彩葉に男の幼馴染がいたっていいじゃない   作:ザワザワする人

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順風満帆

そこから、かぐやの快進撃が始まった。

当たり前の話だが、宇宙人のかぐやには配信の事なんか分からない。

だから、朔夜のどこからか来た溢れんばかりの知識をグングンと吸収していった。

後追いだとか、二番煎じとか、気負いだとか、照れだとか、そんな言葉もかぐやの辞書には存在しない。

 

「ダンスを投稿したら良いって朔夜が言ってた!このダンス可愛い~!!かぐやもやろ~っと♪」

 

この通り。思考から実行までのスパンはゼロなのである。

 

「うひょ~、芦花の言う通りにメイクしたら自撮り爆盛り出来ちゃった。はい、朔夜の言う通りこれもアップ!ついでに全然盛れなかったNGバージョンもアップ~~~♪」

 

芦花に教えてもらった自撮りも、

 

「やった、真実(まみ)おすすめのお店のお取り寄せが届いた!緊張で動画回しちゃいまーす」

 

真実直伝の食レポも、

 

「あー、そういうのどうでもいい!きっちり片を付け!忘れる!忘れるって人生で一番大切な能力だからね!いやいや、甘いこと言って責任とらないやつにはなりたくないし!それがかぐやの優しさだから!!」

 

朔夜にお勧めされてたお悩み相談も。

やりたい事に躊躇しない。かぐやはそういう流儀だった。

それと共鳴するかのように、朔夜の企画力も上がっていった。

元々相性がよかったのかもしれない。

冷静に物事を見れる朔夜と怖いもの知らずなかぐや。うん、きっといいコンビだ。

 

「ねーねー朔夜も彩葉も歌枠しようよ~~~」

 

「「やだ」」

 

でも朔夜は、配信とか動画に参加するのをめちゃくちゃ嫌がった。

もしかしたら、私以上かも。

多分、かぐやに企画を出しまくってて勉強出来ていないんだろう。

そんな配信に出てる時間なんてないだろう。私も勉強もバイトも頑張らなきゃ。

 

 

 

 

「まだまだ足りない!!どうすればいいのだ~!」

 

どうやら欲張りなお嬢様は、全然納得していないご様子だ。

砂浜に広げたレジャーシートの上で、ゴロゴロと転げまわって不満を示している。

 

「ゆゔじょうじだい━━━━━!!」

 

今日はかぐや、芦花、真実、彩葉、俺の五人で海に来ていた。

うん?なんで俺がいるのかって?

知らんわ。かぐやに耳栓されて、目隠しされて連れてこられました。

 

「かぐや~、暴れないの~」

 

いや親かよ彩葉。完全に、お母さんの言い方なんですがそれは。

 

「こないだの歌配信めっちゃ上手かったよね~」

「ね、かぐやちゃんゲームも歌も上手いよね」

 

あらあらそこまで褒めちゃうと。

 

「まぁね。天っ才、歌姫ですから」

 

ほら、調子に乗った。かぐやの伸びた鼻が入道雲を貫く程。

 

「でもどれもこれも朔夜と彩葉のお陰だからね!」

 

「「………………ありがと」」

 

「神代君も照れるんだ」

 

「ちょろはとちょろさくだね~」

 

うるさいやい。こんな真正面から言われたら誰だって照れるっての。

 

「でもでもやっぱり優勝したい~~~!こんなんじゃまだ足りない~!!」

 

「はいはーい!私あるよ、ナイスアイディア。いろP初登場配信は?これまで正体を隠していた彩葉がついにベールを脱ぐ事により新たな需要を━━」

 

 

「「却下で」」

 

 

「なんで神代君も?」

 

当たり前じゃ。彩葉に惚れるやつが出てきたらどうすんねん。

アバターとはいえ、彩葉の趣あるし。

 

「あつあつですな~お二人とも~」

 

「は?朔夜とはそんなんじゃないっての(私の勉強の時間を確保してくれよとしてるんだよね………多分)」

 

うぅ。そんな直接的に言われたら、俺泣いちゃうよ~。

 

