ちょっと変わったガンダム世界を行く   作:乾燥海藻類

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火星攻略編③

グレミー率いる新生ジオン公国の拠点である火星に、連邦軍は2度の攻撃を仕掛けた。

しかし、いずれも失敗した。最初は威力偵察を兼ねた攻勢であったが、2度目は本腰を入れた攻略作戦だった。

だがこれも失敗した。

 

「まさか、サイコ・ガンダムを運用しているとはな」

 

しかも、確認されたのは2機だった。初戦は1機だけだったので、2機目が出てきたところで連邦軍に焦りが見え、縦横無尽に飛び回る赤い彗星に陣形はズタズタにされ、撤退を余儀なくされた。

共和国との共同作戦も、現実的ではなくなった。

 

グレミーが連邦政府に宣戦布告した時、セイラさんは連邦政府に協力を打診したらしい。セイラさんもザビ家信者にはうんざりしているようだからな。

だが連邦政府はこれを断った。自分たちだけでなんとかできると判断したのだろう。しかし、2度にわたる失敗。

ここで共和国に泣きつけば、連邦政府の権威は失墜する。

こうして連邦軍の尻に火が付いたわけで、ありったけの戦力を集め始めた。つまり、俺にも召集がかかったのだ。

そんなわけで俺は今、ルナツーにいる。

 

「久しぶりだね、少佐。壮健かね?」

「はい。テム博士もお元気そうで。アムロたちはどうですか?」

「ああ。オーガスタ基地に異動になってからは、あまり会えていないが、元気にやっているようだ」

 

ジャブローは軍事基地だから、子どもを育てるのには向いてないからな。一応、託児所のようなところはあるが。

 

「私の機体は、アリエスの改修機ということですが」

「うむ。基本性能を向上させた機体だ。ファンネルは積んでいない。少佐は、苦手なようだからな」

「恐縮です」

 

ファンネルはなぁ、使えないことはないんだが、やはり意識が逸れるんだよ。機体制御がおろそかになる。あんなモンを5つも6つも飛ばして、格闘戦までやっていたシャアやアムロはやはりおかしい。

 

「機体名は"ステラ"だ。良い名前だろう?」

「そう……ですね」

 

名前自体は良い名前だと思うが、あまり縁起が良いとは言えないような? 最後は死んで水に沈められそうな名前だ。まだルナマリアの方が……いや、それも肝心なところで射撃をミスりそうな名前ではあるが。

 

「それと、実はひとつだけ特殊兵装を積んである。切り札的なものだが、システムがまだ未完成でね。だが念のため、解除コードは渡しておく」

「……わかりました」

 

正直不安定なものは使いたくないんだが、いざという時は使うしかないだろう。切り札的なもの……トランザムみたいなものだろうか。トランザムは使うなよ、と。

 

「ところで、隣の機体はジェミニの改修機ですか?」

「そうだ」

 

デラーズの一件以降、シロウズは連邦軍の要請を受けて、ジェミニのデータ取りに協力していた。そこで軍から派遣されてきたナナイ・ミゲルと知り合い、いい感じになっているらしい。

頼むからそのまま落ち着いてくれ。

 

「機体名はサザビーというらしい」

「サザビー!?」

 

なんでサザビー? ファンネル搭載機というところくらいしか共通点ないだろ。赤くもねぇし。そもそもガンダムにサザビーと名付けるのがおかしいだろ。ゲルググをジムにするくらいの尊厳破壊だぞ。

誰だよそんなふざけた名前をつけたやつは。

 

「やあ少佐、今回もよろしく頼むよ」

 

背後から声が聞こえた。気さくに挨拶してきたのは、シロウズだった。

 

「ああ、期待している」

 

そう言って、握手をかわす。

今回もシロウズには俺の監視下で働いてもらうことになった。

 

「では、機体は艦に運んでおくよ。健闘を祈るよ、少佐、シロウズくん」

 

テム博士とも握手をかわし、俺たちは艦に向かった。

その途中で、シロウズに尋ねる。

 

「おまえの機体、なぜサザビーという名前なんだ?」

「なぜと言われてもな。ナナイに、ジェミニ改という名前では味気ないので、良い名前はないかと訊かれたのでな。思い浮かんだ名前を言ったまでさ」

 

大丈夫かそれ? 別世界のシャアに意識引っ張られてないか?

