彩葉に男の幼馴染がいたっていいじゃない   作:ザワザワする人

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感想ありがとうございます!!もっとオラに元気(感想)を分けてくれぇぇぇぇぇ!!!

一気に曇ってきましたねぇぇぇ!!



望んだ答えは何処へ

長く、眠っていたような気がする。

その中で、夢と現実の間みたいな場所で色んな景色が見えた。

 

それらは多分、昔の俺の視点だったと思う。

最初に出てきたのはやっぱり父さんと母さんだった。

笑顔で俺を抱えて、涙ぐんで笑っていた。

 

次に彩葉に会った。

小さなころの彩葉は、今と違って可愛いの方が勝っていた。

公園の砂場で泣きそうな顔をしていた彩葉に、俺は元気に声を掛けていた。

 

それからまさかの飛んで飛んでかぐやに会った。

かぐやの時の景色はよく分からなかった。

そもそもかぐやと正しく認識もできなかった。どこか、雰囲気がかぐやに似ている人の頭を撫でていた。

よく分からなかったっていうのは、頭を撫でていた俺の手がなぜか小さかった気がした。

 

 

(昔にこんな人と会った事あったっけ……?)

 

 

似た子なのだろうか。

俺が口に出して聞こうとしたら、その映像はモヤがかかって霧となって消えていった。

 

 

 

□

 

 

 

「……今、何時だ?」

 

確かライブで頭が痛くなって……。そんまま寝たんだっけ……。

いや恥ずかしいな……俺の寝顔が全世界に晒されたって事かよ。

 

「うげ」

 

時計を見たら、短針はちょうど10を刺していた。

夏期講習の最終日があったにも関わらずこれほどの寝坊。

神代朔夜、一生の不覚っ……。

 

「……で、ここまで経っても消えないって事は夢じゃないのか?」

 

俺の部屋の中には、よく分からんけど頭が提灯?みたいなので作られた全身白タイツ野郎が三人立っていた。

かぐやのドッキリだったらなんと良かった事か。

布団をどかして、立ち上がろうとするとキンっと音が鳴った。

 

(ん?金属音?)

 

音の出所は、どうやら俺に近いらしい。

ベットに何もないのを確認した後、すぐに違和感は見つかった。

 

「ブレスレットだ……」

 

いつの間にか俺の左手にブレスレットが付いていた。

昨日、ばあちゃんから貰ったものだ。多分、かぐやのやつじゃない。

 

(俺は明晰夢でも見たのか?)

 

いやまぁやけに現実っぽい夢とは思ったけども。

まじで俺はボケているのかもしれない。

まだこの白タイツおるし。

 

「あの……帰ってくれません?ここ、俺の部屋なんすけど……」

 

俺がそう恭しくお願いしたら、なんと白タイツは従ってどっかに行った。

そんまま帰るなら最初からおるなや。

 

「学校……行くか~……」

 

大遅刻もいいところだが、とりあえず行くしかあるまい。

彩葉はもう行ってるだろうし。

 

「あ、おはよ~かぐや」

 

リビングに出ると、キッチンで何かやっているかぐやが目に入ってきた。

 

「さくや~!体、大丈夫!?」

 

「うげっ」

 

かぐやは、俺にタックルしながら抱き着いてきた。

心配してるならもうちょっと優しく触れてくれ。

 

「多分大丈夫。彩葉は?」

 

「彩葉は学校行ったよ。夏期講習!」

 

やっぱりか。別に起こしてくれても良かった……って言うのは傲慢か。

彩葉とかぐやの優しさだろうし。

 

「俺も学校行くわ。準備してくる~」

 

そう言って俺が洗面台に行こうとすると。

 

「え………………さ、朔夜……!」

 

かぐやに呼び止められた。

 

「ん?どしたん?」

 

「そ、その………腕の……」

 

かぐやは俺の左手を指刺した。

 

「あ、これ?ばぁちゃんが送ってくれたんだよ。なんか俺の両親から?みたいな。なんかかぐやのとめっちゃ似てるけど」

 

「そっか……。あ、ありがと!」

 

そう言ってかぐやはキッチンに戻っていった。

 

(……かぐやは結局何も知らないのかな……?)

