ちょっと変わったガンダム世界を行く   作:乾燥海藻類

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デラーズ・フリート編③

『あなたが付いていながら、なぜそんなことになっているのですっ!?』

 

ホットライン(テレパシー)でセイラさんに「連邦軍から核搭載MSが盗まれて、その目標がサイド3かもしれない」と伝えたら、開口一番怒鳴られてしまった。

でもあなたが付いていながらと言われても、俺は関係ないと思うんだよね。軍を辞めていることはセイラさんも知っているはずなのに。

 

『でもあなたならパイプや影響力は残しているはずでしょう?』

 

パイプはあるけど、影響力はどうかな。ゴップ先生が好き勝手使っている可能性はあるけど。

 

『それで、あなた方はどうするのです?』

「本拠地を探して叩く。だが間に合うかはわからん。サイド3の警備は厳重にしておいてくれ」

『……わかりました。ところで、私からあなたにテレパシーを繋げる方法はないのですか?』

「うーん、そう言われてもね」

 

一度繋がってしまえば、こうして通話ができる。だがセイラさんから俺に繋げることはできない。電話で例えるなら、セイラさんは俺の番号を知らないし、リダイヤルもできない状態なのだ。

正直なところ、俺もどんな原理で繋がってるかわからんからなぁ。

 

「普通に連絡をくれてもいいんだけど」

『それができれば苦労はしません』

 

そりゃまあ、向こうは大統領で、こっちはただのいち市民だからな。高確率で盗聴されるだろうし、暗号通信ってのも怪しまれる。それに大した話もしてないしな。この情報も、もう少しすれば連邦政府から届けられるだろうし。

 

シャアが一緒にいることは、言わなくてもいいか。シャアはもう死んでるしな。セイラさんは「きっとどこかでのうのうと生きていますよ。ああ見えて生存能力だけは高い男ですから」と生存を確信しているようだが。

なんか、年々口が悪くなっているような気がする。ストレスが溜まっているのかもしれない。

そろそろご結婚を……いや、やめておこう。間違いなく政略結婚になるだろうし、藪をつつく気はない。

 

『なにか邪気を感じました』

「連中、本気でサイド3に核を撃ち込むつもりかもしれないな」

『……彼らをザビ家の呪いから解放する手段はないのでしょうか』

 

無理なんじゃないかな。俺は無宗教だからわからんが、改宗させるのは難しいってのは聞いたことがある。しかもこの状況でもテロを続けてるってことは狂信者だろう。そういうやつらは、死ぬまで止まらないと思う。

確かに元ジオンが差別されてるって話は聞いたことがある。だがそれも連邦の勢力圏内での話だ。サイド3に行けば普通に暮らせるだろうし、仕事も見つかるだろう。

 

「まあ、こちらも動いてみる。そちらも警戒しておいてくれ」

『わかりました』

 

テレパシーを切った後、俺はブリッジに向かった。

原作通りならば、茨の園はサイド5の暗礁宙域にある。破壊されたスペースコロニーや、撃沈された戦艦等の残骸を中心に、暗礁宙域に漂う様々なジャンクを曳航して建造された、やつらの本拠地だ。

ジャンクを使用して建造されたため隠密性が高く、連邦軍ですらその存在を認識できなかった。

 

というのも、コロニーの再建や新造は、サイド4とサイド7を中心に行われたからだ。サイド4はコンペイトウが近く、サイド7はルナツーが近いため、物資を届けるのに都合が良い。

だからサイド5はほとんど手つかずのまま残っている。

 

「……ふむ。少佐はそのようにお考えか」

 

ココノエ艦長が顎に手を当てて考え始めた。

歴戦の艦長らしい威厳を感じる。

 

「しかし、やつらは本当にサイド3に核を撃ち込むつもりでしょうか? (たもと)を分かったとはいえ、故郷であることに変わりはないでしょうに」

「やつらにとっては、裏切り者の集まりに過ぎないのかもしれませんね。テロリストの考えはよくわかりませんが」

 

