<Infinite Dendrogram><SUBM>単独討伐RTA風   作:菌床

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二千年越しの決着

 

 

 モンスターには階級が存在する。

 その区別方法は、二通りの方法がある。

 

 一つはレベルを基準にした階級。

 五〇レベル以下を下級モンスター。

 五〇レベル以上を上級モンスター。

 この方法はあくまでもレベルを基準にしたものであり、そのモンスターの脅威度とは直結しない。

 そのせいであまり使われて居なかったりする。

 

 そして、二つ目は肉体性能などの強さを基準にした区別方法。 

 『ティアンを基準とした』ものであり、デンドロ内ではこのランク分けが一般的に使われる。

 

 亜竜級モンスターは下級職パーティーと同格とされ、上級職一人と同格。

 純竜級モンスターは上級職パーティーと同格とされ、超級職一人に伍する。

 伝説級モンスターともなれば、超級職ティアンや凖<超級>でも無ければ勝利は難しい。

 そして、神話級モンスターはもはや災害で、超級職ティアンがパーティーを組んで討伐に当たる必要がある。

 

 これらがデンドロ内でのモンスターのランク分けだが、ここに属さない存在はこう呼ばれる。

 

 <イレギュラー>。

 それはあらゆるモンスターの頂天。

 世界の創造主に定められた枠組みを超えた理外の存在。

 一度現れれば、単独で大陸存亡の危機とさえ恐れられる怪物達。

 逸脱者たる<超級>が徒党を組まなければ太刀打ち出来ない存在だ。

 

 そして、<イレギュラー>に到達した中で、管理者の管理下に置かれた存在は<SUBM>として区分される。

 <イレギュラー>と<SUBM>は基本同格だ。

 違いは管理できて居るかどうかしか無い。

 もっとも、格が同じというだけで明確な実力差がある場合もあるのだが。

 

 ともかく、これらモンスターの分類にて、一つ段階が上がる毎にそのステータスは数倍に跳ね上がる。

 ある程度の振れ幅はあるものの、その程度の実力差があるという事だ。

 例えばだが、もしも伝説級モンスターの性能を数倍にする事ができれば、その実力は神話級の域に達する。

 そして、神話級モンスターの性能を数倍にする事ができれば、その力は<超級>と比べても遜色はないだろう。

 

 さて、ではもしも。

 もしもだが、<SUBM>をほぼ完全な形で配下に置ければ。

 もしも、その<SUBM>の力を()()()()()()()()()()()

 

 いったい──それは何に伍するのだろうか。

 

 

 ◆

 

 

 その時、王都に居た全ての存在はソレを知覚した。

 否──王都だけではない。

 荒野にて黄昏の戦神と激突する怪獣女王。

 数多の怪物を取り込み変貌する怪物の王。

 

 そして、天・地・海に座する竜の王。

 彼らは一様に、その存在の内包する力を認識する。

 何らかのスキルでは無く、彼らの本能がその存在の内包するエネルギーを感じ取ったのだ。

 

 天は哄笑し、地は想起し、海は黙視する。

 

 三者三様の反応。

 だが、彼らには奇妙な共通の確信があった。

 アレは──己に届き得ると。

 

 

 天地を照らす極光と共に王都上空に顕現した存在。

 

 一〇〇メテルを超す翼持つ巨体。

 身体を構成するのは、金とも銀ともつかぬ光沢の超級金属。

 それは巨大で、勇壮で、美しい……()()()

 

 その姿形だけは普段と変わりなく見えるが、一回り大きくなった以外に一点だけ違う箇所がある。

 頭上に伸びる角が変形し、()()()()使()()()()()()()()()()()()()()

 己こそ天の使いとでもいうように、その頭上で燦然と輝いて居る。

 

 

 これこそ、【大預言者】モヒカン・ゴッドが使役する最大最強にして──『最高』の召喚モンスター。

 

 【グレイテスト・ワン】──赤色巨星形態である。

 

 

 『───』

 

 その眼光が迫り来る【生滅砲弾】の雨を確認する。

 そして……全身から赤いオーラを放出した。

 《竜王気》だが、その規模と質量はこれまでとは桁が違う。

 王都を包むどころか、大地を覆い尽くすのではないかというオーラの奔流が立ち昇る。

 先程までも山の如き《竜王気》を放出していたが、ソレでは表現として不十分極まる。

 

