最強の英雄は壊れている   作:無能メンヘラ

16 / 16
理想主義者

 国内最大野党、日本改革連合の党ビルの前、1人の男が大勢の民衆を前に勇猛果敢に演説をしていた。

 

「現政権は積極的平和主義を騙り、軍拡を正当化している! そんなこと許されてはならない‼︎」

 

 男の名前はゲンダ、彼こそがまさに、日革連の党首だ。

 ゲンダが強く握った拳を空に掲げる。彼の一声、一声は民衆たちの心を強く訴えていた。

 

「私たちは……もう1度、この国に本当の平和主義を取り戻さなければならないのです!」

 

 ゲンダの目は涙で一杯になっていた。

 その涙は嘘偽りなく、彼の本心だった。

 

 民衆の中から、一つまた一つと拍手が連鎖していく。次第にそれは小さく降る雨が嵐に変わるように大きくなっていった。

 ゲンダは、演説台から降りて民衆の前まで歩き出して止まる。

 そして、深くお辞儀をした後、大きな声でいった。

 

「皆様……ありがとう」

 

 顔を上げると、ゲンダは党ビルの中へと入っていった。

 ビルには『平和主義を取り戻す』とスローガンが大きく掲げられていた。

 

 中に入るとすぐに、壁に1人の男がもたれて立っていた。

 その男は、アジア人の顔にそぐわない巨大な体躯だった。布の上からでもわかる男の肉体の完成度は異様だった。無駄に大きいわけでも、細すぎるわけでもなかった。

 言うならば、戦争を行うために最適化された体だった。

 

「平和を謳う政党の長が敵国と協力……ずいぶん上手くできた笑い話だ」

 

 ゲンダは男を一瞬睨む。

 男は鼻でゲンダを嘲笑った。

 

「……こちらも好きで君らと協力しているわけではない」

 

「それはお互い様だろう?」

 

 男は胸元から垂れたドックタグを差し込む光で反射させる。

 ローウェン、そう名前の刻まれたドックタグは鈍く光った。

 

「戦争を防ぐ気はあるのか?」

 

 ゲンダの問いただす声は怒りに満ちていた。

 視線はローウェンの腰元に向く、そこには拳銃が装填されたホルスターが装備されていた。

 ローウェンは少し言葉を選ぶように顎を手でなぞった後、答える。

 

「そのために、ここにいる」

 

 その目は真剣だった。

 

「じゃあ、なぜ武器を持つ」

 

「武器がなければ防げないからだ」

 

 それは恐ろしく現実を反映した答えだった。

 だが、ゲンダは納得できない。

 

「それは誰の理屈だ」

 

「世界の理屈さ、戦争のな」

 

 ローウェンはどこか遠い地を見る目で話す。

 

「俺はシリアにいたんだ。そこは地獄だった、話し合いもクソもない。生き残った奴だけが正解になる」

 

 彼の目はゆっくりと下を向いた後、ゲンダの目を真っ直ぐと通過した。

 ゲンダもローウェンもわかっていた。自分の理屈が正しくもあり、間違っていることも。

 

「だから、あんたみたいな理想論でしか物事を考えられない奴を見ると反吐が出る」

 

 深く呼吸をした。

 

「だが、嫌いじゃない」

 

 2人の進む道は違う。しかし、その道の先にあるのは()()()()()()()だけだった。

 


 

「みんな集まったー?」

 

 大東亜リサーチのビルの一区画、モニターの前にマルレが立っていた。

 隣に座るタカハシは、机の上に出された書類を手に取り、それをペラペラとめくりながら読んでいた。

 任務だ、それもおそらく重要な。

 

 部屋の中には俺たちの3人以外にも、顔をバラクラバで隠した者が数人。

 

「今回の任務はね、じゃじゃん」

 

 モニターには1人の男が映し出された。

 ニュースやSNSで見る、知っている顔だった。

 

 ゲンダ、対話外交、戦争反対、軍縮を主張し続け、政界屈指の平和主義者と評される男。

 

 とても殺されるような人間とは──俺には思えなかった。

 

「みんなも知っていると思うけど、彼の名前はゲンダ マサヨシ。国内最大野党の日革連の党首」

 

 マルレは一度、手を叩くと、笑みを浮かべながら行った。

 

「君たちにはゲンダを殺して欲しいんだよね」

 