まあいいか。言ってもどうにもならんし。

 

「そうか。さて、この艦も久しぶりだな」

「ああ。まさかまだ現役でいるとはな」

 

俺たちが乗り込む艦はブランリヴァルだ。ペガサス級ではあるが、さすがに旧式の艦になってしまった。2度の失敗で、艦も足りてないのかもしれない。

艦長も変わらずココノエ艦長だ。あの人も結構な年のはずだが、まだ頑張っているようだ。もしかしたら、予備役から駆り出されてきたのかもしれないが。

艦長室は、落ち着いた雰囲気だった。

 

「ウィリー・ケンプ少佐、着任の挨拶に参りました」

「同じく、シロウズ・シノミヤであります」

「ご苦労様です。歓迎しますよ」

 

紳士然とした初老の男は、以前と変わりなく見えた。

 

「今さら艦の説明もないでしょう。ご自由におくつろぎください。ただ、ひとつだけ。急ですが、もうひとチーム受け入れることになりましてね」

 

もうひとチームということは、別行動ということか? まあ急に部下を付けられても困るしな。

 

「そろそろ到着すると……きましたな」

 

入ってきたのは3人の……ゲッ!?

 

「お初にお目にかかる、少佐殿。パプテマス・シロッコ大佐だ」

「イリア・ミュラー少尉であります」

「ジュ、ジュドー・アーシタです。あ、少尉です!」

 

なんやこの厨パァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青みがかった紫色の髪。自信に満ち溢れた瞳。あまりプレッシャーは感じないな。まあ平時だからかもしれないが。

 

「ウィリー・ケンプ少佐であります。パプテマス大佐は、たしか士官学校の校長であったと記憶しておりますが?」

「少佐と同じだよ。私も駆り出されたのさ」

 

嘘つけ! 絶対志願しただろ。面白そうだから首突っ込みに来ただけだろ。と思うのは邪推なのかね。

 

「そちらのふたりは? いささか若すぎるように見えますが、まさか学生を連れてきたのですか?」

 

イリアは堂々とした態度でこちらを見つめている。逆にジュドーはビクッと肩を震わせ、おどおどしていた。

おかしいな、ジュドーはもっとこう……陽キャというか根明(ねあか)というか、溌剌(はつらつ)としているイメージだったんだが、そもそもなんで軍人になってるんだよ。

 

「ただの学生ではないよ。首席と次席だ。多少卒業が早まっただけのことだよ。ここで戦果を上げれば、出世も早くなる。縛り上げて連れて来たわけではない」

「……ならば、よいですが」

 

よくないよ。無理やりにでも連れて帰りたい。しかしウィリー・ケンプとイリア・ミュラーは他人だ。どうすることもできない。

とりあえずその場は顔合わせだけで終わった。

自室に戻った俺はイリアに会いに行こうと考えたが、見方を変えれば中年のおっさんが、士官学校を出たばかりの女性兵士(ウェーブ)にコナをかけようとしているということになる。それはさすがにマズい。

もやもやとした気持ちを抱えているうちに、艦隊は火星に向けて出港していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、イリアとはロクに話もできないまま火星に到着してしまった。どこに人の目があるかわからないので、プライベートの話をするわけにはいかない。俺の部屋に呼ぶわけにもいかないし、イリアの部屋に行くわけにもいかない。

クソッ、シロッコめ!

 

第一戦闘配備がかかり、俺はステラのコクピットに潜り込んだ。

前方の宙域では、すでに戦闘が始まっているらしい。俺たちは、その横っ腹を突くという作戦だ。

ブリッジから通信が入る。相手はオペレーターではなく、ココノエ艦長だった。

 

「少佐、行けますか?」

「ええ、いつでも」

 

気遣いのできる男だな、ココノエ艦長は。部下に謀殺されたジャマイカンとはひと味違う。

 

「では、お願いします」

「了解しました」

 

機体をカタパルトデッキに移動させる。

 

「ウィリー・ケンプ、ガンダムステラ、発進する!」

 

操作感はアリエスとほとんど変わらない。これならいけるだろう。ほどなくして、シロウズのサザビーが射出された。

俺たちの仕事は、遊撃隊として戦場をかく乱することだ。まずは……ん?

