・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・定食屋ふたばでは食べたいものを言えば割といろいろ作ってくれます。
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アルフェイド商会は、元は東大陸一の大国である王国で生まれた商会である。一応歴史自体は数百年ほどあるが、ほんの数十年ほど前までは王国の片隅で細々と各領地から上がってくる小麦の売買を行っていた商会であったが、先代のアルフェイド商会当主、トマス=アルフェイドは天才であった。数十年で瞬く間に王国屈指の大商会に育て上げた彼は、自らの引退を決意した時、兄弟姉妹で争いが起こらぬ様に一計を案じた。してここは公国の支店で風向きが変わろうとしていた。
「・・・ここか。」
アルフェイド商会の主力商品であるトマト・・・・・・マルメットを使用したパスタソース。これは王国、帝国、公国どこでも買えるものだ。トマス=アルフェイドが開発したこのソース。公国の支店を継いだ、アケオス=アルフェイドは何れ自分もこの主力商品を生み出してやろうと野心を募らせていた。
「・・・さて、どの程度のものか。」
しかしトマス=アルフェイドの開発したソース。これは一般には画期的なソースとして称賛されてはいるが、アルフェイド商会の中ではとある噂が流れていた。それは、このマルメットのソースはとある店のメニューの丸パクリだというもの。しかも再現度は雑な、粗悪品だと。言いがかりも甚だしいとアケオスは嘲笑していたが、最近になってまたひとつ噂を聞いた。それは異世界食堂の噂である。アケオスは聡い人間でもあった。ソースの出所はもしやここではないか・・・・・・?と察するに容易かった。
「・・・・・・ふむ。」
アケオスは行き方を知っているハーフリングから扉の事を聞き出し、定食屋ふたばの扉をくぐるのであった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
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・・・・・・
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・
「らしゃっしゃっしゃっせせい!!!」
「いらっしゃいませー!!!」
「いらっしゃいませ!!!」
「・・・・・・いらっしゃいませ。」
「おお。」
アケオスは感嘆した。これが異世界か、と。白く、場末の酒場と比べて遥かに清潔そうな店内、活気ある客、元気な従業員。良い店だと判断するのは容易かった。
「お客様初めてですよね?簡単に説明させてください!」
「ああ。すまない。」
異世界食堂のルールを聞き、初めてはタダのルールは秀逸だと思った。そして食べたい物を頼んで近いものを作ってもらうスタイル。これにアケオスはニヤリとした。
「メニューです!!」
「あ、ああいや。店主に聞いてもいいか?」
「はい!!店主ー!!」
奥から白い服を着た男がやってきて店主です。と挨拶を受ける。そして切り出した。
「店主、この店でマルメットを使ったソースのパスタはあるか?」
「マルメットっていうと・・・・・・確かトマトか。すいやせんうちはミートソースとかのパスタはちょっと・・・・・・」
「そうか。」
当たりだ。マルメットのソースは無いらしいがミートソースの存在は確認出来た。王国で見たマルメットのソースをミートソースと父さんが呼んでいたのを思い出した。どこで食べたのかはわからないが父さんのソースは異世界食堂が出所だと確信した。
「ならば・・・・・・礼を尽くさねば。」
アケオスは懐からメモを取り出した。そして店主に問うた。
「店主、俺は公国で商会を営んでいるアケオスという。恥を忍んで頼みがある。」
「なんでしょ。」
アケオスは料理にかけるソースが無いかと聞いた。父さんの二の舞になるが原点はこの店でも作れば俺の物だと。その為にはこの店にしっかり礼を尽くさねば罰が下る。
「と、いうわけなのだ。その分の金は払う。試させてくれ。」
「いいですよ。うちはただの定食屋で、そんなレシピ秘匿するなんて事はないですから。」
「ありがとう!!!!」
そうしてアケオスは金はいらぬという店主にどうしても受け取って欲しいと頼み倒し注文の代金とは別に銀貨1枚を握らせる事に成功した。そしてどんな物が出てくるのかと楽しみにしていたら、後悔する事になった。
「じゃあ座敷に移ってもらいまして。まずはこれらから。」
「・・・・・・は?」
多い、多すぎる。10や20じゃ済まない数のソースが出てきた。この全てが店主の自作だという。信じられなかった。これだけの種類があるにも関わらず全て管理し、味が一定。この店主という料理人はどれほどの研鑽を積んでいるのかと恐怖した。
「す、すまない。ここまでで良い。」
「お?そうすか?じゃあこれで肉のソースは全部なんで、気に入ったのあればそのソースで作りますぜ。」
震えながら味見をするもどれも絶品。王都の高級レストランでも出てこない味。これがアルフェイド商会で出せれば、と思うのと同時にこの凄まじく研鑽が積まれたソースを横取りするのはなんとも気が引けた。
「気にしないでくださいよ!!美味いものがみんな食えるようになれば幸せじゃないですか!!」
そう店主は悪気も無く無邪気に語った。これが異世界か、公国とはまるでやり方が違う。普通はレシピなど水の混ぜ物まで秘匿するものだ。この店主はそこから大きく外れている。客が美味そうに食ってくれれば他はどうでも良いのだと言う。
「(異世界を舐めすぎていた。)」
アケオスは、この無数に出てきたソースのひとつを譲ってもらおうと店主に頼み込むのであった。
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「はいよぉ!!焼肉定食玉ねぎソースかけお待ちぃ!!!」
「来たか。」
アケオスが選んだのはこちらの世界で一番再現性が高そうなソースだった。オラニエを、しょーゆと呼ばれる調味料と油を足して作ったソース。これならば、こちらには無いし頑張れば作れると狙いを定めた。
「どれ・・・・・・」
早速ソースのかかった肉を。口に入れると淡く甘いオラニエの味としょーゆの芳ばしさと油の甘み。肉の味を邪魔せず。コメとの相性も良い。肉を焼いてソースをかけただけの料理だがすこぶる高い完成度を実感した。
「美味い・・・・・・」
アケオスは確信した。このソースは売れると。そしてその売り上げ以上の何かをこの店にもたらさねばならぬと決意した。
「店主、馳走になった。」
「あいよぉ!!お粗末ぁ!!!」
「店主では頼みだが・・・・・・」
「ええ構いませんよ。俺は作ってるだけで俺が原点てわけじゃないんですけど。」
「わかった。俺もただの商品として自分の手柄としないようにする。」
「そうですか。じゃ、まぁそういうことで。」
「ああ!!ありがとう店主また来る。」
「ありがとしゃっせしゃしたー!!!!」
アケオスは扉を後にした。片手にはもらったソース。出来る。いや、やる。公国のアルフェイド商会を東大陸一番の商会にしてやる。そう意気込んだ。
「まずは・・・・・・ソースの材料の仕入れと、料理人の確保だ。」
アケオスはこれからの忙しさに武者震いをした。そして・・・・・・
「アケオスさん無理ですよこれ。」
「どんなソースなんですこれ?」
「味が複雑過ぎる・・・・・・」
弱音を吐く集めた料理人達に頭を抱えるのであった。