今回の話では、作者が勝手に作った朔夜以外のオリキャラが出てきます!
ご注意ください~
「月に帰ってみたい!!」
「「…………」」
とある平日の夜、かぐやがこんな事を言い出した。
「彩葉、どうする?」
「全身拘束した後、両側から「好き」ってささやけばいいんじゃない?」
「おけ。拘束までするから、そっからは彩葉がして」
確か研究所のかぐやの身体があった所には非常事態にむけて拘束装置があったはず。
「ちょちょちょい待ち!!!ずっとじゃないから!!旅行的な!!」
「旅行?」
「そ、そう!」
「「う~む……」」
「私はそっちの事よく分かんないし、朔夜が決めて良いよ」
「俺~?」
はっきり言うと俺もあっちの事は今は分からない。
あいつらがまともにしてれば……多分、まともな町にはなってるんだろうけど。
「…………俺と絶対離れない事。変な事しない。俺が帰るって言ったら帰る事」
「この三つ守れたら行っても「行く~!!」………はいはい」
□
数日後。
「わぁぁぁぁぁぁ!!!月ぃぃぃぃぃ!!!!」
「だから今更だって……」
転移ゲートを抜けた瞬間、かぐやが大はしゃぎで駆け出した。
その姿を見ながら、俺は少し後ろを歩く。
「うっそだろ………」
目の前に広がっているのは、俺達が知っている月とは全く別物だった。
巨大なドーム都市。
空中を滑るように走る輸送ライン。
透明な空へ投影された立体広告。
それに、普通に生活しているたくさんの人達。
昔はもっと無機質だった。
白くて、冷たくて。
生きる為の施設って感じだったのに。
今の月は、ちゃんと街になっている。
「……まじか……」
俺は、思わず何回も周囲を見回す。
正直、ここまでとは思ってなかった。
俺はかぐやを連れもどした時には町を見てないから、二十年ちょっとぶりだけど……。
それに変わり始めたのは、多分ほんとに最近だろうし………。
「朔夜~~!!見て見て!!」
かぐやがぶんぶん手を振る。
その先には、月面側へ大きく開かれたガラス展望エリア。
宇宙が見える。
黒い空。
そこへ浮かぶ青い地球。
昔かぐやと見た時より、ずっと綺麗に感じた。
「すごいよこれ!!ねぇ!!!」
「分かったから壊すなよ」
「こんなんじゃ壊れないって!!」
かぐやは笑いながら、ガラスへぺたっと張り付く。
そんな事を話していると、不意にかぐやの動きが止まる。
「……?」
俺が近付くと、かぐやはガラスの向こうを見たまま、小さく呟いた。
「なんか、不思議」
「なにが?」
「月なのに、昔と全然違う」
その声は少し静かだった。
いつものテンションじゃなくて、どこか置いていかれた子供みたいな響き。
「もっと……白くて、静かで、冷たい場所だった気がするのに」
「ほんとにな」
暖かい光。
たくさんの人の気配。
たまに聞こえる笑い声。
確かに、昔よりずっと生きてる場所になった。
(あいつらも頑張ったって事かもな………)
頭の隅で、そんな事を考えていると。
ビー!!!ビー!!!!!ビー!!!!!!!
天井に吊らされている赤い警告灯が光りだした。
「うっわうるさ~!」
かぐやの愚痴も俺の耳に届く事はなく、館内放送の爆音に消し去られた。
「侵入者発見!!侵入者発見!!」
(もしかしなくても………)
「俺達だよな~…………」
「え?朔夜なんて?」
「逃げるぞ、かぐや!!」
俺はかぐやの手を引っ張って、走りだした。
「ちょちょっと朔夜~!なんで~!」
「侵入者なんて百パー俺らに決まってるだろ!」
人込みの中を抜け、路地裏を走って、また人込みに呑まれて………。
元々の場所からどんだけ離れたか分からないくらいの路地裏で、俺達は止まった。
「こ………ここまで来たら大丈夫だろ………」
「朔夜…………早い………」
「ごめんな………かぐや………久しぶりに本気で走った………」
やべ………さっさと転移扉開かないと、またそこら辺うろちょろしてる警備隊が……。
「見つけましたぞぉぉ!!!!」
「はい?」
上からの声に反応し、空を仰いだ時に俺の意識は途絶えた。
□
「――――っつ……」
ゆっくりと、意識が戻って来た。
「…………?」
目を開けると、真っ白な天井とかぐやが見えた。
ん……?かぐや………?
