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ある日のこと。
「朔夜~これ味見して~」
「ん~……いいと思う。けど、もうちょっと……こう……パンチが欲しいかも」
「かぐやもそう思ってた!さっすが、朔夜~!」
「かぐや~これどう思う?」
「ん……美味しっ!!朔夜すごいすごい!!」
「そっか。ありがと。なでなで」
「ん~~!!」
「いい感じだね」
「だね~」
私とヤチヨは、
台所で仲睦まじく!!
まるで夫婦みたいに!!!
料理している二人を見ていた。
「彩葉はこの七年で料理あんまりしなかったもんね~」
「うぐっ…………だって朔夜がやるって言うから……」
「えっ、そうなの朔夜!?」
私達の会話に、台所のかぐやが割り込んでくる。
「そだよ。元々、得意ではあったけど、かぐやが戻ってきた時に一緒にやりたいと思ってたし」
「朔夜~~~!!!」
「はいはい。くっつくのは作り終わった後な」
「は~い!!!爆速で!終わらす!!」
「「…………」」
□
「なんなのよ…………美味しいじゃないのよ…………」
「すご~い!!」
今晩の夜ご飯は、なんかかぐやが買ってためちゃ高い肉のビーフシチュー。
そして一から作ったコンソメスープ。
半端なく時間がかかった、特にコンソメ。
工程が多すぎるんんだよ。なんだよあれ。
「かぐやと朔夜の愛の結晶だからね!」
そんでもって、さっきからずっと俺にくっついてくるかぐや。
「食べられないな~かぐや~」
「じゃあ、かぐやが食べさせたげる!はい、口開けて~」
「「あ~ん」」
「ん……美味し」
「でしょでしょ~!あ、朔夜も作ったんだった!」
「なんか…かぐや変じゃないか?体に違和感とかある?」
「ん~?ないよ~。あるとしたら………ここかも♡」
そう言って、かぐやは自分の胸を指刺した。
「…………(胸ってことは心肺機能か!?いや神経、血管、どれでもおかしくない!!)」
この間、約0.1秒。
「彩葉!研究所!!」
俺が叫んでも、彩葉は動かずにじとっとした目でかぐやを見つめた。
「…………かぐや」
「や、やっぱ大丈夫かも朔夜!!ほんとに大丈夫!!」
「ほんとか?」
「ほんとほんと!」
かぐやは慌てて両手をぶんぶん振る。
「息苦しいとか」
「ない!」
「動悸」
「ないない!」
「めまい」
「ないってば~!」
矢継ぎ早に確認する俺に、かぐやは半分笑いながら半分困ったような顔をする。
ヤチヨはその様子を見ながら、小さく吹き出した。
「朔夜、心配症~」
「そりゃそうだろ」
「かぐや、たまに変なとこ無理するし」
「うっ」
「あと………冗談のタイミングが悪い」
「うぅ……」
かぐやがしゅんと肩を落とす。
「……はぁ」
俺は溜め息の流れでそのまま、ぽんっとかぐやの頭へ手を置く。
「心配した……」
ぼそっと漏れた俺の声は、自分で思ったものよりずっと優しかった。
かぐやが目をぱちぱちさせる。
「朔夜……?」
「……ほんとに大丈夫なんだな?」
「う、うん」
俺はそのまま、ぐっとかぐやを引き寄せて抱きしめる。
「わっ……!?」
「……ならよかった」
「〜〜〜っ!?」
「さ、朔夜……ち、近……」
「ん…?顔赤いぞ」
「それ朔夜のせいぃ……!!」
「熱じゃない?」
「違うよぉ!!」
かぐやがじたばたし始めた辺りで、ようやく俺も少しだけ我に返る。
「……あ」
「あ、じゃないのよ」
彩葉の声が妙に低かった。
俺が振り向くとそこには、にこにこしているのに目が笑っていない彩葉。
その隣では、ヤチヨが普通にニヤニヤしていた。
「いや〜」
ヤチヨが頬杖をつく。
「今のはさすがにドキッとしたね〜?」
「……別にそういうつもりじゃ」
「なお悪いんだよねぇ」
彩葉が即座に被せる。
「無自覚でやるから」
「いや、だって心配で……」
「分かってる!」
彩葉が少しだけ声を大きくしたあと、はっとしたように咳払いする。
「……分かってるけど」
「けど?」
