「見つけたぞガンダム! おまえ! ガンダムだな!」
「俺はガンダムじゃない!」
サイコ・ガンダム……しかも2機だと? お友達になりに来たというのなら歓迎するが、そんな雰囲気でもなさそうだ。
「ガンダムタイプは優先排除だ! だから殺しちゃうよ!」
同じような声だが、後の方が若干高い。俺だって声の違いくらいはわかる。似ているが違う。プルとプルツーくらい違う。
ここまで純粋な殺意を受けたのは初めてかもしれない。憎いから殺すとか、お金が欲しいから殺すとか、そういうのではない。仕事だから殺す、敵だから殺すというのでもない。
殺すと決めたから殺す。そんな純然たる殺意だ。
「しかし、だからこそ読みやすい。そこだ!」
ビームの十字砲火をかわしながら、ライフルで反撃する。だがビームの光は飛沫となって宇宙に消えた。Iフィールド・バリア。報告通りだな。とはいえ、常に展開させてエネルギーを消耗させるという狙いにはなる。
バズーカの弾は8発しかない。無駄撃ちするわけにはいかない。
「スコルとハティだ。ふたりも遊びに来たんだ!」
名前を言わないでくれよ、殺しにくくなる。相手の情報は少ない方がいい。名前も性別も、知らない方が引き金は軽くなる。サイコ・ガンダムを任されるからには、
「友達なのか?」
「一緒にごはん食べたよ!」
それだけで友達認定は基準が緩すぎる気もするが。しかし、サイコ・ガンダムのパイロットたちが死ねば、たぶんこの子は悲しむだろう。仕方ない。乗りかかった舟だ。1人救うのも2人救うのも、3人救うのも変わるまい。
「非業の死が強化人間の宿命だというのなら、そんな因果、俺が断ち切ってやる!」
まずはIフィールドの発振器を破壊する。攻撃はわかりやすいのでかわすのにそこまで苦労はしない。ありえそうなのは背部か股下あたりか?
「チィ! 1発も当たらないとはっ! さすがだなガンダム! ならば、サイコ・ガンダムの本当の力を見せてやる!」
一体なにを……装甲をパージした? なんだあの電磁筋肉みたいなやつ。キモッ!
サイコ・ガンダムの装甲が意思を持ったように襲ってくる。あれは装甲であると同時に質量攻撃するための武装でもあるのか。
「だがそんな単純な攻撃では……いや、これはっ!?」
かわしたはずのフィンガービームが背後と斜め後ろから襲ってきた。
「リフレクタービットか!」
「あはははっ、やっちゃえスコル! こっちも行くよ!」
くっ、さすがに2機からのオールレンジ攻撃はキツい。しかもふたりの攻撃の意思が混在しているのが回避を面倒にしている。
攻撃にラグがなく、ためらいもない。とてつもない信頼関係だ。
「ふたりはテレパシーで会話してるから通信いらずなんだよ」
「なる、ほど、な!」
まあ俺ができるくらいだから、ほかにテレパシーができるやつがいても不思議じゃないか。
というか、なんで俺は
「そこにニアリーがいるようだが、私たちに人質は通用しない。私たちはしがらみに囚われない新人類だからな。新しいニュータイプだ。古いニュータイプは死ね!」
「ニアリーじゃないよ! ヒトミだよ!」
「黙れ! 旧人類に
「スコルったらひどーい!」
旧人類とか古いニュータイプとか、意味がわからん。まあ不安定なのが強化人間だからな。
しかしこのままではジリ貧だ。針の穴を通すような回避も、いつまで続けられるかわからないし、エネルギー切れを待つのは不安だ。一か八か突っ込むか……いや。
「そうだ、サイコミュジャック!」
「さいこみゅじゃっく?」
カミーユがジ・Oの動きを止めたアレだ。サイコミュには共鳴し合うという性質がある。そして強い力の方から弱い力の方に流れるのだ。やるしかない。一か八かで突っ込むよりはマシだ。
「ニアリー、いやヒトミ。おまえも力を貸せ」
「うん! なにすればいい?」
「あいつらの動きを止める。一緒に祈ってくれ」
「わかった。祈る!」
切り札的な特殊兵装。おそらくはバイオセンサーの増幅器だろう。
信じるぞテム博士。トランザムを使う!
