彩葉に男の幼馴染がいたっていいじゃない   作:ザワザワする人

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皆の感想に、感謝感激雨アラモ~ド~。
やっぱヤチヨが言わないときもいな。自分で打ってて引いた。
ちなみに感想はいつでもお待ちしております。
四六時中。いつでも。感想は全ての原動力なのです。
いやマジで面白かったですとかだけでも。
作品の中身に触れてくれでもしたら、嬉しすぎて死にます。



さいっこうのパンケーキ!

「ねー、ねー」

 

赤ちゃんが動いたのを感じ取って俺は目を覚ました。

 

「おなかすいた」

 

「りょうかいぃ。ちょっと待っててね~」

 

いつの間にか寝落ちしてしまったようだ。だが、外はまだ暗い。

これは明日、いや多分もう今日の体調は最悪で間違いない。

彩葉は………。

 

「すぅ~………」

 

よく寝れてるようだ。よかったよかった。

 

「ミルクー」

 

「ん~。ちょっと待ってな~」

 

もはやこの三日で俺の洞察力はカンストレベルまで上がっている。

彩葉に名前を呼ばれるだけでなく、赤ちゃんのぐずり声ですら要求を判断できるように………。

 

 

 

 

「っておぉぉい!!」

 

「うおぉっ!」

 

大声をあげて振り向くと、目の前の謎の少女も悲鳴を上げて飛びのいた。

 

「ビビったぁ………」

 

ビビったのはこっちだっつうの。

俺は夢か、夢を見てるのか。

だが眼を何度も擦っても、少女の姿は消えない。今はスマコンだって付けてない。

 

(現実………いやな訳………つっても既に電柱から赤ちゃん拾ってるしな………)

 

「あ~えと………あの赤ちゃんで合ってる?」

 

「?そだよ~」

 

おいおいまじかよ。しれっと言いよったぞ。

すると、その十歳程に見える少女は俺の頭の上に浮かんでいたであろう?を感じ取ったのか。

 

「まぁ、今時は何もかものスピードが早いんですわ」

 

なんだニュースのコメンテーターみたいな事を言いやがって。

そもそもなんで喋れる。

さっきまで俺の腕の中で可愛げに寝てただろが。

 

(まぁ疑問はあるけれども、考えても仕方ねぇか………)

 

元々、電柱から拾った子だ。急成長して、言葉喋れるようになってもまぁ………おかしくはないだろ。

 

「ん~………朔夜?まだ夜じゃん」

 

「うん。彩葉、一回顔洗ってこい。多分話はそれからだ」

 

「う~ん?まぁ朔夜がそう言うなら………」

 

そう寝ぼけ声で彩葉は洗面台に向かう。

扉が閉じられた後に、シャバシャバと水の音がする。

そんでもって、また扉が開けられる。

 

「おなかすいた~~」

 

「ん?」

 

「はい。という訳で、こちら昨日の赤ちゃん」

 

「は?」

 

「まぁ落ち着けって。俺も落ち着いてる訳じゃないけど」

 

俺の静止も空しく。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?????」

 

━━━ドンドンドンッ!!!

 

彩葉の響いた叫び声が壁ドン三回を招きましたとさ。

 

「彩葉!しーっ!」

 

「ご、ごめん」

 

「ねぇねぇ~おなかすいた~」

 

こいつは一体どれだけお腹がすいてるんだ。さっきからこれしか言ってないぞ。

 

(ってそういや俺もか)

 

そう言えば夜食を取っていなかったのを思いだした。

今にも腹の虫が泣き出しそうだ。

それは多分彩葉も同じなようで。

 

ぐ~。

 

少女からではなく彩葉から。

空腹を唯一明確に他者へと伝える音が出ましたとさ。

 

 

「ほ、ほんとにいいの?」

 

「おう。気にすんな。ほら君もちゃんと食べるんだぞ?」

 

その後、とりあえず少女を彩葉に託し俺は買い出しへ。

目の前の少女は、10歳前後だった事を考えるに好物はだいたい察しがついた。

でも唐揚げみたいな揚げ物はうちのアパートじゃ厳しい。

そういう訳で完成したのが、こちらの。

 

「なにこれ?」

 

「まさしく、ふわとろオムライスと名付けるべき一品だ」

 

「ふわとろ?」

 

「食べたら分かる。食べ方は分かる………って分かるわけないか。ほら、こっちおいで」

 

