お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
「わたくしがどうして怒っているのか、わかりますか? ツミキ?」
翌日の放課後、いつもの空き教室で顔を突き合わせたルルカはむっすー、と可愛らしく頬を膨らませて私に問いかけてきた。
どうして怒っているのかって、女の子特有の面倒な質問ではあるけど、不幸なことに心当たりはめちゃくちゃある。
だから私は、だらだらと脂汗を垂れ流しながら、ルルカから目を逸らすことしかできなかった。
「ひ、人違いの可能性もあるわよ」
「あら、わたくしは『なに』とは言っておりませんわ」
「……ソ、ソウデスネ……」
「自覚はあるようですからお話は早いのですが……これを見てください、ツミキ」
ルルカは学生鞄の二重底からダイバーギアを取り出すと、映像をホロスクリーンに投影する。
『ふふ……はははは! 喰ってやったぜ、テメェの
そこに記録されていたのは、昨日のオーガと私が戦ったときのリプレイ映像だった。
あれ自動記録されてるのかよ。
そういえばリクくんがロンメル隊の育成フォースこと第七士官学校と戦ったときもリプレイ記録されてたっけ。やべー、完全に失念してたわ。
「意地悪ですわ、ツミキ! このように、かくも情熱的な
「ごめん! でもこれは完全に事故というかその場の勢いというか……目の前に美味しそうなお肉があったらつい摘み食いしちゃうっていうか……!」
「淑女としてはしたないですわ! ああ……これほどまでに熱狂的で官能的な
女の子の間に挟まりたがる男は聞いたことがあるけど、男女の間に挟まりたい女の子は前世でも今世でもルルカが初めてだった。
というか淑女がどうこう言うならルルカのFワードも大概どうかと思うのだけれど、それを言ったら余計に怒られそうな気がする。
だから、私は気まずさに目を逸らすことしかできなかった。
「もう……ですが、これはわたくしの不手際でもありますわね」
「って、いうと?」
「よく考えたら、わたくしたち、GBNで連絡先を交換しておりませんもの」
ルルカは右手の頬に手を当てて、悩ましげに溜息をついた。
そういやそっか。
エキシビジョンマッチのときは「ミキ」のアカウントを作ってもらっただけだったし。
「そういえばそうだったわね……じゃあ、今交換しちゃう?」
「はい、是非!」
「じゃあ私もダイバーギア出すからちょっと待っててね」
偽装用に作ってある二重底からダイバーギアを取り出して、私は適当に簡易ログインだけを済ませてしまう。
フレンド交換ぐらいのことなら、わざわざガンプラをスキャンしてゴーグルを被らなくてもできるのが偉いところだった。
そして、「ルカ」のアカウントを探し出し──って同名のダイバー多いな。アクティブ2000万人だから仕方ないけど。
「ミキ、ミキ……ええ、と。ダイバー検索からでは不便ですわね……わたくしのダイバールックはリアルと変わらないので、そちらで探していただけると」
「そうなの? 私もだけど……っと」
バストアップのアイコンが映っている画面からルルカとよく似た容姿のダイバールックを絞り込む。
……まあ、一目でわかったんだけど。
だってルルカ、暴力的なぐらいにおっぱいでっかいんだもん。
「見つけたわ、私から申請出しとく」
「ありがとうございます♡」
私は検索性低いだろうなー、金髪のツーサイドアップなんて腐るほどいるだろうし、なにより胸を盛るのを忘れてたし。
……くっ、そう考えると大会のことだけ考えていて、ダイバールックを作り込まなかったのに対する後悔が噴き出てくる。
小柄でスレンダーといえば聞こえはいいけど、この身体は悲しいぐらいに凹凸が少ない。
どうせなら私だって、アヤメさんみたいに乳スライダーを脳死で最大にしたかったよ。
現世は女の子で、もう自認も女の子になってるけど、ルルカのおっぱい見てると素直に羨ましいなーってなるし。
ちくしょう、巨乳が憎い。
「はい、これでわたくしたちは
どことなく恍惚としたように頬を赤らめながら、ルルカは私のダイバーネームを呼んだ。
おお、バトルロワイヤルのときは意識してなかったけど、よく考えたらあだ名で呼ぶって確かにお友達っぽい……!
