ちょっと変わったガンダム世界を行く   作:乾燥海藻類

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連邦編③

「ぬううっ、殺人的な加速だ!」

 

機体背部に取り付けられた大型ジェットパックにより、ガンダムは短時間ながらも飛翔能力を得た。Gファイターは犠牲となったのだ。

しかしなぜ俺はこんな鉄砲玉みたいなことをしているのだろう。誰が悪いんだ? ジェットパックを開発したテム博士か? こんな作戦を思いついたブライトか?

 

うーん、8:2でブライトだな。機会があれば殴ってやろう。

ジオンの地上部隊が見えてきた。敵MSの大多数はザクのようだ。航空部隊はいない。ドップもルッグンもいなければ、ドダイに乗ったザクもいない。両端に陸上艦が見える。あれはギャロップだな。メガ粒子砲を2門備えた強力な高速陸戦艇だ。

中央には玉ねぎに4本の脚が生えたようなMAがいる。アッザムだ。こっちにも配備されていたのか。

 

「アッザムリーダーは厄介だな。まずはアレを仕留めるか」

 

ネタが割れた兵器に引っかかることもないと思うが、友軍に説明するのも面倒だ。それに空を飛ばれてメガ粒子砲をまき散らされるのも脅威だしな。

アッザムは強力な移動要塞ではあるが、飛行時間に制限があり、エネルギーも大量に使うため長期戦には向いていない。

眼下のアッザムに向けてライフルを構える。が、高速で飛行しているせいか、照準がぶれる。

 

「やはり厄介だな、空気というやつは。そこだっ!」

 

ライフルを放つ。ビームの矢が突き刺さり、アッザムは大破炎上した。

次はギャロップを狙う。砲塔がこちらを向き始めるが、射角を取るのに手間取っているようだ。

しかし対応の早いザクの何機かが、こちらに向けてバズーカを放っている。だがそんな弾など当たりはしない。

 

ライフルを2射。直撃。ギャロップが爆散する。旋回してさらに2射。もう1隻のギャロップも沈黙した。最後に脚部のミサイルポッドを、眼下のザクに向けて無照準で全弾発射。ミサイルの雨が地上に降り注いだ。

そのままジオン部隊の上空を駆け抜け、ジェットパックとミサイルポッドをパージする。

 

「こちらケンプ、戦艦はすべて排除した。これより挟撃して掃討戦に入るぞ」

『ホワイトベース、了解。MS隊を出撃させます。ケンプ大尉、お気を付けて』

「了解。ありがとう、セイラさん」

 

ミサイルの雨でどれだけのザクが沈んだかわからないが、残り50機は下らないだろう。

戦いは数だよ兄貴とはいうが、やりようはある。というか、どうも敵は浮足立っているように見える。

まあ戦艦2隻とMAをあっという間に撃破されたのだ。無理もない。

 

あのどちらかが旗艦だったのは明白だ。指揮官を失っても、隊長がしっかりしていれば戦線は維持できる。それに万が一の場合を想定して、指揮権を引き継ぐ者は決めているはずだ。

しかし立て直す隙を与えてやるほど、俺は優しくない。

 

ビームライフルのエネルギー量を考えても、挟撃しながら味方と合流する方が無難だな。

砲撃音が聞こえた。キャノンとタンクの砲撃だろう。

さすがに味方の砲撃に巻き込まれるのはマヌケ過ぎる。俺はザクを掃討しながら戦場を斜めに突っ切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『隊長、ご無事で!』

「ああ、シイコ少尉。作戦は順調のようだな」

 

シイコ少尉の駆るガンダム試作0番機(エンゲージ)に破損はなさそうだった。エンゲージは強襲突撃を主眼に開発されたMSで、リアスカートにはスラスターが内蔵されており、展開することで腰部に搭載されたスラスターと合わせて非常に高い加速能力を発揮する。

 

『大活躍でしたね、隊長!』

 

少し遅れて、ジャック少尉が姿を見せた。

ガンダム試作0号機(ブロッサム)はエンゲージ以上に試作機の色合いが強い機体だ。

機体背面に2基のドラムフレームを設置し、武器マウントアームを介して多数の装備が使用可能となっている。右側のドラムフレームには大型ビーム・ライフル、左側にはレドーム状のミノフスキー粒子干渉波検索装置を装備している。

 

