<Infinite Dendrogram><SUBM>単独討伐RTA風   作:菌床

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 容疑者は「グレイテスト・ワンが格好良すぎて書いた。後悔はしていない」と意味不明な供述をしており


RTA始まって終わったよ〜〜!

 

 はーい、それじゃ<SUBM>討伐RTAはーじまーるよー。

 本日やって行くのは<Infinite Dendrogram>という、無限エンブリオ達が管理する世界にダイブするゲーム。

 今回の目的を説明しますが、このゲームの中には<UBM>という特別なモンスターが現れるんですけどね、その中でも更に特別な存在である<SUBM>を単独討伐していきます。

 

 という訳で早速サービス開始一周年にゲームスタート。

 最初のチュートリアルを担当する管理AIはクイーンですね、これは当たりです。

 他の管理AIだとやはり歴戦の中間管理職であるチェシャがおすすめですが、クイーンも当たりの部類ですね、ハズレの管理AIだと話すのが遅いので時間を取られますからね。

 ここで管理AIと一緒アバターを作るんですが、ここでアバターの外見はモヒカンにします。

 ふざけてる訳じゃありません、速さを優先してリアルの外見のままにすると、管理AIから考え直すように説得されます。

 コレが意外と時間を取られるので、初期装備も含めて世紀末モヒカン風にコーディネートしてもらいましょう。

 リアルの外見のままとかどこぞのクマか、カルト宗教くらいしかしていないことを考えるとネットリテラシーは大事だとはっきり分かんだね。

 

 アバターネームはモヒカン・ゴッドにします。

 実はこういう名前にする事で、僅かながらですが目的のエンブリオに孵化する確率を上げられるんですよ。

 孵化するまでの時間を短くするせいで、パーソナルの読み込みに用いられる情報が限られるため、少しでも方向性を偏らせる必要があるんですよね。

 もっとも、本当に必要なのは迷わず自分のアバターに神(ゴッド)と名づける精神性でもありますが。

 

 最後にスタート地点の国ですが、これはレジェンダリアで確定です。

 ここを選ばないと最速RTAは絶対に不可能と言われるRTAの聖地ですよね、まあ私以外にRTAしてる無限居ないので自動的に世界最速なんですけど。

 落下し始めたのでここを選んだ理由は後で説明します、何故ならここでもやることがあるからです。

 まず落下しながら様々な方向に視線を動かして様々な景色を目に焼き付けます。

 何故こんなことをするのかというと、落下してからすぐに移動する場所を固定するためなんですね。

 視界をぐるぐる回していると、遠くの森の一箇所が変色して居るのを発見しました、これで最初の関門は突破したも同然。

 

 降り立ったら直ぐさま先ほど見た変色した森へ向かいます。

 《持久力強化》とかあると良いんですけど、アレは適性のあるジョブでかなり走り込みをしないと習得出来ないので今回は関係ありません。

 という訳でモヒカン・ゴッド君には全力で走ってもらいましょう、オラッ回転上げろ生前葬だ。

 では何故ここでこの森へ向かうのか説明しますが、森の一部が変色しているのはとあるモンスターが居る目印だからです。

 その名も【キング・バジリスク】、コイツは強力な毒で環境破壊を引き起こす特級の危険モンスターでして、種族単位で懸賞金がかけられて居るという事からその危険性がよく分かるでしょう。

 

 今回はこのモンスターを討伐……はしません。

 向こうから認識される位近づいたら、全力で逃げる!

