・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・水曜日は定休日です。他の曜日にご来店ください。
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昼下がりの魔都、豪奢な調度品に囲まれた執務室で、魔王ラスティーナは職務を全うしていた。
「ふむ・・・・・・最近魔物の動向が読みづらくなってます。騎士団に警戒範囲を広げるように伝えてください。」
「はい。」
人間の文官に書類を預け、一段落つく。恭しく頭を下げて文官は出ていった。
「はぁ・・・・・・昼餉の時間をすごく過ぎてしまいました・・・・・・」
もう昼食は取れないなと諦めるが腹はそう簡単に許してはくれない。早く食べ物を寄越せと唸る腹をなんとか宥めながら厨房にミルクでももらおうと向かう。魔王でも時間を守れなかったら昼食は手に入らないのである。諸行無常。
「・・・あら?」
厨房に向かう途中ゴトゴトと揺れる扉を見つけたラスティーナ。揺れはすぐに納まったが・・・嫌な予感が頭を過る。
「誰か・・・誰かいるのですか!?」
ドンドンと扉を叩くが答えはない。誰か閉じ込められていて一大事だと感じて魔法で扉を吹き飛ばさなくてはと思ったが自分の魔法では保護の魔法が掛けられている扉を焦がす事も出来ないと思い出し、とりあえず中に入れるか確認するためドアノブに手を掛けた。
「あ、れ・・・・・・?」
ドアノブは開いた。鍵は掛かってない。ではさっきの物音は?と扉の中を見る。
「・・・・・・?」
中は魔王城内に転々と設置されている武具庫のようで鎧や槍が納められていた、が。
「あれ、は・・・・・・」
ラスティーナに読めない文字の書かれた看板と、引き戸。そういえば・・・・・・と思い出した。アーデルハイド様が言っていた引き戸のもうひとつの異世界食堂の事を。
「なる、ほど。新たな扉がこちらに・・・・・・」
ちょうどいいと遅い昼餉を取りに、ラスティーナは荷物を掻き分けて引き戸を開けたのであった。
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「らっしゃいっしゃせ!!!」
「いらっしゃいませー!!!」
「いらっしゃいませ!!!」
「わ・・・」
ねこやとは違う様相に驚きはしたが、それ以上に腹が減っている。昼時は過ぎたからか客は少なく、好きな席へと言われたのでカウンターの席へ座る。
「お客様初めてですよね?ここは・・・」
「あ、えと、大丈夫です。異世界食堂の、ふたばさんですよね。」
「知ってるお客様でしたか失礼しました!!うちは初めてのお客様はタダなんで!!」
「そ、そういうわけにはいきません!!ちゃんとお金を用意してますし。」
「いえいえ、だからと言ってお金をいただいてしまっては公平じゃありませんので。」
「そうなんですか・・・?」
「はい!!」
メニューをどうぞとなにやら魔導書より大きなもの渡されて目を回していると店主らしき男性がやってきた。
「お客さん、メニューがよくわからない時は食べたいもの言ってくだせぇ。近い物をお出しするんで。」
「そうなんですか・・・・・・?それじゃあ、えと、元気が出て、力が付く、お肉、が、いいんですけど・・・・・・そういうのありますか?」
「元気が出て、力が付く、肉・・・なるほど!ありますよ良いのが。スタミナニラホルモン定食はどうでしょ!!」
「すたみな、にらほるもん・・・・・・?」
「にんにく、こっちではガレオって言ったっけ。のソースとニラっていう精の着く野菜と牛の内臓の肉を炒めた料理でさぁ。」
「う、牛の内臓!?」
「ええ!!脂がたっぷりで、働くやつの飯と言ったらこれでさぁ!!!!!」
「働く人の・・・・・・ごはん・・・・・・わかりました。それでお願いします。」
「あいよぉ!!!肉大盛りにも出来ますけど。」
「に、肉大盛りで!!」
「あいよぉ!!!!」
ラスティーナは承諾こそしたが牛の内臓というのが気に掛かった。内臓を食べるなど魔物ではないかと思うが・・・・・・ここはねこやと同じ異世界食堂。内臓と言えど美味くない物は出さないだろうという信頼はあった。初めてきたけど。
「・・・。」
「あら!ラスティーナ様!」
「え?あ、アーデルハイド様!!」
「ごきげんよう♪昼餉ですか?」
「はい、少々仕事に追われてまして。」
「そうなのですか・・・・・・」
「アーデルハイド様は?どうしてこのような時に・・・・・・?」
「・・・・・・ハンナにいじわるをされているのです。」
