お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
わたくし──シロガネ・ルルカはこれ以上ないほど昂っておりました。
なぜかと?
愚問です、なぜなら目の前に広がっているのはビュッフェ形式のフルコース、それも色とりどりで
「あっはははは! 楽しいなぁ、高難度サバイバルミッションってやつは! ほらどうしたそこのフニャチン野郎、腰が引けてんだよ、イチモツおっ勃ててかかってこいや!」
『ひぃぃぃ! 残虐令嬢だー!』
『助けてくれ、ただでさえ頭おかしいレイドボスがいるのにこれ以上頭おかしいやつを追加しないでくれ!』
どうやらわたくしが配置されたエリアは、砂漠エリアということで、空中適性がない機体や防砂処理をしていない機体はそちらの方でも動きを鈍らせてしまっているようですね。
しかも待ち受けているレイドボスは、アグリッサの上半身をジャイオーンに換装したゲテモノということで、餌食になっている方々もたくさんいらっしゃるようで。
このイベントの趣旨としてはいかにあのレイドボスから逃げ回るか、挑んで倒すかといった具合ですけれど──
「つっまんねぇなぁ! どいつもこいつも二手三手先を考えて行動するお利口さんってのは! シケてんだよ! たまにはバカになって、なにも考えずに走ってみろよこの玉無し共が!」
レイドボスが飛ばしてきたファンネルを回避しながら、わたくしはオーディエンスの情動を煽り立てるのですが、中々ついてきてくれません。
うーん、ミキと一緒にいないのがダメなのでしょうか。
それともわたくしはまだまだ「食い出」がないのでしょうか。GBNは
これでは、ツカサ様がGBNに退屈を感じていたのも致し方ありません。
やはり、わたくしはGPDに戻るべきなのでしょうか。
ミキとGBNをやるのは楽しい──この気持ちに、誓って偽りはありません。ですが、わたくしが求めているのは、身も心も激しく溶け合うようなホンモノの交わり。
熱く、激しく交われないのなら。
刹那の快楽に身を任せ、共に高めあい、蕩けるような
わたくしがここにいる意味は、ない。
ああ……馬鹿馬鹿しくなってきました。
実にくだらない。
このミッションが終わり次第、わたくしは「レディビルド」を抜けさせていただきましょう。
そして、また。
あの音楽室で、ミキと二人きりで──
頭の片隅に、ぼんやりと憂鬱が湧いてきた最中でした。
『いくよ、ピケスト!』
『承知いたしました、パル様』
『ルカさん! お久しぶりです! そして……僕と、新たなる力を得たモルジアーナと、お手合わせ願います!』
『ちなみにパル様の妻であるこのピケストもガンプラを新調しておりますので、ゆめゆめご油断めされないよう』
白と青のツートンカラーに、水色の稲妻を纏うヴァルキランダーと、白と赤のツートンカラーに赤色の稲妻を纏うヴィシャスのカスタムモデルが、果敢に挑みかかってきました。
ふ、ふふ。ふふふふ。
顔見知りであることは少し減点要素かもしれませんが……この状況でレイドボスの討伐なんて腑抜けたことにうつつを抜かすのではなく、わたくしに戦いを挑んでくる気概。それは認めなければなりません。
「まあ♡ わたくしとの交わりを熱望するということは、パル様もピケストも──尻の穴まで曝け出してくれるのですわね?」
『もちろん! 行くよ、ゼクスヴァルキランダー……僕の、モルジアーナ!』
『尻の穴でも前の穴でもなんでも曝け出しておりますので、ええ。それではピケストも、ダブルヴィシャスにて参ります』
一対の飛竜を思わせるお二人のガンプラが、激しく滾るパトスをぶつけてこようと、臨戦態勢に入りました。
ああ、素敵。
こういった交わりを、ヒリついた空気の中でお互いの全てをぶつけ合うセッションをこそ、わたくしは待ち望んでいたのです。
ですが、舐めてもらっては困ります。
飛行形態に変形しているゼクスヴァルキランダーとダブルヴィシャスが速度で優位を取ってわたくしを挟撃しようとしておりますがそこはそれ。
わたくしの「ハイゼンスレイ・モルガーナ」にはアリュゼウスからコンバートしたシェルフ・ノズルを装備しておりますので、飛行速度はお二方に引けを取りません。
『速いよ、ピケスト!』
『存じております、あれが剥き出しのルカ様ということなのでしょう』
「ふ、ふふ……ふふふふ……わたくし、待つのは嫌いではありませんが、待たされるのは嫌いでして、迎えにきたのです──さあ、血湧き肉躍るセッションの始まりだ!!!!」
ファンネル・ミサイルでマルチロック、機体に急制動をかけつつ、バックブーストで今度は一気に距離を引き離します。
アリュゼウスからコンバートしてきたファンネル・ミサイルです、直撃すれば、ただでは済まないでしょう。
さあ、さあ! この弾幕を避けるつもりなら二の矢は用意してあります、ですから存分に踊りなさいな!
