彩葉に男の幼馴染がいたっていいじゃない   作:ザワザワする人

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次のお話が結構長めなのでちょっと短いです。
感想めちゃくちゃ多くて歓喜!!!
ほんとにありがとうございます!!



許さず、逃さず

『注目のイベントが始まります!王者ブラックオニキスが異例の速度でのし上がった超新星かぐや・いろPに宣戦布告ぅ!そしてまさかの求婚!運命を賭けたKASSENが今まさにここツクヨミ特設スタジアムで始まろうとしています!』

 

ソッコーでかぐやが決めた対戦は、世紀の竹取合戦なんて大看板を背負ってきた。

超満員の会場の中、モニター席では実況の元プロゲーマー・乙事照琴と解説を務める忠犬オタ公が盛り上げる為の口上を述べている。

 

『ヤチヨカップの結果発表も残り一時間ですよね』

『この勝負の結果次第では、かぐや・いろPの逆転も!?』

『ルールはSENGOKU━━』

 

「あわわわわわ………」

 

着ぐるみを被った私は、興奮して泡を吹きそうな真実をなだめる。

朔夜の代わりは真実がする事になった。

帝に会いたいだけかも………というのは一旦おいとこう。

ちなみにかぐやは、

 

「ま~だ~?」

 

と、未だ現れないブラックオニキスに対して不満げである。

かぐやが遂に犬DOGEと遊び始めようとしたその時、会場上方の岩壁が爆発する。

 

 

『来ました!黒鬼です!』

 

 

砕けた岩の破片たちの隙間から、虎バイクに乗った帝達が巨大な鬼と戦いながら落ちてきているのが見える。

次の瞬間、それらは爆ぜて会場の空へとド派手な花火となって打ち上がった。

会場のボルテージが上がる。この為ならなんでもする男だ。

 

 

『黒鬼!ご来臨━━━━━!!』

 

 

盛大な歓声に迎えられ、ブラックオニキスの三人が登場した。

今日、私はこいつらに勝たなきゃいけないと思うと、気が滅入った。

 

「え~………さっくーいないの?」

 

「どーも、対戦受けてもらってありがと」

 

「あのわ、わたしっ、ふっふ、ファンでっ」

 

どう考えても状況が見えてない真実が帝に話しかけた。

それを一瞥して帝は

 

「まみ、悪いけど今日は手加減できない」

 

と、ウインクを放った。

名前は、あらかたユーザーネームから推測したのだろう。

見事に心臓をぶち抜かれた真実は顔中に!?を浮かべながら、くるくると倒れていった。

………え、倒れた!?

 

「真実、大丈夫!?」

 

どれだけ私が揺さぶっても、戦闘不能になった真実は目を覚まさない。

 

「ねぇ~どうする?やっぱり朔夜呼ぶ~?」

 

いや、呼べる訳ないでしょ!と私が突っ込む前に。

上から巨大な玉手箱が降って来た。こ、これはまさか………!

 

「じゃっじゃーん!呼んだー?」

 

ヤチヨ………ヤチヨ………だぁ!

玉手箱からぴょーんと飛び出して、バトル用の爽やかな衣装のヤチヨが出てきた。

 

「え、えっぇぇぇええぇぇぇぇ!!!!????」

 

「えへへっ、絶対勝とうね!!」

 

可愛らしくポーズを決めて、ヤチヨがにっこり笑った。

や、やばい………勝てるかも………。

 

 

 

 

 

 

集合場所は、駅前のファミレスだった。

 

雨が降っていたので、傘についた水滴を払う。

 

俺が着いた頃には、二人はもう中にいるようで連絡が来ていた。

 

中に入ると、じいちゃんが立って手招きしてくれた。招かれて、俺も二人の反対側の席に着く。

 

「久しぶり、二人共」

 

「おおきなったのぉ!!朔夜!!」

 

「ありがとねじいちゃん。ばぁちゃんも元気そうで何より」

 

