

 全く、本当に完璧な仕事をしてくれるんだから。

 

『う、うおおおおっ!? し、死なば諸共だ!』

「抱えてるナニはデカくても、テクが伴ってねぇんだよ! 本番前に緊張で萎えちまったのか!?」

『き、貴様ーっ!』

 

 挑発と合わせて照準をずらし、ザンネック・キャノンの一撃を致命傷で済ませる。

 ウイングバインダーが破損しても、まだ腰部の補助スラスターで辿り着けることは計算済みだ。

 恨みは特にないけど、生かしておいてもいいことはないし、ここで退場してもらうとしよう。

 

『うおおおおっ!? や、やられるっ!?』

(タマ)獲ったぜ、ざまぁ見ろ」

 

 ザンネックのコックピットに深々と大太刀を突き立てて、私は笑った。

 いや、笑うしかなかったというべきか。

 ゾロアット6機とゲンガオゾあと1機のことをなにも考えていなかったのだから。

 

『へ、へへ……驚かせやがって。だがテメェもこれで終わりだ、蛮族令嬢! 足がやられたムラサメ改じゃ援護は間に合わんだろう!』

「果たしてどうかな?」

『なに……?』

「私がまだ奥の手を残していないなんて、一言も言ってねえぜ……!」

 

 使える手札は切るだけ切った。

 残されたものはただ一つ。

 そう、ハッタリだ。中指を立てて、あえて私は画面の向こうのゲンガオゾとゾロアットを挑発する。

 

 ここで逆上した相手にやられればそれまでだ。

 だけど、もし運命の女神様が私に味方したなら。

 そのときはなんでもしてやるよ。女神様と濃厚なフレンチ・キスと洒落込もうじゃねえか。

 

 刹那が永遠に引き伸ばされるような感覚の中で、私はただ審判を待つ。

 断頭台の紐が引かれるか、それとも赦しを得られるか。

 果たして、結果は──

 

『ぁはっ♡ ちょーっと退いてもらおっかな』

『そのクロスボーン・ガンダム……モチーフはシルバー・スノーだが素体はX1! つまり……貴様もキンケドゥか!』

『347位……? それにしちゃいいもの持ってるじゃーん! それじゃあ、あたしと遊ぼっか!』

『ふっ……悪くはない、だが、今は──』

『そうだねぇ』

 

 ──貴様らが邪魔だ。

 ゼウスシルエットをベースに、まるでアリュゼウスのようなユニットを纏ったクロスボーンガンダムX2のカスタムモデルと、クロスボーンガンダムX1をベースに、ガンダムAGE-FXをミキシングした深紅のクロスボーンガンダムが、通りすがりの駄賃とばかりにゾロアットとゲンガオゾをファンネル・ミサイルとCファンネルの連携で塵に変えていく。

 どうやら助かったのか許されたのかは、あの二人の行く末次第といったところだけど、果たして。

 

『もしかして一晩中ヤるのは初めてかな? 蛮族令嬢ちゃん♡ くたくたで可愛いね♡』

「そっちこそ、私がザンネックを処理するまで出てこなかったくせにご挨拶じゃねえか、チキン野郎……!」

『あは♡ 気に入ったから殺すのは最後にしてあげるねぇ?』

 

 深紅のクロスボーンガンダムを操る緑髪の女性──個人ランキング19位に位置する猛者は、獰猛な笑みを浮かべつつ、サラミス級のブリッジをCファンネルで包囲した。

 

『おハロー、艦長さん? 補給、急いでね? あたしはまだまだ暴れ足りないからさぁ』

『艦長じゃない、提督と呼びたまえよ!』

「どっちも似たようなものじゃないの?」

『これだから素人は! 嘆かわしいが……せっかく空飛ぶ補給ポイントとして活用してくれるんだ、客は客だ! 補給急がせろ! 5分で戦場までデリバリーだ!』

 

 とにもかくにも、私たちはなんとか許されたようだった。

 危っぶねぇ。

 息が詰まるような感覚からようやく解放されて、喉の辺りで支えていた溜息を盛大に吐き出す。

 

 死ぬかと思ったわよ、全く。死んでないから差し引きプラスだけどね。

 

 

 

 

 

 

「はてさて、どうしたもんかねこいつは」

 

 俺──カークス・ロストは着艦したサラミス級のデッキに愛機のクロスボーン・ガンダム3X3(サザンクロス)、ゼノクロスカイの補給を行いながら、頭を抱えていた。

 

「マンサーナ・フロールを持ってくるべきだったか? ったく、格闘耐性まで持たせたクソボスとバトルロワイヤルを掛け合わせるなんて趣味が悪いぜ」

「基準がチャンプやそこにいる19位──ヴィオラだろうから仕方ないんじゃあないか?」

「よく言うな、ビーティス。あんたも上澄みだろ」

 

