お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
『なんだこのクソボス!?』
『森林エリアじゃ一体倒されたみたいだけどよぉ』
『廃墟都市エリアには関係ない話だな……』
ダイバーたちの嘆きが、鎮魂曲を爪弾くように聞こえてくる。
ぼく──フィアが飛ばされたのは、廃墟都市エリアで、ミキから事前に警告されたように、一人きりになってしまった。
ルカとキョウの姿も見当たらない。
この状況に心細さを感じていないかと聞かれて、首を縦に振ればそれは嘘になるね。
一人で戦うというのがこんなに難しくて、心細いことだったなんて、思いもしなかったのだから。
でも、同時にわくわくしている。ぼく一人の実力がどこまで通るのかを試せるのだから。
「殲滅のアルモニーだ、いけっ! フィン・ファンネル!」
『ぐわーっ!』
『だから後ろにも目をつけろとあれほど!』
『ダイバー同士で殺し合ってる場合じゃねえだろ!?』
ぼくが隙を見計らって飛ばしたフィン・ファンネルから放たれる照射ビームを受けて、物陰に隠れていたガンダムデュナメスが爆散する。
仲間と思しき随伴機からはぼくを非難する声が聞こえてきたけど、それはそれ、だ。
確かにここのレイドボスは、レガンナーの脚部を装着したグルドリンという、攻略法がよくわからないものだけど、別にダイバー同士のバトルが禁じられてるわけじゃないからね。
「とはいえ、彼らの言うことにも一理あるね」
レガンナーの脚部を装備したグルドリンがどすんどすんと音を立てながらそこら中を走り回っているのは中々シュールな光景だし。
厄介なのは、レイドボスが強化された電磁装甲を纏っていることか。
ガンダムAGEの原作同様に、遠距離からのビーム砲撃はほとんど無効化してしまうだけでなく、グルドリン部分にはスーパーアーマーが付与されていて、突進に巻き込まれればミンチになるのは確定事項だ。
「そうなると、脚部を狙うのが効率的なんだろうけど」
超スピードで繰り出される突進の合間を縫って、脚部をピンポイントで撃ち抜く。
中々、要求されているスキルは高い。
ぼくとビートνガンダムにできるのか──いや、やるんだ。
周囲のダイバーから距離をとりつつ、照星に脚が生えたグルドリンの膝関節を収めて、ビーム・スマートガンを撃ち放つ。
すると、突進中だったグルドリンが躓き、大きく姿勢を崩して転倒した。
ふむ、なるほど。どうやら突進中は脚部のダメージカット効果が切れるだけじゃなく、攻撃のチャンスにもなっているようだね。
『よし、レイドボスが転んだ!』
『今だよリクくん、持てる火力をありったけ叩き込むんだ!』
『了解ですコーイチさん、いくよユッキー!』
『任せて! モモちゃんも援護を!』
『まっかせて!』
おや、どうやらビルドダイバーズのご一行も同じエリアに飛ばされていたらしい。
新しくなったリクくんのダブルオースカイ──白と青を基調にしたカラーリングへと一新され、アンテナや爪先、各部のガントレットがシャープになったガンプラ。
だけど、なにより目を引くのは。
『いくよ、ダブルオースカイメビウス! ハイマットフルバーストモードだ!』
新造された一対のキャノン砲についている青いウイング部分が、正面から見るとスカイドライヴシステムに追加された羽根に見えるけれど、ぼくにはわかる。
あれは──リボンだ。
サラちゃんへの「好き」をリクくんが形にしてくれたんだって、ダブルオースカイメビウスがそう言っているのだから。
そして、ジェガンブラストマスターとモモカプルの援護も受けて、ダブルオースカイメビウスから撃ち放たれた照射ビームが、容赦なく転倒したグルドリンを呑み込んでいく。
だけど、まだだ。
まだ、撃破には至っていない。
『なんとかもう一度突進される前に倒し切りたい! 力を貸してくれないか、皆!』
『すまない、今ので手一杯だ!』
『クソッ、せめてあいつが生きてれば超高高度狙撃銃でなんとかなったものを……!』
あれ、これ大分ぼくのせいだったりするんだろうか。
ダウンは取れたけど、対処する火力がこの場ではあまりにも不足しているという状況だ。
だったら仕方ない。自分の不始末は自分で片付けるべきだって、ミキも言っていたからね。
「なら、奥の手を出し渋ってる場合じゃない……ロングレンジ・フィン・ファンネル展開! フィン・ファンネル、セットアップ! さあ……始めようか、鏖殺のフィナーレを!」
ビートνガンダムが持てる出力の全てを投下して、左腕のアタッチメントに接続したロングレンジ・フィン・ファンネル、そして右手に持っているビームスマートガン、機体の周辺に滞空させているフィン・ファンネルから、ぼくは最大出力でビームを撃ち放った。
『なんだ、この火力!? 戦艦でも真正面から撃ち落とすつもりなのかよ!?』
『どこの誰かは知らないがちょうどいい、このまま押し切るぞ!』
『見覚えがある色合いのフィン・ファンネルだな……もしかしてテメェ、フィアか?』
アンシュことツカサが、通信回線をオープンにしてウィンドウ越しに割り込んでくる。
「よくわかったね! そう、ぼくだよ!」
『ったく、GBNのぬるま湯に浸かっちまって腑抜けたかと思ったが、心配はなさそうだな』
「心配してくれてたのかい? ふふっ、ありがとう、ツカサ」
『心配なんざしてねえよ! ここからは残ったレイドボスとポイントを獲得した参加組にハイエナするやつらとの戦いだ、気ぃ抜くんじゃねぇぞ!』
一方的に通信を切られてしまった。
でも、口ではなんだかんだ言いつつちゃんと心配してくれているんだから、ありがたい。
家族という概念は知識としてしか知らないけれど、ぼくがもし人間だったとしたら、ツカサはお父さん、というポジションに当たるのかな。
「さて、ぼくの方は大分芳しくないというか、大分マズそうだ」
さっきの攻撃で、エネルギーが底をつきかけているのに、通知のせいで周囲にぼくがフィニッシャーボーナスを掻っ攫っていったことは周知済みときた。
今も感じる。
殺意のこもった視線が奏でる、激しい刃の旋律を。
「戦えるかい、ビートνガンダム? ふふっ……楽しくなってきたね」
じりじりと、それぞれの得物を構えてにじり寄ってくる無数のガンプラを、左腕のアタッチメントに装備しているロングレンジ・フィン・ファンネルで薙ぎ払おうとした、刹那。
上空から飛来した無数のミサイルと、そして、彗星のように猛スピードで尾を引いて降下してきた機体が放った一閃が、ぼくより早く敵を仕留める。
──全く、敵わないなあ。
「元気そうね、フィア!」
「合流には苦労したが、完璧に想定の範囲内だ」
「ううん、待ってたよ……ミキ、キョウ!」
ぼくに戦う喜びを、生きる喜びを教えてくれたミキは、姉になるのだろうか?
馬鹿げた話だとはぼく自身も思っている。
でも。
──ぼくは、ひとりぼっちじゃない。
理屈よりも先に実感が安心として漏れ出てくる。
大切な家族が、ぼくのことをミキやツカサが心配してくれているという事実が、ずっとひとりぼっちで戦ってきた今の自分には沁み入るようで。
心の底から、ほっとしたよ。
生きてます(小声)