・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・中華のお召し上がりは定食屋ふたばのある通りの駅側の中華食堂炎炎もどうぞ。
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「ああ・・・またこの日が来てしまいました・・・」
修練場の片隅に現れた檜の看板の付いた引き戸を見ながら光の神の高司祭であるセレスティーヌは表情を曇らせた。ここは高司祭のために作られた修練場。ここに入る事が許されているのは僧院の院長に任ぜられたセレスティーヌのみ。そしてねこやの扉が現れる場所であった。そのねこやの扉に並ぶように現れたふたばの扉にセレスティーヌはほとほと困り果てていた。
「くっ・・・・・・今日も・・・・・・今日もカニタマの誘惑が・・・・・・」
セレスティーヌは現れたふたばの扉に光に導かれる蛾の様に入店した。そして流れるように店主に注文し、かに玉を得た。そしてその味の虜になり。気づいたらねこやからもうひとつの誘惑が増えていて絶句した。
「はぁ・・・・・・今日はスイヨウ・・・・・・カニタマの日・・・・・・」
『一年の享受』は数年前に終わった。禁欲が求められる・・・・・・筈なのだが。
「・・・・・・ふたば・・・・・・」
「セレスティーヌ様!」
「セレスティーヌ様・・・」
「セレスティーヌ様っ!」
「・・・・・・行きましょうか。」
・・・・・・セレスティーヌの弟子達であるカルロッタ。ジュリアンヌ。アンナたちもこのふたばの虜であるのだ。行くしかない。
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・
「らっしゃっしゃせっせっせい!!!」
「いらっしゃいませー!!!」
「いらっしゃいませ!!!」
「・・・・・・いらっしゃいませ。」
「来てしまった・・・・・・」
セレスティーヌは涙した。また誘惑に負けてしまった。カニタマは抗い難い。
「・・・・・・む?セレスティーヌではないか?」
「ガタノイヌス様!?!?!?!?」
セレスティーヌは直属ではないものの自分より遥かに上の上司、枢機卿のガタノイヌスを発見した。ここに通っているとは思わなかった。
「ガタノイヌス様、お久しぶりです。」
「ははは久しいなセレスティーヌ。以前会ったのはまだ司祭の位に就いた頃だったか。」
「ですね。まだ子供でした。」
「そうだな。して、ここにいるということはそちらでも扉が現れたか。」
「はい、修練場に出ました。」
「そうかそうか。」
セレスティーヌはまさか枢機卿に会うとは思わなかった。マズイ・・・・・・一年の享受を終えたのに・・・・・・
「心配するなセレスティーヌ。別に何も言わん。」
「ですが・・・・・・」
「7日に1度なのだ。それも人間味というもの。光の神は禁欲を是とするが人を捨てろとは仰せではない。良いのだよ。」
「そう、なの、ですか?」
「構いやしないさ!人を捨てた司祭など敬虔でも誰も着いて来ないのだから。」
「はは・・・・・・」
「ご注文お決まりで?」
「あ、はい店主。カニタマテイショクを私達に。」
「はいよ!!」
かに玉を注文し弟子達にも大人しくするよう言う・・・・・・が、既に給仕と花を咲かせている。邪魔になるからと言ったが店主から忙しい時間は過ぎたから構わないと言われてしまった。
「アーロイちゃん、お水おかわりもらえないかしら。」
「あ、はい!少々お待ちを!!」
そしてしばらく。その間にガタノイヌスは食べ終えて帰ってしまう。弟子達はバイバイなんて言ってたけどその人枢機卿だぞと言いたい気分だった。
「お待ちぃ!!!かに玉定食です!!!」
来た来たと箸を取るセレスティーヌ。箸の扱いはねこやで覚えた。
「うん・・・・・・ふぅ・・・・・・!」
甘くて酸っぱいソースがかかった蟹と呼ばれる生き物の身を混ぜた卵。その極上の味に酔いしれているセレスティーヌは早かった。お行儀が悪いと言われようが大口でかに玉を頬張った。そしてご飯も口に入れると恍惚の表情を浮かべる。かに玉は至高の料理だった。
