・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・お疲れの際はとりあえず生なんて如何でしょうか。
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古都、アイテーリアの裏路地に、一風変わった店。居酒屋『のぶ』があるという。木の引き戸を開けた先には、目を見張るほど美しく、頬がとろけるほど美味い料理があるという。
「ここ、よね。大将。」
「そうだな。シノブちゃん。」
「あ、あの。魔法の、店だって・・・・・・」
「大丈夫よエーファちゃん。」
そのアイテーリアの端。ニコラウスの報告でもう一つ、不思議な店が現れたと聞きやってきたのぶの大将と給仕、しのぶ。そしてエーファ。
のぶは建物ごと移動したにも関わらず、もう一件は明らかに異質だった。アイテーリアの外壁に沿うように張り付いて現れているのぶと似た引き戸。扉だけがぽつんと現れている状況は大将達にとってはもう頭が痛くなることだった。
「この扉、昨日まではなかったらしいぞ。今日になって急に現れたとか。」
「不思議ねぇ〜」
「ま、魔法の店・・・・・・」
入るか・・・・・・どうするか・・・・・・一応衛兵が封鎖していて誰も入ってないらしく。異世界の何かならとベルトホルトから許可を得て来たのだが・・・・・・
「とりあえず入ってみましょうよ。定食屋さんみたいですし。」
「・・・・・・そうするか。」
がらりと扉を開け、中に突入する大将としのぶ達。そこには何が待っているのか・・・・・・・
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「いらっしゃっしゃっせい!!!」
「いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいませ!」
「・・・・・・・いらっしゃいませ。」
三人は、辺りをまず観察した。十席ほどのカウンター。二十席ほどの座敷。入り口横の冷蔵庫、と、その上にある読めない貼り紙。本棚の雑誌。天井に備え付けられた穴の空いたテレビなどなど。まさに日本の定食屋と言える内装の店だった。
「いらっしゃっせ。お好きな席どうぞ。」
「あ、ああ。」
「はーい。」
「ふわ・・・・・・」
「お客さん達初めてですよね。ご注文の前にウチの説明・・・・・・・ていうか。」
白い清潔な調理服を着ている店主らしき人物は怪訝そうに大将達を眺める。
「お客さん、日本人じゃないですか?」
「ああ。そうだよ。俺たちは日本人だ。この子は違うけどね。俺は矢澤信之。」
「こんにちは。ふたばの大将さん。千家しのぶです。」
それを聞いたふたばの店主は口をあんぐり開けて驚いている。
「てことは日本に扉が!?いやでもれんげちゃんってパターンがあるからな・・・・・・信之さんどこに扉が現れたんですか?」
「アイテーリアっていう古都だよ。外壁に扉が貼り付いてて・・・・・・」
「アイテーリア・・・・・・?日本じゃない・・・・・・・?」
「日本じゃないよ。異世界だ。」
「異世界・・・・・・ああ。なるほど。なんで信之さん達は異世界に?」
「うちの店、居酒屋なんだが異世界に渡ってしまったんだ。」
「なぁ〜んだ!!うちとおんなじじゃないですか!!異世界食堂仲間ですね!!」
「はははそうだな。」
「じゃあメニュー読めないですよねぇ・・・・・・まぁいいか。おデジ!こちらのお客さんにうちの説明!」
「はい・・・・・・・」
定食屋にはあまり似つかわしくないメイド服の女性が近づいてきてひらりと挨拶し、三人は軽く挨拶して説明を受けるのだった。
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「なるほどなぁ。そういう異世界食堂もあるのか。」
「私達以外にもあったんですねぇ。」
「あ、あの、しのぶさん・・・・・・帰れる、んですよね・・・・・・」
「大丈夫よエーファちゃんさっきからご飯を食べ終わったお客さんはちゃんと出て行ってるもの。」