 

なんか見た事ない表情してたけど、何かを知ってるっていうよりかは疑問?みたいな表情だったし。

ってやばいやばい急がなきゃいけないんだった!!

 

 

 

□

 

 

 

「す……すみません……先生……。ね、寝坊してしまい……」

 

「お、おう……。つ、次から気を付けてな、あと呼吸しろ」

 

間に合うっちゃ間に合った……。

俺の嫌いな古典だし、受けなければ……。

 

「授業に戻るが……ここは自分ではどうしようもないという意味に……」

 

まずいまずいまずい。

急いでノートを引っ張り出してからメモして、それで教科書開いて……。

 

「では、ここの訳を酒寄さん、分かりますか?」

 

「……え」

 

あ、やっば。筆箱ない?いや確かに入れた筈なんだけど……。

 

「あ、えっと……分かりません」

 

彩葉がすぐ答え言うだろうし…いそがな……きゃ……。

 

「……は?」

 

「……大丈夫ですよ。ここの助動詞は」

 

その時、今日初めて見た彩葉の顔は。

今まで俺が見てきた中で、一番陰りがあった。

 

 

 

□

 

 

 

それから講習は終わって、俺と彩葉は一緒に帰った。

 

「「……」」

 

ただなんか気まずい!!

 

「なんか彩葉、元気ない?大丈夫?」

 

「うん……全然、大丈夫」

 

「昨日ちゃんと寝た?俺は先に寝ちゃったけど」

 

「うん……寝れたと思う……それより朔夜は?」

 

「あ、いや俺は全然!!元気元気」

 

「そっか……よかった」

 

(…………)

 

「俺は良くない」

 

「え…………」

 

「なんで俺に隠す?」

 

「隠してなんか……」

 

「質問変える。俺がライブの後、頭痛で何も考えれなかった時に何があった」

 

「それは……」

 

「かぐやの様子も何かおかしかった。正直に言ってくれ」

 

「…………」

 

「言えないのなら、俺は家を出てく」

 

「それはっ……」

 

「隣って前話しただろ。遠慮するのは隣(・)じゃない。俺を遠ざけようとしてるだけだ」

 

「……分かった。全部話す」

 

それから彩葉は全部話してくれた。

ライブの時に、おそらく朝の俺の部屋にいたやつと同じやつが現れた事。

そしてそいつがかぐやに触れた瞬間、事切れたようにかぐやの目が虚ろになった事。

最後に俺の頭の中に溢れた数字が、ツクヨミ内のありとあらゆるフィルターに移しだされた事。

 

「そしてその日が、満月と」

 

「うん。もしかしたら……」

 

「かぐやが帰るかもな」

 

「………そだね」

 

雰囲気が暗く重くなってくると、いつの間にか家に着いていた。

 

「直接聞く?」

 

「いや、それは……ちょっと心の準備が出来てないかも……」

 

「じゃ、これだな」

 

そう言って俺はスマホを取り出して、画面を彩葉に見せる。

 

「花火大会……?」

 

「綾紬と諌山から渡された。三人で行ってこい~ってな」

 

「二人は来ないの?」

 

「宿題が終わってないんだと。でもまぁあの二人の性格的に?後はお察しだな」

 

「じゃあ…朔夜が誘ってきてくれる?」

 

「それはダメ。彩葉が誘いなさい。俺の方からかぐやを誘う事は動画の企画だったりで前からあった。けど彩葉からはないだろ?かぐやもきっと喜ぶぞ~?」

 

「わ、分かった。慣れないけどやってみる……」

 

 

 

 

□

 

 

 

 

