ちょっと変わったガンダム世界を行く   作:乾燥海藻類

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火星攻略編⑤

ダモクレス。

元はコロニー建設時代初期に太陽系外縁から運ばれてきた資源惑星で、資源採掘後に辺境宙域に放置されていたが、一年戦争勃発時のコロニー潰しで破壊されたコロニーと衝突し周辺が暗礁宙域化した。

それを活かして一年戦争末期にジオン軍がゲリラ拠点として基地化したらしい。一年戦争後もジオン残党の拠点となっていたが、セイラさんが根気強く呼びかけた結果、住民は共和国に帰順して空き家となった。

 

その後火星軍が接収したらしい。相変わらずのガバガバ警備網である。いや、宇宙も広いからな。あまり責められることではないのかもしれない。

大きさはコンペイトウの4分の1ほどらしいが、だからといって看過できるものではない。火星に連邦軍を集めていたのは、防衛戦力を削るためだったのだな。敵も色々と考えるものだ。

 

こんな石ころひとつ、ガンダムで押し出してやる! をリアルでやる必要があるのかと戦々恐々としていたが、それは杞憂に終わった。

ルナツーに残されていた防衛艦隊ががんばったようだ。特殊部隊がダモクレスの侵入に成功し、核パルスエンジンのコントロールシステムを掌握した後、軌道を変更。さらに艦隊の一斉射撃で押し出した。

 

戦いは数で、火力こそが正義だということが証明されたな。やっぱり現実は現実的だよ。ドラマチックなことなどそうそう起こりはしない。

ダモクレス落下の失敗により新生ジオン公国は降伏。第3次火星攻略戦はこうして幕を下ろした。

 

その後のことを少し語ろう。

スコルとハティはオーガスタに預けることにした。アムロがいるから安心だ。信用できる人間がひとりいるだけで心持ちが全然違う。

ムラサメ研究所は、ティターンズの手を離れてからはまともになったと聞いたが、いまいち信用できない。

本当ならあのふたりを調整したやつにケアをさせるべきなんだが、見つからなかったらしい。火星の研究所(ラボ)も破壊されていて、データもすべて吹き飛んでいたようだ。

 

それは、その研究者がデータを持って逃げたんじゃあないのか? 優秀なやつなら、いざという時の逃走ルートくらい用意しているだろう。

とはいえ、顔や名前を変えられたり、別人になられる可能性もある。指名手配はかけてもらったが、あまり期待はできないだろう。

 

ニアリー改めヒトミは俺が引き取ることにした。どんな理屈かはわからないが、俺のそばにいると精神が安定するらしい。俺も、なぜかはわからないが、この子とは共鳴するような不思議な感覚がある。

ブライトは退役して喫茶店を開くようだ。まだ30歳にもなっていないというのに、決断が早すぎないか? と言ったら、体の動く若いうちから始めたいらしい。

 

飲食店の成功率は低いぞ、と言いかけたが、俺の知識は所詮旧世紀のものなので、宇宙世紀では違うのかもしれない。

喫茶店とかパン屋とか、退役した後に飲食店を始めるやつは意外と多いらしいので、案外マニュアルのようなものがあるのかもしれない。それにブライトは俺と違ってエリートだ。ミライさんもしっかりしてるし、要らぬ心配だったのかもしれないな。

 

ブライトの退役が認められたのだから、いいかげん俺も引退したいとゴップ議長に相談したら、ようやく議長も折れてくれた。

ウィリー・ケンプは木星船団に出向。木星に出発した後、向こうの過酷な環境で体調を崩し、そのまま亡くなったという筋書きにするらしい。

普通に退役させてくれてもいいと思うんだが、なぜかそうなっていた。

 

これは俺の憶測にすぎないが、たぶん普通には辞めさせてくれなかったのだろう。連邦軍の慣習として、有能な者は飼い殺しにされるケースが多い。

原作のアムロもそうだし、ブライトも中々退役が認められなかった。要するに、首輪を付けておきたいのだ。

 

もしかしたらシロッコもそうだったのかもしれない。有能すぎたから、木星船団に出向させられた。木星に行くのは重要な任務ではあるが、やはり名誉職というか閑職のようなものなのだろう、たぶん。

 

まあ、引退できるのならばなんでもいいさ。そんなわけで、俺はようやくウィリー・ケンプをやめることができそうだ。

そんなことをイリアとレシアに話したら、なぜかふたりとも不機嫌になった。隣ではララァがクスクスと笑っている。なんなんだ一体。

通信を終えて、ソファに身を沈める。

 

「今まで、お疲れさまでした」

 

ララァの温かい手が髪を撫でた。ララァは俺の苦悩に気づいていたのだろう。

機体に撃墜マークを描くのならば、その数は軽く100を超える。だがそれに、何の意味があるのか。

ただ機体ごと人を殺しただけだ。憎くもない人間を。100人の人間を殺したという事実を誇示しろとでもいうのか。

 

本来はそうなのだろう。軍人ならば撃墜数を誇るべきなのだろう。多くの敵を殺すということは、多くの味方を救うということでもある。

あの子たちは、何を思ってこんな因果な商売を選んだのだろうか。

サイド7に放り出されて、流されるままにガンダムに乗り、なぜだか上手くやれてしまった。むしろ、上手くいきすぎてしまったとすら思う。

 

始まりはサイド3だった。それも今は懐かしく思う。ズム・シティは、今どうなっているのだろうか。セイラさんが治めるようになって、少しは賑やかになったのだろうか。

あの趣味の悪い公王庁は解体されたと聞いた。まあ、ザビ家の象徴のような建物だからな。

 

そろそろ、セイラさんに会いに行ってもいいかもしれない。

いや、一度はちゃんと顔を合わせるべきだろう。あの戦争をともに戦い抜いた戦友として、そしてひとりの友人として。

いまさらアルテイシア様と呼んだら、どんな反応をするだろうか。

愚痴があるなら聞いてあげよう。それくらいしかできることはないが、友人ならばそれくらいはするべきだろう。

その後は、日本に行ってみるのもいいかもしれないな。

 

「宇宙は、平和になったのかしら?」

「……今はな」

 

連邦政府は民主主義を標榜しながら、その実態は寡頭制をやっていた。だから一年戦争(反乱)が起きた。その後、少しずつ連邦政府は変わっていった。しかしアースノイドとスペースノイドの確執が完全になくなることはないだろう。それこそ、地球からすべての人間が宇宙に上がらないかぎりは。

 

「なら、あなたは引退ではなく、長い休暇という可能性もあるのかしら?」

「さあ、どうだろうな」

 

その頃には、ウィリー・ケンプはもう故人となっているだろう。そもそも誰が敵で、誰が俺を召集するのかも疑問だ。

シロウズも逆襲する気配はなさそうだし、ハサウェイもまあ、大丈夫だろう。シロッコは……どうだろうな。そんなに邪気は感じなかった。見下されているような感じはしたが、それは俺個人のことなのでどうでもいいし。あとは……。

 

「……連邦政府の腐敗か」

「連邦政府が腐敗したら、粛清でもする?」

 

思わずこぼれた言葉に、ララァが揶揄(からか)うように問いかけてきた。

 

「そんなことはしないさ。そうだな、連邦政府に反省を促すダンスでも踊るかな」

「まあ」

 

ララァが口に手を当てて、ころころと笑った。

 

 

 





というわけで完結です。
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