「なんか、かぐやばっかりずるい」
「えっ」
ヤチヨもすぐに乗っかる。
「それはあるよね~☆」
「ヤチヨも?」
「だってさ〜、朔夜があんな事するのレアじゃん?」
「……そんなレアか?」
「レア」
「レアだね」
「激レア」
そう言いあっている間にも、かぐやはまだ顔を真っ赤にしたまま。
でも、ぎゅっと俺の服を掴んで離れなかった。
「……えへへ」
「なんで嬉しそうなんだよ」
「だって朔夜が心配してくれたから!」
「……次からは変な言い方するな」
「は~い!」
元気よく返事をするかぐや。
彩葉とヤチヨは、じーっと俺を見ていた。
「……朔夜?」
「ん?」
「私たちにもあれくらいしてくれていいんだけど?」
「は?」
「平等性って大事だよ〜?」
「いや意味分からんし…………(それに普通に恥ずかしいし)」
□
「彩葉、あれ取って」
「はい、どうぞ」
「ありがと」
「朔夜、それ取って」
「ほい」
「ありがと」
((((((……イチャイチャしやがって……))))))
おっと初めましてかな。俺は今年大学院に入った至ってマジメの普通の学生だ。
そして、今日も俺は研究所に来ていた。
普通に。研究する為に。
「ほら、コーヒー。ちゃんと飲んどけよ」
「うっす」
この研究所には大量のインスタントコーヒーが置いてある。
最初は理由は分からなかったが、今なら分かる。
「朔夜、コーヒー飲む?」
「飲む」
「ブラック?」
「甘めで」
「珍し」
所長はそう言いながら、迷いなく角砂糖を二個取った。
(多くね………?)
俺の疑問は、すぐに無に帰した。
「はい、副所長」
「ありがと、所長」
副課長は一口飲んで。
「あ、やっぱりちょうどいい。さすが彩葉」
「当然。何年入れてると思ってんの」
「じゃ今度は俺が彩葉の分入れる」
「ふふ…………ありがと」
俺はブラックコーヒーへと手を伸ばした。
俺にコーヒーをくれた隣のデスクの先輩は、既におかわりを入れに行っていた。
□
そして同日。
「………彩葉」
「なに?」
「そこ間違ってるぞ」
「え、どこ」
副所長が所長の机を通りかかった時、そんな声が研究所に響く。
そして、同時に俺達には緊張が走る。
「ここ。こっちじゃなくてこの式じゃないと……」
副所長が自然に所長の後ろに回り込み、所長のマウスへと手を伸ばした。
距離が近い。
めちゃくちゃ近い。
副所長の吐息が、所長の耳に当たっているような距離感だ。
「あ、ありがと……」
「あ、いや、ごめん……俺も近かったかも……」
「べ、別に嫌じゃないから!気にしないで……ね」
「わ、分かった」
あれ、俺のコーヒーがなくなってる。
入れにいかないとな。
「先輩、おかわり要りますか?」
「…………」
「せ、先輩!?」
「はぁっ!あ、危なかった……」
「なんで気絶してんすか」
「……新人。あそこまでの接近は激レアだ。……お前、凄いな」
「え…………も、もしかしてなんですけど…………」
「あ、知らなかったのか?あの二人は交際すらしてないぞ」
「…………」
「新人んんんんんん!!!!」
□
「今日はカラオケ配信だよぉぉ☆!」
「いぇ~~い」
今日はヤチヨと急遽配信をすることになった。
現実でやるともしかしたらやばい人が来るかもだから、やっぱりツクヨミで。
ちなみにかぐやと彩葉は現在一緒にお風呂中。
「さぁさぁ!八千年ぶりの雪辱を返しに来たよ朔夜!」
「八千年…あぁ、あれか」
かぐやと最初のコラボ配信だったっけ。二人でカラオケしたのは。
結局、ぎりぎりで俺が合計得点で勝ったんだけど。
「皆の前でそれは言わないようにな」
「もっちろん!ヤッチョは完璧だからミスなんてしないのです!」
「ってな訳でぽちっとな!」
ヤチヨがピピっと空中に浮くディスプレイを操作すると、配信が始まった。
ヤチヨは管理人なのでライバーじゃない。
だから、配信するのは俺らのアカウントだ。
「さくやっほ~。皆こんばんわ~」
『こんばんわ~』
『こんばんわやで~』
『急な配信やけど、何するん~』
