「かぐやっほ~!こんばんわ~!!かぐやだよ〜!」
『こんばんわー!』
『四人だ!!』
『フルメン珍し』
画面の向こうでコメントが一気に流れていく
今日はいつもの配信部屋に全員集まって雑談配信。
特に企画がある訳でもない。普通に喋るだけ。
「いや~、こうして揃うの久々じゃない?」
ヤチヨがソファへ寝転がりながら言う。
「最近、彩葉と朔夜忙しかったもんねぇ」
かぐやも頷きながらポテチを開ける。
「研究が立て込んでたからなぁ……」
「今度は何の分野で革命すんの?」
「「配信で言えるか」」
「革命は否定しないんだ~?」
「いやまぁ……結構、頑張ったし?」
「今回のはね~………ほんとに疲れた」
「思いついたの彩葉だけどな」
「構想は朔夜でしょ?」
「まぁ大体な」
『なんて恐ろしい子達………』
『どうせまた世界が変わるだけか』
『感覚がおかしくなってきたな………』
「朔夜…………」
「ん?どしたヤチヨ」
「何時間寝たの?」
やめてくださいよ、ヤチヨさん。そんな微笑みながら問い詰めてくるのは。
「………四時間くらい?」
「三時間だね」
「彩葉ぁ!」
「嘘ついたのは朔夜だし~?」
「朔夜~?」
「はいもうちゃんと寝ます!でもヤッチョさん!彩葉も別に四時間しか寝てないです!!」
「……彩葉ぁ~?」
「………ちゃんと寝ます」
「まったく………二人ともちゃんと寝てね~?」
「「はい………」」
はっきり言って、彩葉の方がやばいんだけどな。
ほんとに倒れる寸前まで研究するから。実際高校の頃、倒れたし。
俺が言わなきゃ本当にずっと起きてるし。
俺?彩葉に言われなきゃずっと起きてました………。てへっ。
「朔夜~」
「ん?」
「ジュース取って~」
かぐやがテーブルの向こうから手を伸ばしてくる。
「はいよ」
俺はそのまま手渡した。
「ありがと!」
嬉しそうに笑う。
ほんとに、かぐやは分かりやすい。
かぐやは昔から感情が真っ直ぐだ。
嬉しい時は全力で笑うし、悲しい時はすぐ顔に出る。
だから見てると安心する。
今、ちゃんと笑えてるんだなって分かるから。
「朔夜、氷~」
「ヤチヨもかい」
今度はヤチヨがグラスを掲げていた。
「なくなっちゃった!」
「飲むの早いんだよ」
そう言いながら立ち上がって、冷凍庫から氷を取る。
ちょっと昔に、かぐやが配信の時によく飲み物を飲むので、配信部屋にも冷蔵庫を置いた。
中はほとんど飲み物だし、冷凍庫には氷だけ。なのでサイズもコンパクトなのである。
「ほい」
「さっすが~!」
ヤチヨは、満足そうに笑った。
ヤチヨはこの八千年で、ほんとに色々変わった。
作り笑顔だって覚えたし。
色んな事を考えるようになった。
行き当たりばったりのかぐやとは全然違う。
色んなものを、ヤチヨは見てきた。
だから、そうなったんだろう。
それは成長であって、進化だと俺は思う。
「朔夜、コーヒー淹れて」
「ブラック?」
「甘め」
「珍しいな」
「頭使ったから」
「お疲れ」
俺は立ち上がってコーヒーを淹れる。
砂糖一つ。
ミルクは、ほんの少し。
渡すと、彩葉は一口飲んで。
「……ちょうどいい」
そう言って、小さく笑った。
その笑顔見ると。
改めてちゃんと休ませないとな、って思う。
彩葉は昔より笑うようになった。
前はもっと自分を閉じ込めてた気がする。
でも今は、こうして普通に笑う。
くだらない事で笑って。
配信をしながら笑って。
俺達と同じ時間を過ごしてる。
それが、なんか嬉しい。
『さっくーなんだかんだやっぱり全員に甘い』
『養ってくれ』
『結婚して』
「ダメ」
ヤチヨが、いつもより少し低い声で即答した。
「……ん?」
すると今度は、かぐやがむっと頬を膨らませた。
「ダメだよ~。朔夜は私の~。すぐ無理するもん。知らない人じゃ絶対ちゃんと見れないし」
「見るってなんだよ」
「朔夜のお世話!」
「言い方ぁ……」
彩葉はコーヒーを置いて、ちらりと俺を見る。
「そもそも、朔夜は優しいから押しに弱いし」
「……そんな事ないし」
「ある」
「頼まれたら断れないし、自分の事は後回しにするし」
「いやまぁ……多少は」
「多少じゃない」
彩葉は小さく息を吐く。
