彩葉に男の幼馴染がいたっていいじゃない   作:ザワザワする人

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どっちもちょろい幼馴染

「さくやさくや!!ライバーの成りかた教えて~」

 

俺がログアウトした瞬間に、家のドアを叩く音が聞こえたと思ったらこれだよ。

彩葉は何をしてるんだか………多分ヤチヨの余韻に浸ってんだろな。

消去法で、かぐやの相手は俺がするしかないと。

 

「ほんとにライバーなりたいのか?」

 

扉を開けるといつぞやのパンケーキの時のように目を輝かせているかぐやが。

 

「うん!ヤチヨカップ優勝して!朔夜と彩葉とかぐやとヤチヨでライブする!!」

 

俺も入ってんのかい。やだよ。

そんな女子三人のライブに男が入る隙間なんかないぞ。

 

「………一位、取らないとなんだぞ」

 

相手は黒鬼だ。プロゲーマーでアイドルで歌手で。

そんなバケモン揃いのグループなんだ。全部全部、あいつらは一位なんだ。

それに勝つっていう覚悟はあるのか?って間接的に聞いたつもりなんだけど。

 

「もっちろん!()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

………こんな日本語を覚えたての少女の言葉に、心を揺さぶられてしまうくらい俺の心は弱っていたらしい。

 

「………ありがとな、かぐや」

 

「ん~朔夜のナデナデ~~。あ、じゃあさ。手伝ってくれる?」

 

「ん。俺に出来る事なら何でも」

 

「ありがと朔夜ぁ!!彩葉は声掛けても反応しなかったんだよ~~」

 

やっぱり彩葉は悦に浸っていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

(やっべぇ………分かんねぇ………)

 

(かぐやの前で啖呵切った以上、こう凄いコツみたいなのを教えてやりたいんだが………)

 

(思いつかねぇぇぇぇぇぇ!!)

 

そう、この男実は配信者っぽい事なぞ一つもやっていない。

時は遡り二年前、「朔夜、ゲーム配信でもしてみたら?めちゃ上手いし」友人のこの言葉で適当に初めてみた配信。

初回から同接四桁を獲得!!!「や、ヤチヨはなんにもしてないよ~?」

 

(お~千人も見てくれてる~すげぇ~)

 

そこからうなぎ上りに彼の人気は上昇。

そして、これまたなし崩し的に友人から勧められ始めたお悩み相談が、功を奏した。

 

『なんか……泣けてくる』

『あったけぇ……あったけぇよぉ………』

『あかん。底なし沼や』

 

元から彩葉(完璧美少女)より人間味があるとして学校でもある程度の人気があった朔夜(万年二位)は、人の悩みを聞き慣れていた。

その人の中には当然、彩葉も含まれている。

つまり彼は男女問わず才能問わずほぼ全ての悩みに答案可能な、準ヤチヨみたいな感じになったのである。

 

(最初とかぶっちゃけ何もしてねぇじゃん俺。いつも通りKASSENしてる所を配信しただけだし)

 

「と、いう訳なんで、皆助けてくれ~~~」

 

『なるほどなるほど。今回の大会から配信を始める新人ちゃんを教えたいけど、さっくーが適当に始めて適当に人気になったから最初なにすればいいか分かんないと』

『贅沢な悩みだな、おい』

『ていうかその新人ちゃんって誰なの?』

 

「それは………秘密かな~………」

 

『もったいぶるなよん』

『でもそもそも新人なら俺ら絶対知らんくね?』

『………確かに』

『もしかして、ライブの時に叫んでたあの子だったり?』

 

勘が鋭い視聴者もいるようで。

 

「ま、まぁまぁ!皆ご教授願う!いつものお悩み相談の逆!皆が俺を助けるって感じで!」

 

『そんな……頼られたら照れるじゃん?』

『あ、あんたの為じゃないんだからね!!その子の活躍が楽しみだから!!』

『いっちょ、叩き込んでやりますか』

 

(よっし………いっちょ学びますか!)

