感謝、感激で、あります。
「皆~さくよろ~~」
あの後、普通に学校に行って、普通に帰ってきた。
まぁ帰った後も、あの少女と色々あって彩葉は怒ってたんだけど。
あぁそうだった。あの子の名前を決めたんだった。
(かぐや)
まぁそんままと言えば、そんまま。
でも可愛い名前って思わない?俺が考えたんだぜい。
って忘れてた忘れてた。ふじゅ~を彩葉に送ってあげないと。
さっき言った色々あったっていうのにはかぐやの散財が含まれてる。
スマコンと、料理の材料と………。
しょうがないだろう。かぐやは知識が色々足りてない所があるし。
俺が配信者っていうのは、彩葉には言ってないけれど親戚からめちゃ金貰ってるとは言ってる。
まぁ疑っちゃいないだろう。
『待ってました』
『おつさく~』
『¥1000 髪切り代』
『それはお前の1000円カット分や。さっくーの美容院代がそんなんで足りるか』
「はいはい、喧嘩しない。ないスパありがと~」
こういう風に、配信者っていうのはスパチャがもらえる。
別に散財の癖なんてあったわけじゃないし。お金は溜まりに溜まってる。
「てな訳でさっそく本題いこう!今日は、最高の場所からヤチヨのライブをお届するぜ!」
『うぉぉぉぉ!!!』
『どういう事だってばよ!』
『あちぃぃぃぃぃぃ!!!』
「初めての人もいるみたいだから説明しよう!」
俺は空中に、俺の愛武器を出現させる。
相変わらずいかついっちゃありゃしないんだが。
「名付けて、
まぁ待て。落ち着け。俺が付けたんじゃないぞ。
なんかリスナーの皆に募集しようって話になったんだ。
それでね。俺のリスナーがね。抽選で決めようって言ってね。
俺もそうしたんだよ。そんなやばい名前付かないって思ってたし。
そのざまがこれだよ。毎回あの鬼共に笑われるし、最悪だよ。
「で、こいつが空を自由に飛べます」
「これならヤチヨのめっちゃ近くまで飛んで行けるって事」
『なるへそ~』
『でもこれって大丈夫なの?無断転載的な感じじゃない?』
『そこは安心安全。このチャンネルはヤチヨの公認なのです』
『まじで?凄すぎんか?』
まぁはっきり言っちゃうと、ヤチヨと
「ってな訳でさっそく行こうか!!皆、画面酔いには気を付けて!」
愛銃に飛び乗ってから、一気に加速する。
『うぉぉぉぉぉぉぉ!!何じゃこりゃぁぁぁ!!』
『目を瞑れぇぇぇぇ!!』
『上位プロ並みの実力があって、そん中でも極上のエイムを持つさっくーの視線に酔わないわけないだろが~!!!!』
□
「うん。ここら辺か」
『終わった………のか』
『すまん。一旦抜ける』
『もはや慣れてきたな。この光景にも』
『これがさっくーの疑似初心者狩りよ、恐ろし』
彩葉もきっと見に来てるだろう。
見に来てるのは俺の配信じゃなくて、ヤチヨのライブなんだけどね~。
って、かぐやを一人で置いてく訳ないしかぐやも来てるんだろうな。
どれどれ~。
下を眺めれば、たっくさんの明るい青い光が。
(うん。彩葉はあれだな)
って事は隣がかぐやか。
金髪ギャルかぐや姫って所かな?似合ってら。
『どこ見てるの、これ?』
『俺らに分かる訳ないだろ』
『見ろ!!人がごみのようだ!!って事?』
(お、始まる始まる)
「キタキタキタ!!これがないとツクヨミの夜は始まらない。本日もヤチヨミニライブの開演だぁぁぁっっ!!」
忠犬オタ公の興奮と熱狂が、ライブ会場に響き渡る。
詰めかけた観客が歓声でもってそれに答える。
会場のボルテージが渦となって高まる中、巨大モニターにカウントダウンが表示された。
「5………4………3………」
会場の声と、俺の配信から聞こえる皆の声が重なって響く。
そしてツクヨミ中の人間と同時に
「0!!!」
を叫ぶと、当然彼女が出てくる。
「ヤオヨロー!神々のみんな~!!今日も最高だった~?」
現れた月見ヤチヨが、一言で会場を爆発させた。
「よ~し!今宵も皆を誘っちゃうよ☆Let`s go on a trip!!」
いつものように、爆発的な熱狂に会場が呑まれていく。
ヤチヨが歌う。それに合わせて、俺も歌を口ずさむ。
『星降る海』━━数えきれない程聞いて、数えきれない程に励まされた歌だ。
「「幾千の時を巡って今、僕ら出会えたの━━━ほら、見失わないように━━━手を離さないで」」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
『さっくーとヤチヨの生歌だぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『これよこれよ!!これこそが満足感よ!!』
ヤチヨのライブの演出も、照明も、それでもちろん歌も。
全部はこのライブの参加者を、盛り上げる為のもの。
そんでまぁ、それで皆テンションは最高潮。夜な事もあって、深夜テンションの人もちょいちょい。
「ヤチヨぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
武器には俺の銃と同じように、それ自体に飛行が可能になるものがある。
それを使って、まじもんの熱狂的なファンはヤチヨに会いに行こうとする。
それを止めんのが
「はいストップね~」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
「………ありがとね~朔夜♪」
俺とヤチヨで交わした契約だ。
ちなみに、ヤチヨの分裂体は別に守らなくていいらしい。
あくまで歌を歌ってるのが本体らしく、あのヤチヨだけは守って欲しいのだと。
さぁ、『星降る海』が終わるまで後三分ちょい。
下からはぞくぞくと、彩葉よりもヤチヨに対する愛が大きい精鋭が。
「「「「「ヤチヨぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
『いけさっくー!ぶっ飛ばせ~!』
『ヤチヨの曲を聴きながらのさっくーの白熱バトル………ここで死んでもいい……』
『初めての人はまじで酔いに気を付けて!!』
………何か今日多くない?