 モニターには日革連のデータが出される。

 すべて、ニュースなどは見ないような情報だった。

 

「彼らは中国共産党から裏ルートで資金援助などの支援を受けてる。証拠もすでに押さえてる」

 

「ならなぜ、直接捜査を行わないのですか?」

 

 タカハシがマルレに聞いた。

 マルレはタカハシの言葉を理解したように頷く。

 

「確かに、フミアキくんの言う通り。でもね、政治っていうのは敵がいた方がやりやすいんだよ」

 

 モニターが切り替わる。

 写されたものは先ほどまでの写真と違い、異質な空気を放っていた。

 破壊された車両、ドローン、銃痕がはっきりとした遺体。

 

 紛れもない戦争の一部だった。

 

「彼らの背後には華龍安保ってPMCがついているみたい、だからここまで強気でいられるのかもね」

 

 元人民解放軍兵士、多数配備の可能性あり。

 

 マルレの声色が少し変わる。

 

「君たちにしてほしいことは2つ」

 

 そういって、マルレは人差し指を上げた。

 

「ゲンダの殺害」

 

 次に中指を上げる。

 

「それと華龍安保の介入阻止」

 

 マルレは楽しそうに笑いながら言った。

 

「戦争を止めるために平和主義者を殺してきてね」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

明治・大秘密結社時代 〜社畜が転生したら10歳で暗殺組織の幹部(笑)でした。給料未払いは美学に反します!〜(作者:だいたい大丈夫)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

現代日本で過労死した社畜の俺。目が覚めると、そこは文明開化の音がする明治時代の帝都だった!▼「今世こそはホワイトな貴族生活を……」と願ったのも束の間、気づけば俺は歴史の闇を守る秘密結社『時守(ときもり)』の特務部隊、四番の座を継承させられていた。▼だが、この時代の日本は何かがおかしい。▼右を見れば「密室」にこだわる変態、左を見れば「72時間労働」を推奨するブ…


総合評価:30/評価:-.--/連載:15話/更新日時:2026年05月29日(金) 18:00 小説情報

ミステリアスな糸目キャラに憧れたら如何にも怪しすぎる不審者になった(作者:あーあ=あ)(原作:ポケットモンスター)

糸目キャラになった転生者がミステリアス系キャラを目指したらあからさまにラスボス張りそうな怪し過ぎるキャラに…


総合評価:5628/評価:8.16/短編:9話/更新日時:2026年02月22日(日) 17:27 小説情報

銀河皇帝のスペアに転生した元社畜、地球軌道上の要塞でネトゲ三昧の隠居生活を満喫する 〜足元では超大国が滅亡級の異星遺産を巡って暗躍中ですが、主人公(ぼく)の命は絶対安全なので特等席で傍観します〜(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ブラック企業で心身をすり減らした元社畜は、並行世界の地球軌道上に浮かぶ完全ステルス要塞〈サイト・アオ〉で目を覚ました。▼彼の新たな肉体は、銀河帝国の最高権力者のスペアとして培養された完全無欠のクローン「ティアナ・レグリア」。神のごとき超能力と超絶テクノロジーを行使し、広大な銀河での大冒険すら早々に「クリア」してしまった彼は決意する。▼「宇宙の覇権とか面倒くさ…


総合評価:1723/評価:6.79/連載:121話/更新日時:2026年05月30日(土) 17:16 小説情報

ネロ帝が女のわけないだろ!いい加減にしてくださいお願いしますから!!(作者:オールドファッション)(原作:Fate/)

これは明らかに転生する時代を間違えた男が風呂を作る物語である。▼主人公には型月知識はない(死刑宣告)▼pixivにて同時掲載開始。▼


総合評価:28861/評価:8.26/連載:36話/更新日時:2026年04月14日(火) 12:52 小説情報

汎モルガン「どけ!!! 私はお姉ちゃんだぞ!!!」(作者:花のお姉ちゃん)(原作:Fate/)

 第一人格「どけ!!! 私はお姉ちゃんだぞ!!!」▼ 第二人格「ならば私は、全力でお姉ちゃんを遂行する!!」▼ 第三人格「ブリテン姉妹ぃぃいい!!! ファイヤーッッ!!!!」


総合評価:1567/評価:8.58/連載:4話/更新日時:2026年03月05日(木) 22:25 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>