 

 

 

 

結局、徹夜になったのだが。学校死ぬほど眠いのだが。

帰ったらかぐやに色々教えないとだし、俺も大変だぁ~。

 

「じゃあ、この問題を神代。解けるか」

 

「は、はい!!!」

 

おいおいちょっと待て。頭なんざこれっぽっちも回ってないぞ。

しかも数学だし。

 

「二十秒……ください」

 

「え?ば、板書は………」

 

まぁ一旦落ち着け俺。数学は得意分野だろが。

空間ベクトルね。まぁまぁだるいけども、ベクトルは大体やり方は一緒。

空間も平面も、数字の量が違うだけだし。

 

はいはいまず内積ね。んでもってここの比を文字で置いて………。

ってここ直角かい。先生の図形下手では。

でぇ~最後に求めたいこの距離は………。

 

「………√34?」

 

「せ、正解だ………」

 

ふぃ~。疲れた~………。

 

「やるじゃん」

 

隣の彩葉から声を掛けられる。

 

「ん、あんがと」

 

どうせ彩葉も解けてんだろうけど。

 

「………(20秒じゃ解けなかったつーの)」

 

 

 

 

 

 

「すごいじゃないか神代。数学の先生も褒めてたぞ」

 

「あ~あれは偶々ですよ」

 

あの後、放課後に先生に呼び出された。

かぐやに色々教えるのはまぁちょっと遅れるくらいならいいだろう。

 

「これなら、東大も届くんじゃないか?」

 

「そうですかね~、行けたらいいですけど」

 

「両親も、自慢の息子だと思っていると思うよ」

 

(両親………ね)

 

断片的な記憶はあるけども、はっきり言うとあんまり覚えていない

確か六歳?か五歳の頃にどっちも事故でなくなった。

それまでは楽しかったし、遺書にはめちゃくちゃ色々書いてたから俺の事が好きだったんだろうなとは思う。

それで、小学生に入る位の時に血縁がない今のじいちゃんとばぁちゃんに引き取られた。

だからどちらかというと、良い大学にいっても喜ぶのはじぃちゃん達の方な気がする。

両親は俺を過保護しまくってた記憶しかないだろうし。

 

「………彩葉は、どうするって言ってました?」

 

「うん?酒寄か?酒寄も東大志望だぞ?」

 

(やっぱりかぁ………頑張らねぇとな)

 

俺の実力じゃ東大なんて厳しい気がするけど、彩葉が行くなら全力で目指すしかない。

 

「まぁ進路は焦りすぎても良くないからな。じっくり悩んでいこう。相談があるなら聞くぞ?それにこれから夏休みだしな。無駄にしないように」

 

「はい。ありがとうございます。失礼します」

 

職員室を出て、正門から出たらへんで俺は電話を掛けた。

かぐやでも、彩葉でもなく。

 

『もしもし~』

 

「久しぶりじいちゃん。元気だった?」

 

『お~………その声は朔夜か!!こっちは元気が溢れとるわ!元気だったか~?』

 

相変わらず驚くほど元気な人だ。

 

「うん。俺も元気だよ。ひさびさに声聞きたくなってね」

 

『もう高校3年生だったか?時が過ぎんのは早いわ~』

 

「うん。大学に向けて頑張っております」

 

『あんま無茶しちゃあかんよ~。あ、そうだ。今度の仕送りに()()()()()()()()()()()()()()()入れといたから~』

 

「え、何それ。俺聞いてない」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ちょっと忘れとったけど~』

 

「ふ~ん。まぁいいや。じゃあもう切るね~。ばぁちゃんにもよろしく~」

 

『ん~またの~』

 

 

 

 

 

 

「あ、朔夜来た~!!!」

 

彩葉の部屋をノックすると、かぐやが出迎えてくれた。

 

「あれ?何で朔夜来たの?」

 

部屋の奥では彩葉が机の上でせっせか何かを作っていた。

まぁちろっと見た感じ夏休みの予定表みたいな所だろう。

ぎちぎちに埋まってるのはどうせかぐやが文句言うだろうし、俺はノーコメントで。

ってかなんだここ。一晩でゴミ屋敷みたいなんなってるし。

 

「見て見て朔夜~!!ライブやってみたの~!!」

 

色んな所から嫌な予感しかしないが、まぁ一応見てやろう。

 

