・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・定食が美味しかったら本場にも行って見ましょう。
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7日に1度訪れる、スイヨウの日。
「むむむ・・・やっとスイヨウの日が来たか。」
光の神の神殿にある、高司祭よりも上の者のみが入れる祭壇でその男、ガタノイヌスは1人、引き戸の扉を前に佇む。
「待ちわびた・・・・・・何故スイヨウだけなのか・・・・・・」
ガタノイヌスは枢機卿である。だが要所を任されてはいるが首都の神殿からは離されていた。自分で望んだことではあるが。光の神は節制を重んじ、自制し、禁欲する事を求める。そして司祭よりも高い高徳を求められる枢機卿に置いては教団を率いる必要がありより強い自制が求められていた。
「まぁ飯くらいなら。人間味よの。」
ガタノイヌスは奔放とはいかないまでも、寛容で自由な男であった。現法皇もパイプを片時も離さないのだ。7日に1度好きな飯を食うくらい神はお許しになるだろうと。
「しかしなんでこの場所に・・・・・・」
引き戸が現れた場所。それは祭壇に祀られている神像の足元の裏であった。一般人や神父、シスター程度の者ならば神像に近づくことも許されないので自分だけが気づいた扉。
「まぁいいか。」
ガタノイヌスは引き戸を開けてふたばの店内へ歩みを進めるのであった。
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「らっさやぁい!!!」
「いらっしゃいませ!!!」
「いらっしゃいませー!!!」
「おお店主世話になるぞ。」
「ガタノイヌスさん久しぶりですねぇ。」
「すまないなもっと通いたいのだが。枢機卿が頻繁に訪れては他の者も息苦しかろうと思ってな。」
「そんな寂しいこと言わないでくだせぇ。ここはそういう肩書きとか気にしないで飯を食ってもらう場所でさぁ。」
「そうか・・・・・・?ではもう少し通わせてもらおう。」
「はいよ!!!で?何にしやす?」
「決まっているぞ。シロコロホルモン定食を頼む。」
「はいよぉ!!!シロコロひとつーーーーー!!!」
ガタノイヌスは辺りを見渡し、一息吐く。隣には恐らく金の神の信徒。向こうには赤の神の信徒。給仕は青の神の信徒。店主は・・・・・・何の神の信徒かはわからない。だがここは異なる神の信徒がお互いを気にせず食事をしている。以前は他の信徒を気にして控えていたが。もう自分は枢機卿だのなんだの考えずここに来てもいいかもしれないなと結論付けた。
「ふふふ。」
ガタノイヌスは入口の横の本棚から派手な色をした本を一冊手に取る。全く読めないのだが多く活力のある絵が書かれていることからそれを読むのが好きであった。文字こそ読めないものの動きのある絵から冒険活劇の様だと推察し眺めていく。異世界の本は実に楽しく、愉快なものであった。願わくば文字が読めるようになりたいが。流石にそこまで願うのは横柄だなと独りごちる。
「シロコロホルモン定食お待ちぃ!!!」
「ほほう。」
熱々に焼かれたシロコロホルモン。そしてご飯と味噌汁。これを始めて注文した時を思い出す脂の乗った肉を注文したらこれが出てきた。豚の内臓と聞いてすこぶる驚いたものだが一口食べてみるととろける甘い脂が口の中いっぱいに広がりなんと美味いことか。その時はあっという間に食べ尽くしホルモンとご飯を二回もおかわりしてしまった。後から気づいて遠慮が無さすぎたと後悔したが店主は笑って腹一杯食べてくれて嬉しいと言った。枢機卿として食事もそれなりのものを食わされて来たが自分で選んで飯を食うなど大層久しぶりであり、飯とはこんなに美味かったかと再確認する出来事だった。
「うん!美味い・・・・・・」