「ああ・・・・・・美味しい・・・・・・この後にパウンドケーキ食べたい・・・・・・」
セレスティーヌは再びかに玉を口に含む。美味い・・・・・・濃厚だが優しく、全てを包み込む卵と力強い蟹の味。そして全てをまとめる甘酸っぱいソース。素晴らしいことこの上ない。ねこやも素晴らしかったがふたばも素晴らしい。光の神に更に祈りを捧げるのは自明の理であった。
「はふ、もぐ、はふ、はふ。」
「おかわり!」
「おかわりっ!」
「おかわりー!!」
弟子達は好きにおかわりしているがセレスティーヌはするわけにはいか・・・・・・いか・・・・・・いか・・・・・・
「店主さん、私にもおかわりを・・・・・・」
いかんのではなかったかセレスティーヌ。だが舌鼓を打つセレスティーヌはかに玉に祈りを捧げた。光の神に祈れ。
「ふぅ。ごちそうさまでした。貴方達、帰りますよ。」
わいわいと席を立ち、アーロイに勘定を渡す。店主の威勢の良い声に送られて帰路に就いた。
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ふたばでセレスティーヌがガタノイヌスと会ってからしばらく。
「ガタノイヌス様!?!?」
「やぁセレスティーヌ。」
セレスティーヌを訪ねてやってきたガタノイヌスはいくつかの書類を持ってきていて、セレスティーヌと個人的に話がしたいと人払いをさせた。
「それで、ガタノイヌス様?一体何用でいらっしゃったのですか?」
「これを読めセレスティーヌ。」
渡された書類を読むセレスティーヌ。そして読み進める度に苦々しい顔をするのであった。
「ガタノイヌス様、これ本当なのですか?」
「本当だ。私が直接聞いた。」
「は?」
セレスティーヌは困惑した。この、枢機卿は。なんと言った直接聞いた?
「この話は本当だ。そして光の神も、この店には現れるそうだ。」
「・・・・・・何をおっしゃっているのですか・・・・・・?」
セレスティーヌは書類を握りしめた。この書類に書かれていたこと。それは神の縄張りについて詳細に記した。ものであった。
「ねこやは赤の神。ふたばは青の神。そしてねこやは黒の神も参じていて他の神をあまり受け付けないが、変わってふたばの青の神は赤の神より寛容ではあるが暴れる者には非常に苛烈で、以前ふたばで暴れた者がいたがその者達が住む村が住人ごと湖の底に沈んだとの報告もある。」
「それは・・・・・・」
「青の神に直接聞いたのだ。加護や保護はねこやほどガチガチに組んではおらず、報復は自動で発動する。そして報復は力の限りを尽くした為に加減が効かず破壊の限りを齎してしまう・・・・・・」
「・・・・・・。」
「ねこやは別に報復の仕組みは無いそうだ。だが強力な保護らしい。ふたばに来ていた光の神がおっしゃっていた。」
「・・・・・・光の神と、交流を、なされたと言うのですか・・・・・・?」
「そうだが・・・・・・教皇にも黙っているつもりだ。どの飯が美味いかという話しかしてないからな。」
「は、はぁ・・・・・・」
「して、セレスティーヌ。」
「はい。」
「お前には少し調査をしてもらう。青の神より命じられたからな。」
「何を・・・・・・させたいのです・・・・・・?」
「この光の神よりもらった神具を使って・・・・・・」
「ごくり・・・・・・」
「ふたばで常連の食う料理でどれが一番美味いかという調査だ。この神具で一番幸福度の高い物を光の神は食べたいらしい。」
「なぜガタノイヌス様がやらないのですか?」
「私がやるとシロコロホルモンに固定されてしまう。」
「はぁ・・・・・・」
「その点セレスティーヌはまだふたばに来て日が浅いからな。」
「ええ・・・・・・」
「では頼むぞ。」
「ちょ!ちょ!?ガタノイヌス様!?」
「光の神には話を通してある。うまくやれれば神託を下してくれるそうだ。しっかりやれよセレスティーヌ。」
「・・・・・・うう・・・・・・はい。」
そう言ってガタノイヌスは宿屋に向かっていった。セレスティーヌは光の神直属の命として受けた依頼をどうしたものかと葛藤するのであった