・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・コンビニでお求めいただけるレトルトもまぁまぁ美味いです。
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「え?なんですって?」
「だかられとるとの食べ物。」
ある日の異世界営業日。やってきたヴィクトリアさんがそんなことを言った。どこで覚えてきたのそれ。
「アレッタが話してたの。」
「アレッタちゃんが。」
詳しい話を聞くと、ねこやの昼営業が終わる時間に行くことがあり、店内に入ったらアレッタちゃんがハンバーグを食べていたという。それを見てヴィクトリアさんもハンバーグが食べたくなり同じ物を食べようとしたら店主にそれはレトルトだと言われ、客に出すものじゃないと却下されたそうだ。そして店主のハンバーグを食べて帰ってきたそうだがレトルトが気になり店主に申し付けたら勘弁してくれと言われ消沈したらしい。
「それでうちで食べたいと。」
「そう・・・・・・それに、あの店主の反応から、れとるとは多分店で注文するのは失礼なんじゃないかって思って。でも、どうしても食べたくて。」
「まぁ・・・・・・確かに失礼っちゃ失礼ですかねぇ・・・・・・店によっちゃ出禁ですよ。」
「そんなに!?」
「ええ。お前の飯はレトルトに劣るって言ってるみたいなものですから。」
「ご、ごめんなさい・・・・・・」
「謝ることはないっすよ!異世界人ですからね。レトルトが気になるのはわかります。」
「でも・・・・・・れとるとってなんなの?」
「あーそこからか。」
とりあえず掻い摘んで説明する。あらゆる手間を省いた短縮料理。こんなの俺たちの世界だけだもんね。そしてそれを聞いたヴィクトリアさんはさーっと顔を青ざめるのであった。
「ごめんなさい!!」
「謝る事ないですって。どうです?これ食べてみますか?」
「いいの・・・・・・?」
「良いっすよ。俺の昼飯用にレトルト一個あるんで。流石にレトルト出して金取るわけにはいかないですけど。」
「じゃあ・・・・・・お願いしていい?」
「うす!!!!」
とりあえず倉庫に戻ってレトルトのハンバーグを持ってくる。他にもカレーとかあるけど今日はこれ。
「ヴィクトリアさん。これがレトルトのハンバーグです。」
「これが・・・・・・これをさっきの説明通りなら、茹でる?」
「そう。沸騰させたお湯にドボン!!あとは待つだけ。」
「へぇ・・・・・・」
お湯を沸かしてレトルトを温める。本当に楽チン。
「どうぞ。レトルトのハンバーグです。一応ご飯と味噌汁もどうぞ。」
「ありがとう。」
ヴィクトリアさんはフォークで一切れハンバーグを頬張りぱあっと表情を明るくする。だが徐々に徐々にスン・・・・・・と表情が消えていく。
「どうです。」
「美味しい・・・・・・美味しいけど・・・・・・」
パクパク食べ進み、ご飯と味噌汁も完食。
「うん。」
「どうでした。」
「味は美味しい。普通にご馳走だと思う。だけど・・・・・・」
「だけど?」
「・・・・・・食べ物を食べて、初めての感覚がある。マズイわけじゃなくて、確かに美味しいものを食べてる筈なのに、謎の感覚が・・・・・・」
「なるほどぉ。」
「あまり良い感覚じゃない。美味しい筈なのに。なんだろう・・・・・・」
「まぁわかりますよ。レトルト美味しいは美味しいんですけどね。謎に虚無感があるんですよ。もっと美味しいもの食べれば良かったっていう。」
「そう、それ。美味しいけど絶品てわけじゃなくて、絶品の物を食べれば良かったって気持ちになる。」
「ははは!これはまぁ1人で暮らしている人が手間を惜しみたいけど美味しいもの食べたいっていう欲求を満たす物のですからね。」
「なる、ほど。」
「お客さんに出せるものではないってわかりました?」
「うん。これなら店主のご飯は、遥かに美味しい。」
「はははそう言ってくれるなら嬉しいでさぁ。」
「れとるとはどういうものかわかった・・・・・・ねぇ、店主?」
「なんです?」
