ガルマ・ザビの訃報は瞬く間に地球全土を駆け巡った。
ガルマの統治は市民に寄り添う政治だと聞いていたが、よりにもよってその市民に殺されるとは。
まあ、連邦軍の工作という可能性もあるが。シャアはたぶん、違うと思う。あいつオデッサで目撃されてるからな。オデッサ後にニューヤークに戻ってガルマを謀るのは、時間的にかなり厳しい。
詳細はわからんが、ガルマの国葬は原作通り行われた。ギレンの演説を聞くに、ガルマは卑劣な連邦の手によって暗殺されたらしい。
『諸君らの愛してくれたガルマ・ザビは死んだ! 何故だっ!?』
「理想を抱いて溺死したのさ」
「どういう意味だい? 大尉」
と、隣で演説を見ていたカイが訊いてくる。
「ガルマはアースノイドとスペースノイドの融和を掲げていた」
「それって、いいことなんじゃないですか?」
「そうだなハヤト。コロニーを落としたザビ家の末弟が言ってるんじゃあなければな。それに彼はジオン軍の大佐だ。
「二枚舌? 薄っぺらい?」
カイが茶化すように答えた。
確かに現地の住民にとっては、生活が豊かになるのなら管理するのが連邦であろうとジオンであろうとどちらでもいいのかもしれない。それでもジオンは、自分たちの平穏を乱した侵略者でしかない。
ガルマは理想を高く持ち過ぎていた。高い理想が悪いわけではないが、それを形にできるほど彼は成熟していなかった。シャアの言葉を借りるなら、坊やだったのだろう。
「コロニー落としにより、ジオンの評価は最低だった。だが彼はその政治によって現地の住民の信頼を勝ち取り、上手く付き合っていた。そこに水爆だ」
市民の気持ちを分かりやすく表現するなら、あれだ。不良がちょっと良いことをして、実は良い人なのかなと思っていたら、犯罪で捕まって、やっぱりあいつは信用できないとなった感じかな。
ちなみに、水爆を使用したマ・クベは宇宙に逃れたようだ。ジオンが勝てば英雄、連邦が勝てば戦犯となるだろう。
「信頼ってのは、積み上げるのに時間はかかるが、崩れ去る時は一瞬だ。ジオンは、いざとなれば南極条約なんて平気で破る。それが市民の共通認識になってしまったのさ」
捕虜虐待なんてのは、言ってみれば軍人同士のことだ。だがコロニー落としや水爆などは、市民にだって影響が出る。
今回の場合はガルマ自身がやらかしたわけではないが、ジオンという
「だから市民に殺されてしまったと? でもギレンは連邦軍に暗殺されたと言ってるわ」
「わかって言ってるだろ? シイコ少尉。ギレンは、ああ言わざるをえないのさ」
正直、本当のところはわからない。もしかしたら本当に連邦軍の特殊部隊が暗殺した可能性だってある。
「でも隊長。連邦軍は、報復したりしないでしょうか?」
南極条約で禁止しているのは核の使用だ。保有自体は条約違反ではない。相手だって持ってるんだから、軽々に使うわけにはいかないという理屈だな。要するに抑止力だ。だが、撃たれてしまったからな。ジャック少尉の懸念も理解できないわけではない。
「核の撃ち合いにはならんよ、たぶんな。相手がルールを破ったからといって、こちらもルールを破ったら、その先にあるのは地獄だぞ。ルールのない戦争ほど凄惨なものはない」
連邦政府のお偉いさんたちだって、そこはわかっているはずだ。
だがなぁ、
モニターに目を移すと、ギレンの演説は佳境に入った頃合いだった。
◇
オデッサの激闘のあと、原作ではジャブロー攻略戦が開始されたのだが、北米の混乱が波及して、各地でジオン兵は追い立てられて、逃げるように宇宙へ脱出している。おそらく地上の放棄を決めたのだろう。
次の作戦はソロモン攻めか、あるいはグラナダ攻めか。
とそこで、自室のチャイムが鳴った。モニターにはララァが映し出されている。
「今、よろしいかしら? 大尉」
「ああ」
ドアロックを解除する。部屋に入ってきたのはララァと、彼女の背に隠れるようにしているアルマだった。
「あの、あの時はお礼も言えず、すいませんでした。みんなも……助けていただいたみたいで……」
みんな、というのはアルマの同僚のことだ。彼女に頼まれて(正確には彼女から事情を聴いたララァに頼まれて)調べたのだ。助けたと言っても大したことはしていない。捕虜収容所の担当官に賄賂を渡してよろしく頼むと言ったくらいだ。あの後、軍規は引き締められたようで、事件は起こっていない。
「よく言えたわね」
ララァがやさしくアルマの髪を撫でた。
「はい、お姉さま」
お姉さま? ララァがお姉さま?