 

 何せ、迫り来る【生滅砲弾】。

 避得ぬ滅びの雨──()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 あらゆる物質を破壊する固定ダメージを与える【生滅砲弾】。

 降り注ぐ全ての砲弾が《竜王気》に呑み込まれ、反対属性の対消滅反応によって星屑の如く明滅しながら消えていく。

 先程までは反対属性の《竜王気》だろうと、その莫大なダメージを伝播させて削っていたが、それさえも減衰し切る圧倒的な質量と出力で押し切って見せた。

 さながら、雨樋の悪魔像の面目躍如とでもいうべきか。

 

 圧倒的な物量を、暴力的なまでの質量で押し除ける。

 普通ならば出来るはずがない事だった。

 なにせ、相手は先々期文明を築いた天才が造り上げだ兵器。

 この時代のあらゆる兵器を凌駕するその性能に対して、正面から推し勝てる機構などありはしない。

 

 だが、この悪魔像はこの時代の作品では無い。

  

 このゴーレムこそは、先々期文明末期に創られたモノ。

 かの天才をして、『真の天才』と言わしめた人物の──『最高傑作』。

 その作品を数倍の性能に跳ね上げたのならば、砲弾一発……完封出来ぬ道理無し。

 

 

 此処に、王都へ放たれた二発の【四禁砲弾】は防がれた。

 

 だが……まだ終わってはいないのだ。

 

 【グレイテスト・ワン】は知覚していた。

 皇国首都に座する【皇玉座】から──三発目の【四禁砲弾】が放たれようとして居ることを。

 故に、皇国首都へ向かって飛翔する。

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ◆

 

 

 【グレイテスト・ワン】の 赤色巨星形態には……()()()()()()()()()

 

 【大小喚の輪】は召喚モンスターを最大で数倍に強化された状態で召喚出来る。

 だが、そのコストは通常の数十倍は必要とされる。

 伝説級上位の召喚モンスターを数倍に強化し、神話級モンスターとして召喚した場合でさえ、莫大なMPを要求されていた。

 それこそ、怨念を貯蔵しエネルギーへ変換する特典武具が、戦争への不安で莫大な怨念を溜め込んだほぼ全てを消費しても僅かな時間の顕現が限界だった。

 ならば、<SUBM>を数倍に強化して呼び出す場合は、一体どれほどのリソースを要求されるのか。

 

 

 現段階では、戦闘をしなくともおよそ一時間で肉体を維持出来ずに召喚解除される。

 

 

 そして、戦闘すればそこから更に削られていく。

 複数の動力炉を搭載していても、遠からず消費エネルギーに生産が追いつかず破綻する。

 内蔵する特典武具に大量のエネルギーを溜め込んで入るが、それも長くは持たないだろう。

 

 元々【グレイテスト・ワン】は、召喚コストを自活出来る代わりに生前に比べて性能が下がっていた。

 一日に一度しかスキルを使えず、ティアンの子供にさえギリギリ殴り負ける貧弱なマスターにアジャストした結果だ。

 しかし、それは決して召喚コストが少ないという訳では無い。

 当時から神話級悪魔にさえ殴り勝てる存在の維持に必要なリソースが少ない筈がなく、成長するにつれてそのコストも増えていった。

 動力炉の性能も上昇し、複数の動力炉を追加で搭載した事で現在は非戦闘時には貯蔵出来る程度には余裕がある。

 だが、それでも数十倍以上に膨れ上がれば賄い切れない。

 

 本来ならば破壊されようが召喚が解除されようが、マスターが居れば複数の特典武具によるクールタイムの省略で何度でも即座に呼び出せる。

 しかし、そのマスターはデスペナルティとなっている。

 

 

 まさに赤色巨星の如く……臨終間近の存在となったのだ。

 だからこそ、残された時間で成すべき事を成さねばならない。

 

 

 【グレイテスト・ワン】の目的は三発目の【四禁砲弾】の発射阻止。

 二発は自身の移動速度の問題で王都付近で迎撃するしか出来なかったが、今の自分ならば発射される前に皇国首都へ到達出来る。

 莫大な《竜王気》を推進剤として、早く速く疾く──

 