『パル様、ここはこのピケストにお任せを』
『……そうだね、ダブルヴィシャスじゃないと、受け切れない。お願い、ピケスト』
あわや敵前逃亡かと身構えましたが、特に心配はありませんでした。
ピケストのダブルヴィシャスが、事もあろうにファンネル・ミサイルの弾幕へ正面から、なんの対策もなく突っ込んできたのですから。
ピケストがまさか身を挺してパル様の盾になり、爆発を目眩しにして攻撃のチャンスを作るなどという殊勝なことをするとは思えません。
なにかある。
わたくしの打った手に、正面からぶつけるだけのなにかが。
確信が心を滾らせます。さあ、全力を──心躍る刹那をわたくしに曝け出せ!
『ふぅ……この「適応装甲」をもってしても受け切るのはギリギリでしたか、相変わらず油断なりません』
「ふ、ふふ……姿を変えましたか」
ピケストのダブルヴィシャスは、各部の装甲を一部リアクティブ・アーマーとしてパージすることで、ファンネル・ミサイルの弾幕砲火を防いだようでした。
なるほど、面白い。
撃たれた弾や受けた攻撃に応じて複数の性質を持つ装甲に切り替わる。
システムなのか必殺技なのかまでは判断致しかねますが──ピケストらしい戦い方です。
相手の攻撃が一つに偏っていればいるほど不利になる、言ってしまえば一芸頼みのガンプラほど苦戦を強いられるのでしょうけれど。
実弾とビームと格闘を分散させているハイゼンスレイ・モルガーナを相手にそれは、やや愚策なのではないでしょうか。
『そうですね、ルカ様と私の相性は概ね最悪でございます』
「……」
『ですが、この場合は一瞬でも貴女を相手に時間を稼げたのなら、それが正解なのです』
「……まさか!」
『そのまさかです、パル様!』
『ありがとう、ピケスト……これが僕の、戦う意志! 生きる決意! 全部を込めて……届け、ゼクスカリバーっ!!!!』
ゼクスヴァルキランダーの額から伸びた一本のツノ──インフィニットジャスティス弐式のパーツを移植したのであろう、シュピッツェシュヴァートビームホーンが雷を纏い、真っ直ぐに振り下ろされました。
ふ、ふふ。
なるほど。わたくしはどうやら戦いの中で戦いを忘れていたようですね。
一人ではないからこそ、信頼できる相手と一緒に戦っていたからこそ生み出せた、回避不能の一撃で、恐らくわたくしは葬られることでしょう。
全く、わたくしとしたことが。
ミキが、フィアが、シナノさんが、キョウがいることを忘れて、一人でただ暴れ散らかしていただけでは、なにも見えなくなるのも当然。
故にこの一撃は、必然の裁きとして受け入れましょう──と、身構えていたときでした。
「なに一人で満足したような顔して死のうとしてんのよ!
「ぬぅぅぅぅん、なのです!」
「重たい一撃だが、完璧に想定の範囲だ」
「ミキ……?」
射線に割り込んできたシナノさんのグシオンリベイク・朧火が、キョウのフォランティス一斉射撃の援護を受け、リアクティブアーマーを犠牲にしながらもゼクスカリバーを受け止めました。
しかし、代償は重く、ゼクスカリバーとの相殺を試みたキョウもシナノさんもほぼほぼ瀕死同然です。
ですが──彼女たちは、無駄に身を差し出したわけではない。
「アホ面晒してないで、わかってんなら行くわよこの不燃ゴミが! ピケスト! 寿退社したあんたにお祝い贈ってなかったわね、これは私たちからのプレゼントよ!」
『ふ、ふふ……望むところです、お嬢様。さあ、第二ラウンドを始めましょう!』
『ミキさんとルカさんのM.A.V……! 今の僕とピケストなら、きっと上回ってみせます!』
パル様とピケストが見せてくれたように、二人がわたくしたちにチャンスをくれたのなら。
「「暴れ散らかすぞ、相棒!!!!」」
完璧に期待へ応えてこそ、淑女というものでしょう。
わたくしは先行するミキを支援するために、再びファンネル・ミサイルをマルチロックして、両腕に持たせたアリュゼウスのビームライフルをピケストに向けて撃ち放ちました。
やはりミキは、わたくしの知らない世界を見せてくれる。どこまでも高く、連れて行ってくれる。
ですから──どうか、この手を離さないで。
手を自ら離しかけたわたくしが言えたことではないのでしょうけれど。
決してもう、迷うことはいたしません。地獄の果てまででも、ミキに──このシロガネ・ルルカが見初めた生涯のパートナーに、ついていきましょう。
貴女とならば、例え地獄の底までも