・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・食べたものが美味しかったらまた通って食べてあげましょう。
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ある日、昼前にやってきたあおさんは面倒を持ち込んできた。
「申し訳ありませんわ店主・・・・・・」
「いくらあおさんでもそれは困りますよ・・・・・・」
「でも、もうここしかなかったのですわ・・・・・・」
「・・・。」
困った。店主は困りに、困り果て、結局引き受ける事にした。
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・・・・・・・・・
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・・・・・・
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・
「ええ?1人引き取って欲しい?」
「そうなのですわ・・・・・・」
あおさんはいつもより早い昼前にやってきて、1人の女性を引き取って欲しい。つまり、俺にとって異世界であるあおさんの住む世界から俺の世界へ移民させろと言い出したのだ。
「それって大丈夫なんです?勝手に異世界渡りっていうのは。」
「問題はありませんわ。ただ言葉が通じなかったりはしますが・・・・・・言葉は覚えればいいのですわ。覚えられますわよね?」
「・・・。」
あおさんの隣でコクンと頷いた女性。年的にいうと20程の女性。困ったな。俺の世界に来ても戸籍とか住民票とかめんどくさいぞ。バレたらどうなるかわからない。
「あおさんの方が良くて、俺も良くても、俺の世界がなんとも出来ないのですよ。」
「そ、それも理解していますわ。社会構造が違うのも理解しています。ですがこの子はこちらの世界にいると追われ、狙われ、殺されてしまいます。我が信徒では無いにせよ我が海の種族。捨て置くわけにはいかないのですわ。」
「俺も助けられるなら助けたいですよ?でもどうにも俺だけじゃ・・・・・・」
「ですわ・・・・・・」
そこにガラッと入口の戸が空いた。
「らっしゃっしゃせい!!!すみやせん昼まだなんでもうちっと・・・」
「ふ、フヒ・・・や、やぁ店主・・・・・・」
「骨董品屋の姉さん!?!?」
入ってきたのはいつも異世界営業の売り上げの硬貨を換金する骨董品屋の糸目の姉さんだった。どうやって入ってきた?今日は異世界営業の日で扉は全部異世界のはず。俺の世界の人間が異世界から入ってきやがった。こわ。
「フヒ、フヒヒッ・・・話は聞かせてもらった・・・・・・」
「貴方は・・・・・・どうしてここにいるんですの?」
「というか話聞いてたんですかい?」
「その子の、戸籍、とかでしょ?私が、なんとかする。フヒ。」
「ええ・・・・・・」
「その、いろいろなんとかして大丈夫なんですの貴方。」
「大丈夫だ・・・・・・青・・・・・・人1人くらい・・・・・・もんだいない・・・・・・」
「・・・・・・なら大丈夫ですわね。店主大丈夫ですわ。」
「ええ・・・・・・?」
「フヒヒィ・・・・・・これで、おっけー・・・・・・店主・・・・・・醤油チャーシュー麺ひとつ・・・・・・」
「は、はいよぉ・・・・・・」
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・・・・・・・・・
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・
こうして今日の営業を終えて、自宅兼倉庫の二階の物置になっていた部屋を片付けこの子の部屋にした。若い娘と二人暮らしとかどうしたもんかなと思ったがもうやるしかない。
「・・・じゃ。次から水曜日の給仕やってね。」
「・・・・・・はい。」
「俺は・・・・・・だ。よろしくな。」
「・・・・・・デジリスです。」
「よろしくなデジリス。とりあえず着るもんとか明日買いに行こうな。」
「・・・・・・うん。」
⏰
デジリスは海神族だ。海神と言っても神では無く、その強さから青の神より神を名乗ることを許された種族だ。その特徴は出し入れ出来る手と足の水掻き、そして大賢者をも凌ぐ強力な海の魔法が使えること。そして、物凄く惚れっぽいこと。何故この海神族は滅んだのかと言うとこの惚れっぽさに由来する。海神族の女は惚れっぽいが一途ではある。変わって海神族の男は平気で5、6。更に10、20股と恋多き種族なのである。他の女ならまだ良し、子供や老婆までも対象にする海神族の節操の無さ、そしてあらゆる種族と子を為すことが出来て生まれてくるのは海神族では無いにせよ強い魔力を持ち、力の強い節操無しの浮気性など危険極まりなく、その血はあらゆる種族が結託して滅ぼされた。その中デジリスは海神族のとある男が本来海に住む海神族が人間の街に隠していた隠し子である。それを青の神が保護したのだ。だが例に漏れず海神族滅ぼすべしと結託した数多の種族から異世界へと隠されたのであった。
「・・・・・・店主。」
デジリスは突如として連れて来られた異世界食堂で自分の性質が変化するのを感じた。水掻きを出し入れしながら感じる変化がどのような物かはわからない。だがこのぽかぽかと感じる熱は消えて欲しくないと思った。
「・・・・・・店主♡」
そしてデジリスもやはり、海神族であった。
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「らっしゃっせい!!!!」
「いらっしゃいませー!!!」
「いらっしゃいませ!!!」
「・・・・・・いらっしゃいませ。」
今日、水曜日の異世界営業もこれでもかと繁盛していた。変わるがわる入ってくる客、どんどん出される料理、疲弊する従業員。店主、アーロイ、ミミ、そしてデジリス。1人増えて余裕が出るかと思ったが調理が出来るのは店主1人なので仕事量はあまり減ってないのだ。
「おい!おデジ!!!カウンター四番にエビマヨだして!!!」
「・・・・・・はい。」
「アーロイちゃんとミミちゃんは座敷の片付け!!!カウンターの食器は俺が下げるから!!!」
「はーい!!!」
「はい!!!」
「らっしゃっせい!!!!お席ちょっとお待ちくだせぁ!!!!」
「いらっしゃいませー!!!」
「いらっしゃいませ!!!」
「・・・・・・いらっしゃいませ。」
まるで戦場の様な忙しさ。だがそれも昼と晩だけだと思って。4人は駆け回るのであった。
「はぁ・・・やっと飯だ。」
「ふはぁ・・・疲れた。」
「ミミ。腕が動かない・・・・・・」
「・・・・・・。」
今日の飯は秋刀魚だ。旬の秋刀魚が入ってきたが形が悪いのを処分の体で従業員で食おうとしたのだ。
「ちょっと痩せてるが脂乗りは悪くない。美味いぞこれは。」
「おおー!!」
「やったー・・・・・・でもこの魚初めて見る・・・・・・」
「・・・・・・。」
ぐったりしながらも腹が減っているので秋刀魚を食べる。脂の乗った秋刀魚はとろけるような旨みが凝縮されており口に入れる度に幸せホルモンを分泌する。すだちもおろしも無い秋刀魚だが、秋刀魚などそれで充分。塩のみが至高。
「うめぇ・・・・・・」
「うまいぃー・・・・・・」
「うおおおー!」
「・・・・・・。」
デジリスはここ最近食べたものの中で一番美味だと感じた秋刀魚。だが次の店主の言葉で絶望するのであった。
「これ年中食いてぇよなー」
「・・・・・・!!」
もしかしてこの秋刀魚いつも獲れるものではないのか。そう聞いた途端、食べるフォークを取り落とすのであった。