「まぁ部屋見てくれたら分かるかな」
ぐるっとカメラを一周させると、カラオケの部屋が移り、同時にヤチヨも映る。
『あ、ヤチヨだ』
『もはや、このチャンネルのレギュラーのヤチヨだ』
『カラオケで男と女が一人ずつ………何も起きない筈はなく………』
「なんもせんわ。普通にカラオケすんの」
「いや~ん。朔夜に襲われちゃうぅ~」
「ええて」
ヤチヨがリモコンを操作し、一曲目が入った。
「よぉ~し!じゃあまずはヤッチョが一曲目いきまーす!」
「聞いて驚け!泣いて震えろ!歌姫ヤチヨの生ライブだぁぁ~☆」
『きたぁぁぁぁぁぁ!!!』
『うぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
ヤチヨはマイクを握った瞬間、空気ごと支配した。
さっきまで騒いでたのが嘘みたいに、綺麗に歌う。
透明なのに、力強い。優しいのに、胸を締め付ける。
俺はソファに座ったまま、ぼーっと聴いていた。
何度も聴いた歌なのに。
何度聴いても、すごいと思ってしまう。
ヤチヨは楽しそうに笑って、完璧に歌い切った。
100.00点
「いぇぇ~い!!!!」
『\10000 あらまぁ』
『\5000 さっすがご本人』
「見た?見た見た!?朔夜~」
「ほんとに…すげぇ」
「えへへへ~~♪」
ヤチヨはめちゃくちゃ嬉しそうに胸を張る。
「さぁ!次は朔夜の番!」
ヤチヨに言われて、俺は曲を適当に探す。
「んー……じゃあこれで」
隣でヤチヨが「あ」と小さく声を漏らした。多分知ってる曲だったんだろう。
静かなピアノのイントロ。
騒がしかった空気が、少しずつ落ち着いていく。
ヤチヨも、さっきまでみたいに騒がず、画面を見つめていた。
俺はマイクを持ち直して、ゆっくり歌い始める。
離れてしまった人へ。
会えなかった時間へ。
それでも、また会いたいと願い続ける歌。
ずっと、一人で待っていた誰かへ向けた歌。
歌いながら、俺は自然とヤチヨの事を考えていた。
八千年。
想像も出来ないような時間を、ヤチヨは一人で過ごしてきた。
歌いながら待って。
信じながら待って。
俺達が戻るのを。
だからなのか。
歌詞が妙に胸へ馴染む。
“会いたかった”
“待たせてごめん”
そんな言葉を口にするたび、ただの歌じゃなくなっていく感覚がした。
気付けば、上手く歌おうとかも忘れていた。
ただ、届けばいいと思った。
隣を見る余裕なんてないのに、ヤチヨがずっとこっちを見ているのだけは分かる。
ふざける様子もなく。
ただ静かに、大事なものを聞き逃さないみたいに。
サビへ入ると一気に音が広がる。
その中で、俺は最後の歌詞をゆっくり歌った。
“もう二度と、一人にはしないから”
伴奏が静かに消えていく。
余韻だけが、部屋へ残った。
俺はゆっくり息を吐いて、マイクを下ろす。
隣で、ぽたりと雫が落ちた。
「……ヤチヨ?」
振り向くと、ヤチヨは俯いたまま、静かに泣いていた。
「ぇ……ぁ………えと………」
『ヤッチョ?大丈夫か?』
『やばい……なんか俺も泣きそう………』
『さっくー声良すぎて………』
コメント欄は、感動してくれてるみたいだけど。
多分、ヤチヨのこれは………。
「皆ごめん。配信終わる。こっちは大丈夫だから。ごめんな」
配信を終了させると、さっきまでの賑やかなコメントも、カラオケの音も消えて。
部屋には、静かな機械音だけが残った。
「ぅ……っ、ぁ……」
ヤチヨは俯いたまま、ぽろぽろ涙を零していた。
肩が小さく震えてる。
マイクを持つ手まで力が入らなくなっていて。
「……ヤチヨ」
「っ、ごめ……ごめんねぇ……」
「謝んなって」
俺は苦笑しながら、ヤチヨの手からそっとマイクを取った。
机へ置いて、そのままヤチヨの隣へ座る。
近くで見ると、ヤチヨの目元はもう真っ赤だった。
「そんな刺さった?」
「だってぇ……っ」
涙声のまま、ヤチヨが俺を見る。
「……あんな歌、ずるいじゃん……」
「……?」
