『ボクが美少女になっちゃって、魔法のタロットで放課後探偵団!? ~中身はガチの秀才男子だけど、身体が勝手にドキドキしちゃう 作:夏目陽光
第七回:勝利(ネツァク)の散華(さんげ)
理性の堰(せき)が、音を立てて決壊した。
私の意識は、もはやこの十五歳の肉体を制御する「王」ではない。押し寄せる本能の奔流に身を任せ、どこまでも流されていく一辺の木屑(こくず)に過ぎなかった。
少女の肉体は、私という魂の拒絶をあざ笑うかのように、圧倒的な「勝利」を宣言していた。
指先が、シーツの冷たい感触を求めて這(は)い回り、喉の奥からは、私の意志とは無関係な、獣じみた熱い嬌声(きょうせい)が絶え間なく漏れ出す。脳を支配しているのは、論理的な推論ではなく、ただ「生きたい」「満たされたい」「壊されたい」という、剥き出しの情動の嵐であった。
私は、私を失いながら、この肉体が享受する放蕩(ほうとう)のなかに、底知れぬ安らぎを見出している自分に戦慄した。
かつての私は、この熱を「汚れ」と断じ、冷ややかに蔑(さげす)んでいたはずだ。だが、今はどうだ。鴉(アーラブ・ザラク)が私の記憶を一つ、また一つと啄(ついば)み、どこか遠くへ散らしていくたびに、私の「少年としての自尊心」は軽くなり、代わりにこの少女の「淫(みだ)らな生命力」が重みを増していく。
鏡を見る必要さえなかった。
瞼(まぶた)の裏に焼き付いているのは、もはや探偵の眼差しではない。ただ、男を、温もりを、自分を焼き尽くすための業火を求めて彷徨(ほうりょう)する、一匹の雌の渇きであった。
「……いい。これで、いいのだ」
私は、誰にともなく、彼女の湿った声で呟いた。
この勝利(ネツァク)のなかで、私はようやく、自分という重荷から解放されたのである。冷たい知性で世界を解剖し、真実を追い求める苦痛から、この肉体の熱が私を救い出そうとしている。
男の影が、私の視界を覆った。
彼は、理性を失い、ただ本能のままに身をよじる私を見て、静かに、そして残酷な勝利の笑みを浮かべた。
「ついに、鴉が君の理性を散らし尽くしたか。おめでとう。君は今、初めて『生』そのものになった」
男の手が、私の熱い肌に触れる。
私は、その接触を「捜査の手がかり」として分析することさえ忘れていた。ただ、流れ込んでくる熱量に、魂の芯まで蕩(とろ)け、彼という海の中に溶けて消えることだけを願っていた。
知性は散り、本能が勝った。
私は、私という名の密室を、自ら内側から爆破し、その焦げ跡に咲く、狂おしいまでの情熱の花となったのである。
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