「あ、遊ぼ~」

 

「ぷっ……」

 

「わ、笑わんといてよ!!!」

 

思わず彩葉の不器用すぎる誘い方に俺が噴き出すのと同時にかぐやは。

 

「やった!やたやた!やったーー!!やったー!!やったぁぁぁぁぁぁ!!」

 

歓喜の雄たけびを上げながら狂喜乱舞していた。

 

「すぐ行こっ!」

 

「ちょ、ちょい落ち着けってかぐや」

 

「無理!やりたいことがいっぱいあるもん!すぐ行かないと」

 

「だからって、その料理用の服じゃ……」

 

「大丈夫!服はすぐ着替えられるし……はい、今予約入れた!!さぁ、行くぞぉ!」

 

 

そんなかぐやに引きずられながら俺達が着いたのは、手ぶらで入店OKの和服レンタル屋だった。

せっかくだし、和服で行こうというかぐやの思惑である。

 

「ね~ね~三人でお互いの服選ぼっ」

 

「「え、いいけど」」

 

「じゃあ~かぐやが彩葉ので、彩葉が朔夜ので、朔夜がかぐやのね!!」

 

「うぃ~」

 

「…………分かった」

 

「きゃっほーーーー!!い・ろ・は・に・に・あ・い・そ・う・な・の・は~~♪」

 

るんるんと歌いながら選び始めるかぐや。

どこかしかめっ面で、悩み始める彩葉。

そんでもって、別にそこまで悩まなかった俺。

 

もしかして、もうちょっと迷った方がよかったのか。

 

俺の約十分後に二人は選び終わったようで、着付けが終わった後に集合した。

 

「なんか、全員似てね?」

 

「だね……」

 

「仲良しっ!!」

 

俺が選んだかぐやの服は、紺色に淡い黄色一色でひまわりが三本描かれた落ち着いた浴衣。

いわゆるギャップというやつを狙ってみた。結構センスいい気がする。

 

かぐやが彩葉に選んだのは、白地に大輪のひまわりとその左右にちょこんと小さなひまわりが二本ある元気っぽい浴衣だった。

 

それで彩葉が俺に選んでくれた浴衣は、真っ黒の浴衣。そして俺の裾には元気に小さなひまわりが五本咲いている。

 

「全員ひまわりて」

 

「和服よき~☆」

 

俺がツッコんでる間にかぐやは店の前の大鏡で写真を取っていた。

 

「ありがとな、彩葉。結構好きだわこれ」

 

「う、うん。気に入ってくれて良かった。かぐやもありがとね」

 

「いいって事よ~!彩葉の為だもん!朔夜もありがと!」

 

そうして感謝が一巡して、俺達はちょっと笑ってしまった。

 

 

 

□

 

 

 

電車で暴れるかぐやを抑え込みながらも、何とか私達は目的地に到着した。

 

「さてと、花火まで時間あるけどどうする?」

 

「屋台!全部回る!」

 

「その意気だかぐや!行くぞい!」

 

「な、なんで、朔夜はそんな元気なの!」

 

なんかテンション高くない!?

 

「夏祭りなんて何年ぶりか忘れる程行ってないからな!最後に行ったの父さんとだった気がする!」

 

「え、高校とか中学も?」

 

朔夜は皆から好かれてたし、そういうのにも積極的に誘われてると思っていた。

 

「俺の友達は全員、夏祭り前に彼女を作りやがった……(彩葉誘えとか言われても無理に決まってんだろ!今でも浴衣に心臓バックバクですぅ!!)」

 

「あ~……なるほど……」

 

どうやら朔夜も朔夜で苦労しているらしい。

 

「朔夜朔夜!銃あるよ!朔夜の持ち武器!」

 

「言い方気をつけよっかかぐやさん。俺やばいやつなっちゃうから」

 

まずは射的のようだ。私だってエイムにはある程度、自信がある。

…………当たらない。

 