 【キング・バジリスク】は非常に獰猛で、この距離でも縄張りに入り込んだ侵入者として殺しに来てくれます。

 このモンスターはHPとENDが高めの耐久型ステータスをしており、基本的な攻撃手段は毒なので走ってれば大丈夫です(4敗)。

 

 ではこのまま目当ての地点まで走り抜けましょう。

 途中で別のモンスターに襲われそうになりますが、後ろから【キング・バジリスク】が迫って居るのでモヒカンゴッド君には目もくれずに逃げ出します。

 本能に刻み込まれた恐怖からは逃げられないとは悲哀を感じますね。

 ではこのまま逃げ続けますが、目的地でちょうど精魂尽き果てるように調整しなくてはなりません。

 限界まで追い込んで危機感を持ってもらわないといけませんからね、使命感でも良いんですけどその場合操作に支障が出るのでお勧めはしませんね。

 

 という訳で自然魔力が特に豊富な地点に辿り着きました。

 はい、ここまで来れば皆さん何をするつもりなのか大方の予想はついた事でしょう。

 ですがまだ、ここでやることは終わりません。

 むしろここが一番なお祈りポイント、そう、エンブリオの孵化です。

 ここまでモヒカン・ゴッド君の左手の甲に寄生しているエンブリオは、彼のパーソナルを読み込み、経験を共有しています。

 自分の名前に神と付ける精神性、気になった所へ走り出す単純な思考回路、強力な状態異常によって様々な存在を殺す危険なモンスターに追い回される事による危機感。

 そして、ジョブに就て居ないためレベルがゼロで何のスキルも持っていない状況。

 この状況を揃える事で、高確率で目当ての能力を持ったエンブリオに孵化させることが出来ます。

 しかし、あくまでこれらの要素は指向性を与えるだけにすぎず、乱数によって如何様にも変化してしまうのが本当に辛い(7敗)。

 頼む、届けこの祈祷力!

 

 おー光が収まって……天使! 

 来た! 天使来ました!

 これは勝ったな(フラグ)。

 という訳で来ました種族が天使のメイデン、名前は【呪胎告知 ガブリエル】、良い名前ですね。

 はい、彼女のスキルですがこの状況だと確定で『状態異常をバフとして判定させる』効果になります。

 この世界だと基本的状態異常は致命的な物が多い分、格上に状態異常を通すのは簡単な事ではありません。

 ステータスが上がればそれだけ状態異常耐性が上がりますし、彼我のステータス差で成功率が変化するのが基本です。

 耐性貫通や防御効果無視といった方法でぶち抜く事も可能ですが、第一形態のエンブリオに出来ることはたかが知れたもの、今回の目標である<SUBM>に状態異常を通すなんて無理無理カタツムリ。

 

 ならばどうするか、そのヒントは遥か東の天地に居ました。

 その答えこそアルトちゃん、彼女のエンブリオである【複雑回機 ゴルディアン・ノット】。

 このエンブリオは相手を拘束し、問題を解くまで身動き封じるスキルを持つのですが、この拘束はバフを受ける前の準備時間として扱われるため耐性などで防ぐことが不可能なんですよ。

 つまり、状態異常をバフとして判定させれば、例え【健常のカメオ】に匹敵する防御能力を有していようと無駄無駄無駄!

 

 しかし、これだけでは足りません。

 状態異常耐性を無視して倒せるとしても、そもそも今のモヒカン・ゴッド君は何のジョブにも就いていない無職のニート、異世界転移した程度でチート無双なんて夢見てんじゃないよ。

 ですが、それを補うのが大天使ガブリエルちゃん。

 彼女を天使にしたかったのはモヒカン・ゴッド君のメンタルを守護してもらうためでは有りません。

 必要だったのは天使の使える『汎用スキル』《天使の微笑み》。

 このスキルは対象一体に低確率の【即死】を与えるというもの。

 淫魔が汎用スキルで【魅了】を使えるように、天使は汎用スキルに【即死】を持っています。

 ではこれで【キング・バジリスク】を【即死】させようと、し・た・と・こ・ろ・で!

 

 皆さんお待ちかね、アクシデントサークルでジャンプ!

 目指すは皇国の辺境にある先々期文明の遺跡、二人の超級が遭遇したこの地点の上空に飛んで行きましょう!

 何故ここかって?

