この四人は不幸にも黒塗りの嵐に見舞われ遭難し無人島に漂着した!
魔神は転移魔術で帰れるし陰陽師は式神に乗れば帰れるし宇宙人は宇宙船で帰れるし超能力者は瞬間移動できる!
かくしてその気になれば帰れる奴らの無人島生活が始まる!
面倒なことになったな、と男──魔神ディノクは空を仰いだ。
今ディノクこと不破泰二が居るのは絶海の孤島だ。
砂浜で空を見上げているのには当然訳がある。
不破は資産家である。
未来視で宝くじを当て電子生命体の眷属に株やFXをやらせることで一代で巨万の富を築いた資産家である。
そのためにそういや日本一周旅行とかやってねぇなと思い日本一周クルーズにでも乗ってみるかと乗ってみたのである。
それが突然の嵐と台風により転覆。船から投げ出され絶海の孤島に取り残されたのである。
尚原因は寝ていたから。肉体にダメージが来るまで不破は眠り続けられるので寝て起きたら砂浜でびっくりした。
そう。不破は異世界から来た魔神である。
国を滅ぼし女を食らい(物理)邪悪の権化として君臨した絶対悪である。
それが日本に来たのは勇者によって異世界である日本に追放されたからであるが。
さてどうしようかと不破は適当に砂浜を歩き始める。
正直帰ろうと思えばすぐ帰れる。
転移魔術なり飛行なりジャンプなり一瞬で日本本土に帰れる。
だからまぁこのハプニングもいいかとこの島を見て回ったら帰ろうと不破は砂浜を歩きだした。
そして面倒なことになる。
「あ」
「あ」
目と目があった。
不破と目が合ったのは若い男だ。十八かそこらだろう。
黒髪黒目の正義感に溢れてそうな青年でありなぜか高校の制服を着ている。
「あー、と、同じく遭難者か?」
不破は取りあえずといった感じで問いかけた。
「はい。俺……私もこの島に流れ着いて、島を散策していたのです」
「そうか……」
さてどうしよう。不破の目の前の男、藤原一樹は少し悩んだ。
藤原は陰陽師である。
由緒正しい血筋を持つ男であり陰陽師としては日本最高峰の才能を持つ男だ。
そんな彼が日本一周クルーズに乗っていたのには訳がある。
丁度この前日本を征服しようとしていた妖怪大王を打倒し日本が平和になり、その報酬という事で家族から日本一周旅行をプレゼントされたのだ。
その船が台風によって沈みかけた時自分ではなく他者を助けて回っていたら脱出船が無くなり海に流され気づいたらこの島に居たのである。
正直藤原一人ならば帰るのは簡単だ。
式神の背に乗って空を飛んで行けばいいのだ。陸地だって陰陽術で探知すればどこかわかるし。
だが、人がいるとなると問題になる。
陰陽術は何も知らぬ者に見せるのは禁止されているし、だからと言って自分一人で帰ったら問題になる。
自分一人で帰ったらなんであいつだけ帰えれたという問題が生ずる。
後で島に戻ったとしてもなんで自分(不破)を置いて行ったという事になる。
念のために人がいないか見ていたが自分以外にもいたのか、と一樹は苦い顔をした。
そして不破も苦い顔をする。
自分一人なら勝手に帰ればよかったが人を置いて行くとなると後でなんでお前だけ帰れたという問題がある。
放置したとしても救助された場合置いて行った鬼畜としてテレビデビューだ。
「あー、取りあえず、他に人がいないか探そうか?」
「そうしましょう」
そうして不破と藤原は砂浜を歩いて行く。
その間にどうやって帰ろうか考えつつ。
「か~め~は~め~はー!」
そうして歩いていると少女の声が聞こえた。
声の方に向かっていくと其処には海に向かってかめはめ波を打っている少女が居た。
勿論本当に撃っている訳ではない。
少女は銀髪碧眼の美少女だ。なぜかセーラー服を着ている。
「…………」
不破と少女の目があった。
少女は恥ずかしそうに顔を赤くした。
「今の見なかったことにしてください……」
不破と藤原は無言で頷いた。
少女は頬を叩くと自己紹介を始める。
「えっと、星宮澪です」
少女──星宮は小さく頭を下げた。
「不破泰二だ」
「藤原一樹、高校生だ」
「よろしくお願いします、不破さん、藤原さん」
さてどうしよう。星宮は考えた。
星宮澪は宇宙人である。
アマテラス銀河の果ての星から来た宇宙人であり地球の日本を調べるために来た宇宙エージェントだ。
当然宇宙人なので身体能力は人間離れているし、体の一部は機械化している。
その機械を使えば母船と連絡を取りこの島から脱出するのは簡単だ。
だが、他の者たちに見られる訳にはいかない。宇宙人であることはこの国の政府にだって秘密なのだから。
だからと言って自分一人で帰ると残した者たちからあいつどうやって帰ったって問題が発生するしメディアも奇跡の帰還者として報道するだろう。
他の者たちがいなければよかった。勝手に帰って学校に戻ったとしても残した者たちが救助されると「あいつ俺たちを置いて行って戻っていやがった!」ってなる。
うーんどうしよう。星宮は頭をひねった。
「取りあえずあれだ、次は森の方調べないか?」
不破が森を指さした。
海岸沿いはこれで終わっている。次に調べられるところがあるとすれば海岸から続く森ぐらいだろう。
その提案を断る理由もないため二人は了承した。
そうして不破と藤原が先頭に立って森へと進む。
そうしていると少女の声が聞こえてくる。
何だろうかと三人は声の方に進む。
「はーはっは! 我こそは邪気眼に選ばれし運命の者! 世界よ! 我を見て瞠目し畏怖するが良い!」
そこに居たのは中二病患者だった。
ピンク色の神に青い瞳。中学校の制服。
左目には怪我をしてないのに眼帯を付けている。
「…………」
「…………」
少女と不破たちの視線が交差した。
「すみません今の見なかったことにしてください……」
少女は恥ずかしそうに顔を赤くしながらうつむいた。
「き、気にするな。そのくらいの年頃なら良くあることだから」
藤原がフォローになってないフォローを入れた。
「はい……」
少女──斉木彩は超能力者である!
瞬間移動、サイコキネシス。バイロキネシス、千里眼、超能力と呼ばれる物なら何でもできるのである!
その気になればサイコキネシスで地球に月をぶつける事さえ可能な恐るべき超能力者だ!
いずれ世界を征服するべくまずは日本を知ろうと未来視で当てた宝くじで日本一周クルーズに乗ってきたのである!
なお爆睡かまして漂着して起きるまで台風で船が沈没したことを知らなかった。
「あー、自己紹介しようぜ。俺は藤原一樹。高校生だ」
「不破泰二。資産家だ」
「星宮澪、高校生です」
「……斉木彩、中学二年生です」
「この森、他に人はいないのか?」
「いないです。気配もないですし……」
「そうか……じゃあこの無人島には俺たち四人しかいないってわけだ」
さてどうしよう。四人の思考が重なる。
かくしてここに全員その気になれば帰れる奴らの無人島生活が始まった。
続かない