銀河貨物列車の警備車掌   作:ゆうぐれ

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第2話 偽りの金塊②

駅で列車から降りると、保安局の本庁へ足を運んだ。

 

こちらの建物は銀河鉄道公社とは対照的に、威圧感を思わせる黒を基調としている。

 

中に入ると、厳重な検査設備が待っていた。

 

「武器や金属物をお持ちの場合はこちらへ。」

 

「すまないな。」

 

検査機のトレーに出したのは2丁の拳銃。

 

警備車掌に支給される官給品の拳銃、A(アトラス)17。

 

そして予備のリボルバー、個人的な私物である200DS-EVA(キアッパ・ライノ)

 

弾倉とマルチツールの入ったポーチも預けると、金属探知機の門をくぐる。

 

するとエラー音が鳴り響いた。

 

元から静かなだけあって、周りの目が一気に向いてくる。

 

「あ、あ〜……ベルトを外してなかったかな?」

 

[多分、僕じゃない?]

 

「そうだ。そうだな。」

 

腕の端末を外し、もう一度門をくぐる。

 

今度はエラー音が吐き出されることはなかった。

 

「銀河鉄道公社の天城さんですね。警備車掌のライセンスを確認しました。銃はお返しします。」

 

「ああ、ありがとう。」

 

トレーから荷物を受け取る。

 

その時、不意に横合いから伸びてきた手がリボルバーを取り上げた。

 

何事かとそちらを向くと、見知った顔があった。

 

「これ、ちゃんと使ってくれてるみたいだな。」

 

「えっ、お前……コーイチか?」

 

「ああ、久しぶりだな。レオ。」

 

糊の利いた黒いスーツに、整髪料で整えられた髪。

 

縁なしの四角い眼鏡をかけた、真面目そのものといった男。

 

かつて共に戦った戦友、『(たちばな)宏一』だった。

 

彼は敗戦後、すぐに保安局へ入ったが、地方の開発コロニーへ飛ばされていた筈だ。

 

「ここに居るってことは……まさか?」

 

「そうだ。功績が認められて、本局配属になったよ。」

 

「おお!そいつはいい!おめでとう!」

 

互いに両手を広げ、堅い抱擁を交わす。

 

格好や立場は違えど、かつての関係はそのままだった。

 

「ここにはいつ来たんだ?」

 

「勤務は昨日からだったよ。ようやく引き継ぎが落ち着いたところさ。それより、また海賊を倒しただろう?貨物列車が海賊の撃退なんて、お前くらいだしな。」

 

「へへ、バレたか。実は倒した海賊が賞金持ちでな。今日はそれで来た。」

 

言葉を交わしながら構内を歩いていると、ふと通路脇の部屋から一団が出てくるのが見えた。

 

警官に連行された彼らは私服姿で、どこかみすぼらしい。

 

視線に気付いたコーイチが補足する。

 

「あれは密輸の連中だな。多分、受け子だ。」

 

「密輸?流行ってるのか?」

 

「ああ、終戦からの急速な復興で、どこもモノが……いや、正確には運び手が足りていなくてな。だからああいう密輸ビジネスが勃興してる。」

 

「なるほど。ウチの路線だってまだスカスカだし、成長に置いてかれる星も多いってわけか。」

 

「同情はするよ。中には食料のために密輸するところもあった。」

 

そう言うコーイチの顔は複雑だった。

 

「だが、犯罪目的も多いんだろ?」

 

「そう、大半が脱税か密航だ。特に戦闘の激しかった宙域で起きてる。そこはまだ監視網の復旧が済んでいないからな。」

 

通路には海賊だけではなく、密航を試みたであろう人々の姿もあった。

 

彼らは老若男女を問わず、むしろ女子供の割合が多かった。

 

「あの集団はこれからどうなる?」

 

「IDの登録地か、その近辺に強制送還だ。スバルⅢの移民申請枠は向こう5年いっぱいだからな。」

 

「そうか……。」

 

「これも市民の安全のためだ。仕方ない。」

 

人の波を抜けたところで、共用スペースのベンチに1人の少女が座っていることに気付く。

 

見た目からして、未成年だろうか。

 

何やら深刻そうな表情をしていたが、自分には関係ない上に、何も出来ないからと、視線を逸らそうとする。

 

だがその直前に、ばっちり視線が合ってしまった。

 

「……あ。」

 

少女の目に生気が戻る。

 

嫌な予感がした。

 

そっぽを向き、早足でその場を離れようとしたが、もう遅い。

 

気付けば彼女は回り込んできていた。

 

「車掌さんっ!助けてください!」

 

「おいおい、勘弁してくれ。まず俺は車掌じゃない。」

 

「そんなとぼけないでくださいよ!何日も同衾した仲じゃないですか!」

 

「なっ、お前何を……!?」

 

「やだ!捨てないでくださいぃ!」

 

少女が外套にしがみ付いてくる。

 

その声色は芝居がかっていたが、指先に込もる力は必死だった。

 

冗談半分でしがみついているというより、本気で離れまいとしているのが分かる。

 

背後ではコーイチが眼鏡を光らせていた。

 

「ほう……これは陸奥室長への貸しに使えるかもしれんな。」

 

「ち、違う!誤解だ!俺はこんなヤツ……!」

 

そこまで言いかけて、少女の顔を正面から見た。

 

見覚えがある。

 

海賊の小型艇の中で拘束した、あのパイロットだ。

 

「まさか、お前……。」

 

「天城車掌、話の続きは別室でやろうか。」

 

真面目くさった声だったが、コーイチの口角は変に歪んでいる。

 

「お、お前!分かって言ってるだろ!」

 

「ブッ……んんっ、早くこちらへ。」

 

逃げるように道端の会議室へ入る。

 

しかし悲しいかな。

 

周囲からは白い目が向けられていた。

 

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