実際わからん。だが観艦式という目標がない以上、核を撃ち込む候補としてはルナツー、月に次いで第三候補辺りには挙がりそうだ。

たぶん、本命はコロニー落としだろうが。一応ゴップ先生には伝えてある。

 

「わかりました。ルウム近傍の調査を申請してみましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当たり前の話だが、宇宙は広い。

ルウム宙域に、本当に茨の園があったとしても、発見するのは容易ではない。

実は敵が巣穴から出てきてくれるのを期待していた。

何しろこちらは単艦だ。仕留めた方が早いと判断してくれれば、部隊を展開してくれる可能性はある。

 

残骸と岩塊が浮かぶ海。いまだに反応炉が生きている艦艇もあり、赤外線探査も電探もほぼ意味がない。

遮蔽物の多いこの場所では、不意打ちがそのまま致命傷になりかねない。

探索にはかなりの神経を使う。

しかし、いくら探索しても、敵部隊が出てくる様子はなかった。

 

そして、そろそろ捜索の打ち切りを考え始めた頃、茨の園は見つかった。

だがそこはもぬけの殻だった。やつらは拠点を廃棄して、次の段階に移っていたのだ。

そうか。考えてみれば、原作のように観艦式の日程に合わせる必要がないんだ。

さらに妙なことがあった。生活の痕跡がかなり古いのだ。数ヵ月か、数年が経っているように思える。

敵は本当に、デラーズ・フリートなのか?

 

とりあえず、茨の園がもぬけの殻であることを確認した俺たちは、補修と補給のためにコンペイトウへ向かった。

わずかな休息の時間中に、俺はココノエ艦長から呼び出しを受けた。

ブリッジに行くと、妙に緊張した雰囲気であった。

 

「少佐、これを見てくれ」

 

艦長から数枚の書類を受け取る。

……ふむ。星の屑作戦の全貌か。サイド3への核攻撃。そしてコロニー落とし。首魁はやはりデラーズか。

タイムスケジュールが曖昧なので、そこは何とかするしかないな。

 

「いくつもの中継を挟んで、高度に暗号化されていたのでね。何事かと思ったが、それも頷ける内容でしょう?」

「そうですね」

 

流したのがシーマとはかぎらないが、なんでグリーン・ワイアット大将じゃなくてゴップ先生なんだ? 0083に彼は出てこなかったはずだが。

まあ今は0084年だし、色々と違っているか。

 

「内容は、理解しました。すぐに出られますか?」

 

そう言って書類を返す。そういえば何か足りないと思っていたんだが、デラーズの演説がないんだ。まあ演説も良し悪しだけどな。各地に散らばった残党を集められるというメリットはあるが、連邦軍や共和国軍の警戒を強めてしまうというデメリットもある。

原作では核の糾弾をやっていたが、この世界ではマ・クベが撃っているのでそこをツッコむこともできない。

それに地球圏全域に放送するには、通信網の要所要所に内通者を置く必要がある。それが上手くいかなかったのかもしれない。

 

「艦の補修には、あと2日かかる。もう手を加え始めているようでね。途中で切り上げるにしても、丸1日はかかる」

「では先行させていただきます。コンペイトウ(ここ)なら外付けのブースターくらいあるでしょう」

「それは……」

 

艦長は言葉に詰まった。他の艦を出すにも手続きやら何やらで時間がかかる。管轄が違うなどと言われる可能性もある。

面倒な派閥争いに現場の人間を巻き込まないで欲しいが、その恩恵を受けている以上文句も言えない。

ブースターくらいなら、余り物が転がっているはずだ。

 

「ちょうど、と言っていいかわかりませんが、妻と義妹が(くだん)のコロニーに関わっていましてね。補修の間に様子を見に行ってきますよ」

 

ブリッジを出る。制止の声はなかった。メカニックにはかなりの無理を言わなければならんな。お詫びに全員にビールでもおごってやろう。

あと、セイラさんにも警告しておかないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブースターユニットを装着したアリエスが宇宙を駆ける。

星の屑作戦。その計画はあまりに杜撰だ。

まず、コロニー落とし。落とすだけならまだしも、狙った場所に落とすならば、高度な軌道計算が必要になる。尚且つ、邪魔が入らないというのが絶対条件だ。

残党軍が総出で死守するとしても、確率は五分(ごぶ)か、それ以下。

 