 己の役割(タスク)を果たすために、終着点へ向かって飛翔する。

 

 だが、【グレイテスト・ワン】の広域探知機能が一つの反応を拾う。

 それは、()()()()()()()()()()()U()B()M()()()()()()()()

 

 

 ◆

 

 

 ドサリと、最後の獣が撃ち殺される。

 

 「──ふむ、三発目には間に合わんな」

 

 <天獄の駒>ザナファルドはそう呟いた。

 玉座から齎される情報には、数値を疑うエネルギーの塊が此処へ向かっている事が表示されている。

 内包するエネルギーが跳ね上がっているが、対象の反応は記録されている以上間違いでは無い。

 それが示す答えは一つ。

 

 最高の<SUBM>が──皇国に座す<イレギュラー>を排しに来たのだ。

 

 「見たい……見たいな。【天竜王】の気持ちも分かるというものだ」

 

 表舞台に干渉せず、世界の動乱を愉しんで来た生死物。

 ザナファルドは、アレが飽きもせずに世界を眺めていた理由が少しわかったような気がした。

 何より、<SUBM>と<イレギュラー>が戦えば、その影響で更なる進化を遂げる者が現れるかも知れない。

 是非ともそうしたい所だが、今の自分は契約に縛られる使いっ走り。

 お上の命令には逆らえない。

 

 「アレが到達するよりも姫の迎えの方が僅かに早いか……少しくらい遅れてくれないものか」

 

 既に獣の化身とは問答を終えており、約定を反故にする事は出来ない。

 ならば、せめてトラブルで迎えが遅れてくれないかと考える。

 まるで遊園地から帰りたがらない子供のような考えだが、内容は全く笑えない点だけは違っていた。

 

 「【四禁砲弾】はあくまでも玉座の機能の一つに過ぎん。向こうも切り札を切ってきた以上、全ての性能を発揮出来るかと思っていたのだがな」

 

 間の悪い事だとぼやかずにはいられない。

 しかし、その場合【皇玉座】の《徴収》によって皇都に居る全ての生物が死に絶えていた事だろう。

 それこそが、歴代の皇王が砲弾以外の機能を使用しなかった理由。

 まともな感性をして居れば、絶対に選択肢無いだろう。

 もっとも、ザナファルドがその事に何か後ろめたさを感じる事は絶対にあり得ないため、使用を躊躇しなかっただろうが。

 

 「ああ──来たか」

 

 

 【皇玉座】周辺の空間が歪み始める。

 これは引越しの前触れに過ぎない。

 【天竜王】陣営からの迎えが、【皇玉座】を回収しに来たのだ。

 

 天竜王統の末姫にして、空間干渉という破格の能力を持つ神話級<UBM>。

 その銘を【界竄竜 ワールド・アウト】。

 

 彼女は長距離空間転移さえ可能とする力で、<イレギュラー>を運ぶよう命じられて参上した。

 そして、それは皇国首都での戦いが終結する事を示していた。

 夥しい犠牲を出した未曾有のテロは、その首魁の逃亡によって終わりを告げる。

 

 

 「では行くとす────何だ、あれは?」

 

 

 ザナファルドの視線の先。

 玉座のモニターに、不可思議なモノが映って居た。

 

 それは尋常ならざる光を放つ、一体の悪魔像だった。

 

 

 ◆

 

 

 【グレイテスト・ワン】は目標に逃げられると理解した。

 自身が辿り着くよりも速く、相手は【皇玉座】ごと空間転移で逃げるだろうと。

 

 かつての【グレイテスト・ワン】ならば、逃走する相手を追う事は無かっただろう。

 かつて地竜王統が人間の領域に攻め込み、自身がそれを撃退した時。

 首魁である【金竜王】を倒せば周囲の軍勢は撤退を開始し、自身も地竜を退け村を守る事を命じられて居たため、追う必要が無かったのだ。

 

 だが、今の彼は理解している。

 このまま下手人を流せば……()()()()()()()()()()()()

 主人から解釈の幅が広い命令をされて居る今は、後顧の憂いを断つ必要性が有ると自己判断した。

 