ララァに視線を送ると、彼女は小さく苦笑した。
ショックを受けると幼児退行することがあるというのは、どこかで聞いたような気がする。専門家ではないので詳しいことはわからないが。
「アルマは軍人を辞めて、医療ボランティアとして働きたいと言っているのだけど、よろしいかしら?」
「ああ、いいんじゃないか」
「またそんな空返事をして。元ジオン兵なんですよ?」
ああ、そういうことか。うーん、大丈夫なんじゃないかな? いや、治療される兵士にしてみれば、複雑な気持ちなのか? でも黙ってりゃ元ジオン兵だなんてわかんないだろ。
「ブライト艦長に聞いてみよう。問題はないと思うが」
「ええ、お願いしますね」
と、ララァはにっこりと笑った。
結構お姉さましてるじゃないか。
ブライトに許可を求めに行くと、案の定渋い顔をされた。なんとか拝み倒し、何かあった時は俺が責任を取るということで、ホワイトベースの乗艦が認められた。
それからしばらくして、ホワイトベースに辞令が下った。それはサイド5へ行けというものだった。
「なんでサイド5なんだ?」
「そこに何があるってんだい? ブライトさん」
俺の疑問にカイが追従した。
「……命令はそれだけだ」
ぶっきらぼうに、ブライトは告げた。要するに、彼も理由を知らされていないのだ。もしくは、部下にも言うなと厳命されているか。どちらにしても、ブライトにとってはストレスを感じる命令だろう。
「軍隊ではよくあることさ。諸君らには知る権利がないってな。ハッハッハッ!!」
場の雰囲気を和ませるためか、リュウはことさら豪快に笑った。
原作ではジオンの目を引き付ける囮としての役割だったが、この世界のホワイトベースは、それほどジオンの恨みを買っていない。
ランバ・ラルも黒い三連星も倒していないし、ガルマを殺してもいない。
上層部からの命令は、サイド5に向かい、そこで次の命令を待てというものだった。
そんなわけでホワイトベースは、サイド5に向かうことになった。
……ところでスレッガーさんは?
◇
サイド5はルウム戦役の舞台となった場所だ。ジオン軍と連邦軍がぶつかり合い、壊滅的な被害を受けた。今では軍事的に価値がないと判断されたコロニーがいくつか残っているだけだ。
その内のひとつであるテキサスコロニーに、ホワイトベースは姿を隠すことになった。
「そこまでひどい状態ではないようです。大気の流出もありません。ただ、メインの
「……よし、そこにホワイトベースを隠す」
ブライトの指示でホワイトベースは入港を始めた。船体は港に隠れ、外からでは確認できなくなる。まあジオンもこんなところにまではやってこないだろうが……ん?
「よし、各員、体を休ませておけ。命令あるまで……」
「ブライト艦長、なにかが来る」
「なに? ケンプ大尉、どういう……」
「艦長! MSが接近しています! スカート付きが4機。それと戦艦とは違う、大きい物がいます」
オスカが慌てたように告げる。
「大きい物? 画像は出るか?」
「はい。電波障害の影響で、画質は荒いですが……」
モニターに画像が表示される。リック・ドムが4機と、中央にいるのは……ブラウ・ブロか?