サイド3への核攻撃にしてもそうだ。直撃すれば首都島(マザー・バンチ)は崩壊するだろう。その破片で周囲のコロニーもダメージを受けるかもしれない。

ダイクン派の主力は一掃できるだろうが、共和国を排して公国を取り戻すというのは不可能だ。

 

自国に核を撃ち込んだ者たちに、市民は協力などしないだろうし、恐怖政治は長続きしない。さらにそんな混乱したサイド3を、連邦が放置するとは思えない。残党軍を一掃して、連邦の息のかかった者を統治者に据えるだろう。

そう考えると、連邦軍の仕掛けた壮大なマッチポンプのように思えてきた。デラーズは踊らされているだけではないのか?

 

「あなたは黒幕が連邦政府だと考えているのか?」

 

隣りを飛ぶジェミニから通信が入った。

 

「どうだろうな。今のところ、連邦政府の都合の良いように動いていると思えなくもないが……」

 

連邦の派閥争いは加速している。ガンダムを奪われた派閥の失態。コロニー落としを実行する残党軍(スペースノイド)。それを阻止した派閥の功績。様々な思惑が入り乱れて混沌を生み出している。

さすがに考えすぎだとは思うがな。いくらなんでも原作と乖離し過ぎている。

 

「……(はかりごと)帷幄(いあく)の中に(めぐ)らし、勝ちを千里の外に決す」

「なに?」

「旧世紀の、とある国の軍師を称賛した言葉だ」

 

相変わらずポンポンと知識が出てくるヤツだ。まあ、そういう教育を受けてきたんだろうが。

 

「つまり、そんなにわかりやすい話ではないと?」

「真の黒幕は決して表舞台には立たず、影で人々を操り策を結実させる」

「で、その真の黒幕は誰だ?」

「さて、そこまではな。私はパイロットであって、名探偵ではない」

 

からかうように、シロウズは小さく笑った。

 

「ついでに言えば、政治家にも向いていないらしい」

 

あっ、こいつ結構根に持ってやがるな。

 

「だが経営者には向いていたようだな」

「ふっ、そうかもしれん。退屈ではあるが、人々に感謝されるというのは、存外気分が良い」

 

まあ基本的に軍人って市民に感謝されることがないからなぁ。防衛とか復興支援とか、そのくらいか?

コロニーを増設して、地球の人々を宇宙に上げるというのは、こいつの考えとも一致している。気の長い話ではあるが、経済圏の中心を宇宙に移すというのは、こいつも興味を示していた。

簡単に言うと宇宙を盛り上げようぜ、という話だ。サイド共栄圏に似ているようで、ちょっと違う。

とそこで、コロニー移送作業に従事しているララァから通信(テレパシー)が来た。

 

(どうしたララァ、なにかあったか?)

(海賊に襲われそうなの。助けてくださる?)

 

やはりララァのニュータイプ能力は、俺たちとは一線を画しているような気がする。育児休暇中だというのに、今回の護衛に志願したのは、コロニーが襲われるという予感があったからだと言った。

予感というよりは予知に近いだろう。まあなんでもかんでも見通せるというわけではなさそうだが。

俺としては主婦に専念してもらいたいのだが、ララァに言わせれば旧時代的な考えらしい。

たしかに俺は古い地球人だけれども。

 

(すぐに行く。無理はするなよ。そのザクレロもどきでは、大した戦力にもなるまい)

(あら、かなり改良してあるんですよ)

 

なんであんな道化みたいな見た目が気に入ったのかわからん。もっと良いのがあっただろうに。とはいえ、コロニー公社に払い下げられるMSなんてザクとジムくらいだが。

 

(では、なるべく早くお願いしますね)

(ああ、本当に無理はするなよ。ヤバくなったら逃げろ)

(それは先ほど聞きましたよ)

 

笑いながら、ララァは通信を切った。まあアルマもいるし、俺たちが着くまでは持つだろう。もうかなり近づいているしな。

 

 

 

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