・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・パスタを生で食べるのは止めましょう。
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グルシュタイア・アンブルームは思い悩んでいた。グルシュタイアは音楽家である。音楽は貴族の娯楽であり、楽しむ者こそ少数なものの割と貴族はお金を掛けがちだ。そしてグルシュタイアは結構な金貨を積まれ、パーティーで新曲を披露して欲しいと請われた。
「どうしよう・・・・・・新曲なんてそんなパッと思いつくわけないじゃん・・・・・・」
自分の家で羊皮紙に向かって悩んでいても一向に新曲なんて出てこない。そして面倒を見てくれている貴族に何も出来てない状態を見られる訳にも行かず家を飛び出してきてしまったのだ。
「まずい・・・・・・これで新曲が出来なかったら御付きの剣士に首を飛ばされる・・・・・・まずい・・・・・・」
そしていつもの酒場で酒の力にでも頼ろうと向かっていたところだった。
「なんだ・・・・・・?めちゃくちゃ良い匂いがする。」
路地裏を漂ってくる匂いに反応したグルシュタイアは匂いに釣られて奥に奥に入り込む。そうして見つけたのは引き戸の扉。匂いはその扉から漂ってきていた。
「なんだ・・・・・・?こんなところに店構えるなんて。商売を知らないのか・・・・・・?」
だが良い匂いが漂ってくるのは事実。グルシュタイアは引き戸に手を掛け、中に入るのであった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「らっしゃぁっしゃしゃっしゃせい!!!!」
「いらっしゃいませー!!!」
「いらっしゃいませ!!」
「・・・・・・いらっしゃいませ。」
「???」
夏なのに氷室の様に涼しい店内。嗅いだ事のない良い匂い。他の客が食べている見たことのない料理。グルシュタイアは街にこんな店あったか・・・・・・?と頼りにならない記憶を探し回った。
「お客様・・・・・・初めて・・・・・・ですね・・・・・・?」
「あ、ああ。」
「では・・・・・・まず・・・・・・ここの説明・・・・・・を・・・・・・」
「はぁ。」
「ここは・・・・・・異世界食堂・・・・・・異世界にある飯屋・・・・・・です・・・・・・7日に1度・・・・・・スイヨウの日に・・・・・・扉が現れます・・・・・・」
「い、いせかい?どういう・・・・・・こと?」
「初めての・・・・・・人は・・・・・・タダなので・・・・・・好きなだけ・・・・・・どうぞ・・・・・・では・・・・・・お好きな席へ・・・・・・」
「あ、ああ。」
何かゆったりと話す給仕に言われるがまま席に着くグルシュタイア。そしてこれでもかと分厚いメニューを渡され更に困惑する。メニューを見ると美味そうな絵付きのメニューだが味の想像が全く出来ない。そして給仕にまた声をかけるのであった。
「す、すまない給仕の女よ。」
「・・・・・・はい。」
「メニューを見てもよくわからない!異世界っていうんなら異世界らしい料理を食わせて欲しいんだが・・・・・・」
「そう・・・・・・ですね・・・・・・では固やきそば・・・・・・なんてどうでしょう・・・・・・」
「かたやきそば・・・・・・?」
「はい・・・茹でたパスタを・・・・・・焼いて固めて・・・・・・炒めた野菜や肉と一緒に・・・・・・ソースをかけて食べる・・・・・・料理です・・・・・・」
「????じゃ、じゃあそれを・・・・・・」
「はい・・・・・・固やきそばひとつーーーー!!!!」
「!?」
急に大声を出した給仕にびっくりして縮こまっていると隣の席のやつの料理が気になった。
「おい、女。それは何を食ってる?」
「なんだ人間。この餌が気になるのか?」