「東京は人が怖くて大変やわ~。朔夜はすごいの~」

 

ばあちゃんが水を一口飲んで、しみじみと息をついた。

 

「すごいっていうか……慣れただけだよ。最初は俺も無理やったし」

 

「ほうか?配信で見る限りじゃ、堂々としとるやないか」

 

じいちゃんがニヤッと笑う。

 

「それ、だいぶじいちゃんが盛っとるからね。実際は毎回心臓バクバクだし」

 

「嘘つけぇ。あんな派手なことしといて」

 

軽く茶化されて、俺は苦笑いでごまかした。

店員が水とメニューを置いていく。

ばあちゃんはそれをじっと見つめてから、小さく首をかしげた。

 

「これ……どれが安いんや?」

 

「値段ここに書いとるよ。ほら。注文はスマホっぽい」

 

「あらまぁ、ほんまや。最近のはよう分からんわぁ」

 

そんなやり取りが、妙に懐かしくて。

ふと、昔の食卓を思い出した。

 

「朔夜は、ちゃんとご飯食べとるんか?」

 

「一応ね。自炊もちゃんとしとるよ」

 

「さすが朔夜やの~。また今度料理食わせてや」

 

「あ~でもなぁ、あんた昔から無茶する子やったから心配なんよ」

 

ばあちゃんの言葉に、少しだけ胸が詰まる。

 

「……まあ、無茶はしとるかも」

 

「やっぱりな」

 

じいちゃんが即答して、三人で小さく笑った。

少し間が空いて、雨音だけが窓の外で続いている。

 

「なあ朔夜」

 

じいちゃんが急に真面目な声を出した。

 

「今、楽しいんか?」

 

その問いに、すぐに解は出てきた。

楽しいかどうかなんて、考える暇もなかったから。

 

「……楽しいよ。めっちゃ忙しいけど」

 

思わず笑ってしまう程に、ウチの姫は手がかかる。

 

「ほうか」

 

それだけ言って、じいちゃんは満足そうにうなずいた。

 

「ならええ。退屈が一番あかん」

 

ばあちゃんも「せやねぇ」と笑う。

その空気が、少しだけ肩の力を抜いてくれた気がした。

すると、ちょうど料理が運ばれてきた。

 

湯気の立つ皿を前にして、ばあちゃんが嬉しそうに手を合わせる。

 

「ほな、いただきますやな」

 

「「「いただきます」」」

 

三人でするのは………いや三人ではやってたな。

じいちゃんとばあちゃんとするのはいつぶりか分からない、その言葉を一緒に口にした。

 

 

 

 

湯気の立つ料理に箸を伸ばしながら、俺はどこか落ち着いていない自分に気づいていた。

 

(もう始まってるよな………)

 

「どうしたんや?手止まっとるで」

 

じいちゃんが不思議そうに覗き込んできた。

 

「あー………ちょっとね………」

 

「なんやなんや。好きな子でもできたんか?」

 

いや間違ってないけどなんでドンピシャやねん。

 

「ま、そんなもん」

 

「はぁ~……朔夜にも遂に春が……」

 

「相手はそんな風に思ってないよ、多分。友達……みたいな?」

 

「そりゃアタックが足らんとちゃうか」

 

「あ、そうや!」

 

突然、ばあちゃんが何かを思いついたようにゴソゴソと小さなバックからスマホを取り出した。

 

「この子最近ばあちゃんがよく見ててな~恋愛相談とかもしとったで~」

 

(………うっそん)

 

ばあちゃんが見せてきたスマホに映ってたのは、俺の宿敵?にあたるようなやつ。

ブラックオニキスの一人。帝アキラだった。

 

「あぁ………結構、有名な人だよね」

 

「そうなんよ~かっこよくてな。あ、朔夜もかっこええよ!」

 

おばあちゃんにフォローをかまされてしまった。

 