ミノフスキー粒子干渉波検索装置とは、ミノフスキー粒子によって発生する電波障害の度合いを検出・分析することによって、物体の大きさや位置をおおよその形で判明させることができるといった装置だ。

ただミノフスキー粒子の対症療法的に開発されたもので、完全な技術ではない。その物体が何なのか判別できるものではないし、地形データの入力も必要であるため、はっきり言って要らないと思っている。

まあ現場の人間が振り回されるのはよくあることなので、適当にデータ収集しておけとジャック少尉には言ってある。

今は使えなくても、技術が発展して何らかの形で実を結ぶというのはよくあることだ。

 

『敵の通信を傍受したんですが、どうやらアッザムとかいう機体に司令官がいたみたいです。中央の玉ねぎみたいな形のヤツです』

 

司令官が前線まで出張ってきてたのかよ。まあそういうタイプの司令官もいるか。勇敢さがアダとなったな。

 

『こちらホワイトベース。ケンプ大尉、聞こえますか?』

 

セイラさんから通信が入った。

 

「こちらケンプ。何かありましたか?」

『別動隊がカラカスの包囲に成功したそうです。これからオープンチャンネルで降伏を呼びかけます』

「了解」

 

勝負あったか。

 

「ジャック少尉、シイコ少尉、聞いた通りだ。無駄に殺すなよ。捕獲した武器も、あとで役に立つ」

『了解』

 

わずか一度の攻防で、カラカス攻略は決定的となった。

ジャブロー攻略部隊の司令官であるガルシア・ロメオという男は、どうやら直情型の人間だったらしい。ジャブローが反攻に出たという報告を受けたガルシアは、自らアッザムに乗り込み出撃した。

そして、真っ先に戦死してしまった。カラカスが降伏したのも、司令官を失ったことが大きな要因だろう。

 

エースパイロットがいなかったことも理由のひとつだろうな。ジャブロー攻撃部隊とはいっても、定期便を送る程度の攻勢で、今まで大規模な戦闘は起きていない。こんなところで遊ばせておくくらいなら、ほかの戦線に回す。

結局ガルシアという男は、それなりに統率力があり、それなりに指揮能力があり、それなりにやる気があった、ということか。

 

まあそれなりに能力がなければ、少将にまで出世なんてできんだろう。階級の上ではキシリアと同等だからな。もしかしたら宇宙では優秀だったが、地球に降ろされて腐ってしまったのかもしれない。そういうスペースノイドは結構多い。

それはともかくとして、カラカスを制圧して数日が経った頃、ブライトから召集がかかった。

ホワイトベースの作戦室に集められたクルーの前で、ブライトがしかめっ面で重々しく口を開く。

 

「オデッサで、水爆が使用された」

 

重い沈黙が作戦室を支配する。沈黙の帳が下りる中で、俺は手を挙げた。

 

「一応聞くが、使ったのはどちらだ?」

「ジオンに決まっているだろう!」

 

吐き捨てるようにブライトが叫んだ。

 

「あと、エルラン中将がスパイ容疑で逮捕された」

「中将がスパイってどういうことだよ!」

 

今度はカイが叫んだ。いや、ホントにな。佐官とか尉官じゃなくて、中将だからな。連邦軍はどうなってんだか。それともエルランに目を付けたマ・クベがすごいのか。

 

「じゃ、じゃあ連邦軍は、負けたんですか?」

 

おどおどとハヤトが手を挙げて質問する。

 

「いや、勝つには勝った。被害は甚大だがな」

 

ブライトが苦虫を噛み潰したように言った。

投入したジムも多数失ったらしい。いや、惜しいのはMSよりもパイロットだろう。MSはいくらでも造ればいいが、熟練のパイロットは一朝一夕にできるものじゃない。

 

「軍の立て直しには、しばらくかかるだろうな」

「それと、軍規も引き締めなきゃならんな」

 

俺の言葉に、若い連中はピンときていないようだ。まあ、根が善良なやつらが多いからな。

 

「捕虜の虐待だ。ジオン憎しで軍人になったやつらも多い。今回の水爆で、タガが外れるやつらが出てきてもおかしくない」

「そんな……捕虜の扱いは南極条約で決められてるじゃないですか」

「先に条約を破ったのはあっちじゃねぇか」

 

ハヤトが震える声で言い、カイがおどけるように答えた。カイもちょっとした冗談のつもりだったのだろうが、周りから睨まれて口を手で押さえた。

 