「………ん?」
「起きた!?」
かぐやが俺の方を向いて、微笑んだ。
「なにこれ………どうなってんの」
「かぐやが膝枕してあげてたの!!朔夜、爆睡してたし!」
頭を回せば、辺りには煌びやかな装飾が辺り一面に広がっていた。
俺らが座ってるのも畳だし。
「……どこだここ」
「分かんない!」
「なんでちょっと元気なんだよ……」
「だってみんな優しかったもん!」
「は?」
意味が分からない。
あいつらも、そこまで心変わりしてるとは思えない。
「失礼しますぞ!!」
勢いよく襖が開いた。
入ってきたのは、やたら派手な白装束を着た男。
しかも無駄に長身。
無駄になんかこう……顔がキラキラしてる。
なんだこいつ。
「おぉ!!お目覚めになられましたか!!!」
「……誰だ」
「これは失敬!!」
男はバッと胸へ手を当て、大袈裟な動きで一礼した。
「現月界の代表護衛及び代理心得!!」
「代理かい」
「ラグナ・アルトリア・フォン・ルナティックですぞ!!!!」
「長すぎだろ」
「ひどくないですかな!?」
かぐやがけらけら笑っている。
ラグナと名乗った男は、俺を改めて見るなり目を輝かせた。
「いやぁぁぁ!!まさか本当にお会い出来るとは!!!」
「……?」
「最高の指導者であり!!!史上最悪のテロリストであり!!!史上最高の革命家!!!!」
なんだよそれ。一人で全部はおかしいだろ。
「………はい?」
「しかも
「わぁ、有名人扱いされてる~!」
かぐやは妙に楽しそうだった。
「っていうか。あいつらはどうした」
「?あいつらとは?」
「長老達だよ。あいつらが代表してるって事だろ?」
「なるほど!貴方様が申しているのは先代の事ですな!!」
「彼らは自ら
「…………は?」
「…………え?」
先程まで楽しそうだったかぐやも驚きを禁じ得ないようで。
「自分達がいては月は進まぬと申され、今の代表を
……あのゴミどもが……。
「作ったのか」
俺はあいつらに言った。
次に俺とかぐやみたいなやつを作ったら、月ごと消す。
俺が感情移入するとでも?舐めやがって……。
「………ご決断はお待ちを。今、代表はこちらに向かっておりますゆえ」
ラグナがそう言うと、ちょうどスパンと襖が開いた。
そして、その奥から出てきた人を見たとき。
俺は、言葉を失った。
「…………は?」
黒色の髪。
少し吊った目元。
そして何より――――。
「……朔夜?」
かぐやが隣でぽかんと呟く。
それくらい、似ていた。
目の前に立っている少女は、まるで昔の俺をそのまま女にしたみたいな見た目だった。
背丈こそ小さい。
けど、目つきも、雰囲気も、立ち方まで似ている。
俺自身ですら、一瞬鏡でも見せられたのかと思ったくらいに。
「…………」
少女はそんな俺達の反応を見て、少しだけ気まずそうに目を逸らした。
「やっぱり、似ていますか」
「いや似てるとかいうレベルじゃねぇだろ」
「うわほんとだ……!」
かぐやが俺と少女を交互に見る。
「朔夜だ!女の子朔夜!!」
「やめなさい」
「でもそっくりだよ!?」
「分かってるわ!」
ラグナが何故か誇らしげに胸を張った。
「現代表、
嫌な予感がした。
「さくや様をモデルとしてデータ設計された御方ですぞ!!!」
「おい待て」
空気が止まった。
かぐやの笑顔は止まらなかった。
俺の頭痛も始まった。
「…………なんて?」
「ですから!!!」
「聞こえてる」
聞こえてるから最悪なんだよ。
朧は気まずそうに咳払いした。
「その……二十年程前の月では、あなたは象徴的存在だったらしく……」
「だからってデータ使うなよ!?」
「しかも女性体として最適化されておりますぞ!!」
「最悪情報追加すんな!!見たら分かるわ!!」
ラグナを蹴り飛ばしたい。
でもなんかこいつ、蹴っても「光栄ですぞ!!!」とか言いそう。
そんな俺達の前で、朧は静かに頭を下げた。
「申し訳ありません」
「いや、お前が謝る事じゃないだろ……」
「私は、あなたの許可なく生み出された存在ですから」
その言葉に、俺は少しだけ言葉に詰まった。
…そういう顔は、そこまで好きじゃない。
「…………別に、お前に怒ってるわけじゃない」
「ですが――」
「作った連中にキレてるだけだ」
「っ……」
朧が少し目を見開く。
後ろでかぐやが、小さく俺の服を引っ張った。
「朔夜」
「ん?」
「似てる」
「まだ言う?」
「なんか、昔の朔夜ってこんな感じだったのかな~って」
「……どうなんだろうな」
すると朧が、少しだけ不思議そうな顔をした。
「昔の……?」
「あ~まぁちょっと分かりにくいけど、かぐやが知ってるのはもっと若い頃の俺だから」
「……なるほど」
朧はじっと俺を見る。
まるで観察するみたいに。
「確かに、現在のあなたは記録映像より柔らかいですね」
「記録映像残ってんの!?」
「指導者としても、革命家としても大人気でしたので」
「消してくれ」
「月民の教科書にも載っています」
「終わった……」
かぐやが隣で爆笑していた。
「やばっw朔夜が教科書デビューしてる!!」
「笑い事じゃねぇ……!」
朧はふと、小さく笑った。
その笑い方まで、少しだけ昔の自分に似ていて。
なんとも言えない気持ちになる。
「……ずっと、お会いしたかったんです」
