・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・にんにくの食べ過ぎはお腹を壊すのでやめましょう
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ここはエルフの森。そこにあるエルフの里では未曾有の危機が生じていた。
「長老、どうしますか。」
「長老、敵勢力の攻撃だった場合あの近さでは里は焼かれてしまいます。」
「長老・・・・・・ご決断を。」
「うむ。」
里の中央の広場で集まったエルフ達に長老の女性、アルファロが大声で檄を飛ばす。
「慌てるんじゃないよ。敵の攻撃なら今はもう里は焼かれている。そうじゃないってことは別な何かだって事だ。」
「し、しかし・・・」
「ここはあたしが行く。」
「長老自ら!?」
「いけません長老!!!何かあっては・・・・・・」
「だからだよ。私が行ったならば何かあっても対処し易く、身に何かあっても老骨がくたばるだけ。お前達!!!私が帰って来なかったら・・・・・・その時は覚悟しな。」
それは長老の言葉としては重量のある言葉だった。私が先に行く、後は任せた・・・と。どれほどの覚悟でアルファロは言ったのであろうか。そしてアルファロは里の異常の爆心地・・・・・・結界の内側にある裏の森の定食屋ふたばの引き戸に手をかける。もちろん看板は日本語なのでエルフ達には読めない。
「さて・・・このアルファロ様が見極めてやろうじゃないか!!!」
こうして・・・エルフの里でふたばの扉が開かれたのだった。
・・・・・・・・・・・
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・
「いらっしゃっせぇ!!!」
「・・・・・・は。」
お、初めてのお客さんだ。耳長のばぁちゃん。キョロキョロと店内を見渡してる。まぁ初めてはそうなるよな。
「お好きな席へどうぞぉ!!!」
「待っとくれ。」
「なんでしょ。」
「アンタ・・・なんで人間なのにエルフ語が通じるんだい。」
「あーそれはですね。」
「こんにちはー」
「いらっしゃっせぇ!!!!」
後に入ってきたのはファルダニアちゃんだ。ファルダニアちゃんはいつも座る席が一緒な為推定エルフのばあちゃんを無視して席に座った。エルフのばあちゃんはそれを見過ごさなかった。
「待ちなそこのエルフの若いの。」
「あら?あなたどこのエルフなのですか?」
「あたしゃバッチケフの森の里の長老のアルファロだよ。アンタは?」
「バッチケフ・・・・・・聞いたことないわね・・・・・・私は里を飛び出して旅してるファルダニアです。よろしくお願いします。」
「アンタ妙に熟れてるじゃないか。あたしにここの事教えな。ここはなんだい。」
「ああ初めてだったんですね。ここは・・・」
ファルダニアちゃんが説明を始めてくれたので任せよう。俺は今の内に他の客へ水の補充へ。エルフの2人にも出しておく。
「というわけなんですよ。」
「そんなん信じられるかい。」
「でも聞いた所結界を無視してエルフの森に扉が出現したのでしょう?それをどう説明するので?」
「ぐぬ・・・・・・」
「ファルダニアちゃんご注文は?いつもの山菜そばで?」
「うーん今日はちょっと待ってくれる?」
「かしこまりやした。」
エルフのばあちゃんは苦々しい顔をしている。まだ納得出来ないのかな。
「だからアルファロさん。ここは敵の陣地じゃない。ただの人間のご飯屋なの。安全なのよ。」
「それはわかったよ・・・・・・じゃああたしは帰るよ。」
「ちょっと待って。」
立ち上がったエルフのばあちゃんをファルダニアちゃんがキッと睨んで引き止める。
「アルファロさん、貴方ご飯屋に入ったのに何も注文もしないで帰る気?バッチケフの森のエルフは礼節も忘れたのですか?」
「だがよファルダニア、人間にエルフの食える飯が作れると思ってんのかい?」
「なんで私が通いつめてるとお思いで?」
「・・・・・・なるほどね。」
エルフのばあちゃんは席に戻り、俺を見たそしてニヤリと笑うとこう口火を切った。
「肉も魚も卵も乳も使ってなくてガツンと食える料理を出しな。それが出来なければ帰る。」
「はぁ・・・。」
「んー・・・・・・出来ますね。」
「なんだと?」
「え?出来るの?」