「迎えに行くとか……もう一人にしないとかぁ……」
言葉の途中で、また涙が溢れる。
「八千年待ってた人に聞かせる歌詞じゃないってぇ……」
「……あー」
そこでようやく、ちゃんと分かった。
ヤチヨは今、自分の八千年を思い出してるんだろう。
ずっと待ってた時間。
誰も、いなかった時間。
それでも、皆を信じて歌い続けてた時間。
胸が、きゅっと締め付けられるみたいに痛くなる。
「……ヤチヨ」
俺はそっと、その頭へ手を伸ばした。
優しく撫でる。
「よしよし」
「っ……」
ヤチヨの肩がびくっと震えた。
そのまま、縋るみたいに、ヤチヨはぎゅっと抱きついてくる。
「わっ……」
「……朔夜ぁ……っ」
苦しいくらい強く服を掴まれる。
胸元へ顔を埋めたヤチヨは、子供みたいに泣いていた。
「ぅぅ……っ、ずるいよぉ……」
「何が」
「だってぇ……そんな優しくされたらぁ……」
言葉にならなくなって、またヤチヨの瞼から涙が零れる。
俺は小さく息を吐いて。
そのまま、ヤチヨをちゃんと抱きしめた。
背中へ腕を回して、逃がさないみたいに、優しく包む。
「……頑張ったな」
「っ……」
「ほんと、よく頑張ったよ」
「一人で、ずっと待って」
「歌い続けて」
「寂しくても、苦しくても……皆を信じてくれてた」
「ぅ……ぁ……」
ヤチヨの涙がまた溢れた。
俺の服をぎゅっと握る力が強くなる。
「……ありがとな」
「っ……」
「待っててくれて」
その言葉は、自然に出た。
だって本当にそう思ったから。
もしヤチヨが諦めてたら。
もし途中で折れてたら。
今こうして、隣で笑えてない。
「……俺とちゃんと会えた」
「彩葉も、かぐやも」
「全部、ヤチヨが待っててくれたからだろ」
ヤチヨは何も言えなかった。
ただ、肩を震わせながら泣いていた。
俺はその頭のてっぺんにゆっくりと頬を当てて、目を閉じる。
さらさらの髪が触れる。
「……もう一人じゃないよ」
「っ……うん……」
「だから、もう無理しなくていい」
「寂しい時は甘えていいし」
「泣きたい時は泣け」
「……俺がいるから」
ヤチヨが、ぎゅうぅっと抱きつく力を強めた。
「……朔夜ぁ……っ」
声が震えてる。
でも、どこか安心したみたいでもあった。
「……ねぇ」
「ん?」
「もうどっか行かない……?」
不安そうな声に、俺は迷わず応える。
「行かない」
「……ほんと?」
「ほんと」
「約束……?」
「約束」
ヤチヨがゆっくり顔を上げる。
涙で濡れた目が、じっと俺を見る。
「……っ」
すると、ヤチヨは泣き笑いみたいな顔になった。
「……えへへ……」
安心したみたいに、また俺の胸へ頭を預ける。
それでもやっぱり涙は出るようで。
俺はその頭を撫でながら、小さく笑った。
「泣き虫だなぁ」
「朔夜が悪いぃ……」
「はいはい」
「でも……好きぃ……」
「ん、知ってる」
「ぅぅ……そこで照れないのずるいぃ……」
「いや今は照れる空気じゃないだろ」
「むぅ……」
ヤチヨは甘えて、擦り寄ってくる。
俺はそんなヤチヨを見て、少しだけ目を細めた。
そして。
「……俺も好きだよ、ヤチヨ」
ぽつりと零れた。
ヤチヨの体がぴたりと止まった。
「……ぇ」
「だから、もう安心しろ」
「ちゃんとここにいるから」
その言葉を聞いた瞬間に、ヤチヨはまた泣きそうに顔を歪めて。
でも今度は、すごく幸せそうに笑った。
「……っ、ぅ……だいすきぃ……」
俺は苦笑しながら、そんな歌姫の頭を何度も優しく撫で続けた。
違うんすよ。なんかヤチヨのシーンだけすごい事になってますけど、偶々なんすよ。
ただ三人それぞれとの日常を書きたかっただけなんですよ。
IFバットエンド見たいっすか?
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黙れ、純愛しか認めんぞ
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来い!来てみろ!かかってこい!!