「…………」
「私を作った方々は、最後まであなたの事を恐れていました」
「でも同時に、憧れてもいたんだと思います」
「だから、私はあなたに似せて作られた」
朧はそう言って、少しだけ照れくさそうに笑った。
でもその目は、ずっと俺を見ていた。
まるで昔から知っていた人を見るみたいに。
「…………」
なんだこれ。
居心地が悪い。
いや、違う。
多分これは、むず痒いって感じ。
「……そんな見るな」
「すみません」
「いや謝るなって……」
朧は素直に視線を逸らした。
けど数秒後、またちらっとこっちを見る。
「…………」
「…………」
「……どうした」
「いえ」
「絶対なんかあるだろ」
「その……」
朧は少し迷うように口を閉じて。
それから、小さく息を吐いた。
「本当に、いるんだなって」
「…………は?」
「資料も映像も、何度も見ました」
「月の全てを変えかけ、壊しかけ、そして全ての基盤を作った人」
変えかけたっていうのは、多分俺が地球に来る前の事。
月の皆に感情を与えかけた時だろうな。
で、壊しかけたは、つい最近のかぐやを連れもどした時。
んで、全ての基盤っつーのは………。
「朔夜ってそんなすごい事したの?」
「…………」
「私がご説明いたしましょう」
「朔夜様は、かぐや様をお救いになられた後、先代に情報をお送りになられたのです」
「じょうほう?」
「まずは統治について」
「地球に過去、存在していた統率者の性格、行動、そしてどう失敗したのか」
「もしかして全部読んだのか?」
「非常に興味深い文書の数々。感謝は尽きません。そしてもう一つ。最も発展に貢献した功績」
「人格形成の根源的理念及び論理的記憶装置の維持方法、身体的権能の再現」
「…………はい?」
かぐやが首をコテンと傾げる。
「……つまる所、今のかぐやとヤチヨの身体の作り方」
「えぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「うっさい」
「お、お、お、教えちゃったのぉぉ!?」
「別にいいだろ」
あれを作ったのは俺と彩葉だし。彩葉は気にするようなやつじゃないし。
朧はそこで少しだけ笑う。
「凄すぎて、実在してる感じがしなかったんです」
「なんだそれ」
「朔夜様は、もう少し怖い人かと思ってました」
「怖かったよ~?昔の朔夜」
「かぐや様、さっさと仕事に戻ってください〜。って!」
かぐやが俺の真似しながら、ひょこっと口を挟む。
「めちゃくちゃ目つき悪かったし!」
「うそん」
自覚ないんだけど。
「今は優しいよ?」
「…………」
朧が少しだけ目を見開いた。
その反応を見て、かぐやは楽しそうに笑う。
「でもね~、昔から優しいとこは優しかったよ?」
「かぐや」
「事実だもん!」
朧はしばらく黙ったあと。
どこか安心したみたいに、小さく息を漏らした。
「……よかった」
「なにが」
「記録の人のままだったら、少し怖かったので」
「失礼だな……」
「ですが」
朧は、まっすぐ俺を見る。
その目は、妙に真剣だった。
「私は、貴方に憧れていました」
「…………はい?」
今度は俺が固まる番だった。
ラグナが後ろで「おぉ~~!!!」とか言ってる。うるさい。
「いや、憧れって……」
「月では有名なんです」
「地球でのあなたの行動も、先代は認知していたので」
朧は少しだけ早口になった。ほんの少し頬を赤くしながら。
「誰にも従わず」
「間違ってると思ったものを壊して」
「それでも最後まで、たった一人を見捨てなかった」
「そんな人だったって」
「…………」
「だから私は」
そこで朧は、一瞬だけ言葉を止める。
少し照れたみたいに目を逸らして。
「……ずっと、会ってみたかったんです」
俺はどこか照れくさくなって、頭を掻いた。
「……買い被りすぎだ」
「いいえ」
「俺は別に、そんな立派な理由で動いたわけじゃない」
「かぐやを助けたかっただけだ」
「それだけだよ」
「ですが」
朧は、少しだけ微笑む。
「そのそれだけを出来る人が、いなかったんです」
「…………」
なんか。
ほんと調子狂う。
昔の俺なら、こういうの全部鼻で笑って終わってた。
でも今は真正面からそんな目をされると、困ってしまう。
隣を見る。
かぐやは、なんかめちゃくちゃ嬉しそうだった。
「えへへ~」
「なんだよ」
「朔夜、憧れられてるね!」
「やめろ恥ずい」
「しかも女の子朔夜に!」
「その呼び方やめろって言ってんだろ……」
すると朧が、少しだけ首を傾げた。
「……女の子朔夜?」
「違うから気にすんな」
「え、でもすごい似てるよ?」
「かぐや」
「特に目つき!」
「かぐや」
「あと不器用なとこ!」
「かぐや」
「でも朧ちゃんの方が素直かも!」
「それは否定出来ませんな!!」
「お前も乗るなラグナ」
部屋に笑い声が広がる。
その中で朧だけは、少しだけ嬉しそうに笑っていた。
IFバットエンド見たいっすか?
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黙れ、純愛しか認めんぞ
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来い!来てみろ!かかってこい!!