 サングラスに銀色のジャケットとスラックスという格好をしたダイバーこと、クロスボーンガンダムX-0、「アサルト・ゴースト」を操るダイバーにして、ブレイクデカール騒ぎのときはちょっとブイブイ言わせていたビーティスに、俺は溜息を投げつけた。

 あのクソボスが生まれたのも、元を辿ればお前らの頑張りすぎだろうに。

 しかし物理耐性とIフィールドとは考えられていやがる。

 

 PvPの要素も組み込んだこのミッションで幅を利かせているのはビーム兵器だ。

 そして、ビームによる射撃が通じなければ大抵の機体が持ち合わせているビームサーベルでの格闘戦に移るだろうから、それを見越した調整をしてるってところか。

 つまり、あのよくわからんダブル眼帯のザビーネとしか形容できないダイバールックの男みたいに、ファンネル・ミサイルやらなにやら、実弾兵器を満載したガンプラを死守しなきゃあいけないわけだった。

 

「ですが、こうして補給艦を得たことで戦いの趨勢はこちらに傾きつつあります」

「おっと……個人ランキング39位のミィクちゃんか」

「はい。初めまして」

 

 グラマラスな体つきで、シスター服を着た、ピンク色の瞳と長髪が特徴的──というか視界の暴力的なダイバーこと、ミィクちゃんがカーテシーを添えて一礼してくる。

 なんていうかな、俺はそこまで礼を尽くされるような立場じゃあないんだが。

 礼ならこの補給艦を戦場に持ち込んでくれた艦長──じゃなかった、提督さんと、ゴロツキから解放してくれた蛮族令嬢に言うべきだろう。

 

「こうしてクロスボーン・ガンダムを愛する者が一堂に会するのもなにかの縁でしょう。巡り合わせに感謝いたします」

 

 敬虔な信徒のように、ミィクちゃんが跪いてどこかしらの誰かしらに祈る。

 ミートローフの野郎がいなくて正解だったな。

 俺やビーティスは既婚者だから特に気にはしてないが、どうしてもめちゃくちゃデカい胸とかに視線が吸い寄せられちまう。

 

「目が覚めれば、最後の決戦になるってな……」

 

 補給艦を利用したヒットアンドアウェイで、レイドボスの耐久値は順調に削れつつある。

 これがあと2体もいるってことがもう既に悪夢みたいなもんだが、1つ減るだけでも心理的な負担はバカみたいに軽くなるだろうよ。

 それにしたって、蛮族令嬢ねえ。

 

「ベルーナも連れてこなくて正解だったかもしれねえな……怒られるぐらい安いもんだ」

 

 露店駐機で修理待ちをしているウイングゼロのカスタムモデルと、それを操っている金髪をツーサイドアップにした吊り目の女の子──蛮族令嬢、鬼狩りのバーバリアンこと「ミキ」を一瞥して、苦笑する。

 良くも悪くも暴れ散らかして、良くも悪くも戦場を、GBNを引っ掻き回す台風みたいな女の子だ。

 ただ、自分の愛する人の近くには率直に言っていてほしくない──とまでは言わないが、教育に悪いタイプなのも確かだった。

 

『補給完了まで1分30秒! 各員発進準備!』

「おっと……」

 

 提督さんの怒号に急き立てられて、俺たちは修理待ちのガンプラに乗り込んだ。

 さーて、こっちは消耗したサイコ・プレートも概ね回復済み、そしてダブル眼帯の人も弾薬の補充は万端ってとこか。

 アプサラスⅢの脚を折れば、ビームも通じるようになる。

 

 そうすりゃあ物理耐性が剥がれるかどうかはともかく──接近戦に強く調整されているクロスボーン・ガンダムの独壇場だ。

 

「ベルーナ、行ってくるぜ」

 

 帰りを待ってくれている人のためにも、ここで撃墜されるなんて恥ずかしい真似はしたくない。

 

『ミィク、クロスボーンガンダムX-11「ダブルクロス」』

『ビーティス、クロスボーンガンダムX-0「アサルト・ゴースト」』

『ヴィオラ、クロスボーンガンダムFX1♡』

『THE Bi-ne、クロスボーンガンダムEX2「アルゴノード」』

「カークス、クロスボーンガンダム3X3(サザンクロス)

 

 ──出撃する!

 なんの因果か集まったクロスボーン好きで、鋼鉄の7人……ってわけじゃないが、X-1に連なる血筋の連中が雁首揃えて出撃するってのが、もしミィクちゃんの祈ってた神様の計らいなら。

 粋なことを、してくれるじゃねえか。




明日を託した翼が飛び立つ──!

※「朔紗奈」様の「GBD:ドレスアップ・ドールズ」よりカークス・ロストさんを、「X2愛好家」様の「GBN:ダイバーズコンピレーション」よりTHE Bi-neさんを、「守次 奏」様の「ガンダムビルドダイバーズ リビルドガールズ」よりビーティスさんをゲスト出演させていただきました、改めてこの場を借りて感謝いたします……!
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