 

「彩葉へたっぴ~」

 

「かぐやも当たってないじゃん!」

 

 

私達がそんな事を言い合っている間に朔夜はというと。

 

 

「お、おい、兄ちゃん。そんくらいに……」

 

 

全ての景品が、一撃必殺である。

思わず屋台のおじさんも顔が引きつっている。

 

「さ、朔夜,その辺に……」

 

私は途中で声を止めてしまった。

だって私はそんな顔は見たことなくて。その横顔が妙に凛々しくて、大人に見えて。

それでいて。

 

(かっこいい……)

 

そう思ってしまったから。

 

 

「ふ~……おっさんイカサマしてないじゃん!最近増えてるって聞くからさ~」

 

「し、してないけどよ兄ちゃん。これじゃ赤字だぜ……」

 

「あ、別に全部いらんいらん。あれだけちょうだい。箱はいらんわ」

 

「一番高いの持ってったな……まぁありがとよ」

 

「あ、そうだ。かぐやとさっくーがイカサマ無しって保障します!って看板に書いといていいよ」

 

「あ?なんだそりゃ?」

 

「恩返しみたいなもん。多分繁盛するから頑張ってな~!!」

 

 

屋台のおじさんと会話を終えた朔夜が、少し離れていたかぐやと私に近づいてきた。

 

「ほい、二人共」

 

そう言って、朔夜はその手に握っていたものを見せた。

 

「お~!!綺麗~!!」

 

「すご……」

 

朔夜の手に握られていたのは二つのネックレスだった。

片方には淡い金色の宝石が、もう片方には深海みたいに綺麗な青い宝石が埋め込まれていた。

どちらもなんとか見えるほど小さかったけれど。

 

「かぐやこれ~」

 

かぐやが金色の方を取ったので、私は青い方を取ることになる。

私は、手のひらの上に乗せた青いネックレスをじっと見つめた。

 

綺麗だ。

すごく綺麗なんだけど。

 

「……彩葉? どうした?」

 

「え、あ……」

 

気づけば、朔夜が不思議そうにこっちを見ていた。

 

「つけないのか?あ、気にいらなかった?」

 

「いや、そんな事ない!ないし、つ、つけるけど……その……」

 

言葉が喉で詰まる。

自分でつければいいだけなのに、浴衣だと少しやりづらいから。

 

……いや、それは建前だ。本当は。

 

「……朔夜、つけて」

 

「ん?」

 

「だから……ネックレス」

 

「お、おう。いいけど」

 

思ったよりあっさり了承されて、逆に心臓が跳ねた。

 

「ほら、後ろ向いて」

 

「……うん」

 

私は、そっと朔夜に背を向ける。

首筋に夜風が触れて、少しだけ震えた。

 

「髪、上げるぞ」

 

「っ……」

 

朔夜の指が、私の髪を優しく持ち上げる。

それだけで、全身に電気が走ったみたいだった。

背中越しに、朔夜の体温が伝わってくる気がする。

 

「動くなよー」

 

「う、動いてない……!」

 

「いや、めっちゃ震えてるけど」

 

「し、仕方ないやろ!!」

 

自分でも分かるくらい声が裏返って、しかも訛りが出た。

かぐやの笑い声が聞こえる。

 

「彩葉、かわい~!」

 

「うるさい!」

 

必死に抗議したけど、今はそれどころじゃない。

首元に、ひやりとした金具が触れる。

 

「はい、完成」

 

「……ありがと」

 

振り向くと、朔夜が少し照れたように笑っていた。

 

「似合ってる」

 

「……っ」

 

たったその一言だけで、顔が熱くなる。

 

「ほんと?」

 

「ほんと」

 

「すっごく似合う! 彩葉、お姫様みたい!」

 

かぐやも満面の笑みで頷く。

ネックレスを指でそっと撫でる。

冷たいはずなのに、胸の奥は不思議なくらい温かかった。

 