 ここには現れるんですよ、最初にして最高の<SUBM>【一騎当千 グレイテスト・ワン】が。

 フラグマンの友達、レオナルド氏の最高傑作であるガーゴイル型ゴーレムが管理AIに回収されて<SUBM>になった存在で、ぶっちゃけ単純性能なら<SUBM>の中でもトップです。

 いやコイツマジで強いんですよ、まずめちゃくちゃ硬い、神話級金属を超える超級金属で全身を造られたブルジョワ仕様で、第一次騎鋼戦争時点だと【破壊王】でもダメージ通せません。

 最終奥義の強度無視可能な空間破壊でようやくといった所で、この時点で相当ですけどまだあります。

 あらゆる熱変動に対する完全耐性、魔法攻撃に対する完全耐性、無重力飛行可能な翼が付いて居るんですよ。

 更に更に、万物を粉砕する超振動の尾を持ち、口腔には分子振動熱線砲とかいう物騒極まりないモノまで搭載されています。

 レオナルド氏煌玉竜よりヤバいモン造るとかマジで真の天才、これはフラグマンも後方理解者面して居ることでしょう。

 

 とまあ、全ての<SUBM>に勝ち目があるとかいう激ヤバモンスターがグレイテスト・ワンなのですが、そんなグレイテスト・ワンが負けるパターンの一つに【即死】があります。

 魔法攻撃に対する完全耐性はあっても、状態異常に対する完全耐性は持っていないんですよ。

 まあ、そもそも基礎耐性が高すぎて誤差みたいなもんなんですけど、同じ<SUBM>であるグローリアの《真・絶死結界》とか喰らうと普通に死にます。

 つまりですね、今回のRTAは『バフ判定の【即死】』でグレイテスト・ワンを討伐するチャートなんですよ。

 

 という訳で、光に包まれたモヒカンゴッドとガブリエルの眼前には金とも銀ともつかない色をした巨大ゴーレムが出現しました。

 このタイミングで皇国に投下されるので、空の上でこんにちわですね、挨拶代わりに死んで貰いましょう。

 大きすぎてもはや二人には壁のようにしか見えないでしょうが、ガブリエルは既にスキルを発動していますので、訳が分からなくても問題ありません。

 はい、《天使の微笑み》命中! 

 【即死】一丁入りましたーー!

 

 光の粒子になって消滅していきますね……そしてモヒカン・ゴッド君の手の中に宝櫃が現れた所でタイマーストップ!

 記録は三〇分二一秒、世界記録達成です!

 という訳で<SUBM>単独討伐RTAはこれにて終了、ご視聴ありがとうございました。

 ガブリエルちゃんは空を飛べますが、空は強力なモンスターの生息圏なので無事に地面に辿り着けるのかは運ですね、二人には頑張ってほしい所です。

 では早速他の無限級に自慢しに行ってきますので、さようなら!

 

 ◆

 

 時は少し遡り何処までも続く白い空間。

 そこに人間とは思えない異形の存在達、このゲームの管理AIが揃っていた。

 彼らはこのゲームの一周年を記念して、自分達が用意した最大級のイベントを開催しようとしているのだ。

 それこそ<SUBM>の投下。

 単独で大陸を滅ぼせる厄災を、マスター達への試練として解き放つ一大イベント。

 百の超級を揃えるために様々な準備をして来たが、その中でも特に大きなイベントとなるため管理AI達の期待も大きく、趨勢を見守る為に殆どのメンバーが揃っていた。

 

 「では、【一騎当千 グレイテスト・ワン】を投下する」

 

 空間がひび割れ、皇国の上空に最高のゴーレムが姿を表す。

 ジャバウォックが保有する中でも特殊性が低く、通常のボスモンスターの発展系といえる個体であり、最も御し易い存在だ。

 だが、それは<SUBM>の中で弱いというわけでは無い。

 純粋に強い、それこそ現在の皇国の戦力では対処不可能と判断する程には。

 だからこそ皇国の首都を目指して進ませ、多くのマスターに試練を課し進化を促す。

 そう考えていたのだが。

 