□
「彩葉!!彩葉!!飛んでる!!人がたくさん飛んでる!!」
「はぁ~………」
ヤチヨは今日も美しい………。
「彩葉ってば!!」
「な、なに!今私は五感でヤチヨを体感してんの!」
「人が飛んでる!!」
「え?何の話………ってあの人の事ね」
ヤチヨから20m程離れた場所で、縦横無尽に動く影とそれに何とか付いて行っている複数の影が見えた。
「あの人……さっくーっていう配信者は、ヤチヨの護衛してるの。噂によると、ヤチヨから直々にお願いされた?みたいなのを聞いたことある」
まったく羨ましい限りだ。
私だってヤチヨに「守って?」なんて言われたいぃぃ!!!
「うわ、彩葉の顔がお化けに」
「誰がお化けか。ってもうラスサビじゃん!!」
改めて、私は全ての集中力を聴覚へと集中させる。
「っていうか朔夜は~?」
かぐやが何か言ってるけど無視!
もうこれ以上は聞き逃す訳にはいかない!!
□
「叶うさ今━━━物語を巡ろう━━━」
歌が終わった瞬間に、観客の人達の興奮と感動は彼らの心に沈んでいく。
それらを体現するため、拍手と歓声で彼らはヤチヨに応えた。
「イェーイ、感謝感激雨アラモード!ヤチヨは果報者なのです~」
ここで俺も自らの視聴者に是非を聞いてみる。
「やっぱり、いいライブだ事。皆も楽しめた?」
『\10000 さいっっこう!!!』
『\20000 ヤチヨと時々目が合うの本当にやばい。心臓が止まらん』
『\50000 我が生涯に一片の悔いなし』
「うんうん。スパチャありがと。皆楽しめたようで、なによりなにより」
「あ、ここでお知らせがあるよ~!!」
すると突然ファンサをしていたヤチヨが、鳥居の上にバカでかいスクリーンを出現させた。
「ヤチヨカップっていうイベントを開催しま~~~~~す☆」
「FUSHI。詳細よろしくぅ~」
するとヤチヨの肩に乗っていたウミウシが、語りだす。
「はーい!参加資格があるのはツクヨミの全ライバー!!一か月の期間の分だけで最も多く新規ファンを獲得した人が優勝だよ」
「優勝者にはなんと、ヤチヨとのコラボライブの権利を贈呈!!」
「世界一盛り上がるコラボステージを一緒に作れるよ~!!」
(優勝ねぇ~………)
俺には関わりのない事だなぁ~とぼんやり思う。
ヤチヨは今まで誰かと配信を一緒にはした事あるけど、ライブはない筈。
そりゃあ激しい争奪戦に………。
バーーーン!!!!
とド派手な爆音が轟いて、後ろから車輪の音が響く。
橋の上を爆走するのは、牛車ならぬ虎が屋形を引く虎車。
「うげ」
それだけで俺は誰がやって来たのか分かるし、観客の中には分かっている人もいるようだ。
「黒鬼じゃん!!!!」
「帝様~!!!」
熱烈な歓声に応えるかのように、屋形が割れる。
めんどいし説明はなし。ブラックオニキスで~す。
悲鳴にも似た歓声が、ライブ会場を別種の熱狂に包み込まれた。
「よう、子ウサギども。お前らの帝様が来たぜ!!」
(子ウサギて)
割れんばかりの歓声の中で虎車から降りたアキラは、ぱちんと指を鳴らす。
すると会場のモニターをジャックしたのか、あいつらの輝かしい経歴をまとめたPVが流れる。
onyX cup 優勝。
MADRABBITS cup 優勝。
crazyMOON cup 優勝。
ん?俺はどうなのかって?全部ちゃんと準優勝ですけど?何か?