「……大事にするね」

 

「壊すなよ?高かったらしいし」

 

「そこはもうちょっと雰囲気あること言ってよ」

 

「じゃあ……一生つけてろ?」

 

「っ!?」

 

「冗談冗談!!かぐや、次いくぞ!(な、なに言ってんだ俺!!)」

 

「お~!!」

 

笑う朔夜を見て、私は頬を膨らませた。

でも、それも悪くないって。頭で考えずともそう思った。

 

 

 

□

 

 

 

「ふぅ……間に合った~……」

 

両手のかぐやに持たされた戦利品をレジャーシートに下ろし、一息をつく。

結局、ほとんど全部回ったな。

俺と彩葉で、かぐやを挟む順番で座り込んだ。

 

「ねえ、かぐや……」

 

俺よりも先に、彩葉が先陣を切った。

 

「ん?」

 

「………いつも着けてるよね、それ」

 

彩葉は、かぐやのブレスレットを指刺した。

 

「あー、なんか落ち着くんだー。故郷って感じ?」

 

「そっか、故郷か」

 

「うん」

 

「……」

 

かぐやが、気を使っているように見える。

まるで、俺らの覚悟を待ってるかのように。

 

「月ってさぁ、味も温度もなくてまじつまんないの。決められた役割をずーっと、繰り返すだけなんだよね~」

 

「こっわ。NPCじゃん」

 

「ま~じでそんなん。終わればまた始まって、始まったらまた終わるまで。そのループを繰り返して、新しいお話なんて、いつになっても始まらないの」

 

はっきり言って、想像つかないな。

俺らの地球じゃそんなんないし。

 

「でも、そもそもそんな事を考えてる事が異常っていうかさ……かぐやは、浮いてたんだ~」

 

……そんな悲しい声で言うなよ。そんな綺麗な笑顔で。

突然、周囲から歓声が湧いてきた。空気を切り裂く高音と共に、光弾が筋を引いて、空へと昇っていく。

 

「……わぁ」

 

花火がはじける。夜空に大輪の花を煌めかせ、どんっと鼓膜を振るわせる。

 

「綺麗……」

 

かぐやが声をポツリと漏らした。

立て続けに色んな大きさ、色、形の花火が打ちあがる。

かぐやは、それを見ながらまた続けた。

 

「どっか遊びに行きたいな~って思ってたら、違う世界が見れる窓があったの」

 

窓ね~。そんな月から遠い所から見える訳ないしな。月ってすげぇ。

 

「窓から二人の世界を見たら、みんな好き勝手に動いて、複雑で、一回きりで、自由に見えた」

 

「俺達が?」

 

「うん。でも、こっちに来て分かった。みんな抑えてるんだよね。自分の気持ちを、もっと大事な事の為に」

 

「なに、大人じゃ~ん」

 

その声だけで、彩葉が無理をしてるのは分かった。

彩葉が茶化すなんて、滅多にする事じゃない。

 

「えへへ、彩葉の真似かな~?」

 

なんだか、吹けば飛んで行ってしまう。

そんな気がして、俺はかぐやの頭を優しく撫でた。

 

「ん……ねぇ、二人に聞いてもいい?」

 

「「何??」」

 

「じゃあまず彩葉。彩葉は、お母さんの事好き?」

 

かぐやは、その笑顔を崩さないままそう尋ねた。

彩葉は逡巡を繰り返して、その口から出た答えは。

 

 

 

「そうだね……嫌いになれたらって、何度も思ったよ」

 

 

 

俺の予想とは、ほんの少し違ってた。

ほんとは、ちょっとくらい嫌いなのかなって思ってた。

でも俺は母さんに怒られる経験っていうのは無かったから、彩葉の感情が完璧に分かってるとは思っていなかった。

 

 

(会いたいな……)

 

 