説明を聞いて魔法の店だと確信したエーファはかなり怯えていた。壁の日本語のメニューを眺めながら注文を決めている大将としのぶは一先ずこの店の考察をするのだった。
「しかし不思議だ。週に一度しか現れないとは。」
「週に一度なら仕入れとかもやりやすそうね。」
「ああ。週一でドカンと仕入れるだけで良いならかなり楽だ。良いなぁ。」
「羨んでもしょうがないでしょ!」
しのぶは辺りを見渡した。見慣れた感じのする鎧と剣を持った人たちの他に民族衣装のような物を着た耳の長い集団や獣人、翼と尻尾を持つ少女など異世界だと断じるには十分な証拠が揃っていた。
「すごいわね。こっちは私達が想像したファンタジーそのものよ。」
「だなぁ。」
「ふぁんた・・・・・・?」
「こっちの話よエーファちゃん。さて。注文決めないと。」
「そうだな。どうする?」
「もう決まってる。」
大将としのぶは目を合わせ一つうなずく。
「「おでん定食」」
「?」
「冬のこの時期に食うおでんは美味い。それにこの店の実力もわかるだろうしな。」
「そうね。まずは味を調べないと。」
「エーファちゃんのはどうしよう。」
「エーファちゃんどんなのが食べたい?食べたいものに近いのを作ってくれるみたい。」
「え、えと・・・・・・それじゃ。おなじおでんが食べたいです。」
「良いね。すみませーん。」
「はいよぉ!!!」
こうして三人はおでん定食を注文した。待っている間は大将は雑誌を流し読みしていたがどれも自分の世界には無い雑誌で有ることが判明するとしのぶと一緒に楽しんでいた。
「おでん定食お待ちぃ!!!」
「お、来たぞ。」
「わぁ。」
「良い匂い!」
芳醇な香りを放つおでんと白飯。そして味噌汁。おでんの具材はこんにゃく、たこ、じゃがいも、大根、ちくわ、ゴボウ巻き、はんぺん、牛すじと大盛り。大将は香りあ合格点だと評を下す。
「ほぉ。名古屋風なのか。なかなかこだわってないか?」
「そうね。面白いかもしれない。」
しのぶは厳しい目を向けており、エーファはもうはんぺんを口にして目を輝かせている。
「どれ・・・・・・いただきます。」
「いただきます。」
大将もしのぶもまずは出汁からだった。一口、口に含み、何度も確かめる。
「次はどうする?」
「たこ・・・・・・かな。」
たこをひとかじり。咀嚼して。飲み込む。
「ふむ・・・・・・まぁまぁ美味い。」
「・・・・・・。」
その後おでん各種を食べ、白飯を放り込み、味噌汁を味わった。しのぶは全部食べきり、その様子に大将はぎょっとしていたが。エーファも満足そうに腹をさすっているので考えないことにした。
「どうだった。しのぶちゃん。」
「まずね。この一食食べただけでわかるのは、ふたばの大将さんはまだすごく未熟だということ。」
「だな。それは俺もわかる。」
「でも、未熟でありながら、私達の遙か先を進んでる。」
「それはどうして?」
「出汁、具材の味付け、そして白米の炊き方。味噌汁の風味付けまで。全て異世界ナイズされてる。」
「・・・・・・なるほどな。」
「何人の異世界の人に振る舞って研究したのかわからないくらい。日本人の私達にとっては未熟な味付けだけど異世界の人からしたら極上の味ね。間違い無く。」
「それで、しのぶちゃんは何点?」
「点数付けるのは失礼だから・・・・・・・・・高い点数はあげられない。でもミシュラン三つ星はあげられる。」
「かなり高評価だな。」
「ふたばさんがどれだけ異世界で営業してるのかはわからないけれど。店も広いし私達とは比べものになら無い数を接客してるのね。」
「そうか。」
「でね・・・・・・大将。」
「なんだ?」
「他にも食べたいもの無い?私山賊焼き定食気になるんんだけど。」
「そうか。いや、食えるかな・・・・・・食える前提ならオムレツライスってのが気になるんだよな。」
「エーファちゃんはお腹いっぱい?」
「私はお腹いっぱいです・・・・・・」
「うーん・・・・・・あ!小鉢って言うのもあるよ!」
「小鉢か。それ頼んで見るか。」
「すみませーん!」
「しのぶちゃん頼むのが早いな・・・・・・」
また別な異世界と繋がった定食屋ふたば。これからも、どんどんふたばに繋がる世界は拡張されていく。それがどうなっていくのか。まだ誰もわからない。