いやあいつらはフルパだし。
俺達は野良で集まったパンピーだし。
(………ま、全部言い訳か)
あいつらとタイマンをやる事は前にもあった。
結局の所、あいつら全員に俺は負け越してるし。
優勝出来てない、勝てない、それは俺の実力が足りてないだけだ。
野良で募集かけて、せっかく集まってくれた味方のせいなんかじゃない。
俺だ。俺が悪いんだ。味方のせいなんかにすんな。
「俺たちに優勝してほしいよな?底なしの夢を見せてやるぜ!!」
俺がうだうだ考えてる間に、どうやら演出は終わりらしい。
歓声の上がり方はさっきのヤチヨ並み。
皆、あいつらが優勝するって思ってる事だろう。
「というわけで、俺たち優勝するから。ヤチヨちゃんコラボよろしくね」
多分、あいつら自身も。
「そういう運命なら、もちろんヤチヨは従うよ~?」
もしかすると主催者である、ヤチヨ自身も?
「すげー、ヤチヨと黒鬼の夢のコラボだ!」
「こりゃあ、伝説になるぞ!」
(これが………一位ですか………)
俺にはまったく縁の無い景色だこと。
「さてさてそろそろお開きに」
と、俺が配信を切ろうとした瞬間に。
「ヤぁぁぁぁぁぁぁチぃぃぃぃぃぃぃヨぉぉぉぉぉぉぉ!」
(おいおい………かぐや?)
声の主は、探さなくても分かった。
「かぐやがヤチヨカップ優勝する!!そんで絶対ライブコラボする!朔夜もいろh………むぐっ」
おいおい本名だされちゃったよ。
彩葉ももうちょっと早く止めてくれませんでしたかね~。
「いとかわゆし………」
ヤチヨも何故か楽しそうなんだけど。なんで。
「ほいでわ。ライブはいったんここでクローズ♪みんなとちょこっとお話させてね。さらば~い」
そう言えば、今回のライブは握手券付きだったけか。
ヤチヨは分身して、会場にぽつぽついる観客一人一人に向かって話しかけにいく。
話が出来て握手が出来るのは、限られた握手券に当選した人達だけ………の筈なんだが。
「朔夜~今日もありがとね~」
「うんまぁいつもこうだな」
ヤチヨは俺が護衛をした日はいつもこうやって近寄ってくる。
『ヤチヨが近い!!!近すぎる!!』
『さっくー握手券持ってたんかい』
『ずるい………俺一回も当たった事ないのに』
『さっくー毎回握手券当たってね?』
「ぽちっとな!」
「あ、ちょっとまだ終わりの挨拶が………」
どうやってるのかよく分らんが、ヤチヨは空中に出てきたディスプレイをちょちょいと操作して俺の配信を終了させた。
「む~せっかくヤチヨが来たっていうのに、視聴者ばっかり気にしてる朔夜にはこうだ!」
「いてっ」
ヤチヨの延ばされた腕の先。
そのしなやかな指でデコピンされる。
「今日は楽しめた?」
「はい。楽しかったです」
やっば。俺はある程度慣れてるはずなのに。なんか今日はすげぇ照れる。
だっせぇ。語尾どうなってんだよ。ですって何だですって。しかも敬語て。彩葉に影響されちゃったかな?
「にへへ~ヤチヨもおんなじ~」
(んっ………)
思わず笑顔にドキっとしたのは言わないでおこう。
うん。落ち着け俺。俺は彩葉の事が好きなんだろうが。
浮気なんてカスしかやらんぞ。
「………朔夜、あんまり無茶しちゃだめだよ?」
「む、無茶?」
「ずっと準優勝でも、二位でも、負け続けても、朔夜は朔夜だから」
どうやらさっき黒鬼が来た時らへんの、俺の自傷的な言葉は外に漏れてたらしい。
「あ、ありがと………」
「うん!朔夜はやっぱりそっちのお顔の方が似合うね~」
(っ~~~~………!!)
これ以上は俺が耐えられそうにない。
早々にログアウトさせてもらおう。
「じゃ、じゃあもう帰るから」
「うん!またね、朔夜!!」
………その笑顔は、やっぱりどうにも反則かもしれない。
朔夜の武器性能については戦う時にちゃんと明記します。
朔夜の服装?皆の心の中で想像したもの、それ自体が朔夜の服なのです………。
ぶっちゃけると服の名前が分からないのです。まじでこれは皆の想像って感じの方が良い気がします。
………まぁ感想でちろっと皆の想像の服の詳細を送ってくれたら?それで確定するかも?感想稼ぎなんて言わないで………