「そんなんやだー!!二人共一緒に出てー!!作曲して~~~!!歌って~~!!」

 

まったく、この我儘お嬢様には天誅を下すしかないようだ。

 

「うわ!ちょっと朔夜~!冷たい~~!!」

 

「ふふん。さっきそこで買ってきた水鉄砲だ。食らえい!!」

 

「い、いや!!逃げる!」

 

「仲良しだね~」

 

「遠くまで行かないでよ~~~!!」

 

「いや、母親か」

 

 

 

 

「ねぇねぇ朔夜!」

 

「ん?なに!?」

 

逃げながらもどこからかカニの大群を連れてきたかぐやに防戦一方だった俺に、かぐやは声を掛けてきた。

 

「朔夜ってさっくーなんでしょぉ?」

 

「………はい?」

 

「あのでっか~い銃の人!!ヤチヨ守ってた人~!」

 

全部見透かしたみたいな目で俺を見てくるかぐや。

こりゃごまかしても無駄そうだ。

 

「………どこで分かったんだ?」

 

「ん~とね。朔夜が色々配信の事を知ってたから!!」

 

適当かい。

 

「ははは~それでばれてちゃ世話ないわ」

 

「だからさ!かぐやとコラボしようよ!ぜ~ったい楽しいって!」

 

「やだよ~。彩葉にばれるじゃん」

 

「彩葉にばれないように!!」

 

かぐやとここ数日、企画について話す事が多くて大体わかった事がある。

かぐやはこういう時に嚙んだ餌を絶対離さない。

今回の餌はどうやら俺のようだ。

 

「まぁいいけど………何する?」

 

「歌ぁ~!!歌歌歌!!一緒に歌お!!」

 

おいおい俺は歌枠なんてやったことないんだが。

 

「俺、歌枠やった事ないけど?」

 

「関係な~し!!楽しければおっけー!!」

 

………この笑顔、というよりかは俺は誰に対しても笑顔に弱いみたいだ。

 

「彩葉には秘密だからな」

 

「うん!かぐやと、朔夜だけの約束!じゃあ指切りね!」

 

かぐやは小指を俺に差し出す。

細くて繊細で、赤ちゃんみたいに真っ白な指。

 

「おう。約束」

 

俺はその指と、俺の小指を確かに結んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆~さくやっほ~。通知の通り、今日はコラボで~す」

 

『さっくーがコラボなんて………大きくなったわね』

『うぅ………今まで誰ともコラボしなかったのに………』

『お前ら、コラボ相手に失礼な事すんなよ~。俺らの民度が試されるぞい』

『もしかしてさっくーもヤチヨとのライブ狙ってたり?』

 

どうやら、皆の期待もある程度はあったようだ。

皆に通知した時点でもまぁまぁの盛り上がりはあった。

それはかぐやの方でも同じのようで。

 

「うわうわ!コメントはやぁぁぁ!!読み切れないぃぃぃぃ」

 

ちなみに現在かぐやは俺の部屋にいる。

彩葉はこれから三時間程バイトをしてくるようで、バレる心配もないとの事だ。

あくまでかぐや情報なので、信憑性は中の下といった所だけど。

 

「はい!今回は話題沸騰中のかぐやチャンネルとのコラボで~す!!」

 

「お?そっちでも言わなきゃ?皆~!かぐやっほ~。かぐやだよ~」

 

『かぐやちゃん可愛い~~』

『ていうか、挨拶おそろいやん』

『しかもツクヨミじゃないって事は、現実で一緒にいるってこと?』

 

やっべっぇ。そういうのもろもろ忘れてた~~。

落ち着け神代朔夜。

これしきの問題いくらでもこっから言い訳できる。

どうせこっからツクヨミ行く予定だったし、ばったり会ってとりま家に入れたみたいな嘘つけば。

 

「うん。近くに住んでて~今は一緒の部屋いるよ~」

 

かぐやさん?????バカかな????