 しかし、現在地から【皇玉座】のみを攻撃する手段は無い。

 分子振動熱線砲ならば届くが、【皇玉座】の防御を抜く威力で放てば周辺に甚大な被害をもたらす事は間違い無い。

 何より、周囲の空間が歪んでいる以上、下手な攻撃をすれば街に逸らされる可能性もある。

 

 完全に手詰まり。

 否、一つだけ手段がある。

 

 『──対【超闘士】兵装構築開始』

 

 かつて騎鋼戦争にて自身を完封した、人の形をした適応の化身に対抗し編み出した技術が。

 

 第一次騎鋼戦争、王国側の全超級が参戦した戦いにて、【グレイテスト・ワン】はフィガロというバグキャラに遭遇した。

 複数の属性攻撃で《竜王気》を削り取り、特典武具で振動を中和し白兵戦へ持ち込み、一〇〇万を超える攻撃力に至った栄光の剣で超級金属の体を何度も砕かれた。

 主人である【大預言者】の防御無視広範囲【即死】も、まるで見えているかの如く回避し反撃を叩き込んでくる。

 そのあまりの理不尽さに……

 

 ──成る程、【超闘士】とはこういう存在なのか

 

 と、【超闘士】というジョブそのものを誤解した程だった。

 

 そんな理外の対応力を持つ存在に対抗し、編み出したのがこの技だ。

 

 

 『──《竜王気》極限圧縮』

 

 

 天を覆う莫大な《竜王気》が、少しずつ小さくなっていく。

 否、圧縮されているのだ。

 

 この世界には魔力と魂力と呼ばれるモノがある。

 外なる万能、内なる万能と呼ばれるそれらは、この世界であらゆる現象を引き起こす。

 中でもその二つを混ざり合わせて扱う《竜王気》と呼ばれるスキルも存在しており、魔力を緩衝材としあらゆるダメージを減衰させる有用なスキルだ。

 だが、《竜王気》には先がある。

 

 それは魂力による特性の付与と──圧縮による物質化。

 

 【グレイテスト・ワン】は既に前者を修めている。 

 【拳竜王】を始めとした複数の竜王を討伐し、そのリソースと概念を取り込んでいるからだ。

 その熟練度は高く、自在に特化した属性に性質を変化させる事であらゆる攻撃を対消滅させられる程だ。

 

 だが、それだけでは《竜王気》の最終闘法には届かない。

 才ある者が長い年月をかけて辿り着く極地なのだから。

 しかし、【グレイテスト・ワン】には()()()()()()

 

 生前に討伐した【金竜王】から取り込んだリソースは、特典武具となった今も残っているのだ。

 リソースは取り込む事で器を満たす事ができるが、それ以外にも受け継がれるモノがある。

 【グレイテスト・ワン】はその情報を解析し、既に己の身に馴染ませてある。

 

 『──反重力機構正常動作確認』

 

 【グレイテスト・ワン】の体が眩い光に包まれる。

 

 この光の原因は、【グレイテスト・ワン】の口腔に圧縮された《竜王気》が発している光。

 非常に強力な《竜王気》が圧縮された事で、原子核から陽子が弾き出され原子崩壊を引き起こして居るのだ。

 光崩壊と呼ばれる現象が強制的に引き起こされた事で漏れた光、やがてその光が収まっていく。

 

 

 

 そこには──黒があった。

 

 

 黒く、暗く、昏く。

 まるで世界に穿たれた陥穽の如しだ。

 否、如しでは無い。

 

 ──文字通り()()()穿()()()()()()()()()

 

 『──標的確認、距離計測終了、照準固定完了、効果範囲限定……』

 

 これこそは、この世ならざる法則を物質化させたモノ。

 この世界に刻まれた原初のプログラム。

 《竜王気》の最終闘法──神装である。

 

 

 『──神装《擬・超新星砲弾》発射──』

 

 

 漆黒の砲弾が皇都に座す鋼の皇帝へ放たれた。

 

 その攻撃を感知した【皇玉座 ドライフ・エンペルスタンド】は、即座に戦闘態勢へ移行する。

 【皇玉座】は優れた探知機能によって、それが自己の存続を脅かす外敵だと即座に認識したからだ。

 

 だが、【皇玉座】にとって防衛とは全ての外敵を滅ぼすこと。

 例えそれが、国そのものを犠牲にしたとしても。

 

