水曜日の異世界営業を始めて1ヶ月が経った。異世界営業の客はまばら。4人来れば大繁盛と言ったところ。そして貯まる異世界の金。どうやって換金すりゃいいいんだこんなの。
「はぁ・・・ま。隣町の貴金属店に持ち込むしか無いな。」
そして今日も水曜日の開店をした。朝に村人っぽい人が驚きながら入ってきて定食を食ってったくらいで人は来ない。ファルダニアちゃんの言うことが正しいなら異世界の各地に現れるといううちの入り口がまだ少ないからなんだろうな。
「メニューとかどうしよ。」
いちいちメニューを説明するのも人が多くなった時のことを考えると大変だ。なんとかしないと・・・出来るの?
「はぁ・・・・・・」
前途多難だ・・・・・・こんなこと誰にも相談出来ないし・・・・・・そして掃除をしながら昼前になると引き戸が開きなんかでかい斧を持った小さいおじさんが2人入ってきた。
「いらっしゃいぃ!!」
「よぉ!やっとるか?」
「良い匂いはあんましないのう。」
「お好きな席に座ってくだせぇ。お座敷もありますよ。」
「おう!!じゃあザシキ?にするかのう。」
「こちらへ!!!」
小さいおじさん2人はお座敷のテーブルに座ると荷物を横に置き店内を見渡し始める。
「おい店主。メニューは無いのか?」
「ああうちのメニューは全部壁掛けなんですよ。読めないですよね。何か食べたい物を言ってくれたらそれに近いのを作りますよ。」
「ああそうなんか。じゃあの・・・シーフードフライちゅうのはあるか?」
「ミックスフライ定食がありますぜ。」
シーフードフライという言葉が異世界人の口からポンと出てくるのはなんかおかしい。もしかしてこの2人はねこやとかいうもう一軒の異世界食堂の客か、と見当を付けた。
「おう!じゃあそのミックスフライテイショクってやつをふたつ!!!それと酒はあるか?」
「ありますよ。ビール、ハイボール、レモンサワー、ウーロンハイ、梅酒があります。」
「うーむ、ビールや梅酒は飲んだことあるが・・・はいぼーるとれもんさわーとうーろんはいちゅうもんは飲んだこと無いのう・・・ギレムどうする。」
「むぅ・・・ビールでも良いが・・・せっかくねこやとは別な店に来たんじゃから別な酒を頼んだ方がええじゃろ。」
「わかった。店主!!はいぼーるとれもんさわーとうーろんはいをわしとこいつにひとつずつくれ!!」
「あいよぉ!!!」
手早く料理の調理に手を付ける。うちのはコストはかかるんだが油をいい時のしか使わないポリシーがあるので美味いと思う。今日のミックスフライのメニューはメンチ、イカ、エビ、玉ねぎだ。もう切り分けてあるのでさっさと揚げる。そしてご飯と味噌汁を盛り付けて完成。ワゴンに乗せて小さいおじさんの元へ
「お待ちどぉ!!!ミックスフライ定食です!!」
「おお!待っとったぞ!!!」
定食をおいたらすぐさま酒の用意をする。業務用の機械があるのですぐだ。
「酒もお待ちぃ!!!こちらがハイボール、こちらがレモンサワー、こちらがウーロンハイです!!!!」
「ほほほー!!!来たわい来たわい!!!」
「ほぉこれがあの酒か。」
「あの・・・・・・お客さん。」
「ん?なんじゃ?」
「普通に作っちまいましたけど・・・食べれないものとかってありますか?」
「なんじゃそんなことか。わし達ドワーフは別に食えないものなんかありゃせんぞ。」
「そうじゃ酒も飯もどんとこいじゃ!!!」
「そうですかい。そりゃ良かった!おあがりよ!!!」
そしてカウンターに戻っておじさん達を横目にちょっと観察する。大丈夫って言ったけど本当に大丈夫かな。
「ふむふむ。見た目はねこやのフライとそう変わらんな。」
「まぁ食ってみればわかるわい。」
おじさんの1人がメンチカツにフォークを突き刺し口に運ぶ。するとニカッと破顔しウーロンハイを煽った。
