・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・御当地バトルはやめましょう
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獅子王ライオネルの朝は早い。闘技場で無敗を誇るライオネルは自分の体を鍛える為に朝早くから始めるのだ。
「ふあぁ〜〜〜っとぉ。」
闘技場の剣闘奴隷であった時使ったねこやの扉を今も使い続けているが最近そのねこやで定食屋ふたばの話を聞くことが多くなった。
「(ま、俺には関係無いな。)」
ねこやには恩がある為他の店にうつつを抜かす事はしなかった。カツ丼が食えるならば満足だし、それ以上は求めなかった。
「よっしゃあ!!!今日もやるかぁ!!!!」
今日も闘技場でねこやのカツ丼代を稼ぐべく奮闘するライオネルだった・・・・・・が、ある日。
「・・・・・・。」
ある日の闘技場の相手、それはドラゴン。レッサードラゴンという、厳密にはドラゴンでは無いが、ドラゴンと名の付くくらいには強大な相手だった。
「どうする・・・・・・」
流石の獅子王ライオネルも怯えこそしないものの震えた。ドラゴン殺しなど英雄がやる事だ。自分が英雄かと聞かれたら闘技場の剣士程度で英雄とは言いづらい。そして一番困った事が・・・・・・
「カツ丼が。食えねぇ・・・・・・」
ねこやのカツ丼が食えない。ねこやは昨日行ってきたばかりでレッサードラゴンとの試合は今日から5日後。どう足掻いてもドヨウの日にかち合わない。ここぞという勝負所ではねこやのカツ丼に頼ってきたライオネルは相手よりもカツ丼が食えないことに怯えた。
「(今回の相手は・・・・・・俺が7日に1度何かしてるって気づいたやつか・・・・・・?いやそれは考えすぎか・・・・・・だが・・・・・・)」
どうする、どうすると考えるも自分で作る事も出来ない為どうすることも出来なかった。こちらの世界で勝利の験担ぎをする料理など無い。代わりを用意する事も不可能。後が無かった。勝負の前にカツ丼が食えないのは喉元を剣で断ち切られるより致命傷だった。
「(くそっ・・・・・・くそ!!!!カツ丼・・・・・・どうにかして食えねぇか・・・・・・)」
考えても答えは出ない。しかし待ってるだけで試合の日はやってくる。だが、ここでライオネルに天啓が降りた。
「そうだ・・・・・・ふたばだ。あそこならカツ丼が食えるかもしれねぇ!!」
いつだったか・・・・・・ふたばの扉が現れるのは・・・・・・確か、ドヨウから4日後だったはず。そして異世界食堂の扉はハーフリングが知ってた筈だ。ハーフリングを探した方が見つかるかもしれない。
「とりあえず酒場だ。ハーフリングを探す。」
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
4日後、たまたま街に居たハーフリングを見付け出したライオネルは、見つけたハーフリングがねこやの扉もふたばの扉も知っているという偶然に感謝し、初めて教会に寄付をした。そしてふたばの扉に向かったライオネルは、また祈りを捧げるのであった。
「(頼む・・・・・・カツ丼がメニューにあってくれ・・・・・・)」
引き戸を開き中に入る。夏の暑い日にも関わらず、冬の雪山のように冷えている店内に安堵した。
「らっしゃっしゃしゃせいっっ!!!」
「いらっしゃいませー!!」
「いらっしゃいませ!!!」
「・・・・・・いらっしゃいませ。」
「お好きな席どうぞぁ!!!」
好きに座れと言われたライオネルはカウンターの席に座る。メニューを渡され眺める。
「(カツ丼、カツ丼はあるか。)」
1ページ、また1ページと捲って行くライオネル、だがページをめくるごとに顔色を青くして行くのだった。
「(カツ丼が。カツ丼が無ぇ・・・・・・!!!)」
ライオネルは字が読めなかった。カツ丼の文字も見つけられず、絵も見つけられない。カツ丼が無い、その恐ろしさに涙さえ出てきそうであった。涙が溢れることは無かったものの息は荒く、浅かった。
「お客さん大丈夫っすか。なんか具合悪いっすか?」
「あ、いや、大丈夫だ・・・・・・」
店主らしき男に話しかけられ自分を落ち着かせるように水を飲む。自分はこんなにカツ丼に囚われていたのかと気づくも、カツ丼は思い出で、活力で、勇気を与えてくれるものであると再確認した。自分がこんなに弱っちくなったことに腹も立ったが今は良い。それよりもカツ丼だ。
「・・・・・・。」
「お客さん、なんか食いたいの無かった感じです?食いたいの言ってくれれば近いの作りますよ。」
「そ、そうなの、か・・・・・・?」
「ええ。」
自分でも情けない声が出たと思う。だがカツ丼はそれほど逼迫していた。
「カツ丼を、カツ丼を食わせてくれ・・・・・・情けねぇことに、カツ丼を食わねぇと明日が・・・・・・」
「なんか切羽詰まってますねぇ。任せてくだせぇ!!!!うちのカツ丼はちょいと卵を使わねぇですがちゃーんとありますよ!!!」
「本当か!!!」
「ええ!!!少々お待ちを!!!」
ライオネルは安堵した。カツ丼がある。だがメニューにいつもねこやで食うようなカツ丼は無かった。俺は何を食わせられるんだろうと・・・・・・またもや不安が影をさした。
「・・・。」
「お待ちぃぁ!!!!ソースカツ丼でさぁ!!!」
「そーす、かつどん・・・・・・?」
出てきたのは大きな丼にライオネルの顔ほどもあるカツ。そしてカツは黒いソースに浸されており、そのカツの下に緑の刻んだ野菜が敷かれておりその更に下にコメがあると推測した。
「カツ・・・・・・カツ丼・・・・・・」
「どうしました?」
「・・・・・・。」
思ったものが出て来なくてガッカリしたライオネルだったが、やはり食って見て判断するべきだとフォークを手にとった。
「あむ・・・うお!!!」
まずはカツ、と思い端っこのカツを頬張った。そして口に広がるソースの味と脂の甘みと肉の旨み。感激だった。ねこやとは確かに味が違う。だがまごうことなく絶品の料理だと感じた。だが本番はこれからだと思った。
「カツ丼は、コメと一緒に食う物だよなぁ!!!」
ガッと大口を開けてカツと野菜とコメを放り込む。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
間違いない!!!これはカツ丼だ!!!カツとコメ一緒に食うことで抜群の美味さになる料理。まさしくカツ丼。味が違えどカツ丼に間違いないと確信した。
「ソースカツ丼おかわりィィィ!!!!!」
「お客さんそんなにソースカツ丼気に入ったの?じゃあもっかいでかい丼でだすぜい。」
「ああ頼むぜ!!!!」
そして巨大カツ丼を通算5杯おかわりしたライオネルは勘定をしようと財布を出した。
「ああお客さん、うちは初めての客はタダなんすよ。」
「なに!?だが、俺は随分食っちまったぞ。」
「大丈夫でさぁ。なあに何回も食べに来てくれれば元は取れるんで。また食いにきてくださいよ。」
「そうか・・・・・・感謝するぜ!!!また来るからなぁ!!!!」
そしてふたばを後にしたライオネルは、明日のレッサードラゴンとの試合に備えることにした。
「フッ・・・・・・カツ丼さえ食えればなんてことねぇ。蜥蜴くらい真っ二つにぶった切ってやる!!!!」
そしてライオネルはたった2撃でレッサードラゴンを屠り、スポンサーにもう少し見せ場を作れと怒られるのであった。