小さなテーブルに三つ置かれた食器は、それだけでほとんどの場所を取る。

少女が少し移動するだけで、すぐに俺の隣に食器も少女も来た。

 

「ほい、口開けて」

 

めっちゃ口開くな。いや悪口じゃないけど。

 

「「あ~~~~ん」」

 

すると少女の瞳には星が宿って。

 

「━━━━━っ!!!すごい!何これ!ふわとろ!!」

 

「ふっふっふ。また一人俺の料理で堕としてしまった………」

 

「うわっほんとだ。これすごっ」

 

少女は俺の一回のあ~んで大体コツを掴んだようで、その後バクバク食い始めた。

彩葉も、喜んでそうで良かった。

 

「高いものとか使ってないの?これ」

 

「んにゃ全く。全部、そこの業スー」

 

「やっぱ厨房を一人で回せる男は違いますな~」

 

よせやい。照れるっての。

さてと、俺も食べますかね~………。

やけに視線を感じる………。

 

「………」

 

「あ~~」

 

「あぁ!!!!」

 

そんな欲しいか。涎がすごい事になってるぞ。

赤ちゃんの時より出てるんじゃないかそれ。

 

「ほい」

 

「くれるの!?」

 

「お腹空いてるんだろ?ならたくさん食べな。俺は一応自分の家にもご飯あるし。あ……彩葉ごめんな。勝手にキッチン使っちゃって」

 

「いや全然いいよ。久々においしいもの食べれたし。そっちこそ大丈夫なの?業スーって言ってもお金かかってるんじゃないの?」

 

「ん~まぁそんな。彩葉が気にする所じゃないよ」

 

「………そっか」

 

彩葉の顔が、どこか陰った気がした。

でも俺が声をかける前に彩葉が声を出した。

 

「それで?あんたはどっから来たの?」

 

元俺の分のオムライスを頬張り尽くしている少女は、ぱたりと急に手を止めて。

 

「んっ」

 

夜の窓の中央に位置していたまん丸の月を指さした。

 

(まじでか)

 

大体こういうのはどこから来たかすら分からないパターンでは?

てかじゃあこの子は人間ではないのでは。

 

「で?宇宙人は何しに来たの。侵略?戦争?」

 

幼馴染の発想が物騒すぎて怖いよ~。

 

「うーん。なんかあんまりよく覚えてないんだけど~。毎日がちょ~~~~おつまんなくて~。楽しい所に逃げたい!!ってなった気がする」

 

こっちもこっちで謎まみれだなおい。あと、来ようと思って来れるんかい。

でも大体こういうのは自分では帰れないパターンですな。

 

「自分で帰れないの?」

 

「え~~~帰りたくな~~い~~!!!そもそも帰る方法覚えてない~~~~」

 

ほら見たことか。ていうかこの子ってもろ

 

「「竹取物語って知ってる?」」

 

「?」

 

ちょこんと首をかしげる少女。

 

「そうそう。こう竹からかぐや姫ってのが生まれてきてな。爺が育てて、結婚迫られたり、ごちゃごちゃ色んな事する話」

 

さらに傾げる角度が急になっただけかい。

俺の説明そんな雑か?……まぁ雑だな。

 

「ん~?つまり彩葉と朔夜はその爺って事?」

 

おいおい。あいつ死んだわ。

俺はまだしも彩葉が黙って………。

 

「痛い痛い痛い痛い!!なんで俺の足つねるの!!」

 

「………むかついたから」

 

「じゃあこの子だろ!!」

 

ていうかしれっと今、この子俺たちの名前を……まぁ赤ちゃんの時に散々呼びあったしその時か。

 

「で、お話はどうなるの!」

 

「ん?」

 

「じじいが拾って育てて、けっこん?迫られちゃってごちゃごちゃやって、その後は?」

 

まぁまぁ分かってはいるのか。因果関係とか結婚って単語が分かんなかっただけっぽいな。

 

「その後、誰とも結婚せずに月からお迎えが来る。そんで爺たちが戦うけど、ボロ負けして、かぐや姫は不思議な羽衣を着て、今までの事をさっぱり忘れる。で、月に帰る」

 

「おー」

 

「………」

 

「ん、続きは?」

 

「ないよ、これで話はめでたしめでたし」

 

「え?月に帰って終わり?なにそれ、なにがめでたいの?超バットエンド!!かぐや姫絶対不幸じゃん!!しかも何かいい話~的な感じで終わってるのが余計に許せないよ!!」

 