なんだこの……ザラついた感覚は。呼んでいる? とりあえず、機体をそちらに向かわせた。とその時……。

 

「おっと!」

 

ビームが機体の横をかすめた。範囲外からの攻撃。戦艦のメガ粒子砲ではないな。高速で接近する機体、撃ったのはこいつか。だが、ザラついた感覚のやつではない。

 

「アレの相手は私がやろう」

「ああ、任せる」

 

敵MSは間違いなく高機動型だろう。高い確率でエースのはずだ。エースにはエースをぶつける。俺はこのザラついた感覚の正体を確かめねばならない。

 

「……こっちか。近づいてきているな」

 

向こうも、こちらを察知している感じがする。共鳴のようななにかを感じる。

……来る!

 

「やっと見つけた! お兄ちゃん!」

「お兄ちゃん!?」

 

開幕お兄ちゃんはさすがにビビる。だが、お兄ちゃんだと? まさか……。

 

「瞳か!? おまえもこっちの世界に!?」

「ヒトミ! それがあたしの本当の名前ね! ステキ!」

 

んん? なにか会話が嚙み合っていないような……そうか、このザラついた感覚の正体は、強化人間か!

ええい! お兄ちゃんはカミーユの役目だろうに!

そういえばこの世界のカミーユは何をやっているんだろうな。

 

「遊ぼう、お兄ちゃん!」

「なにっ!? チイィッ!」

 

ビーム砲とミサイルの一斉射撃。ビームはかわし、ミサイルはライフルで撃ち落と……なんだとっ!?

ミサイルがビームをかわした? この意思を持ったような動きは……ファンネルミサイル!?

抜けてきたミサイルをバルカンで撃ち落とす。こういう時に頭部バルカンは便利だ。ガンダムタイプに標準装備される理由がよくわかる。

 

「あははははははっ、まだまだいっくよーっ!」

 

ファンネルが飛んでくる。

殺気が読めない。いや、殺気がないのだ。子どもがボールをぶつけるような感覚で、ファンネルをぶつけている。無邪気さすら感じる無垢なる殺意だ。

 

「くっ、やりにくいな」

 

敵のMSは大型だ。サイコ・ガンダムほど巨大ではないが、25mくらいはありそうだ。データにはない。新型なのだろう。なんとなくだが、クィン・マンサとかクシャトリヤみを感じるデザインだ。

 

「しかし、やりようはある」

 

こちらのビームが敵MSの肩をかすめた。どうやらIフィールドは搭載していないようだ。

 

「あはっ、やるね、お兄ちゃん!」

「そりゃどうも」

 

どうにもやる気が削がれる。殺したくないと思ってしまう。カミーユやジュドーもこんな気持ちだったのだろうか。

ならば、やってみるか。攻撃は苛烈だが、単純で荒い。実戦経験が足りていないのだろう。隙はある。

 

ビームの弾幕をくぐり抜け、扇状に放たれたファンネルミサイルをギリギリですり抜ける。ファンネルミサイルは、ファンネルやビットのように自在に動かせるわけではない。

距離が詰まる。ビームサーベルを抜く。

その瞬間、敵機のハネが開いた。背筋にヒヤリとしたものを感じて、俺は咄嗟にシールドを構えた。

散弾がシールドに激突する。一瞬の衝撃。しかし盾を貫通するほどの威力はない。

盾を構えたまま突進し、シールドバッシュを叩き込む。

怯んだところにサーベルを振り下ろし、コクピットの入り口を切り裂く。その穴から中に飛び込み、ヘルメットをぶつけて、接触回線で語りかける。

 

「よし、ちゃんとノーマルスーツは着ていたな。えらいぞ、いい子だ」

「あはっ、捕まっちゃった。じゃあ今度はお兄ちゃんが鬼ね」

 

鬼ごっこをやっているわけじゃない。それに普通は捕まった方が鬼だろう。ルールはどうなってるんだ?

 

「鬼ごっこは、おしまいだ。一緒に帰って、アイスでも食べよう」

 

たしか強化人間はアイスが好きだったはずだ。

 

「アイス!? やったー、あたしアイス好き。ウニアイスが一番好き!」

「ウニアイス!?」

 

かわいそうに、味覚障害まで発生しているのか。治療には時間がかかりそうだな。

この子を乗せたままでは戦えない。一度ブランリヴァルに戻ろう。

そう思った瞬間、機体の頭上をビームが過ぎ去っていった。どうやら休ませてはくれないようだ。

 

 

 

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