当然のように、コメント欄は盛り上がる。

 

『\1000 あっつ』

『\5000 そんな……さっくーのコラボ童貞だけでなく………』

 

「…?ねぇ、朔夜~どうて」

 

「はいはいはい!!皆、一旦俺らはツクヨミ行くからね~~~!!!あと、一旦移動するから配信切りま~す!5分くらいで再開するからちょっと待ってて~!!」

 

『逃げたな』

『あやしっ』

『そんな………かぐやちゃん………』

『なんかNTR食らってるやついて草。心配せんでも、さっくーはそういう事するタイプじゃないよ~』

『まぁせやな。一回かぐやちゃんの現実姿見たけど小っちゃい子だったし』

『そもそもさっくーは、高校生定期』

 

 

 

 

「かぐや!!」

 

「は、はい!」

 

「一緒に住んでるみたいな言い方しないの!視聴者の皆びっくりするでしょが~」

 

「え~別によくな~い?いろPとは一緒に住んでるって皆知ってるよ~」

 

うん、だめだこりゃ。

人間の悪いところを知らな過ぎてるわ。

別に教えて良い事がかぐやに起こる訳でもないし、教えないけど。

 

「よし、とりあえずバレたのはしょうがない。移動するぞ」

 

「移動ってどこに~?」

 

最初はライブ会場を借りようと思ったけど、どうやらどこもヤチヨカップのせいで貸し切りらしい。

悲しきかな。急にコラボしたいだなんて言うからなのです。

 

「歌い手の人たちが配信コラボとかするとこ」

 

「ん!かぐや知ってる!カラオケでしょ!」

 

 

 

 

「は~い。移動完了しました~~。今日はカラオケでコラボ!!」

 

「ねぇ朔夜!!もう歌っていい!?」

 

『もうウッキウキだ』

『親戚の子供見てるみたいな気持ち』

 

本名はもういいや。多分言っても治んないし。

視聴者は「さくや」としか聞こえてないから、大丈夫だろ。

 

「最初はそれぞれ歌うでいいんじゃない?かぐやからどうぞ」

 

「うっし!どっちが点数高いか競争ね!!」

 

というかぐやの競争心のままに、俺とかぐやのカラオケ点数勝負が始まった。

まず最初のかぐや。

 

かぐや:88点

 

「ふっふ~ん。まぁ最初はこんなもんですかね~!」

 

『\1000 かぐやちゃんうま~い!!』

『\2000 さっすがかぐやちゃん!!』

『ぐぐ………うまい………』

『さっくーカマセ!!歌枠やってんの見たことないけどいけ!!』

 

いや、分かんね~。どんくらいすごいのこれ。

友達とカラオケなんて行った事ないしな………。

まぁ………曲はこれでいっか。この前歌ったし。

 

『Remember』

 

『??????????』

『いやいや歌えるんか?男が歌える音域か、これ?』

 

 

 

 

 

朔夜:94点

 

 

 

 

(お、かぐやより高い)

 

 

『\7000 はぁぁぁぁぁぁ????????』

『\10000 バケモンで草』

『\20000 あれ………なんか前が見えない………』

『\50000 さっくー、結婚して。ずっと家で歌ってて』

 

「………す、すっごいじゃん朔夜!!!!まじ天才じゃん!!」

 

「うん?これ高いの?」

 

「ヤチヨの曲だったら一番難しいっていわれてるやつじゃん!!」

「ほんとに天才だよ!!!」

 

俺の手を握りながらぴょんぴょん跳ねるかぐや。

かぐやは、嘘なんて付かないだろうしほんとっぽい。

 

(才能………なんかな………)

 

少し、いやかなり嬉しい。

やっぱり直接褒められるってのは嬉しいものだ。

特に

 

「うぉぉぉ!写真撮ってアップアップ!!」

 

かぐやみたいな、心の底から吹き抜けたように明るいやつから褒められるのは。

彩葉(好きな人)に褒められるのとは、ちょっと違う嬉しさがある。

 

「朔夜!次、一緒に歌お!!」

 

「……おう!!」

 

コラボ配信が終わった後、バイトから帰って来た彩葉に声がイガイガなのを突っ込まれた時は死ぬかと思った。

 

 

 




しっかりと、かぐやと朔夜の互いへの想いを強めていきます。
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