まぁ確かに。子供に読み聞かせるにしちゃバットエンドが過ぎるよな。

姫にとっちゃ本意だったのか、否か。

もし姫がこの子みたいな感じだったら不幸だろうし。

 

「話はこれで終わりなの。これはそういうお話」

 

付き合いきれなくなったのか、全員分の皿を乗せて流しへと持ってった彩葉。

多分、話を終わらせようとしたんだろうけど。

 

「バットエンドやだぁぁ!」

 

駄々をこねるのはまだ赤ちゃんの頃と変わらないらしい。

 

「ハッピーなのがいいぃぃぃ!!!」

 

おもろいなこの子。

 

「バットエンドや~~~だ~~♪ハッピーがいい~~♪」

 

ついに歌いだしおった。

すると、食器を洗っていた彩葉が我慢できなくなったのか振り返る。

 

「どうしようもないじゃん。暴れたって、歌ったって、決まってる事が変わるわけじゃないし」

 

「受け入れて、覚悟するしかないでしょ」

 

(相変わらず……)

 

(どうして、自分にそんな手厳しいかね~)

 

彩葉の事だ。この少女に向けて言った言葉だろうけど、それは彩葉の心にも影を落としてる。

彩葉は自分の発言、存在、行動に全部気を使ってる。

それは完璧である事の対称に、自分の首を絞め続けるだけだ。

 

少女の方も少しは心に響いたのか。

急に動きを止めて、だまりこくった。

 

「まぁまぁ、彩葉も言い過ぎ。この子ももう分かったはず「決めた!!!」………ん?」

 

俺のサポートをフル無視してきよった。

少女はまたも急に立ち上がり、びしっとポーズを決めてから。

 

自分でハッピーエンドにする!

 

そんでハッピーエンドまで彩葉も朔夜も連れてく、一緒に!!

 

勝手に巻き込まれてら~。

 

「ハッピーエンドいらない。普通のエンドで十分です」

 

彩葉の眼の色がまた変わった。

ああいう時の彩葉は、彩葉のお母さんの言葉に縛られてる時だ。

 

「うそうそうそ!!!なわけないでしょ!」

 

彩葉にとってかかろうとする少女を止めて。

 

「まぁまぁ一旦結論抜きにして」

 

「なに!」

 

なんだ、そのキラキラした目は。俺は餌付け係じゃないぞ。

 

「まず、寝よう!」

 

外では猫がみゃあみゃあ鳴いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日。

 

朝に一応彩葉の家を覗いてみると、案の定と言うべきか。

 

「えーやだやだやだ!!」

 

「やだじゃないの!」

 

言い合いになってる二人がいた。

 

「よいよい、どうしたよ」

 

「あ、朔夜だぁ!彩葉が意地悪するのぉ!」

 

お、面白そう。のってみるか。

 

「彩葉………こんな可愛い子を………」

 

「悪ノリしない!私たちはどっちも学校行かなきゃいけないの!」

 

「え~~~~朔夜も~~~?」

 

「まぁ学校はな~行かなきゃって面が強いかな」

 

別に彩葉が部屋にいるって言うなら全然学校は行かないけど。

 

「ほら、そこにご飯も置いてあるでしょ!」

 

彩葉の手料理か。そう言えば見たことないけど………。

 

「あれまずい!!」

 

おう………。なんだあれは。究極の貧乏飯みたいな。

粉と水混ぜて焼いただけじゃないか?しかもあれ多分水7割くらいだな。

………まぁちょっと学校に遅れるのはしょうがないか。ちょっとくらいはいいだろう。

 

「彩葉、先行っといていいよ」

 

「さ、朔夜?何する気?」

 

「何するの~!!」

 

目をキラキラさせながらこちらを覗き込む少女と、不安そうな面持ちの彩葉。

正反対な二人だこと。

 

「ちょっとばかし見してあげよう。幼少の頃より鍛えられし、俺の自炊スキルを!」

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

少女の目が一瞬で輝いた。

もう完全にショーを見る観客の顔だ。

 

「ちょ、朔夜ほんとに学校――」

 

「五分。五分で終わるから」

 

「五分!?」

 

「任せろって」

 

