銀河貨物列車の警備車掌   作:ゆうぐれ

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第4話 スバルⅡ到着②

何度か仮眠を繰り返しながら、18時間後、スバル47号はスバルⅡの間近に迫っていた。

 

その惑星は大気がほとんど存在せず、地表には赤茶けた大地がどこまでも広がっている。

 

しかしそんな寂しい見た目にも関わらず、都市の光は星のあちこちに点在していた。

 

「あれが目的地ですか?」

 

「そうだ。ここは見た目よりいい星だぞ。」

 

列車の周囲にはすれ違っていく貨物列車や、入港待ちをしている輸送船の列が見えた。

 

中には一般の銀河鉄道も走っており、スバルⅢとはまた別の意味で栄えていることが分かる。

 

「すごく沢山の船が居ますね。」

 

「ああ、こりゃ入るのに時間かかりそうだな……。」

 

通信機を手に取り、スバルⅡ側へ繋げた。

 

「こちら第1055番辺境航路貨物列車スバル47号、入港の許可を求む。」

 

[スバル47号、保安局の緊急優先権を確認しました。そのまま、グランドベイスンへ向かってください。管制所から追って指示を出します。]

 

「おっ、りょーかい。」

 

列車は船の列をごぼう抜きしながら惑星へ接近していく。

 

「待たなくていいんですか?」

 

「優先権が付いてたよ。流石はコーイチだぜ。気が利く。」

 

惑星が近付くと、その地表に大きな構造物が見えてくる。

 

廃鉱山の巨大クレーターをそのまま都市空間に転用したドーム都市『グランドベイスン』だ。

 

列車はクレーターの端に空いたトンネルに入った。

 

行き止まりで停車すると、背後で隔壁が閉まり、周囲に空気が満たされていく。

 

すると今度は目の前の隔壁が開き、眩しい光が差し込んできた。

 

「わぁ……空が青い……街も綺麗ですね。」

 

「人工の光とはいえ、やっぱ空は青い方がいいよな。常時夕焼けはどうも好かん。」

 

ドームの内側にはとても広い空間が広がっていた。

 

クレーターの形に沿って沢山の建物が並んでおり、中央の区画からはビル群が伸びている。

 

列車は途中の貨物ターミナルに降りるかと思いきや、中央のグランドベイスン駅に誘導された。

 

同じ銀河鉄道でも花形である旅客列車用のホームにスバル47号は入っていく。

 

色とりどりの洗練された車両が並んでいる中、武骨な貨物列車は正直浮いていた。

 

[プロキシマ・ケンタウリ行きにケプラー行き……どれも急行や快速列車ばっかりだね。]

 

「ウチはリタお嬢様専用の特別急行列車で、パラジウム50トンのオマケつきだ。そんじょそこらの路線とはワケが違うよ。」

 

[なるほど、言われてみれば。]

 

ホームに停車すると、外では保安局の職員が待っていた。

 

「銀河鉄道公社の天城警備車掌ですね?事情は橘捜査官から伺っております。後ろの貨車は海賊に狙われたものだとか。それもケラエノ星系から密輸された疑惑があると。」

 

「そうだ。ここからは頼めるか?追手が来る前にコレの検査をしてほしい。」

 

「追手といいますと?」

 

「私兵を連れた企業の連中だ。ぐずぐずしていると、持ってかれるぞ。」

 

「承知しました。」

 

職員が手招きをすると、作業員の一団がコンテナに手をかける。

 

ハッチを開けると、前に見た時と同じように金塊が積み上がっていた。

 

しかし簡易的な検査機にかけると、金とは違う反応が出る。

 

「あれ……このインゴット、中身が金ではありません。パラジウムです。」

 

作業員の報告に皆が目を見開く。

 

まさに宝の山を前にして、保安局職員も余裕を失ったように見えた。

 

「こ、これは大変だ……すぐに応援を呼びます。本格的な検査もしなければ。」

 