「ん、それ今も配信しとるんとちゃうか?」

 

「あ、ほんまや」

 

「ご、ごめんばあちゃん!それ見せて!!」

 

帝の事だ。どうせツクヨミの公式放送だけじゃ我慢ならず、個人の方でも配信してんだろ。

時間的に、まだ初戦の途中くらいだ。全員、瞬殺されてなきゃだけど。

 

 

 

『やっぱ彩葉じゃん』

 

『私のアバターなんで知ってんの』

 

()()()()()には何でもお見通しってね』

 

 

 

彩葉と帝の会話の声が、すっと耳には入ってきた。

 

「お兄………ちゃん?」

 

頭が処理を否定して、それでも情報を何度も頭で咀嚼した。

 

「ど、どしたん朔夜?顔色悪いで…?」

 

ばあちゃんの心配する声が聞こえた気がする。

 

()()()()()………!!」

 

「だいじょぶか、朔夜」

 

「………あ、ご、ごめんじいちゃん」

 

じいちゃんの声で意識はやっと、今に戻ってきた。

でも頭から、その現実は離れなかった。

ばあちゃんのスマホを握ったまま、俺はしばらく動けなかった。

 

『――ほら、来いよ彩葉』

 

『うるさいって言ってんでしょ』

 

画面の中では、もう戦いが始まっている。

 

派手なエフェクト。

歓声。

爆発音。

 

「……朔夜?」

 

ばあちゃんの声で、はっと我に返る。

気づけば、じいちゃんもじっとこっちを見ていた。

 

「顔、真っ青やで」

 

「……あー……ごめん」

 

笑おうとしたけど、うまくいかなかった。

視線が、勝手にテーブルの上に落ちる。

湯気の立っていた料理は、少し冷め始めていた。

 

(……今、ここにいるべきだろ)

 

久しぶりに会った、じいちゃんとばあちゃん。

こうやって三人で飯を食うのなんて、いつぶりか分からない。

この時間は、ちゃんと大事にしたい。

 

「……じいちゃん」

 

気づけば、口が動いていた。

 

「俺――」

 

言いかけて、止まる。

行くって言ったら、この時間を自分で手放すことになる。

 

(それは………言えねぇ)

 

「行ってきたらええやないか」

 

じいちゃんが、あっさりと言った。

 

「え……」

 

「さっきからずっと、そわそわしとるやろ」

 

「……バレてた?」

 

「当たり前や」

 

じいちゃんは、にやっと笑った。

その隣で、ばあちゃんも優しくうなずく。

 

「大事なんやろ?それ」

 

「……うん」

 

「なら行き。若い時の()は、後から取り戻せへんのやから」

 

「……でも久しぶりに会えたのに――」

 

「また会えるやろ」

 

「それに配信で見れるしな」

 

「……あー、それはやめてほしいかも」

 

「ほら、はよ行け。冷めてもたらもったいないんは飯やなくてタイミングや」

 

「いってらっしゃい、朔夜」

 

その一言で、背中を押された。

 

「……うん、ありがとう」

 

それだけ言って、店を出た。

 

外は、まだ雨。

 

スマホを開くと、ちょうど画面の中でかぐやが帝に落とされたところだった。

 

『動きが直線!解釈一致!』

 

『ヴぇ!いってーんだけどマジ!』

 

多分、このラウンドは落とすだろう。

ボトムに一人で行ったヤチヨも、乃依の射撃に悪戦苦闘してる。

 

(待っとれや、()()()()………)

 

(あんたは一発殴らんと気が済まん!!)

 




「男前なったの~朔夜は」

「俺に似たんと違うか?」

「ご冗談を。朔夜のお父さんに似たんでしょうよ」

「あ!!これ、渡すん忘れとった!!」

「仕送りで送るって言うてましたやん。何をしてはるんですか」

「まぁ()()()()()()()()()()()()()()()()()、大丈夫やろ」
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