ホルモンをひとつずつ、味わって食べる。内臓など捨てる部位であるがここまで美味く調理出来るのは店主の腕故だろう。こちらでも肉屋に話を通して一部捨てずに食べて見たがとてもじゃないが食えたものじゃなかった。どうすればここまで美味くなるのか見当もつかないが美味ければ良いかと寛容な心でガタノイヌスは見ていた。
「はふ、はふ。もぐ。」
枢機卿として御行儀が悪いがホルモンとご飯を同時に食うとそれはもう美味い事美味い事。脂がコメに絡み合い咀嚼すると肉の旨みまで口の中に襲ってくる。このような贅沢な食事を取れるのは光の神の思し召しであろうと強く祈りを捧げるであった。
「ふぅ。馳走であった。」
「お粗末さまぁぃ!!!あれガタノイヌスさん今日はおかわりしないんで?」
「いやいや以前は流石に無遠慮過ぎた。他にもこれを食いたい者はいるだろう。私は美味過ぎて食べ尽くしてしまうやもしれぬ。」
「まぁ無くなればまた仕入れるだけなんでいっぱい食ってくれて構やしねぇんですが・・・・・・」
「そ、そうか・・・?で、ではほるもんのおかわりとご飯のおかわりを・・・・・・」
「あいよぉ!!!」
光の神よ今日も糧を与えてくださり誠に感謝致します。そうしてガタノイヌスはホルモンのおかわりにフォークを刺すのであった。
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「ふぅ。今日の営業終わり。」
定食屋ふたばは、従業員を入れた事で夜明けまで営業を取りやめることにしていた。従業員のアーロイとミミはまだ子供。異世界だから見た目とは違う年齢かと思ったがちゃんと見た目通りであった。安心した。ファルダニアちゃんという例があるので。
「よし!!掃除頼む!!そのうちに夜食の準備するから!!」
「わーい!!!」
「ごっはん!ごっはん!」
今日の賄いはどうしようかと冷蔵庫を開ける。うーむ。小松菜が残っているな。あと水餃子が少々。これにするか。ちゃちゃっと中華スープの元を使って刻んだ小松菜、水餃子を煮る。ご飯だけでいいか。よし。
「出来たぞーーー!!!」
わーとかけよってくるアーロイとミミ。いただきますとこちらで覚えた挨拶をして賄いに手をつける。
「美味しい・・・・・・温まりますね〜」
「この野菜好きです。」
「そうか?あまりもんですまねぇなぁ。」
「何言ってるんですか朝から晩まで食べさせてもらってるだけじゃなく夜食までもらってるんですよ。贅沢どころじゃありません。」
「そうそう。どれもこれも美味しいから人魚でも太りそう。」
ニコニコと食ってくれる2人を見るとこちらも嬉しくなる。そうして2人が食べ終わるころ。ガラッと入口が空く音がした。
「すいやせん今日は・・・・・・あおさん?」
「すみませんですわ店主・・・・・・」
「どうしたんです?」
入って来たのは今日もネギ塩豚カルビ定食をしこたま食っていったあおさんであった。何か困ってるようだが・・・・・・
「店主。実は外側の神との遭遇がありましたの。」
「はい?」
「それで・・・・・・これを。」
「はぁ。」
渡されたのはなんかゴツい鍵。昔の宝箱に使うみたいなやつ。
「この鍵はこの店の入り口の鍵です。」
「いや入り口の鍵持ってますよちっちゃいやつ。」
「あー何と言いますか・・・・・・異世界の入り口の鍵ですわ。」
「異世界の入り口・・・・・・」
「この鍵は閉じるだけでなく。終わらせることも出来るんですの。」
「終わらせる?」
「ええ。この異世界営業を終わらせたかったら、この鍵を壊しなさい。」
「へぇ。」
「わかりましたわね?わたくし伝えましたわよ?」
「まぁ。はい。」
「ではわたくしは戻りますわ。おやすみなさい。」
「はぁ。お疲れ様です。」
終わらせる鍵、か・・・・・・なんかよくわかんねぇな。とりあえず神棚にしまっとくか。