『かぐやっほー!月からやってきた、かぐやだよー!今日はやる事思いつかないからこれで終わり!じゃあねー………ん?これで切れてるのかな?』

 

案の定、グダグダもいい所だった。

後半は、実写映像に切り替わってたし。

クオリティの割に再生回数が多いな~と思ったらそういう事か。

 

(っていうか何だこれ………不協和音みたいな………)

 

「………朔夜」

 

ってなになに。めちゃくちゃ低い声で、彩葉が呼んできた。

 

「座って」

 

「え………えと………」

 

「す わ っ て」

 

「は、はい………」

 

「ちょっとちょっと彩葉!!朔夜いじめちゃダメ!!おいたはダメ!」

 

「かぐやは黙ってて」

 

「ひぃぃん」

 

なんと頼りない盾だろうか。

部屋の隅っこまでぴゅ~んと逃げてしまった。

 

「彩葉さん?一体全体どうなされたんでしょうか………?」

 

「ん」

 

そう言って彩葉が見せてきたのは、彩葉のスマホのふじゅ~ペイの決済画面。

 

「なに?これ?」

 

そこに表示されていたのは、+150000ふじゅ~の数字。

昨夜、俺が送ったものだ。

 

「こんなのいらない。そんな甲斐甲斐しいお世話いらない。私がおばあちゃん達の仕送りを使ってないの朔夜は知ってるでしょ」

 

「ごめん彩葉~………」

 

「別にかぐやのせい………なんだけど。今は朔夜に怒ってるの」

 

両手を腰に当てて、まさしく怒ってますよポーズを取る彩葉。

 

「………かぐやは、俺ら二人で拾ったろ?」

 

「それでもでしょ。かぐやの料理を朔夜は食べたの?かぐやのスマコンで何か得を得たの?」

 

「むぅ………」

 

「はい。このお金はそのまま返金するからね」

 

「あ、いや、それはちょっと」

 

まずいまずいまずい。そんままさっくー名義で送っちゃってるから送り返されたら。

 

「は?さっくーに返金が完了しました?」

 

「あの………えと………彩葉さん………」

 

終わった。はずかしすぎる。

幼馴染で、初恋の人にライバーである事がばれた件について。

しかもちょっと彩葉といる時と、話し方変えてるからまぁじで恥ずかしい。

 

「あんた………」

 

「ごめんなさい!!何も言わないでください!!恥ずかしいから!!」

 

さよなら。俺の初恋。俺は彩葉にドン引かれて終わりだ。

 

「ヤチヨの護衛してる人の名前真似してんの?そりゃ朔夜でさっくーはまぁ有り得なくないけどさ」

 

「さっくーって名前、可愛いじゃん!!」

 

「かぐやは黙ってて」

 

「ぴぃぃん」

 

………どうやらギリギリセーフだったようだ。

まじで危なかった。

ほんとに。彩葉にだけは知られたくなかった。なんか、ちょっと羞恥心みたいなものがある。

 

(え、配信者なんてしてるの?ほんとに?気持ち悪いね。なんて言われてしまったら俺のガラスのハートはバキバキになってしまう)

 

「ま、まぁまぁこの話は一旦終わりで!」

 

「ん?なに焦って」

 

「よ~しかぐや!!まずはこの不協和音どうにかしようか!」

 

「ふ、不協和音!?かぐやが夜な夜な作ったオリジナルなのに!」

 

オリジナルて。それで上手くいくんだったらまじの天才だっての。

 

「てかかぐや、あんたもしかして私のキーボードを………」

 

「およよ?その感じ。もしや彩葉弾けるね?全然上手くいかなくてさ~。お願いしますよ先生~」

 

かぐやは彩葉の実力を察したのか、ガラクタの山からキーボードを引っ張り出してきた。

 

「はぁ?なんで私がそんな事……」

 

「おねが~~~~い☆」

 

ウインクもしちゃって、甘え上手かよ。

かぐやの将来が心配ですわ。

俺はなに言ってんだ。親か。

 

「まずコードってもんがあって………」

 

そう言って、彩葉は鍵盤へと手を伸ばす。

 

「あ………」

 

彩葉の口からそっと溢れた音を、俺は聞き逃さなかった。

 

「彩葉」

 