「ああ。そりゃなんだ。」
「これは野菜天丼だ。この店で一番美味い餌だ。」
「やさいてんどん?????」
次にグルシュタイアは反対側の席にいた女に話しかけた。その女が食べてる料理も極上の香りがする。
「お、おい!女!それ、それなんだ。何を食ってる。」
「え?なにあんた。これは味噌メンチよ。この店で一番美味い料理よ。」
「は????みそめんち・・・・・・?」
「もう食べてるの邪魔しないでよね。」
そうして女は黄金色の石の様な料理に齧り付いている。これも見た事ない料理だった。
「なんで一番美味いものが複数あるんだ・・・・・・?」
困惑に困惑が勝り、目眩がしそうだった。だがヌッと白い服を着た男がカウンターの内側から現れてグルシュタイアの前にドン!を大皿を置く。
「固やきそばお待ちィあ!!!!」
「・・・・・・。」
グルシュタイアはまたまた困惑した。カリカリになっている縮れたパスタに野菜と肉と、ドロリとした薄い色のソースがかかっている。なんだこの料理は。
「どうやって食えば・・・・・・なるほどこれが異世界か・・・・・・!!」
もうどうにでもなれ・・・・・・とフォークで全体を持ち上げ齧り付く。口にカリカリの麺とソースが入り込むとグルシュタイアは一瞬で察した。
「そうか・・・・・・そうか!!!こういう料理か!!!ははは!!!確かに異世界だ!!!!」
全てを理解してバリバリと固やきそばを頬張る。美味い。美味いぞ。と、ここで自分が新曲を作らなきゃならないことを思い出した。
「店主。店主いるか。」
「うす!!!なんでしょ!!!」
「見た所この店に楽団はいないようだが・・・・・・ここは異世界だ。楽団がいなくとも音楽を掛ける手段があったりしないか?」
「え?まぁありますよ。うちは飯時に音楽はかけねぇ派ですけども。」
「頼む!!!私は音楽家でな。新曲づくりで困っているのだ。異世界の音楽を聞かせて欲しい!!!追加で金は払う!!!頼む!!!」
「別にお金はいらないっすよ。そこまで言うならかけてもいいっすけど。」
「助かる店主!!!」
「ウォークマン鞄の中だな・・・・・・」
「うぉ・・・・・・?」
グルシュタイアは運が向いてきたと思った。異世界の音楽を聞ければ何かインスピレーションが湧くだろうと。そして店の中に楽団がいないのに音楽がどこからともなく流れ始めて驚愕するのであった。
「これが・・・・・・異世界の音楽・・・・・・!!」
♪響けファンファーレ〜届けゴールまで〜
「う・・・・・・!!!」
異世界の音楽はグルシュタイアにとって何もかも違かった。それはキマイラを退治しに出向いたらそこにいたのはキュクロプスだった感覚に近い。
「すごい・・・・・・これが異世界の・・・・・・ハッ!!飯が冷めてしまう!!!」
グルシュタイアは急いで固やきそばを味わい。流れてくる音楽を慎重に聴くことにした。他の客は急に流れ始めた音楽に困惑しているようだが。許して欲しい。
「・・・・・・。」
そしてグルシュタイアは何曲か聴き、店主に感謝を述べるのであった。
「店主よ感謝する。初めてはただだと言ったが金を払わせてくれ。」
「いや構いやしませんよ。そんなに気にしないでください。」
「いやダメだ。新曲が出来なかったら命に関わる問題だったの!!!!本当に助かった!!!作れそう!!!」
「それは良かった。そんなに感謝したいならまた食いに来てくださいよ。それでいいです。」
「ほ、本当か!?ではまた必ず来る!!!固やきそばは非常に美味かった!!また食べさせてくれ!!!」
「はいよ!!!ありがとうござっしたーーーーー!!!!」
グルシュタイアは店を後にした。そしてすぐさま家に帰り新曲の執筆に入るのであった・・・・・・が、出来た新曲はあまりにも独創的過ぎると貴族の顰蹙を買い、貴族のお抱え音楽家の身を追放されてしまうのであった。