「ええ。出来ます。ちょいと工夫すればエルフの皆さんでも食える肉みたいなガツンとした料理出せますぜ。」
「じゃあ出してもらおうか。マズかったら代金は払わないよ。」
「ねぇ店長私にもそれちょうだい。ガツンとしたの食べてみたいわ。」
「はいよぉ!!!!あ、あと初めてのお客さんは代金いただいてないんで大丈夫っすよ。それとすんません時間はいただきやす。」
俺は調理に取り掛かった。作るのは野菜餃子にんにくたっぷりだ。最近仕入れたソイミートを使ってタネを作る。ニラ、玉ねぎ、タケノコ、そしてにんにくを入れて混ぜる。タネが出来たら餃子の皮で包み、フライパンに即座に並べて行く。異世界のお客さんは食いしん坊が多いので1人20個ほど。全部で40個焼く。その間に昆布だしの味噌汁を温めなおしご飯の残りを確認。そして餃子のたれは確か豚エキスが入ってるはずなので無し。代わりに酢と胡椒で食べてもらおう。そんなこんなしてるうちに餃子が焼けたのでご飯大盛りと味噌汁を並べて持っていく。
「お待ちどぉ!!!!」
「わぁ来た来た!!」
「へぇ・・・」
「野菜にんにく餃子になりやす。餃子はこちらの酢胡椒をつけてお召し上がりください。今回の味噌汁はエルフさん用に作ったので大丈夫な筈です。ごはんと味噌汁はおかわり自由なのでいつでも言ってください。」
「へぇじゃあ早速。」
「・・・・・・ふん。」
そして2人は手を付け始めた。ファルダニアちゃんは早速餃子をフォークで刺してかぶり付く。
「んーーーーーーー!!!!すごい強い味!!!これがガツンと来る味なのね!!!!」
「・・・。」
エルフのばあちゃんは黙って餃子とご飯を交互に食べている。
「ガレオが強い香りのする野菜なのは知ってたけどこっちでのガレオって香りが強くて辛いだけだからこんなに強い旨みがあるなんて知らなかった。店長ごはんおかわり!」
「・・・。」
「へへ。そりゃあよかった。おかわりちょい待ち。」
「どうアルファロさん、お望み通りの物が出てきたんじゃない?」
「・・・。」
「おかわりお待ちィ!!!」
そうして2人はあっという間に食べ切りファルダニアちゃんはおっさんくさくツマヨウジで歯をすいている。
「すごい美味しかったわ店長!!まさかエルフが食べられる料理でこんな強い味の料理があるなんて知らなかった!」
「そりゃ良かった。その、ねこやってとこでは出してくれないんで?」
「ねこやには無かったわねこういうメニューは。フタバでしか食べられないメニューだと思うわ。」
「ですか。じゃあまた食べたくなったら言ってください。」
「ええ!」
そしてエルフのばあちゃんは・・・・・・と顔を向けた瞬間。エルフのばあちゃんはバッと地面に頭を付けて両手の平を上に向けた。
「申し訳ない!!!!アンタにはこんな美味い料理を出してもらいながらあたしは・・・!!」
「い、いえ、そんな頭をあげてくだせぇ。」
「ちゃんと詫びないとあたしの気が済まない!!!すまなかった!!!」
「いいんですよぉうちの飯が美味かったのなら。それに詫びる気持ちがあるならまた食いに来てくだせぇ。ここの扉は7日に1度現れるみたいなんで。」
エルフのばあちゃんは立ち上がりファルダニアちゃんに支えられながら息を切らした。
「ファルダニア、あんたにも世話になったね。」
「いえ、いいんですよ。」
「店長。また来る。そして今度は金を払うからまたやさいぎょーざを食わせておくれ。」
「もちろんでさぁ!!!」
そして2人は引き戸を潜り、自分の場所へと帰っていった。なんか今回はフードバトルみたいになっちまったけどたまにはいいか。
「それでやさいぎょーざっていうのを食べたのよ。」
「へぇうちでは出してないメニューですねぇ。」
「エルフでも食べられる強い味の料理だったわ。もし肉を食べたらこんな感じなのね。」
「はは。でもだからと言ってエルフさんが肉に手を出すようなことはいかんのじゃないですか?」
「そうね・・・流石に本物は食べないわよ。気分だけでも味わえて嬉しかったってこと。」
「そうですか。じゃあはい。持ち帰り焼きおにぎり5個ね。」
「ありがとう。また来るわ。」
「ありがとうございました。」
今回もねこやの客は聞いていた。もうひとつの異世界食堂はねこやで出してない美味い物があると。こうして完全に火を付けられたねこやの常連は、死に物狂いでふたばの扉を探すことになるのだった。