「ネコババされないように目を光らせといてくれよ。」

 

「もちろんです。結果は追って連絡します。」

 

「おう。」

 

リタを連れてその場を後にする。

 

すれ違いで、沢山の保安局職員と警官がホームへ向かっていった。

 

「……すごい騒ぎになってきましたね。」

 

「そりゃ全部で2兆クレジットだからな。1本無くなっただけで大ごとだ。」

 

「このまま何事も無ければいいのですが……それよりどこに行くんです?」

 

「あの様子じゃ検査にも時間がかかるだろ。先に宿でも見つけてゆっくりしようや。」

 

「ええ、そうですね。」

 

駅から無人タクシーで街に乗り出す。

 

幹線道路に入ると、立ち並んだ高層ビル群が目に入ってきた。

 

「シグレ、どっかに良い値段の宿はあるか?」

 

[それなんだけど……上司さんからメッセージがあるみたい。]

 

「大尉から?」

 

網膜にエリズからのメッセージを映し出す。

 

そこには『まさか名家の令嬢を安宿に泊めていないわよね?』という文が。

 

ギクリと、背筋が凍った。

 

[で?どーする?1泊2千アトラスクレジットの宿はあったよ?]

 

「中心街のホテルを取ってくれ……なるべく安いやつ。」

 

[おっけー、けどこのシーズンだと、どこも埋まっちゃってるね。]

 

シグレの言葉にホッと息を吐く。

 

「そうか……ならしゃーないな。適当にビジネスホテルでも……。」

 

[あ!あったよ!セントラルホテル!スイートルームが空いてる!]

 

「……値段は?」

 

[6万クレジットだよ。アトラスクレジットなら18万だね。]

 

「高っ!?」

 

その値段に愕然とする。

 

そっとリタへ視線を向ければ、彼女は驚くわけもなく平然としていた。

 

「な、なあ……ちなみになんだが、旅行とか行ったことあるか?」

 

「はい、家族でなら。」

 

「最後に行った場所は?」

 

「えっと……インディ星系です。そこの別荘に。」

 

「インディって……まじか、七色星系に別荘……!?」

 

[わーお。超高級リゾートじゃん。]

 

また別の意味で愕然とする。

 

どうやら目の前のお嬢様は予想していたよりも、遥かに金持ちだったらしい。

 

18万という数字を聞いても平然としているわけだ。

 

「……分かった。シグレ、このお嬢様に相応しい宿にしてくれ。」

 

[おっけー。セントラルホテルを予約するね。]

 

「や、やっぱり待て。それは1人分だけで俺は安宿に……。」

 

その時、新しくメッセージが送られてくる。

 

今度はコーイチからだった。

 

内容を要約すると『安全を考慮して、彼女から片時も離れるな』というもの。

 

「ぐっ……ならツインの部屋をひとつだけで……。」

 

更にメッセージが追加で送られてくる。

 

今度はエリズとコーイチの双方からだった。

 

片や『ちなみにだけど、宿代をケチるために未成年と同じ部屋に寝るとか……しないわよね?また縛られたいなら別だけど。』と。

 

そしてもう片方が『レオ、俺はお前に縄をかけたくない。分かっているよな?』と書かれていた。

 

まるでこの場面を見られているかのような、的確すぎるメッセージに冷や汗をかく。

 

「……シグレ、お前か?お前がリークしたのか?」

 

[誓って違うよ?まあ、レオの思考は単調だからね。ああいう頭の良い人たちから見れば、行動パターンくらいお見通しなんでしょ。]

 

「うるせえ、誰が単細胞だ。」

 

「あはは……レオンさんには良い保護者が居るんですね。」

 

「ああ、ちくしょう……否定できないのが悔しい。シグレ、部屋を2つだ。」

 

[はーい。]

 

シグレが決済を行うと、聞き慣れた電子音が端末から車内に響き渡る。

 

貯金の過半数が消し飛んだ音だった。

 

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