今夜もアノレトコ☆Music night!   作:つるみ鎌太朗

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3、ヘドロ『You're not No.1』

 

 イモのアナウンサーが舞台袖でマイクを構え直し、番組を進める。

 

「はァ〜い、素晴らしい舞台でした。スタジオが劇場になっちゃいましたねえ!

次はヘドロで、曲は『You're not No.1』

よろしくお願いします!」

 

 ノンストップで次の曲に行くあたり時間が押しているようだ。

 すでに向かいのステージでヘドロがバンドを率いており、まぶたのアイシャドウのアップから前奏が始まる。

 クリスタル・ストリングスが天井から垂らされ、背後のモニターにはバーの様子が映し出されていた。

 気だるいジャズ。

 横にコーラスの男子三人組が控えている。

 ヒゲモジャのノッポと、弁髪のチビ。イカしたサングラスでスーツに身を包む痩せ型の男。

 スイングしながら指を鳴らしてリズムを刻んでいた。

 紫のたっぷりとした髪をかき分け、ヘドロがスタンドマイクへしなだれかかる。

 

♪アタシをロックオンしたつもり?

♪先に視線を送ったほうが負けなのよ

♪アンタの天下はもう終わり

♪アタシを狙ったばっかりに

 

 男性陣が『ヤッパッパパラ』などとレトロなコーラスを挟み、ヘドロが上体をそらす。

 肉感的ではないものの、弱々しさはなく針のような鋭さを思わせた。

 

♪ねえ どんな気分なの?

♪見下していた女に振り回されて

♪甘いコトバさえ吐けば

♪この世は思いどおりになると思っているのね

 

 シャウトのあと、オレンジのライトが場を一気に染めあげる。

 

♪You're not No. 1 お遊びも知らない坊やはお呼びじゃない

♪テレビゲームばかりして 紛い物のステータス磨いてきたんでしょ

♪You're just poor someone 本当のオンナを見誤るboyじゃない

♪火遊びを知るオトコ それなら視線くれてやってもいい

 

 カメラに向かってガンを飛ばし、ヘドロがテレビの視聴者へ啖呵を切るそぶりをした。

 

♪I'm just No. 1……決めるのはアタシよ

♪フッた男の数だけ 紅いjewelry 増やしてる

 

 耳と首もとで、歌詞どおりのガーネットのアクセサリーがきらめく。

 トランペットが間奏をつないだ。

 その間、ヘドロはコーラス隊のサングラスの男へ近づいてその細い脚に自分の脚を絡める。

 口づけしそうなほど顔を寄せると早口のスキャットでまくし立てた。

 そんな中でも男は涼しい顔で指でグルーブを鳴らし続けていたので、プロ根性ここに極まれりと言えよう。

 ヘドロが即興で唄いつつマイクまで戻るとラスサビが開幕する。

 

♪You're not No. 1 お遊びも知らない坊やはお呼びじゃない

♪テレビゲームばかりして 紛い物のステータス磨いてきたんでしょ

♪You're just poor someone 本当のオンナを見誤るboyじゃない

♪火遊びを知るオトコ それなら視線くれてやってもいい

 

 彼女は最後に腰を深く落とし、マイクを撫であげながらユラリと登りつめる。

 赤いリップがマイクに触れそうなほど近づいた。

 

♪I'm just No. 1……決めるのはアタシよ

♪I'm just No. 1……決めるのはアタシ

♪ You're not No. 1……You don't take the lead

♪フッた男の数だけ 紅いjewelry 増やしてる

 

 最後にマイクを蹴飛ばすと、額を抑えつつ『アハハ』と高笑い。

 圧巻のパフォーマンスで客席から拍手が鳴り止まない。

 

 

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