「ええ!?」
アーデルハイドの口からとんでもない言葉が出てきた。皇族に、いじわる!?そんなの処刑されてもおかしくない。それにアーデルハイド御付きの女中のハンナの事は聞き及んでいる。いじわるをするような女中ではない。
「な、なにがあったのですかアーデルハイド様。事と場合によっては私もご助力を・・・・・・」
「ああ、いえ、大した事ではないのです。」
「え?」
「このように・・・・・・少しばかり太ってしまいまして・・・・・・」
アーデルハイドがラスティーナの手を取って自分の腹へと持ってくる。ラスティーナは聡い。すぐに肉が付いていることを理解したがそれを直接口に出すことはなかった。
「そうしたらハンナはねこやに行く時もふたばに行く時も着いて行って見張る!というのですよ?」
「ええ・・・今は姿が見えない様ですが・・・」
「今はハンナに無理矢理仕事を作って1人で来たんです♪内緒ですよ。」
「ええ・・・・・・!」
「というわけで店主さん♪れでぃすらんち定食はるまき多めでお願いします!」
「はいよぉ!!!」
大丈夫なのかこの人はとラスティーナは思った。前はこんなに緩い人じゃ無かった気がする。初めてねこやに行った時私に導きを与えてくれたアーデルハイドは見る影も無い。酷い言い方になるがパフェの食べ過ぎで頭の中まで砂糖漬けになったのでは・・・・・・と考えたがそれは流石に失礼過ぎると頭を振って思考を追いやった。
「スタミナニラホルモン定食肉大盛りお待ちぃ!!!」
「わ、わ!」
「わぁラスティーナ様のすごいですねぇ〜」
茶色のソースが掛かった肉に緑の細長い葉の様な物が入っている。この緑のがにらか、この肉がほるもんかと考えているうちにガレオ・・・・・・異世界ではにんにくと言ったか。の匂いが頭の中にまで侵入してきてあっという間に満たされてしまう。早く、早く食べたい!!という思考でうまりフォークでホルモンを攫って口に運ぶ。
「!!」
濃厚。それしかいう事が無かった。ソースの旨みとホルモンの脂の旨み、そしてニラの旨みが口の中を戦場の様に騒がしくしていく。ここにご飯を放り込むと戦場にドラゴンが舞い降りて敵味方問わず蹂躙し、味噌汁を流し込むと何もかもを篩に掛けて流していく。この料理はラスティーナにとってとても忙しかった。
「はぐ、はぐ、もぐ・・・・・・」
ホルモン、ご飯、味噌汁の三段攻撃はあっという間にラスティーナ城を攻略し全部食べ終わる頃にはすたみなにらほるもんの幟旗がラスティーナ城の残骸に打ち立てられていた。
「・・・・・・ィーナ・・・・・・ま・・・・・・」
「あー・・・・・・」
「ラス・・・・・・ま・・・・・・」
「おいしい・・・・・・」
「ラスティーナ様!!」
「はっ・・・・・・」
「ラスティーナ様どうされました?ボーッとしてましたよ。」
「あ、いや、あまりの美味しさで・・・・・・」
「まぁ。」
「はいよぉレディースランチ定食春巻き多めお待ちィ!!!」
「わぁ♪」
気がついたらすたみなにらほるもんていしょくとやらは完食して無くなっていた。あまりの美味さの暴力にもっと味わって食べれば良かった・・・・・・などと考えて水のコップを手にとったら。
バキッ
「!?」
「お客さん?大丈夫ですか?」
ラスティーナは驚愕で動けなかった。いつもの自分の握力なら木のコップを握り潰すのも不可能なのにこの材質はわからないが木よりも遥かに頑丈そうな透明なコップを握りつぶしてしまっていた。
「すすすすみません!!!弁償しますので・・・・・・!!!」
「ああ大丈夫ですよ。コップひとつくらいこれそちらでいうと銅貨3枚くらいの安物ですから。」
「ですが・・・!」
「それより破片刺さったりしてませんか?大丈夫ですか?」
「だ、い、じょうぶ、です・・・・・・」
「そりゃ良かった。まぁ弁償したいと思ったらまた食べにきてお金落としてくださいな。」
「わかり、ました・・・」
「ラスティーナ様・・・?」
「アーデルハイド様、お先に失礼します・・・・・・」
「はい・・・・・・」
ラスティーナはふたばを後にして、訓練場に向かった。そこでは何人かが訓練しているのみで少し場所を間借りさせてもらう。
「・・・・・・はっ!!!」
魔法の・・・・・・魔法の威力が上がっていた。僅かに上がっているなら誤差と考えられたが明確に威力が違う。なぜ、と考えたが答えがひとつしかない。
「すたみなにらほるもんていしょく・・・・・・!!!」
あの料理が私の力の底上げをしたに違いない。そう感じて今日は魔法の練習をしまくった。ちなみに翌日同じように練習したら威力は戻っていた。