ちょっと変わったガンダム世界を行く   作:乾燥海藻類

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火星攻略編②

イリアとレシアが士官学校へ行って、この家もずいぶんと寂しくなった。

今日は平日の休みのため、上の子は学校へ行き、下の子は幼稚園に行っている。家には俺とララァのふたりだけだ。

だらりとソファに腰掛け、テレビのスイッチを押す。クイズ番組がやっていた。いつの世も人の知的好奇心をくすぐる番組というのは、一定数の視聴率を稼げるようだ。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

ララァの淹れたお茶を受け取る。ララァは俺の隣りに腰を下ろした。

今回は世界遺産特集のようだ。ティターンズが解体され、連邦政府の態度も軟化してきたため、スペースノイドも気軽に地球へ行けるようになった。そのせいか地球を特集する番組も増え始めている。

 

「これは、タージマハルかしら?」

 

ララァがクイズの答えを口にする。まあその辺りは地元だから……うん?

映像が乱れた。電波障害か? いや……これは……。

映像が回復すると、そこはスタジオではなかった。映し出された仮面の男は、見覚えがあった。

ものまね芸人かな?

そう思っていると、男はゆっくりと、優雅ともいえる仕草で仮面を取った。仮面の下の瞳は、吸い込まれるように蒼い。

 

「私の名は、シャア・アズナブル。かつて赤い彗星と呼ばれた男だ」

「あらまあ」

 

ララァが上品な仕草で口元を押さえた。

似てはいるな。少し若すぎるような気もするが……フル・フロンタルよりは似ていると思う。体格とか、髪型とか。

シャア・アズナブルであることを印象付けるためか、噂になっていた火傷の跡もある。

 

「本物だと思うか?」

「ふふっ、どうでしょう? 映像だけでは、なんとも言えません。あの人に、似ていると言えば似ていますが……」

 

答えがわかっているように、ララァは笑った。

シャアを(かた)るだけなら、仮面を取る必要はない。逆に、シャアの素顔を知っている人間には違和感を与えるだろう。まあ、シャアの素顔を知っている人間がどれほどいるかはわからないが。

彼なりの誠意か、それとも信望を集めるためか。あるいは、シャアならばそうすると思ったのか。

 

「一応、確認してみるか」

 

端末を操作して、シロウズにメッセージを送る。

 

――なんでテロリストになったんだ? 悩みがあるなら相談してくれよ

 

こんなものか。10秒ほどで返信がきた。

 

――冗談ではない!

 

テレビではシャアが演説を続けている。どうやら本人ではなさそうだ。まあわかってはいたが。続けてメッセージが送られてくる。

 

――アレはなんだ?

 

いや、なんだと言われてもな、こっちが聞きたいくらいだ。とりあえず思いつくのはふたつくらいか。

 

①、ただのそっくりさん

②、クローン

 

好きな方を選んでくれ、と送信する。

返信はなかった。色々と調べているのかもしれん。テレビに視線を戻す。

カメラが動き、もうひとりの青年が映し出された。こちらも金髪のイケメンだ。ギレンの子どもらしい。へぇ、そんなのいたんだなぁ。つかこいつ、グレミーじゃねぇの?

彼こそがザビ家の真の継承者であり、ジオン公国の新たな総帥であるとシャアは語った。

 

俺の予想通り、その青年はグレミーと名乗った。彼が言うには、ジオン共和国の自治権は仮初(かりそめ)のものであり、真の自治権ではないらしい。

たしかにジオン共和国の自治権は、原作と同じく宇宙世紀100年までの期間限定のものだ。自治権を返還した後は、地方自治体以上の活動は許されなくなる。

それでは、スペースノイドは真の自由を手に入れたとは言えない、というのがグレミーの主張だった。

 

だがそれは、外交次第じゃないかな。ジオン共和国も力を付けてきているし、連邦政府にしてみても、もう一度戦争するのは勘弁してほしいところだろう。

しかし、過日の30バンチ事件で行われたセイラさんの演説、あれが賛否両論だった。いわゆる弱腰外交。このまま宇宙世紀100年を迎えれば、連邦政府の言われるままにジオン共和国は解体されると、グレミーは語っている。

 

「気の早い話ね」

 

と、ララァがこぼした。たしかにそうだ。フル・フロンタルが語ったサイド共栄圏は、宇宙世紀0096年のことで、期限は4年後まで迫っていた。だが今は、10年以上の月日がある。大統領の交代だってありうる。

宇宙世紀100年なら、セイラさんは38歳か。政治家としては若手の部類だが、18歳で大統領に就任してるからな。よく考えたら18歳で大統領ってだいぶおかしいな。

しかし通信網に割り込んで電波ジャックをやるとは、デラーズより優秀だな。まあ戦場から逃げ出したオッサンと、自称とはいえギレンの息子では求心力が違うか。

 

「あなたの出番はあるのかしら?」

「さあ、どうかな」

 

デラーズ・フリートの件は、ゴップ議長も無関係ではなかった。だから俺が駆り出された。今回は、連邦軍全体のことだ。

あのシャアがどこまでやれるのかはわからないが、シャアを名乗る以上、腕に自信はあるのだろう。だが……。

 

「ひとりの活躍で勝てるほど、戦争は甘いものじゃあない。連邦は勝つさ」

 

本当に、そうであってほしいよ。

 

 

 

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