・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・魚の小骨は喉に刺さるので気をつけましょう
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帝国第三騎士団。それは帝国を魔物の脅威から守る、対魔物専門の騎士団。戦争をするよりも過酷な魔物との戦いで生き残り1匹でも多くの魔物を屠るべく、日々訓練を続ける帝国きっての武闘派集団。その第三騎士団でも一時心休まる機会があった。それは第三騎士団のトップ、騎士団長リフォネオスが隊長、団員分け隔て無く、訓練の成績が良かった者を夕餉に誘う瞬間だという。
「そこまで!!!本日の訓練を終了しろ!!!」
お疲れ様でしたと団員が整列する。それを眺めたリフォネオスは額に傷を付けた団員の肩に手を置き優しく語り掛けた。
「今日の訓練はラクリスが1番勝ち筋が良かった。今日はスイヨウの日。夕餉には貴様を連れて行こう。」
「ありがとうございまぁす!!!!」
他の団員から羨ましげに見られながら今日の訓練を終了した。そして風呂に入り身を清めた後、待ち合わせ場所にラクリスは集合した。団長を見つけると風呂上がりで動きやすく、肩の出たドレスを着ているリフォネオスを見てラクリスは同性ながらドキっとしてしまう。
「だ、団長!!到着しました!!」
「うむ。では行こうか。」
「は、はぁい!!」
2人が向かったのは商店街・・・・・・ではなく商店街の裏の通り、そこは倉庫が立ち並ぶ通りで商人達が昼間なら忙しく回るところだ。その一角の更に路地裏に入る。
「ここだ。ラクリスは初めてだな?」
「は、はい。」
「そう緊張するな。安心せよ。異世界だが気負う事はない。」
「はぁい!!!」
そしてラクリスは眺めた。謎の看板と引き戸。リフォネオスは何の躊躇いも無く引き戸を開けるのであった。
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「らっしゃいぃぁ!!!!」
「店主、また来たぞ。」
「リフォネオスさんじゃないっすかぁ!!今日は随分とかわい子ちゃん連れてますね!!」
「私は可愛くないと言ってるのか?」
「そんなまさかぁ!!!リフォネオスさんも今日もお綺麗でさぁ!!!」
ラクリスは驚いた。ここの店主はあの鬼神とも言える団長とこんな軽口を叩き合っているとは。ちらりと横を見るとその団長が見たこともない柔らかい表情をしているのを見て更に驚いた。
「ラクリス、カウンターと座敷、どっちに座る?」
「え、えと・・・」
「悩むならカウンターに座ろう。作ってるのが見えて面白いぞ。」
「はい。」
2人はカウンターに座るとすぐにトン、と水が出てくる。ラクリスは水は頼んでないと言い掛けるとリフォネオスから腕で制止された。
「ここは水はタダなんだ。」
「え!?」
ラクリスは驚いてばっかりだ。氷が入って、そしてどこの湧き水から汲んできたのかとても透き通った水がタダ!?流石騎士団長の通う店だとても高級店なのだなとラクリスは1人納得した。
「リフォネオスさん注文はいつもので?」
「ああ、私とこいつ2人同じものを頼む。」
「あいよぉ!!!」
団長の頼むいつものとは何だろうか。肉か・・・?美味い肉なら嬉しい。今日は訓練が激しかったので肉が食べたい。
「お待ちぃぁ!!!サバの塩焼き定食ぅ!!!」
「きたきた。食うぞラクリス。」
「は、はぁい!」
出て来たのは魚のようだった。ちょっとガッカリしたが団長がいつも頼む物ならば美味いに違いないと確信した。
「サバとは海の魚なんだ。白身で脂が乗ってて美味いぞ。」
「へぇ〜」
海の魚は初めて食べる。フォークで身をほぐし、一口。
「う、うおっほ!?」
ラクリスはもう何度目かわからないほど驚いた。さっぱりした味だが脂が口の中を密集陣形で駆け巡って行く。そうかだから塩で味付けしたのか。この魚は塩で充分なんだ。
「はぐ、もぐ、はぐ、もぐ。」
団長からお行儀が悪いがご飯と一緒に食うと更に美味いと聞いて、ご飯、サバ、ご飯、サバ、と口に運ぶ。とんでもなく美味い。これが異世界かと感じていると、ふと皿を見る。もう無い。
「はっはっはっは!!!ラクリス、もう一皿食べたいという顔をしているな。」
「あ、うう・・・・・・」
「構わん。店主!!サバの塩焼きをもう一皿くれ!!私にはご飯のおかわりを。」
「はいよぉ!!!」
ラクリスはちょっぴり恥ずかしかったがあのサバの塩焼きをもっと食べて良いと聞いて喜んだ。そうしておかわりをも完食したあと。団長と共に店を出た。
「ラクリス、少し夜風にあたって帰ろう。」
「はい!」
「む、リフォネウスではないか?」
「貴様・・・アルゲント!!」
店を出たら第四騎士団の団長に出くわしてしまった。というか何故かリフォネオス団長は歯を食いしばりながらアルゲント団長を睨んでいる。おかしい。いつもは団を超えて意見の交換をやり合う仲の良さなのになんか親の仇のようだ。
「アルゲント。貴様、今日もか?」
「そうだリフォネオス。あれこそ至高の料理なのだ。」
「馬鹿が!!!至高の料理はサバの塩焼きに決まっている!!!」
「何を言うか!!!サバのミソニが究極の料理だと言うことがまだわからんか!!!」
「何故わざわざミソを使う!!!サバは塩で充分なのだぞ!!!」
「その貧相な発想がイカンのだ!!!ミソで脂をまとめ上げてやるのが最高なのだぞ!!!」
「愚かな・・・!!塩で脂本来の味を楽しむのが高貴な者の振る舞いなのだぞ!!!」
「何が高貴だ!!!ミソニこそ誇り高き戦士の魂だと言っているのだ!!!」
「貴様ぁぁ!!!」
「何をぉぉ!!!」
ラクリスは頭を抱えた。あの礼節を重んじる2人の団長が。場末の路地裏でどっちの料理が美味いかで喧嘩をしている。ラクリスは自分の中で何かが崩れ去るのを感じるのであった。