せっかくだから、私も呼んじゃおう。
「そうね、ルカ。それじゃあ昨日のお詫びに今日はフォースでも組んで暴れ散らかさない?」
「あら……素敵なご提案ですわ、ですが」
「……で、ですが?」
「あの……大変申し上げにくいのですが、ミキのダイバーランクはまだFですわ」
えっ。
思わず真顔になった。
あのオーガを倒しても大量のダイバーポイントが手に入らないなんて、GBN、ヘルモードすぎない?
「ど、どうして? 私、一応Aランクのオーガをフリバで倒したわけだし、CとはいわなくてもDぐらいまでは上がってるんじゃ……」
「それについては心当たりがあります。ミキ、貴女──チュートリアルを終えられておりませんわね?」
「うわ、完全に忘れてた!」
そういえばあったわね、リクくんとユッキーがやってた、リーオーNPDを3機倒さなきゃいけないやつ!
はー、なんか萎えた。
確かにほとんど棒立ちに近いNPDを3機倒すだけなんだから3分もかからないけど、ルカが言ったように、あれだけ激しい戦いの後に出されるのが初心者用のNPDだなんて、興醒めもいいところよね。
「う、うーん……デザートにハギスを出された気分……」
「わたくしもこのままでは欲求不満が爆発してしまいそうです……はっ、一ついいことを思いつきましたわ」
「いいこと?」
「GBNが萎えるなら、GPDで戦えばいいではないですか♡」
ふむ?
確かに道理ではあるけど、今時、サポート対象外になっているGPDの筐体が稼働しているお店を今から探すのは骨が折れる。
なにかいい案があれば──いや?
「それなら一つ、私にもいい案があるんだけど」
「あら? では聞かせてくださいな、ミキ」
「それじゃあね──」
ルカのおかげでフィルタリングをすり抜けられるようになったダイバーギアでブラウザを立ち上げて、私はお台場周辺の廃倉庫を片っ端から画像検索して、記憶と一致するものを探す作業に乗り出した。
†
「……あぁ? なんだ、久々に『客』かと思ったが……女が二人、しかもその制服、お嬢様学校のじゃねえか。こんな時間に出歩いてたら危険だぞ」
私は記憶を頼りに探り当てた目的の廃倉庫へとルカを案内すると、そこには案の定いてくれた。
ブレイクデカールをばら撒いている黒幕にして、ビルドダイバーズでも屈指のツンデレにして前作ヒロイン枠と名高い男──シバ・ツカサくんが。
口は悪いけど、私たちを気遣ってくれる辺り本当に根っこはいい人なんだなぁ。ちょっとGPDが好きすぎるだけで。
「ごきげんよう、シバ・ツカサ様。わたくしは──『ルカ』と申します。こちらはお友達の『ミキ』ですわ」
「ごきげんよう」
一応外行きなので淑女を取り繕い、カーテシーを添えて私たちはツカサくんに一礼した。
すると、まるでアレルギー物質に触れたかのようにツカサくんの表情が歪む。
まあそりゃそうよね、ガチのお嬢様からいきなり最上級の拝礼を受け慣れてなんていないだろうし、なんなら女の子慣れもしてないだろうし。
「……尚更テメェらがなにしに来たのかわかんなくなっちまった、とりあえず聞いとくが、『客』じゃねえんだな? 俺の名前を知ってるのは最上級の『客』しかいねえはずだ」
「はい。わたくしたちはあんなクソつまらないイン◯野郎御用達のオ◯ニー道具に用などありませんもの」
「……なるほどな、理解したぜ」
おっ、話が早いわねシバ・ツカサくん。
ブレイクデカールについてはルカも知っていてくれて助かった。
ついでに私がなんでシバ・ツカサくんのことを知っているのかについては──まあ、それなりに追及されたけど、なんとか「家の事情で」と乗り切ることができた。
……いや、多分できてねーなこれ。
ルカが熱いバトルさえできれば細かいことを気にしない性格なだけだ。
ともかく、それ以上を追及してこなかった親友の優しさに感謝しながら、私は颯爽とガンプラホルダーを取り出したルカを見つめる。
「さあ、ご機嫌な溶け合いをいたしましょう! 聞けば貴方は、GPDで500戦以上ヤられている方だとか!」
「……チッ、どこで知ったか知らねえが……いいぜ、たまには『本物のバトル』を味わっておかねえと、腕が鈍っちまうからな」
「まあ、素敵♡ それでは
かくして、突発的にルカとツカサくんのセッションが始まった。
【朗報?】ツンデレヒロイン登場