「で?アレッタちゃん話って?」
ある日の異世界営業日。味噌メンチをもりもり食う女性と一緒にやってくる魔族の少女、アレッタちゃんに話があると言われて昼営業の終わりに時間を設けた。アレッタちゃんは鞄から一枚の封筒を取り出すと俺に手渡すのだった。
「ねこやのマスターからの手紙です。」
「ねこやさんから?どうしたんだろ・・・・・・」
俺は受け取って早速中身を開ける。A4用紙にパソコンで打ったと思われる手紙には挨拶が遅れて申し訳ない、俺たちはお隣さんみたいなもの、手を取り合える距離にはいないがお互い頑張って行こう的な事が書いてあった。
「やっべ・・・・・・アレッタちゃんありがとう。すぐ返事書くわ。アーロイちゃんミミちゃん座敷とカウンター掃除よろしく、おデジは厨房片付けて。」
「はーい。」
「はい!」
「・・・・・・はい。」
裏の倉庫兼自宅に引っ込みノートパソコンを開く。とりあえず新参者のこちらが挨拶遅れて申し訳ない的な文書を書き、A4用紙2枚くらいの量を印刷して封筒に詰めた。
「なんか挨拶の品があった方が良いよな・・・・・・」
近所のご挨拶用に備蓄しているゼリーの箱を冷蔵庫から引っ張り出しておく。一応常温でも日持ちするものだ。ねこやがいつ営業日なのか知らないので。おれは店に戻る。
「アレッタちゃんお待たせ。手紙これと挨拶の品渡してくんねーかな。」
「あ、はい!わかりました!!」
「手紙にも書いたけど後からきたこちらが挨拶遅れて申し訳ないって伝えてくれ。」
「はい!」
そうしてアレッタちゃんは帰っていった。無事渡せればいいんだけど。
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ねこやの営業日。営業開始前。
「マスター!ふたばさんからお返事とご挨拶の品もらってきました!」
「お、アレッタさんありがとう。挨拶の品まで付けてくるとは・・・・・・」
「あと新参者なのに挨拶が遅れて申し訳ないとも・・・・・・」
「そんな気にしなくて良いのにな。お、ゼリーか。これどこのゼリーだ・・・・・・?」
「手紙、なんて書いてあるんでしょう。」
「どれどれ・・・・・・ははは。」
「?」
「ものすごく丁寧で腰が低く挨拶が遅れて申し訳ないって書いてある。ふたばさんの店主は良い人そうだな。」
「店主さんすごい良い人でしたよ!!」
「そうかそうか。んーと・・・・・・なるほどな。異世界の営業実態が無くて今の状態で良いのか悪いのかわからない、か。うーんそんなに手紙に書いてあるの見るとうちと変わらない状況だが・・・・・・少し手を貸してやるか。」
「またお手紙ですか?」
「ああ。今日の営業終わったら書こう。ふたばさんも困ってるみたいだからな。」
「じゃあ私!また届けてきますね!」
「ああ。頼むよアレッタさん。」
「はい!!」
「よし!じゃあ店内の掃除・・・・・・クロも来たみたいだな。おはようさん。」
「おはようございますクロさん!」
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あれからねこやさんとの交流がはじまった。だいたい1異世界営業日くらいで手紙をやり取りしている。
「ねこやさんの異世界営業をノウハウ聞けて助かるわ。そりゃそうだよな。いくらなんでも通日営業しなくていいよな。」
ねこやさんから異世界営業のなんたるかを聞けて大変助かっている。手探りでルール決めてたからな。
「アーロイちゃん休憩入っていいぞ。」
「はーい!!」
「ミミちゃんはアーロイちゃんの後でね。」
「はい!」
「おデジは冷蔵庫荒らしちゃったから整理な。」
「・・・・・・はい。」
「俺は手紙の返事書くか。」
自宅に戻ってパソコンへ。今回は客対応について聞くか・・・・・・
「これでよし。」
手紙を書き終えて封筒へ。これでアレッタちゃんが来た時に渡せばおっけー。ねこやさんはもう何十年も異世界営業をしているらしく異世界営業のベテランだ。最近始まったばかりのうちとでは客対応から営業のノウハウも雲泥の差がある。それをパクる訳ではないが参考にさせてもらうのはうちの立ち回りに大いに助かる。
「うし。行くか。」
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そして・・・・・・ねこやとの交流が始まってしばらく経った。
「まただ。」
自宅でねこやからの手紙を読んでいると気付いた。ねこやの手紙が、何か誤植を誤魔化したかのような、殴り書きで消されているのを。
「おかしい。ねこやの店主がこんな訂正するはずがない。」
ねこやの店主と文通して、何か間違ったなら書き直すか何かする筈、こんな検問みたいに殴り書きで文字を消したりしない。訂正した文字が何か推測しようとするが・・・・・・
「インクが違くてわからねぇ・・・・・・」
訂正のインクは何か墨壺のインクのようなもので書かれている。なんなんだいったい。
「何か・・・・・・異世界の交流を制限したいやつがいるのか?多分魔法ってやつだろうな。」
今回の返信は少し控えようと書いた。アレッタちゃんに渡し、次を待つ・・・・・・
⏰
「あ、それわたくしですわ。」
「ハァン?」
あおさんに手紙がこんなんでーと話したらそんな返事が返ってきた。あおさんなにやってんだよ。
「すみません店主。これは縄張りの関係なんですの。」
「縄張り?」
「あ、誓って手紙の内容は見てませんわよ?自動で検閲されますの。」
「そうなんですか。」
「ええ。つまりねこやはわたくしとは別な、赤という者の縄張りで、渡したくない情報は魔法で自動で消されるんですのよ。こちらも同じ。」
「なるほど。」
「申し訳ありませんわね。まさか交流するとは思わなかったもので。」
「いや、まぁ良いですよ。あおさんが保護と加護?をしてくれてるのに話を通さなかったこちらが悪いんですし。」
「いえいえ店主。普通はそんなものいらないんですのよ。わたくしがこの店を自分の物にしたくてやったことですので。」
「ええ・・・・・・」
しかたねぇなほんと。あおさんも悪気は無かったようだし。あおさんにいつものを出して注文を終える。なので明日の通常営業の仕込みを準備をしようと倉庫へ。ついでに手紙を確認しようと自宅の自室の引き出しを開けた時だった。
「ん!?」
ねこやからもらった手紙が端から赤い光に包まれ少しずつ消えている。これも魔法かと思うより異世界交流ってもしかしてあんまりよろしくないのではと感じる出来事だった。