「このれとると。こっちで作れる?」
「あー・・・・・・そうですねぇ。多分研究して実現しようと思ったら500年、くらい?はかかるんじゃないですかね。」
「そっか・・・・・・」
「たぶんですけど500年で実現は出来ると思いますけどこのハンバーグに到達するには更に1000年はかかると思いますよ。」
「そんなに。」
「ええ。」
ヴィクトリアさんはむむむと唸ってしまったが異世界は保存の魔法があるからそれで料理保存して売った方が良いと思う。
「ありがとう店主。れとると、美味しかったけどしおちゃんこていしょくちょうだい。」
「大丈夫ですか?一食分食べてますけど。」
「ちゃんと美味しいの食べたいの。」
「それはいいですけど。」
こうしてヴィクトリアさんにはいつものも作ってあげて満面の笑みで食べてるのを見ると。経験も必要だなと感じた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
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・・・・・・
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またある日の異世界営業日。
「まぁ♪アイスキャンデーが増えてますね♪」
「アーデルハイド様、一個だけですよ。」
「わかってますよハンナ。うーんどれにしましょう。」
入り口横で銅貨1枚で売ってるアイスが結構出るようになってきた。最初はソーダ味だけを仕入れて売っていたがソフトクリーム型やチョコ積層型、モナカ型やいちごバニラ味や大福型などいろいろ増やした。
「ふふ!今日はこのサクサクのアイスキャンデーにします!ハンナは?」
「私はいつもの青いのにします。」
支払い方法も俺に払うのではなく、貯金箱を置いてそれに入れる方法にした。張り紙はヴィクトリアさん作。
「ううーん!美味しい!」
「ですね。」
主に買っていくのはヴィクトリアさん、アーデルハイドさん、キシャリーノさんとこの子供達など。若い子が買ってくイメージだ。一部のアイスはエルフでも食べられるのでエルフも食べて行く。
「あの、パパ。アイス食べてもいい・・・・・・?」
「アイス・・・・・・」
「うむ良いぞ。ただしライルとミイルも大きいのはダメだ。夕餉が食べられなくなるからな。」
「わぁ!」
「やった!」
「店長アイスもらうわね。」
「もらいまーす!!」
この様に思ってるよりは売れる。が、問題が出てきた。
「またゴミが足りねぇ。」
ゴミが持ち帰られていることである。これが日本ならゴミを持ち帰るのは当たり前だがやってるのは異世界営業。異世界に石油由来のゴミを持っていかれるのはマズイだろうとヴィクトリアさんに頼んでゴミは回収しますと張り紙をしたが効果は無かった。自然に分解されないアイスのパッケージのゴミは少量とはいえ自然破壊されてしまう。だが見張るわけにもいかず、対策は出来ていなかった。
「というわけで強い言葉の張り紙作ってもらえませんか。」
「・・・・・・。」
ヴィクトリアさんが滝汗を流して土下座した。土下座どこで覚えたんだよ。そして吐いた。
「ごめんなさい・・・・・・」
「ええ・・・・・・」
他の皆はちゃんと冷蔵庫横のゴミ箱に入れていたんだが1人で5個、10個と食べるヴィクトリアさんが持ち帰っていたのだ。なんでそんなことをと思ったらねこやでも出来ない異世界の物の持ち帰りが出来るからとのこと。このやろう。
「で、でも、ちゃんと研究が終わったら燃やして処分してるから。」
「燃やした!?」
「えっ。」
それからヴィクトリアさんには渾々と説教をした。アイスのゴミを燃やすと有害な物が出て強い毒になると。だからこちらで処分するから回収していると。ヴィクトリアさんは涙目になっていた。
「こんど持ち帰ったら特例無くしますからね!!!」
「はい、ごめんなさい・・・・・・」
まだまだねこやさんの様に上手くいかないなと思ったが。ひとつずつ問題をクリアしていかねばなと思う異世界営業であった。