異世界食堂 二軒目!   作:電動ガン

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・一応ファンタジーです。
・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・数量限定メニューはお早めにお願いします。

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鰆の麹焼き定食

ある日の異世界営業日。

 

「これで良し。」

 

俺は思いきって、数量限定メニューを用意することにした。それがこれ、鰆の麹焼き定食だ。鰆を麹に漬けたやつを焼くメニューだが、これは三日前から漬ける必要があり、しかも地元の漁港では鰆が数が上がらず好きなだけ食わせることが出来ないからの措置だ。これも貼り紙で告知するためにヴィクトリアさんに試食してもらったんだが涙が出るほど美味かったらしく震える手でサマナーク語の貼り紙を書いていた。

 

「限定20個!!エルフさんは食えないけど食って欲しいなぁ。」

 

そう思って営業を開始した。

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

数量限定メニュー一人目のお客様。朝一で来たヴィクトリアさん。

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・てん、しゅ・・・・・・」

 

「大丈夫ですかい。」

 

「だい、大丈夫起きてから、走って、きた・・・・・・サワラ・・・・・・ある?」

 

「ありますよ。でもおかわりは出来ませんよ。」

 

「わかった・・・・・・ひとつお願い。」

 

「はいよぉ。」

 

そしてとりあえず出した。またもやヴィクトリアさんは涙を流していた。そんなに。

 

「大丈夫かな。」

 

二人目、昼時に来たアレッタちゃん。

 

「アレッタちゃん。今日はサラさんは?」

 

「サラさんは今日お仕事で出掛けてます。」

 

「そうなんだ。数量限定はおかずのおかわり出来ないけど良い?」

 

「そ、そんな食いしん坊じゃないですよぉ。」

 

出してあげたらアレッタちゃんは鰆を一口食べただけで放心してしまい箸を取り落としていた。完食するまで一時間半掛かった。

 

「そんなに美味いか・・・・・・?味見したけどそんなにか・・・・・・?」

 

不思議に思ったが三人目。一人で来たキシャリーノさん。

 

「キシャリーノさんお子さんに内緒ですか?」

 

「いや、今日ライルとミイルは家庭教師に預けてあるのだ。」

 

「そうなんですか。」

 

「うむ。夕餉に陛下と一緒に来るぞ。」

 

「お待ちしてます!それで数量限定ですか?」

 

「うむ!!楽しみだ。」

 

出してあげたらキシャリーノさんは数口食べただけで鼻血を吹き出し、震えながら食べていた。なんもやばいの入れてないよ!!?!?

 

「どうなってんだ鰆は。確かに美味い魚だけどこんなになるのは何かおかしい。」

 

四人目。リーシャルちゃん。

 

「ふわ、ふわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「リーシャルちゃん!?!?しっかりして!!!リーシャルちゃん!?!?」

 

リーシャルちゃんは鰆を食べた瞬間、変身してたドラゴンの鱗を逆立て光り輝き始めた。何が起きてるんだ!?!?絶対おかしい!!!俺は貼り紙を撤去した。

 

・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・・・・

 

・・・・・

 

・・・・

 

・・・

 

・・

 

 

おかしい。何かがおかしい。鰆の麹漬け焼きは確かに美味い。人によっては感激するのもわかる。だが異世界人の反応はただ美味いだけじゃない気がする。何かがおかしい。

 

「アーロイちゃん、ミミちゃん、おデジ、食ってみてくれ。」

 

「わー!これ美味しそうだったやつ!」

 

「いいんですか!?」

 

「・・・・・・いただきます。」

 

この三人に食わせてみても・・・・・・普通だった。すっごく美味しー!!!という程度、鼻血を吹き出したり、呆然としたり、光ったりしない。

 

「・・・・・・なんでなんだろうなぁ。」

 

「もぐもぐ、どうしたんですか?」

 

「すごく美味しいのに何か問題が?」

 

「・・・・・・ふふふ。」

 

まぁでもあの表情の変化が乏しいおデジが笑顔になって笑い声が零れるほど美味いのはわかった。なんてことない、酒屋からもらった麹に地元の漁港で仕入れた鰆なんだけどなぁ。

 

「聞いてみるか。」

 

こういうよくわかんない現象はあおさんだろ。あおさんに聞くしか無い。

 

「何が起きてるんだ・・・・・・」

 

五人目。いつもの時間に来たあおさん。

 

「なるほどですわね。」

 

「です。いくらなんでも食べ物食ってする反応じゃないんです。」

 

「それが、そちらの?」

 

「はい。鰆の麹焼き定食です。」

 

まず、魔法的なものを調べてもらうことにした。お盆の下に魔方陣が現れてあおさんが手をかざしている。

 

「ふむ・・・・・・魔術的なものは何も感じませんわね。」

 

「ですか。」

 

「では一口。」

 

あおさんが鰆をほぐして一口食べる。するとあおさんは背筋がピーンと伸びきり震えだした。何事!?

 

「あ、あおさん!?」

 

「くぅ〜〜〜〜〜〜!!!!」

 

噛み締めるような顔で身悶えるあおさんは深呼吸を一つすると俺に向き直った。

 

「わかりましたわ店主。」

 

「おお!ど、どうなんですか?!」

 

「単純に美味すぎるという問題ですわ。」

 

「・・・・・・は?」

 

「わたくしも美食家というほどではないので微細な味までは言えませんけれど・・・・・・とにかく旨味が尋常ではない料理ですわね。」

 

「は、はぁ。」

 

「これほどの旨味を持つ食べ物はわたくしの世界には存在しないので未知の暴力的な旨味、ということになります。それを味わってしまったせいで頭が暴走し放心したり、味覚が破壊されて鼻血を出したり、魔力が増幅され溢れ光り輝いたりしたのでしょう。」

 

「そうなんですか・・・・・・?」

 

「まぁこれは出しても問題無いですけれど、これしか食べられなくなる者が出てくる可能性はありますわね。」

 

「やべーだろそんなの・・・・・・」

 

鰆の麹焼きは封印だ。多分だけど麹の旨味が異世界人に取っては猛毒なんだと思う。四人の犠牲者を出してしまったが無事を祈ろう。

 

「店主、では余ってるの全部わたくしが食べますので出してくださいまし。」

 

「え?」

 

「わたくし以外は食べられませんのでしょうから、わたくしが処分します。早く。」

 

「は、はぁ〜い。」

 

そうして鰆の麹焼きは全てあおさんの胃に収まった。料理の失敗ってこういう失敗もあるんだな。身に沁みた一日だったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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