お嬢様がGBNにいるわけないだろう! 作:プラ板の削りカス
「もっとだ! もっとテンポとバイブス上げてきやがれ! ドラグーン飛ばして安全圏確保するのは定石だけどなぁ、シケてんだよ!」
「……ちっ。テメェ、どこで慣らした?」
「どことかどうとか関係ねえだろ! さあ、テメェのテクでわたくしをもっと濡れさせろよ、シバ・ツカサぁぁぁっ!!!!」
ツカサくんのガンプラ──「ガンダムアストレイノーネイム」が飛ばしたブレードドラグーンの軌道を、両腕と背中のコネクターポッドに接続したシールドブースターのマニューバで強引に突っ切って、ルカが吼える。
壮絶な戦いだ。見ているだけで血が滾ってきて、「私ならどうしているか」を考えさせられてしまう。
オーガとの戦いでお預けを喰らったルカの気持ちがよくわかった。あそこまで派手に脳汁垂れ流せる
──ま、まあ、それはともかく。
実のところ、私がツカサくんと接触を図ったのには狙いがあった。
オーガとの戦いでは夢中になってそれどころじゃなかったけど、よくよく考えたらサラちゃんが誕生しているということは、もう既にイヴが自分にバグの欠片を取り込み始めているということだ。
そこにブレイクデカールによるバグが加速すれば、原作通りにイヴはコアガンダムくんの手によって消滅させられる未来が待っている。
ここからなんとか立て直すためには、ツカサくんとお近づきになることは大前提だ。
まず、ブレイクデカールの配布をなんとかしてやめさせて、ELダイバーの存在とGPDの技術がGBNに一矢報えることを教える──あれ、結構な無理ゲーじゃないこれ?
で、でも、まずはそのきっかけを作れればいい。
一気にいきなり解決しようとするから頭が混乱するだけで、少しずつ積み上げていけばいい。
なんて、悠長なことを言っている猶予があまりないのが悲しいところだけど、ここは私の頑張りどころだ。
まず、原作のツカサくんが凶行に及んだ原因は若者のGPD離れだった。
それ自体は残念でもないし当然なんだけど、細々とGPDを続けていたルカと引き合わせれば、少なくとも仲間はできる。
今もGPDをやっている仲間ができれば孤独感は薄れて、GBNに対してもそこまで敵意はなくなるだろう──なんて甘い話ではないけど。
でも、少なくともツカサくんの孤独を埋めることはできる。
「テメェ……ルカとかいったな? 俺にこいつを使わせやがるとは」
「もったいぶってんじゃねえ! 本気もチ◯ポも出していけよ、シバ・ツカサァァァ!」
「……ちっ、とんだ言葉遣いだ、人は見た目によらねえってか。だったらなァ! ナイトロシステム、起動!」
そんなことをぼんやり考えているうちに、バトルは佳境に突入していた。
強引にブレードドラグーンの雨霰を突っ切ったせいで損傷している両腕のシールドブースターをパージ、ルカの真紅のヘイズル改が、最後のトドメを刺すべくアストレイノーネイムへと肉薄する。
背後からは置き去りにされたブレードドラグーンが戻ってきて、まさしく殺るか殺られるかといった状況へ、ルカは死中に活を見出していた。
でも、ツカサくんも負けてはいない。
ナイトロシステムによって上がった反応速度と機動力で、一基だけに減少したシールドブースターが推進剤切れになるのを待つ、クレバーな戦法に出ることにしたようだ。
シケた戦い方ではあるけど、理性的だ。だけど、それは私の知るシバ・ツカサという男の戦いではない。
「いきなり逃げてんじゃねぇぇぇ!!!! チ◯ポおっ勃てて襲ってこいよ!!!! その方がテメェも……気持ちいいだろうが!!!! それとも自信がねえのか!? ビビってるんですかぁー!?」