 【皇玉座】が迎撃に使用したのは『空間固定』効果を持つ《光線》。

 触れた対象を空間ごと固める《光線》で動きを止め、そこへ莫大な固定ダメージを与える《光球》を叩き込む。

 これならば超々音速で飛来する砲弾だろうと、確実に消し飛ばせる。

 空間歪曲で照準が困難な状態だが、持ち前の演算能力で軌道を計算する。

 固定ダメージの伝播で周囲に甚大な被害が出るだろうが、そんな事は些事でしか無い。

 

 そんな皇帝の無慈悲な光が漆黒の砲弾に触れ──

 

 ()()()()()()()()()()

 

 更に、追加で放たれた固定ダメージの光球も、排水溝に流れ込む様に呑み込まれる。

 

 もしも【皇玉座】の思考を表すなら、『そんな事が有り得るのか?』──だろう。

 

 それも当然だ。

 何せ、【皇玉座】の探知機能には、()()()()()()()()()が表示されて居たのだから。

 

 

 ◆

 

 

 【グレイテスト・ワン】が編み出した神装。

 《擬・超新星砲弾》を端的に表すなら──ブラックホールだ。

 

 物質化させた《竜王気》に中性子の性質と太陽の二五〇倍を超える仮想質量を付与し、光崩壊によって意図的に重力崩壊を引き起こす。

 結果として、神装は擬似的な超新星爆発を発生させ、小型のブラックホールを創り出したのだ。

 

 しかし、擬似的に引き起こした超新星爆発のエネルギーをブラックホールとして転用し、砲弾として射出するという狂気の代物を制御出来るのか。

 その答えは【グレイテスト・ワン】に搭載された機構に答えがある。

 

 超新星爆発の熱と衝撃は、熱変動完全耐性と内蔵された瞬間衝撃吸収機構によって制御。

 重力は翼の反重力機構によって周囲に一切影響を与えない様に制御。

 これらの要素により、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 この一撃を喰らえば<イレギュラー>とてタダでは済まないだろう。

 

 しかし、現在【皇玉座】の周囲は、【界竄竜 ワールド・アウト】の影響で空間が歪曲している。

 間違い無く直撃はしないだろう。

 

 故に【皇玉座】は安堵した。

 守れる、護れる、確実に自己を守護出来る。

 【皇玉座】の演算回路は、そう判断する。

 

 だが、【皇玉座】は知らない。

 この神装は理外の対応力を持つ──フィガロを仮想敵として構築されて居るという事を。

 

 

 《擬・超新星砲弾》が希釈された空間に接触した瞬間。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 「────!!?」

 

 今回は【界竄竜 ワールド・アウト】さえも驚愕した事だろう。

 自身より強い相手が居る事は理解して居る。

 自身の能力を突破出来る存在が居ることも理解して居る。

 だが、歪曲した空間自体を呑み込むという意味不明な方法で突破されたのは初めての経験だ。

 

 空間を歪曲する力そのものが呑み込まれ、正常な距離へと近付いていく。

 この世界において空間操作は最上位の攻防手段とされる。

 どれ程の威力の攻撃手段だろうと、どんな属性の魔法だろうと、空間に干渉する力を持たなければ無意味でしか無いからだ。

 

 しかし、これこそは超質量によって時空さえ歪める暗黒の天体。

 

 【超闘士】が如何なる対応力を持とうとも、その全てを無為とするために創造されたのだから。

 例え空間希釈だろうと、例え空間を遮断する結界だろうと、例え空間を切り開く刃だろうと、その全てを超質量で押し潰す。

 そう、この神装の本質は──

 

 ──()()()()()()()()()()()()()()()()()こと。

 

 あらゆる技巧、あらゆる異能、あらゆる法則。

 それらを歪め、潰し、呑み込み、事象の地平線へ吹き飛ばす。

 赤色巨星形態でしか使用する事の出来ない、【グレイテスト・ワン】にとっての──最終奥義。

 

 かつて、彫金師レオナルドは、名工フラグマンの機械式技術を魔法技術で再現出来ないかと考えた。

 機械式技術を解析し、魔法技術へ落とし込み、『最高』へと組み込んだ。

 【グレイテスト・ワン】も同じ事をしたのだ。

 【超重砲弾】の情報を元に、魔法技術によって模倣発展させた。

 