「突撃艇か? こんな宙域で何を……。交戦するわけにはいかん。このままやり過ごす」
「ダメよ、ブライト」
「ミライ?」
「気づかれたわ」
船体が大きく揺れた。ブラウ・ブロのビーム砲がコロニーに直撃したのだ。
「くっ、ケンプ大尉!」
「了解。ブロッサムとエンゲージも出していいかい?」
「頼む。キャノンとタンクは支援要員として後方待機だ!」
格納庫へ向かう。すでに出撃準備は整っていた。
「ケンプ大尉、なにか危険なものを感じます! 注意してください!」
「了解だ」
アムロも何かを感じているようだ。ブラウ・ブロのパイロットはやはり……。
「ジャック少尉、シイコ少尉、スカート付きの方は任せる。俺はデカブツをやる」
『了解』
俺のガンダムが先陣を切る。出待ちのビーム砲をかわし、ライフルを応射する。だがそれをブラウ・ブロは軽やかにかわした。
「その巨体でよく動く! シャリア・ブル、やはりただ者ではないな!」
ブラウ・ブロは、というか人型をしていない機体は、その形状ゆえにAMBACシステムが機能していない。なのでバーニア操作だけで機体制御をしなければならない。これがなかなかに難しくMAが複座運用される理由のひとつだ。
「私を知っている? 何者だ!」
「知っているから知っているだけさ」
ニュータイプ対策は考えていた。表層に読まれてもいい思考を置き、深層に本命の思考を置く。さらにその中に欺瞞の思考をひとつ混ぜる。距離を詰めてライフルの引き金を素早く3回引く。2本目の光芒がサイコミュ端末を貫いた。
「こ、この精度……これが連邦のニュータイプか!?」
ちょっと戦えるだけでニュータイプ認定はやめてくれる? この程度ヤザンやブランもできるだろ。たぶんユウもできる。
「あなたもニュータイプならば、ニュータイプ全体のために案ずるべきだ!」
「それが人類全体のためというのならば、ここで俺たちが戦う理由はあるまい。キミにはわかっているはずだ。真の敵が」
「……真の……敵……。だとしても!」
背後から気配を感じて機体を滑らせる。ビームをかわしながらこちらもビームを放つ。端末が爆散した。やはり攻撃の瞬間は回避が難しいようだ。
距離を詰め、機体のスラスターを狙……うん!?
「なにぃ!?」
変形した!? なにそれ俺知らない……。なんで一年戦争時代に可変機があるんだよ! いや、可変機というか、中身が出てきたような?
だが本体がひょろっこくて不安になる。アレをデザインしたやつは相当疲れていたんだろう。もしくは憑かれていたんだろう。
「まさかキケロガの真の姿を晒すことになろうとは……」
キケロガ? ブラウ・ブロじゃねぇの? キケロガ……聞き覚えがあるような……ないような……。
というか宇宙で変形しても意味ないと思うが、大気圏内での運用を考えていたのだろうか。いや、スラスターを後方にまとめたのか。
ミサイルポッドを発射して、回避方向にライフルを撃つ。
さすがにビームに突っ込むようなことはしなかったが、ミサイルを回避しきれずに何発かがヒットした。機体から白煙が立ち昇る。
「退け! 退く理由はできただろう! 大局を見ろ、シャリア・ブル!」
「くっ、リック・ドムは……全滅か」
ブラウ・ブロ……じゃない、キケロガは被弾したブロックをパージして逃げて行った。
『追わなくていいんですか? 隊長』
「スラスターのひとつを潰したとはいえ、MAの加速には追い付けんよ」
しかしホワイトベースの隠れ家がバレてしまったな。シャリアを信じていいものかどうか。
さて、どうするかな。
◇
キケロガを撃退した後、ホワイトベースは隣のコロニーに移動することになった。
テキサスコロニー以上に荒れたコロニーだったが、なんとかホワイトベースを隠すことはできた。