今の諦めを、心の奥底で燻っているGPDへの諦念を反映したような戦い方を、当然のようにルカは否定していた。
ブレードドラグーンをビームサーベルの剣閃で薙ぎ払いながら、左腕を破壊され、右足を砕かれても尚、猛進をやめない。
あー、クソっ。最高に楽しいじゃん、ルカ。
「……あァ? 誰がビビってるだ、このクソ女が……接近戦に覚えはあるようだがな、俺と
「来い! 最高にノってこいよ!」
『おおおおおおっ!!!!』
ブレードドラグーンを交えた激しい剣戟の末に、どんどんルカのヘイズル改は破壊されていく。
それはツカサくんのノーネイムも同じで、ルカの鋭すぎる剣閃が、たちまち装甲を切り裂いていく。
誇りもなにも捨てて、闘志だけを剥き出しにしたチャンバラの末に、右肩にノーネイムのビームサーベルが突き刺さったときは、もう終わりかと思ったけど。
「なっ、テメェ……あえて右肩の合わせ目を放置してやがったのか!?」
「そういうことだ! その首貰ったぁッ!」
ルカはあえて右肩の合わせ目をそのままにしていたらしく、肩関節と癒着していないことで擬似的なリアクティブ・アーマーとしての機能を果たした真紅のヘイズル改は致命の一撃を免れて、アストレイノーネイムのコックピットにビームサーベルを突き立てた。
『Battle Ended!』
戦いに幕は下ろされた。
コックピットを貫かれたノーネイムと、ほとんど全身がバラバラになっている真紅のヘイズル改がプラネットコーティングの加護を失って筐体の上に落ちる。
全身から汗の雫を滴らせて、ルカは長い黒髪を振り乱しながら天に吼える。
「完・全・燃・焼っ!!!!」
「うぅ……羨ましいなー、ルカ」
「元はテメェがわたくしに放置プレイかましたからだろうがこの不燃ゴミが!!!! 一人でオ◯ってやがれ!!!!」
「うるせぇ、それはそれ、これはこれだろうが!!!!」
ぎゃーぎゃーと罵り合いを始めた私たちに対して、ツカサくんがどう思っていたのかはわからない。
──ただ。
お互いの胸ぐらを掴んで殴り合いに発展しそうになったところで。
「……久々だ」
「はい?」
「俺も……久々に、本気のバトルができた。テメェらのおかげだ」
壊れたノーネイムを拾い上げたツカサくんは、表情こそやさぐれていたけど、意外にも素直に私たちへの感謝を口に出した。
「……たまにはここに来いよ。合わせ目放置したガンプラに負けたのは正直屈辱だからな。そっちのミキって女もデキる口だろ?」
「え、ええ。私も少々嗜んでおりますわ」
「今更猫被ってんじゃねえよ……あと、ルカもミキも、その言葉遣いだけなんとかしろよ」
うっ。
チンパン語録はどうしても感情が昂ったときに出てきてしまう本能だけど、確かにどうにかしないといけない。
淑女としてあまりにもはしたないしね。
「ふぅ……申し訳ございません、シバ様。ですが、誠に良き
「……俺の連絡先だ。ミキも貰っとけ」
「ありがとう、ツカサくん」
私たちがLINEを交換して、夜の街へと引き返そうとしたときだった。
ツカサくんはおもむろに私たちの前へと歩み出て、少しゆっくりした歩調で進んでいく。
なにをしているのかと思ったけど、まさか。
「……ここからタクシーがある駅までは案内してやる、久々に本気出せた礼だ。あとついでに、テメェらも女だからな、夜道は危ねえだろ」
「まあ……エスコート、ありがとうございます」
「そうね、ありがとう。ツカサくん」
「……礼には及ばねーよ」
男として当然だろ、と呟いて、ツカサくんは私たちを駅までエスコートする。
こういうところだぞ。
原作では前作主人公がコーイチさんなら、ツカサくんはツンデレヒロイン枠とか言われてたのは。
シバツカサくんはビルドダイバーズきってのツンデレ、はっきりわかんだね