銀河貨物列車の警備車掌   作:ゆうぐれ

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第1話 7両目の貨物③

パイロットの発言には困惑せざるを得なかった。

 

確かに金は工業用途が広く、装飾品にも使われている。

 

しかし値の張る鉱物ではない。

 

小惑星や鉱山惑星の開発で採掘量は爆発的に増え、技術発展によって採掘や精錬のコストも大きく下がった。

 

その結果、かつて貴金属と呼ばれたそれも、今では鉄やアルミと大差ない価格で取引されている。

 

よって、銀河鉄道を襲ってまで奪うような代物ではなかった。

 

「金を狙ってたのか?この列車の?」

 

「はいっ……ほ、他の人が言ってました……。」

 

「シグレ、積荷のデータは?」

 

[金属類が50トン分、金として登録されてるね。7両目のコンテナ車。]

 

「ふむ……で?お前さんらはどうしてここに金があると分かってたんだ?俺らでも中身までは知らない場合が多いってのに。」

 

「え、えと……これです。」

 

パイロットは2つの小さな端末を手渡してくる。

 

型は古いが見覚えのあるものだった。

 

「トラッキング装置?まさか金塊にビーコンを?」

 

「たぶん……。」

 

「ふーん、たかが金にそこまでやるかねぇ……まあいい、取り敢えずお縄についてろ。ビーコンを取ってくる。」

 

パイロットを拘束し、空のコンテナに放り込むと、金塊が入っているであろう7両目に足を運ぶ。

 

トラス状のフレームに四方を固定された2つのコンテナ。

 

その片方を開けると、ヘルメットのライトで中を照らす。

 

見えて来たのは床の半面に等間隔に積まれた金の延べ棒だった。

 

トラッキング装置の反応を元にビーコンを探すと、延べ棒の1本にビーコンらしき小さな円盤を見つけた。

 

「まったく……仕事増やしやがって……っと。」

 

その延べ棒を引き抜き、ぐしゃりと、ビーコンを銃床で潰す。

 

すると片方の装置から反応が消えた。

 

もう1つのコンテナにも入ると、同じように仕掛けられていたビーコンを潰した。

 

「シグレ、ビーコンを破壊した。パイロットは変なことしてないか?」

 

[うん、海賊らしからぬ大人しさだね。]

 

「海賊船に乗ってる時点で……ん?」

 

その時、ふとインゴットの一部が目に入る。

 

銃床でビーコンを潰し、残っていた破片も剥がした箇所。

 

そこが何故か銀色に光っていたのだ。

 

「……コーティングされている?」

 

ナイフを取り出すと、禿げた箇所を更に削る。

 

すると表層の金が剥がれて、銀色の面が更に顔を出した。

 

別の金塊にも同じ処置を施すと、同様に銀色が見えた。

 

「なあ、延べ棒を別の素材でコーティングすることってあるのか?」

 

[いいや?まずその延べ棒、表面に24金って刻印があるじゃん。偽装されてるよ。]

 

「やっぱりな……金にしては多く積まれてるとは思っていたが……。」

 

改めて金塊モドキの山を眺める。

 

通常、密度の高い金はコンテナの限界重量いっぱいに積んでも、コンテナの中身はスカスカになる。

 

金の山だって膝にも届かないくらいの、薄く低いものだ。

 

だが目の前の山は腰の下くらいまで積み上がっている。

 

「金より軽くて銀色の、海賊が狙うような価値の高い金属……。」

 

[パラジウム?]

 

「おいおい……冗談だろ……。」

 

シグレの予測を聞いて、声が震えた。

 

パラジウムは民間の電子産業から宇宙艦隊のエネルギー事情まで、深く関わる重要物資だ。

 

だから終戦後の今でも、採掘から精製、流通までを中央政府が厳しく管理している。

 

その影響で闇市場の価値は青天井並みに跳ね上がっている。

 

もしこの1本を売り払えば、高級スタークルーザーを買ってもおつりが来るだろう。

 

[どうする?2、3個盗っちゃう?]

 

シグレによる悪魔の囁きが頭の中にこだまし、グラグラと心が揺れた。

 

だが軍で散々痛い目を見た経験が、それを押し留めた。

 

「……馬鹿言え、ロジウムか銀の可能性だってあるだろ。まずパラジウムは銀河鉄道では扱わない。」

 

[えー、でもわざわざ価値の低いものに偽装するんだよ?きっとパラジウムだって。]

 

「もう忘れたのか?前もパラジウムっぽいの盗んで、実はルテニウムでしたってオチ。しかも挙句には……。]

 

[あの人の犬になっちゃったもんね〜。ワンワン!って。]

 

「い、言うなっ!とにかく!このことは忘れろ。偽造って時点でロクなもんじゃねえ。」

 

さっさとコンテナの外に出ると、ぴしゃりと扉を固く閉じる。

 

もうそのことについては忘れることにした。

 

——少なくとも、今は。

 

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