今の俺は、母さんの期待に応えられているだろうか。

母さんは、今の俺を見てどう思うだろうか。

きっと褒めてくれるだろう。頑張ったねと、慰めてくれるだろう。

でももうこの世に二人はいない。

そんな当たり前の事実が、散っていく花火と、彩葉の言葉で思い出された。

 

「ごめんね。彩葉のお母さんの事、おかしいって言っちゃって」

 

俺がかぐやに全部話した時、ちゃんと彩葉にもその事は話していた。

 

「別にいいよ。かぐやも分かんないって言いたかったでしょ?」

 

「言いたくなくなったんだろ、かぐやは。だから謝った」

 

「……朔夜にはなんでもお見通しだなぁ~」

 

一際、大きな花火が鮮やかに夜空を照らした。

 

「じゃあ次は朔夜ね」

 

「朔夜はさ」

 

 

 

 

 

 

「か(・)ぐ(・)や(・)と(・)彩(・)葉(・)ど(・)っ(・)ち(・)の(・)方(・)が(・)好(・)き(・)?(・)」

 

 

 

 

 

 

「……はい?」

 

「か、かぐや!?な、なに聞いてんの!!さ、さっきのしんみりした感じは!?」

 

「え~だって聞きたいんだも~ん!!」

 

まったくこの我儘お嬢は……。

 

「……どっちも好きだよ」

 

「そうだよね…………そっかぁ~。朔夜はハーレムをご希望か~」

 

「黙れい」

 

「うわ~ん!朔夜がいじめる~!」

 

「こっこら!抱き着かないでよ!」

 

ここまで、空気が和んだなら聞けるかもな。

 

「なぁ、かぐや」

 

「うん?」

 

「……帰るのか?」

 

「……うん」

 

かぐやはあっさりと頷いた。

想像してたし、覚悟もしてたつもりだったけど、こんなにも心に引っ掛かるものなのか。

 

「いやー。月の仕事放り出してきちゃってさ。強制送還的な?」

 

「かぐやは……かぐや姫だったみたい」

 

「次の満月にお迎えが来る」

 

2030/09/12

 

俺の頭を埋め尽くし、ツクヨミの画面を乗っ取った数字は、かぐやのタイムリミットだったらしい。

 

「お迎えは、俺らの家に来るのか?」

 

「ううん。多分ツクヨミに来る。仮想の世界は月にめっちゃ近いから。あそこなら舟を出さずに簡単に干渉できる」

 

「また……逃げればいいじゃん」

 

「え?」

 

「彩葉、落ち着けって」

 

「落ち着いてなんかいられない!!かぐやは、かぐや姫じゃないじゃん!もっとハチャメチャで!だから、おとぎ話とは違うじゃん!!」

 

彩葉の声は荒ぶっていて、どこか悲しそうで、どこか怒りもあった。

 

「そんな、ハチャメチャかぐや姫にもお迎えが来ましたが、最後の日までめちゃくちゃ楽しく過ごしましたとさ。って、そうゆーのがいいじゃん☆」

 

「そりゃあ、本当はさ。もっともっと、彩葉と歌いたかったよ。朔夜と配信したかったよ。あ、そうだ!ライブしたいなー。お迎えが来る日!派手に!」

 

その言葉に応えるように、スターマインが派手に弾けた。

 

「うおおお、腹に響く!!煙の匂い!よきかな~!」

 

それから、俺達は夜空を見上げ続けた。

花火が終わるまで。

周りの声が聞こえなくなるまで。

三人だけになるまで。

川のせせらぎだけが、聞こえるまで。

 

「もう、お家に帰らなくっちゃ」

 

かぐやが、俺らにそう言うまで。

 

「帰れなくなっちゃう」

 

 

 

 

 




ひまわり五本の花言葉は「あなたに出会えてよかった」

ひまわり十一本の花言葉は「最愛」です。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(尊死)

朔夜の浴衣は彩葉が選んでます。

うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!(死)
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