敵がのこのことテキサスコロニーにやってきたら、背後から攻撃できる位置取りである。
だが追撃はなかった。シャリア・ブルはホワイトベースのことを報告しなかったのだろう。
それから数日が経過し、ホワイトベースに次の指令が暗号電文で届けられた。
『傘に向かう蝶を追え』
すなわち、ア・バオア・クーへ向かうキシリアを追えということだ。
連邦軍はソロモンではなく、グラナダの制圧に動いたらしい。
「それで大物を取り逃がしてるってんだから、お偉いさんもざまぁないね」
「そうとも言い切れんぞ、カイ」
「へぇ、どんな意味があるってんだい? 大尉殿」
「大将首は、獲って終わりというものではないんだ。それで降伏すればいいが、死兵となって暴れまわる可能性だってある。そんなやつらの相手をしたいか?」
「……そりゃあ勘弁してほしいね」
肩をすくめて、カイは言った。
「それじゃあボクらは、そんな厄介な相手を押し付けられたって言うんですか?」
「もうひとつの可能性もあるぞ、ハヤト。レビル将軍が、ホワイトベースに美味しいところを譲ってくれたって可能性だ」
「ずいぶんと期待されてるのね、私たち」
おどけるようにシイコ少尉は言った。
「まあ、すべてが上手くいけば、俺たちの出番はないけどな」
キシリアの乗艦、パープル・ウィドウの航路を予測して待ち伏せする。ホワイトベースの主砲が直撃すれば、パープル・ウィドウといえども耐えられない。確実に沈む。
ただ、この世界のブライトは、ジャブローに直行したせいか、どうも自信が持てないようだ。経験が足りてないからだろう。
『MS隊、発艦準備!』
艦内放送が聞こえてきた。どうやら失敗したらしい。
通信をブリッジにつなぐ。
「セイラさん、状況は?」
『敵はチベ1隻とムサイが1隻。ホワイトベースの主砲でムサイ1隻は仕留めたわ。MSはデータにない機体です。ガンダム部隊は、MSの対応をよろしくお願いします』
「なるほど、了解した」
新型ということは、ゲルググかな? ま、見ればわかるか。
「ウィリー・ケンプ、ガンダム、出るぞ!」
宇宙に飛び出してすぐに、モニターが敵MSを捉えた。数は6機。CG補正され、画像がクリアになる。
「ギャンだと!?」
ギャンが量産されている? いや、原作でもギャンは少数は生産されたのだったか?
いや、それよりも、だ。
「赤いギャンとは……シャアか?」
結局地球では一度も会わなかったからな。オデッサに駆り出されて、その後に宇宙へ上がってきたのだろう。まさかここで出会うとはな。
ホワイトベースはパープル・ウィドウを追うようだ。まあそっちが本命だからな。援護は期待できない。
「赤いのは俺がやる。ほかは任せた」
『了解です』
「あと、盾に機雷が仕込まれているかもしれないから気を付けろ」
『盾に機雷? そんなバカな盾はないでしょう?』
「そうだな。俺の気のせいかもしれん」
まずはけん制のライフルを放つ……あれ?
なんか避け方に余裕がないな。慌てて避けたみたいな……もしかしてシャアじゃない? いやでも赤いし。
シャア以外で赤く塗るやつなんて……稲妻の方か? でもあいつだってシャアに引けを取らないくらい強いだろ、たぶん。
『うわああぁっ!!』
回線から悲鳴が飛び込んできた。この声はジャック少尉?
「
ブロッサムに絡みついているヒートロッドをライフルで撃ち抜く。
まさかギャンがヒートロッドを使うとは。
「おまえもかっ!」
向かってくるヒートロッドを回避しつつ、それを操っている左手を撃ち抜く。ただでさえ操作が難しいヒートロッドを左手でこうも巧みに操るとは、やるな。
だが腕を撃ち抜かれるあたり、エースパイロットではあるがシャアではないような気がする。
かといってジョニーでもない。幻獣のエムブレムもないし……ん?