「な、なに朔夜」

 

「汗かいてるぞ、ほらハンカチ」

 

彩葉はこちらを見ずに、それを受け取りもしなかった。

しょうがなく俺はハンカチで優しく彩葉の顔の汗を拭きとる。

どうせ、昔の事を思い出しでもしたんだろう。

彩葉の父さんは、音楽が好きだった。

昔に俺も彩葉が父とピアノを弾いてるのを見た事がある。その時、彩葉の父さんが言ってた事だ。

これが一番、今の彩葉には効くだろう。

 

「彩葉」

 

「ご、ごめん。すぐ弾くから」

 

そういう事じゃないっての。

 

「音楽は、自由に楽しむんだろ?」

 

「確かに!ヤチヨのライブも楽しかった!!」

 

今度のかぐやは、心強い援軍のようだ。

 

「………うん!」

 

おし。もう大丈夫だな。

彩葉が鍵盤に触れて、ボロアパートの一室は豊かな音へと包まれた。

 

「わあ………」

 

かぐやもどうやら驚嘆が抑えられないようで

 

「ラ………ララ………誰も止められ━━━はしない━━━歌わずにいられ━━━ない」

 

綺麗で、美しく歌い始めた。

メロディのメの字も知らなかったような奴が、リズムを感じて即興で歌詞を乗せている。

 

「お前も天才かい」

 

俺の自嘲じみた独り言は、かぐやの歌と彩葉のピアノにかき消された。

まるで、そんなの関係ないと言うように。

 

 

 

 

 

 

「イェイ!!」

 

気が付くと、一曲まるまる弾き終わっていた。

鳥肌が全身を駆け抜けて、手はいまだに興奮で震えている。

久しぶりに、心から楽しいと思える演奏が出来た。

 

「やっばー。これ彩葉が作ったの?凄すぎぃ!!!」

 

興奮に身を任せて、手を叩きながら、うさぎのようにぴょんぴょん跳ねていた。

でもこれが今、弾けたのは朔夜のおかげだ。

朔夜が、一番欲しい言葉をくれた。

 

「ありがとね、さく………や?」

 

「さ、朔夜!大丈夫!?どっか痛い?」

 

朔夜は、泣いていた。

 

「え………あ、いやなんでもない。お前らが上手すぎて泣いちゃってたわ~!!さっすが、かぐやと彩葉!!」

 

「え~~そう~~?照れますな~~」

 

かぐやは、いつもの様に額面通り受け取ったみたい。

私にはどこか、心のどこかで引っかかる所があった。

でも、かぐやにはそんなの関係ない。自分が思った事をそんまま言うようなやつだ。

 

「彩葉も朔夜も、プロデューサーになって!」

 

「プロデューサー?」

 

「………は、プロデューサー?何で?」

 

「だってだって!今、ヤチヨカップで暫定一位の黒鬼って三人組なんだよ、ズルじゃん!!かぐやなんて一人で頑張って八千位なのに」

 

素早くノートPCを開いて、順位を見せてくるかぐや。

優勝宣言をしたというのに、今の順位は八千九百十位。

 

「だからさ、こっちも三人組なろ?彩葉の曲を私が歌えば、大バズ確定じゃん!!しかもしかも、朔夜がちょ~~面白い企画を考えてくれたら、もう無敵でしょ!!!」

 

「ビクトリー間違い無し!!」

 

満面の笑みでピースをするかぐや。

 

「俺はいいよん」

 

「ちょ、ちょっと朔夜!」

 

「息抜きだって。それに楽しかったろ?」

 

「そ、そりゃ楽しかったけど………」

 

「かぐや~」

 

朔夜が言うのと同時にかぐやがダッシュで近づいてきた。

 

「お願い、彩葉。このまま終わりたくない……………ハッピーエンドにしたい………な?」

 

涙を浮かべながら、鼻をすすり、胸の前で両手を握りしめるかぐや。

それはそれは完成度の高いかわいそうな子を演じて、超必殺のおねだり顔を見せられる。

 

 

 

 

「ちょ、ちょっとだけなら……………いいけど」

 

 

 

 

後で自分のちょろさ加減に、溜め息が出た。

 

 




ちょっろ。
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