そう言って、俺はいったんダッシュで俺の部屋まで戻って材料をかき集める。

再び彩葉の家に戻ってきた俺は、彩葉の家のキッチンに立つ。

彩葉の作った例の謎の物体の粉と水を混ぜて焼いた何か――を横にどけて、棚から材料を取り出す。

 

「まずは卵」

 

「おぉ~!」

 

「牛乳」

 

「おぉぉ~!」

 

「小麦粉」

 

「おぉぉぉ~!」

 

「実況やめい」

 

「はーい!」

 

少女は素直に口を押さえるが、目だけはキラキラしている。

ボウルに材料を入れて、泡立て器でぐるぐる混ぜる。

シャカシャカシャカ。

 

「おぉ……」

 

「見ろ、この滑らかな生地を」

 

「なんか職人っぽい……」

 

「まぁ厨房回せる男だからな!」

 

軽くフライパンを火にかける。

バターを落とすと――

 

ジュッ……

 

ふわっと甘い香りが広がった。

 

「!!!!」

 

少女の鼻がぴくぴく動く。

 

「なにこれいい匂い!!!!」

 

「これがバターな」

 

「バター!!!!」

 

テンションが高すぎるだろ。

フライパンに生地を流す。

 

とろ~り。

 

丸く広がった生地が、じわじわと焼けていく。

 

ぷつ……ぷつ……

 

表面に小さな気泡が浮かび始めた。

 

「来たな」

 

「なにが!?」

 

「パンケーキのサインだ」

 

フライパンを軽く揺らしてから

 

「よっ」

 

くるっ。

 

綺麗にひっくり返る。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

少女が拍手し始めた。

 

「すごい!!すごい!!魔法!!」

 

「魔法じゃない。これが料理だ」

 

焼き上がったパンケーキを皿に乗せる。

 

さらにもう一枚。

 

もう一枚。

 

三枚重ね。

 

その上にバターをちょこん。

そして最後にもっかいとろ~り。

メープルシロップをかけると、甘い香りが一気に広がる。

少女は完全に固まっていた。

 

「……」

 

「……」

 

「……なにこれ」

 

「パンケーキだ」

 

「宝物じゃん!!!!」

 

少女は机をひっくり返すような勢いでテーブルに身を乗り出した。

彩葉も、思わず目を丸くしている。

 

「……すご」

 

「ほら、食べてみ」

 

フォークを少女に手渡す。

少女は震える手でパンケーキを切ってぱくっと大きな一口を口に入れた。

 

「…………」

 

次の瞬間。

 

「!!!!!!!!」

 

「なにこれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

「ふわふわ!!!!!!」

 

「甘い!!!!!!」

 

「やわらかい!!!!!!」

 

「幸せ!!!!!!」

 

ものすごい勢いで食べ始めた。

 

「落ち着け落ち着け」

 

「無理!!!!」

 

彩葉も恐る恐る一口食べる。

 

「……」

 

「どう?」

 

「……」

 

「彩葉?」

 

「……悔しい」

 

「なんでだよ」

 

「めっちゃ美味しい……」

 

気付いたら少女はもう全部食べ終わっていた。

 

「おかわり!!!!」

 

「早すぎるだろ」

 

「ハッピーエンドの味がする!!!!」

 

「パンケーキにそんな概念ある?」

 

少女は口いっぱいに元気というなの料理を頬張りながら言う。

 

「これなら学校行ってもいい!!!!」

 

「急に聞き分け良くなったな」

 

「でも!」

 

フォークをびしっとこちらに向ける。

 

「帰ってきたらまた作って!!」

 

「毎日は無理だ」

 

「えーーー!!」

 

彩葉が小さく笑った。

 

「……でも」

 

「?」

 

「たまにならいいんじゃない?」

 

本当は、彩葉も食べたいんだろうな。

俺は肩をすくめた。

 

「まぁ、そのくらいなら」

 

少女はガッツポーズをして、満面の笑みで言った。

 

「やったぁぁぁ!!」

 

「やっぱり、ハッピーエンドじゃなくっちゃ!!」

 

 

 




「そう言えばさ」

「ん?」

「なんでパンケーキなんて作れたの?cafeのメニューにもないのに」

「ん~………(まぁ彩葉ならいいか)」
「俺の両親がな、よく作ってくれたんだよ。一緒に作ったりもしたっけかな」

「へ~珍しいね」

「まぁ俺もなんでかはよく知らない。でも遺書の端っこにはこう書いてた」
「『最高に美味しいパンケーキを作れるようになってね』ってな」

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