 「投下地点に空間干渉を確認した。これはアクシデントサークルだ……あっ」

 

 レドキングが自身の能力である空間に干渉する力を感じとり、ジャバウォックに伝えようとした時。

 グレイテスト・ワンが【即死】した。

 

 「「「「「「「「「「「「………………」」」」」」」」」」」」

 

 その場に居た全員が一瞬何が起こったのか分からず無言になる。

 そして、自動的に表示された討伐者の情報を確認して二度驚いた。

 

 【一騎当千 グレイテスト・ワン】

 討伐MVP:モヒカン・ゴッド Lv0(合計レベル:0)

 <エンブリオ>:【呪胎告知 ガブリエル】

 MVP特典:超級【天上天下 グレイテスト・ワン】

 

 「第一形態、レベルゼロ……? ムゥ、状態異常をバフとして判定させるジャイアントキリングか。成る程、これならばグレイテスト・ワンの超耐性も無意味……」

 「ま、まあ、こんなこともあるよ。マスターは自由だし、僕たちの想像を飛び越えていく事だって良くあるさ」

 「あ、私が担当したマスターでは無いか。せっかちな奴だとは思っていたが、<SUBM>討伐はそんなレベルでは無いな」

 

 一大イベントとして、多くの超級が生まれる事を期待していた管理AI達だが、落胆よりも困惑の方が強くジャバウォックを励ます声が多く上がる。

 それもそうだろう、アクシデントサークルで飛んできた新人マスターのスキルが直撃して、大地に降り立つ前に討伐されるなど予想しろという方が無理がある。

 

 「これは、不味いな」 

 「まあ、そう落ち込むな。今回の事は不幸な事故だったが、そのれだけ発生し難い事態だとも言える。同じようなことが起こる可能性はまずあり得ないだろう。ここは切り替えて、次の個体に期待しようじゃ無いか」

 

 クイーンがそう言ってジャバウォックを励まそうとするが、ジャバウォックが心配しているのはそこでは無い。

 

 「確かに早々に討伐されてしまったのは残念だが、懸念しているのはそこでは無い」

 「? では何だというのだ」

 

 ジャバウォックの視線の先には、召喚モンスターとして呼び出された【グレイテスト・ワン】の姿がある。

 落下中のモヒカンゴッドをキャッチすると、重力を無効化する力で安全に地面へ送り届けていた。

 

 「劣化したとはいえ、ほぼ完全な形でグレイテスト・ワンを呼び出せることがだ」

 「確かに<SUBM>をほぼそのまま運用できるのは強いだろうが、そう問題視するほどのことか?」

 

 そういうクイーンに、ジャバウォックはグレイテスト・ワンの情報を表示して見せる。

 

 「問題なのは、グレイテスト・ワンは殆どの<SUBM>に勝ち目があるという点だ」

 

 グレイテスト・ワンは純粋性能を極限まで高めた個体、単純ゆえに強いという考え方の極地とも言える存在だ。

 グランバロアへ投下する予定の白鯨に対しては、その攻撃が一切通用しないため、そのステータスで陸地まで押し込めばそれだけで勝てる。

 アルター王国へ投下予定の三極竜に対しては、最初に二本角を破壊さえすれば、後は一本角の極光も三本角のステータスも正面から捻じ伏せられる。

 それに進化したガブリエルが加われば、作業の如く<SUBM>が狩られる可能性があり、それでは通常の<UBM>と変わらない。

 

 「今後はこのマスターが動けないタイミングで投下する必要があるな。もしくは、投下するタイミングで別の<UBM>で誘導するか」

 

 今後の対策を考えながら、次の災厄を解き放つ準備を進める。

 世界の危機は、彼らの目的が達成されるまで決して終わらない。

 

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