「だから、ちゃんと朔夜の事を優先する人じゃないとダメ」
『重い……だがこれで良い』
『愛がデカい』
「え、なにこれ」
なんか急に囲まれてる感あるんだが。
ヤチヨが俺の肩へ軽く寄りかかったまま、ふっと笑った。
「だって朔夜って、自分が大事にされるの下手じゃん?」
「…………」
「誰かの事はいっぱい大事にするのに、自分は雑」
「それは……」
………否定しづらいかも。
「だからヤなの」
ヤチヨはそう言って、俺の服を軽く掴んだ。
「適当な人のとこ行かれるの」
その言い方が、思ったより真っ直ぐで。
俺は少し言葉に詰まる。
かぐやも、うんうん頷いていた。
「朔夜、放っとくとご飯食べないし寝ないし!」
「そこまでじゃ」
「研究始めると二日くらい帰ってこない!!」
「それは彩葉もだし」
「私は朔夜が止めてくれるもん」
「ぐっ……」
『反論全部返されてて草』
『完全包囲網』
彩葉が静かにこちらを見る。
「……朔夜は」
「ん?」
「もっと、大事にされていい人だから」
その言葉に一瞬、胸の奥が止まったみたいな感覚がした。
彩葉は普段、こういう事をあんまり言わない。
だから余計に真っ直ぐ刺さった。
「だから、知らない誰かに簡単に渡したくない」
「………あ、ありがと?」
「どういたしまして」
彩葉は、いつもの落ち着いた顔でコーヒーを飲む。
でも耳がほんの少し赤かった。
……いや、照れてるんかい。
『いろP………』
『これはガチ』
『もうプロポーズなんよ』
「ねぇ朔夜」
かぐやが、俺の腕へぺたっとくっついてくる。
「な、なんだよ」
「朔夜、ちゃんと自分が愛されてる自覚持った方がいいよ?」
「………そっか」
「私達、結構本気で朔夜の事好きなんだからね?」
「……はいはい」
「はいはいじゃなーい!」
かぐやがむーっと頬を膨らませる。
その横で、ヤチヨが小さく笑った。
「でもほんとだよ?」
「…………」
「朔夜って、自分が誰かに大事にされる想像あんまりしてないよね」
「そんな事……」
言いかけて、止まる。
……なくは、ないかもしれない。
昔からずっと、誰かを守る側だったかもしれない。
気付けば、そういう立ち位置ばっかりで。
だから、こうやって真っ直ぐ向けられるのに慣れてない。
「朔夜」
ヤチヨが、俺の肩へこてんと頭を乗せた。
「私達ね」
「……うん」
「朔夜が思ってるより、ずっと朔夜の事好きだよ」
心臓に悪い………。
『うわぁぁぁぁぁぁ』
『愛が重い!!!』
『やめてぇぇぇ浄化されるぅぅぅ!!!』
「ほんとにさぁ……」
笑われる前に隠そうとしても、ヤチヨが楽しそうに覗き込んでくる。
「あ、照れてる」
「うるさい」
「耳赤~い」
「実況すんな」
かぐやまで、面白そうに顔を覗き込んできた。
「ほんとだ!赤い!」
「近い近い」
「かわい~」
「やめろぉ……」
彩葉も、小さく笑っていた。
こうやって騒がしく笑ってる時間が。
俺は、かなり好きなんだと思う。
かぐやは、昔よりもっと自由に笑うようになった。
ヤチヨは、誰かへ甘える事を覚えた。
彩葉は、自分の感情を口にするようになった。
その全部を、俺は知ってる。
長い時間をかけて、少しずつ変わってきたのを見てきた。
だからこそ今こうして向けられる言葉が、軽いものじゃないって分かる。
「朔夜?」
ヤチヨがこっちを覗き込む。
「ほんと今日どうしたの?」
「なんでもない」
「優しい顔してるよ~?」
「そう?」
かぐやまで笑う。
「うん!なんか今、すっごい幸せそう!」
「……なら気のせいじゃないかもな」
自然と、そんな言葉が零れた。
三人が少しだけ目を丸くする。
でもすぐに三人ともふわっと、嬉しそうに笑った。
その顔を見て。
あぁ、やっぱ好きだなって。
今度は、はっきり思った。
次話。必見です。明日出すので。是非とも。
IFバットエンド見たいっすか?
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黙れ、純愛しか認めんぞ
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来い!来てみろ!かかってこい!!