「人間の感情ってやつは複雑だからな」

 

俺はそう言うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日、虫の知らせのようなものを感じて、俺は捕虜収容所に向かっていた。なにかに導かれるように進んでいくと、ある区画で歩哨の兵士に止められた。

仕事熱心、というわけでもなさそうだ。どこか怯えているように、俺の顔と施設の奥に視線を漂わせている。

その時、一瞬だがくぐもったような悲鳴が聞こえた。

 

反射的に俺は走り出していた。

ある独房の中に無言のまま押し入り、下半身を露出していた男の顔にトゥーキックを叩き込む。向かって来た取り巻きのパンチを捌き、胸倉を掴む。

 

「ホワイトベース隊、ガンダムパイロットのウィリー・ケンプ大尉だ。一方的に殴られる痛さと怖さを教えてやろうか!」

 

そう告げると、男たちは這う這うの体で独房を出て行った。俺にビビったというよりは、階級にビビったのだろう。軍は階級が絶対だからな。相手が佐官でなくてよかった。

 

「大丈夫……か?」

 

ところどころ肌があらわになっている少女を見て、俺は驚愕した。

 

「まさかな……よもやキミに出会えようとは」

 

その少女は、アルマ・シュティルナーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルマはホワイトベースの独房に移すことにした。

 

「ブライト艦長、また眉間のしわが増えるのではなくって?」

 

苦笑するように、ララァは言った。アルマの世話を頼んだのだ。あんなことがあっては、男の俺が彼女と関わっても恐怖を与えるだけだろう。ララァに任せたのは、ニュータイプ同士だから何らかの反応があるかもしれないと思ったからだ。

 

しかしこのララァ、俺にガンダムに乗れと言った覚えはなく、並行世界の夢も見ていない。つまりただのララァだ。

いやもう、何が何だかわからない。

わからないが、たぶんララァはふたりいる。

 

ひとりは俺にガンダムに乗れと言ったララァ。おそらくあの少年と同じ上位存在のララァだ。んで、目の前のララァはこの世界に生きるただのララァなのだろう。

なんか頭痛くなってきた。もしかしたら、俺が今やっていることはただの空回りなのかもしれない。だが止まるわけにはいかない。こういうのもコンコルド効果というのだろうか。

 

「彼女、北米から来たらしいですよ」

「ふむ」

 

どうやら、北米から大西洋を迂回する形で増援が出され、連邦軍に横撃を加えるという作戦だったらしい。しかし増援は間に合わず、潜水艦も沈められ、已む無く投降したようだ。

だがアルマの部隊……なんつったっけ、ノイジーフェアリーだっけか。それってキシリアの麾下だったような気がするんだが、ガルマにも命令権はあったのだろうか。

まあガルマって兄姉からは可愛がられてたし、いざという時は使っていいと言われていたのかもしれない。

 

「あんな子がパイロットだなんて、ジオンに兵なしというのは本当なのね」

「MSに乗るのに、性別も年齢も関係ないからな」

 

コクピット周りを考えれば、あまり子ども過ぎるのは無理だが、ある程度体が成長していればMSは動かせる。悲しいが、少年兵の有用さは旧世紀に証明されてしまったのだ。まあ年齢一桁の子に銃を持たせていた旧世紀よりはマシかもしれないが。

 

「まあ、未遂でよかったですよ。女にとって、あれほど辛いことはそうありませんから」

 

捕虜のことはブライトから上層部に進言してもらい、女性の捕虜は女性兵士(ウェーブ)が管理するということに決まった。

 

「ところで、キミはどうだ? そろそろ慣れたか?」

「ええ、包帯の巻き方も、注射の打ち方も覚えました。フラウさんにもよくしてもらっています」

 

フラウもララァと同じ医療ボランティアとしてホワイトベースに乗艦している。年齢も近いし、同期のようなものなのだろう。

あとなんか、フラウとアムロが良い感じっぽい。原作ではパイロットとして人間離れしていくアムロに、少し距離を取っているようなところがあったが、技術士官としてのアムロは、機械いじりの好きな少年そのままの姿に映るのだろう。

ちなみにテム博士はジャブローに残り、MS開発に従事している。

 

それからしばらくして、水爆の件がかすむようなニュースが飛び込んできた。

ガルマ・ザビが、市民の手によって殺されたらしい。

 

 

 

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