「くはー!このフライもねこやと変わらんくらい美味い!!!だがなんとなく味が違うのう・・・油が違うのか。そしてこのウーロンハイとか言う酒。酒精は強くないがフライの油を流してくれるわい。フライにピッタリの酒じゃな。」
「ほほーそうなんか。ガルドお主フライの中身わかるか?」
「今食ったのは肉のフライじゃったな・・・・・・この長いのはエビフライってやつじゃろ。この四角いのはなんじゃ?輪っかのはイカじゃと思うが・・・」
「まぁ食うてみればわかるわい。」
片方のおじさんがオニオンリングにフォークを刺し口に入れる。だがぎょっとしてウーロンハイを流し入れた。
「どうした?」
「この輪っか・・・イカじゃないわい。」
「なに?」
「オラニエじゃ。くぅ〜〜〜このオラニエのフライはウーロンハイよりビールが欲しくなるのぅ。」
「この輪っかはオラニエじゃったか。じゃこっちの四角いの食ってみるか。」
覗き見はもうやめよう。とりあえずあのおじさん2人は美味そうに食ってくれてるし。安心した。
「おい店主!!」
「あああーっす!!!」
「このミックスフライだけおかわりちゅうのは出来るか?」
「出来るっす!!ただしお代は定食ひとつ分でさぁ!!!ご飯と味噌汁は無料なんで!!!」
「そうか!じゃあミックスフライわしとこいつで一皿ずつおかわり!あとこのはいぼーるちゅうのが気に入った!!!これもおかわり!!!」
「ああっす!!!」
随分食うなぁ。まぁでも食ってくれるなら良い水曜は客少ないからいつも余らせるし、助かる助かる。そういってドワーフのおじさん2人は食い始めるのであった。
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「ふはぁ〜食った食った。」
「わしもじゃ。」
すげぇなこの2人。ミックスフライを四回、ご飯と味噌汁を五回、酒を各種十杯以上飲んでたぞ。だが全然酔ってる様子は見られない。
「店主、お代はいくらじゃ?」
「えーっとですね。えー・・・銅貨126枚です。」
「ねこやとそう変わらんの。良い店じゃ。」
「じゃな。ほいガルド。」
「うむ。じゃあ店主、ちょうどある。確認してくれ。」
「はいはい。1、2、・・・・・・・・・・・・はいちょうど。まいど!!!!」
「よし。じゃあな店主世話になった。また来る!!!!」
「うむ。じゃが酒精の強い酒が欲しいのお次は。」
「うっす。検討しときやす。」
「ではな!」
「じゃあの。」
「ありがとしゃしゃしたーーー!!!!」
ふぅ。帰ったな。良い食いっぷりだった。しかしこの銀貨一枚と銅貨・・・まじでどうする?どうやって日本円にする???困った・・・
「まぁ異世界の人に日本円払えとは言えないからな。」
仕方ない。多分銀と銅使われてるからどこかで 換金出来るでしょ。
「よぉ店主。7日ぶりじゃのぉ。」
「おや、ガルドさんギレムさん。なんかご機嫌ですね。」
「おう遂にじゃわしの拠点の近くに出たんじゃよ!フタバの扉が!!」
「へぇそうなんですか。」
「フタバもなかなか美味かったんじゃが慣れてるねこやの方が良いと思ってのう。」
「ははは、それじゃフタバの店主が可哀想ですよ。」
「大丈夫じゃ。これからはねこやもフタバも通いつめる予定じゃ。フタバは飯の匂いはしなかったんじゃが食材の匂いは漂ってきとった。ねこやに負けんくらい良い食材使っとると思うんじゃよな。」
「おおそうなんですか。ふふ負けてられませんね。」
「ふははは!!じゃがフタバの店主はお主よりだいぶ若かったのう。腕はあると思うんじゃが。」
「へぇ。あ、アレッタさんシーフードフライ上がったから出して。」
「はーい!」
「ほほー!!来た来た!!!」
「これじゃこれじゃ。」
今回も他の客は聞いていた。定食屋フタバ、もうひとつの異世界食堂。ねこやでもちらほらと行ってきたという客が増えてきた。筋金入りの食いしん坊達であるねこやの客は。自分もとフタバの扉を探し始めるのであった。