テンキーを引き出し、解除コードを入力する。コンソール・パネルが薄紅色に染まるが、構わず承認ボタンを押した。
――Psycho Frame Active Max System ignition
世界が、緑色に染まった。
◇
すごい一体感を感じる。今までにない何か、熱い一体感を。
熱……そう、熱だ。機体を、俺自身を、温かい何かが包んでいる。
光だ。温かい、緑色の光が……。
……サイコフレームじゃねえか!!
てっきりバイオセンサーを増幅するシステムだと思っていたが、まさかのサイコフレームかよ! 言っとけよそういうことは!
つーかどうやって調達したんだ? まさか自力で開発したのか?
天才かよ! 天才だったわ!
「くっ! しかし、発動させてしまったものは仕方ない。バイオセンサー以上のオカルトトンチキシステムだが、まさか暴走はするまい!」
サイコ・ガンダムが、はっきりと見える。迫っているとか、モニターの解像度が上がったとか、そういうのではない。俺自身が、サイコ・ガンダムを直接感じ取っているのだ。視界が広がり、全方位が
サイコ・ガンダムの動き、放たれるビームの軌道、リフレクタービットによる反射角、すべてが精密に感じ取れる。
……いけそうな気がする。強い意志を持て。こういうのはイメージが大事なんだ。たぶんそうだ。
「緑色の光がサイコ・ガンダムを包み込み拘束する。そんなイメージだ。いけるか?」
「いけそう!」
「ならばいくぞ! なんとでもなるはずだ! そうだろう、ガンダム! なんとかなれーっ!!」
「なれーっ!!」
両手を広げ、2機のサイコ・ガンダムに手のひらを向ける。そこから広がる緑の波動が、サイコ・ガンダムを包み込んだ。
サイコ・ガンダムの動きが鈍くなり、リフレクタービットが静止する。
……まず発光する原理を教えてほしい。
「何が起こった!? 動けサイコ・ガンダム! なぜ動かない!」
「動け動け動け動け! 動いてよぉーーーっ!」
距離を詰めながらビームサーベルを抜く。サイコミュのメインコントロールシステムはどこだ? 感じろ……感じられるはずだ。
……そこっ! 喉元か!
「ご都合主義だと笑わば笑え! これがガンダムの力だ! どおっせい!」
喉元目掛けてサーベルを突き刺す。返す刀で2機目の喉元にもサーベルを突き刺した。サイコ・ガンダムの後頭部から射出されたインジェクション・ポッドを掴み取る。
「捕まえたぞ、ワンチャム、ニャンポコン」
「なんだその気の抜けそうな名前は! 私の名前はスコルだ! グレミー様が付けてくれた名前だ! 二度と間違えるな!」
「わたしはハティ! 間違えないで!」
「悪い悪い」
システムを破壊した後遺症とかはなさそうだな。サイコミュは何が起こるかわからんからな。オカルトトンチキシステムはいまいち信用しきれない。
「私たちを捕えてどうするつもりだ! 慰みものにでもするつもりか!」
どこで覚えたんだそんな言葉。ちゃんと意味が解って言ってるのか? それにこいつら子どもだろう。ロリ声の成人もいるが、そういうのとは違うんだよ。子どもの声なんだ。
「そんなことはしない。南極条約に基づいて、ちゃんと捕虜として扱う」
南極条約は戦時条約だから、もうとっくになくなってるけどな。
「敵に情けをかけるとは! おまえは軍人失格だな!」
「そうかもな。だが女の子を泣かせるのは人間失格だと思うよ」
一度ブランリヴァルへ戻ろう。この3人を下ろさなければな。ん……なんだこの奇妙な感覚は……。大きな光が消えるような感覚……。
「こ、この……この感じは……グレミー様だ! あ、ありえない……グレミー様が……そんな……」
「うわぁーーーん! グレミー様が死んじゃったあぁぁぁっ!!」
グレミーが死んだ? ならこの戦いはもう終わりだな。わずか一日で決着とは……いや、ガンダム世界だと割とあることだな。
このふたりもおとなしくなったことだし、ブランリヴァルに急ごう。この距離なら通信が使えるな。
「ブランリヴァル、聞こえるか。こちら、ウィリー・ケンプ」
「少佐、大変だ! やつら、よりにもよって!」
え? オペレーターではなく艦長が出たんだが、何事?
「ココノエ艦長、落ち着いてください。何かありましたか?」
「やつら、ダモクレスを落とすつもりだ!」
ふむ。で、ダモクレスってなによ?