首元にマークがあるな。どこかで見たような……思い出した! あれはザビ家親衛隊の徽章だ。
となりゃ絶対シャアじゃねぇわ。それによく見れば機体色も赤一色じゃなくて、赤と白のツートンカラーじゃねぇか。
片腕になったギャンがビームサーベルを抜いて突撃してくる。
頭部バルカンで弾幕を張り、かわしたところにライフルを放つ。
ギャンの右肩が吹き飛ばされた。
『くっ、ただではやられん! 親衛隊としての務めは果たす! ジーク・ジオン! キシリア様バンザー』
自爆する気配を感じて、已む無くコクピットを撃ち抜いた。
隊長機がやられても、退く様子はなかった。
仕方なくギャン部隊を全滅させた。
ホワイトベースは、どうやらキシリアを仕留めることはできなかったようだ。
まあチベ自体高速艦だし、
仕方ないと言ったが、ブライトは不満気だった。
レビル将軍の期待に応えられなかったと落ち込んでいたな。
任務を果たせなかったホワイトベースは、補給のためにルナツーへと向かうのだった。
◇
ルナツーへ向かう航行中、ララァが俺の部屋を訪ねてきた。
めずらしく、黒のワンピースを着ている。オフの時にどんな服を着ても彼女の自由ではあるが、宇宙でワンピースはあまりに無防備なような気がする。
居住区は重力があるので、俺の心配し過ぎなのかもしれないが。
「似合ってるじゃないか。かわいいよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
女の子がオシャレをしてきたのなら、褒めてやるのが男の気遣いというものだ。
お茶でも出してやりたいところだが、士官部屋にそんなものがあるはずもない。
ララァが俺の目を見つめてきた。なんだろう、いつもと違う気の流れを感じる。
「大尉は、私を通して誰を見ているのですか?」
見透かすようにララァは言った。俺はララァを通して、もうひとりのララァを見ている。俺に、ガンダムに乗れと言ったララァだ。そもそも、彼女は本当に存在しているのだろうか。無意識下のララァの可能性もあるが。
それに、最近になってあれは幻聴ではないかと思い始めてきた。
俺が
ララァの手が俺のほほに触れた。
「私だけを見て」
「……キミの運命の人は、すぐ近くにいる」
シャアはいまどこにいるのだろう? 漠然とだが、宇宙にいることは感じている。ガルマが死んで、多くのジオン兵が宇宙に脱出した。その中に紛れて、宇宙に上がったはずだ。
グラナダにはいなかったらしい。もしかしたらギレンのところにいるのかもしれない。となれば、ア・バオア・クーにいる可能性はある。
「はい。いま目の前にいます」
ララァが微笑を浮かべて、俺の目を見つめている。
なにか、よくない流れを感じる。
「あそこでの生活は地獄でした。先輩たちの世話をしながら、いつか来る"その日"に怯えていました。彼女たちの苦しみや諦観が、私には判ってしまった。そして、自分もいつかそうなるだろうことも。でも大尉が、私を地獄から引き上げてくれたんです」
意識の圧迫を感じる。このプレッシャーはなんだ?
「シャア・アズナブルという男が、キミを幸せにしてくれる」
思わずそう言ったが、本当にあいつ、女を幸せにできるのか? 関わった女は大体不幸になっているような気がする。レコアとかハマーンとか、ナナイはギリ幸せだったか?
マズい、ここにきて急に不安になってきたぞ。本当にあいつにララァを任せていいのか? エンディング条件本当に合ってるのか?
教えてくれよ、少年。ララァは何も答えてくれない。
「最近になって、夢を見るようになりました。赤い軍服を着たジオンの若い士官です。その方が、シャア・アズナブルなのでしょう?」
「ああ、そうだ。それがキミの運命の人だ。俺では――」
スッと、ララァの人差し指が俺の唇を塞いだ。
「夢の中で、もうひとりの私の想いは痛いほど伝わってきました」
もうひとりの私? やはり、無意識下のララァがいるのか? それとも、並行世界のララァが干渉しているのか?
「けれど私は、
「う、うん? だが……」
言い終わる前に、俺は肩を押されてベッドに倒れ込んだ。
「私は私です。この想いは私だけのものです。誰にも邪魔はさせません。たとえ私であっても」
ララァの顔が近づいてきた。
意識が
この感覚は、危険だ!
「むっ!」
「む?」
「娘がいるんだ。双子だ。今は会えないが、戦争が終わったら会いに行こうと思っている」
「なら、私はお母さんになるのですね」
ララァがお母さん? やめろ、その言葉はシャアに利く。
「奥さんがいないのならば、いいです。
くっ、奥さんがいると言えばよかったか。だが嘘を吐くのもな。それにウィリー・ケンプに妻子はいない。両親は、いた。彼はシドニー出身だったのだ。つまり、そういうことだ。
また唇を塞がれた。今度は指ではなく唇で。俺にはもう、なす