 二千年前の先々期文明ではフラグマンの機械式技術が尊ばれた。

 レオナルドはフラグマンが優れた技術者であると誰よりも理解して居たため、その事については特に思う事はなかった。

 だが、機械式を至高とし、古くからある魔力式ゴーレムなどを下に見る……その風潮には抗ってみようと『最高』を創った。

 それから余りにも長い年月が流れ。

 

 今此処に、二人の天才が手ずから創り上げた作品が向かい合った。

 ならば、今こそどちらの天才の技術が優れて居るのか……。

 

 

 二千年越しの──決着の時が訪れる。

 

 

【敵性存在の脅威度修正】

【出力制限を……

 

 数多の制限を解除し、悍ましき機能を露わにする【皇玉座】。

 天才フラグマンが造り上げてしまった兵器は、歪んでしまった創造理念のままに敵を滅ぼさんとする。

 

 ──だが、その全てが呑み込まれる。

 

 空間固定も、固定ダメージ弾も、多重障壁も、それが如何なる機構であろうとも、全て呑み込む漆黒の砲弾の前にはその全てが無意味。

 

 

 漆黒の砲弾は【皇玉座】に直撃し──膨張した。

 

 

 【皇玉座】全体を呑み込むサイズにまで膨らんだ後、極限まで縮小し……消滅した。

 

 皇都の中央に、巨大なクレーターが形成されていた。

 

 しかし、周囲には微風が吹いた程度の影響しか与えて居ない。

 《擬・超新星砲弾》は対【超闘士】を想定して構築された神装である。

 異常な対応力を持つ脅威に対抗するために創った技であり、極限の殺傷能力を有する。

 たが、【グレイテスト・ワン】は敵を倒すためなら周辺被害を許容するわけでは無い。

 被害が無いならそれに越した事はないのだ。

 だからこの神装は、周囲に被害を出さないように完全に制御されている。

 

 あらゆる障害を超えて敵を排除し、周辺被害も極限まで抑えたいという余りにもわがままな願い。

 それがカタチとなったのが、【グレイテスト・ワン】の神装なのだろう。

 

 此処に──勝敗は決した。

 

 既に、創造主は在らず。

 既に、比較対象は在らず。

 全ては時の流れに埋もれてしまった。

 そこに、何か意味があった訳ではない。

 だが、成し遂げたことがある。

 ただ証明の為に創られた『最高』は──二千年の時を超えて世界に示したのだ。

 

 己こそが『最高』の守護者であると

 

 

 ◆

 

 

 

 『………』

 

 【グレイテスト・ワン】の身体が、光の粒子となって崩れていく。

 全エネルギーを放出した事で、莫大な力を持つ身体を維持出来なくなったのだ。

 その姿はまるで、終わりを迎えた星の様。

 

 

 『……逃げられた』

 

 

 悔しそうにそう溢す。

 <UBM>を討伐した際のリソースの変動が無いからだ。

 つまり、【皇玉座】はまだ滅んでいない。

 恐らくだが、あの空間を操る<UBM>によって空間転移させられたのだろう。

 だが、それも全てでは無い。 

 即座に転移させるために、殆どの箇所は置き去りにされた。

 大半の部分は消し飛んでいる為、最低限滅ばない程度の核となる部分の周囲だけ持ち去るのが限界だったのだ。

 つまり、暫くはまともに作動することもできないだろう。

 

 『………』

 

 <天獄の駒>にやって甚大な被害を受けた皇都。

 多くの悲劇が在り、失ったモノも多かった。

 だが、やがて人々は立ち上がって行くのだろう。

 少しずつ、一歩一歩、余りにも小さい当たり前を積み重ねて。

 

 或いは、自分が何かをする必要は無かったのかもしれない。

 

 何せ人は進歩するものだ。

 その歩みの中で、どんなに優れた物でも過去の存在になって行く。

 だからきっと、いつかは自分も時代遅れの骨董品になるのだろう。

 そう考えると、消えゆく身体が少し暖かくなった様な気がする。

 何故なら、それは人類が『最高』の先へ行ったという証明に他ならないのだから。

 

 『どうか、お元気で──』

 

 ふわりと、と一陣の風が吹いた時。

 祈りの言葉は、風に溶けて消えたのだった。

 

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