・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・ふたばのなかで肩書きは意味を成しません。
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大樹の村に定食屋ふたばの扉が現れるようになってからしばらく。村の者全員が行きたがるので村長が制限を設けた。この制限が出来たおかげでふたばは大量のお客から解放されていたのだがそれはまた別な話。
「でだ、村長。本物のラーメンがあると聞いたのだが。」
「ああ。あるぞ魔王。本物のラーメンは村に存在した。」
魔王ガルガルドは大樹の村へと訪れ、本物のラーメンを求めた。
「フラウレムや娘が、村長のとは違う本物のラーメンがあると言っていたが本当なのだな。」
「ああ。水曜はあと二日後だから二日待つぞ。」
「スイヨウ?」
魔王ガルガルドは村の宿で二日待った。その間、村の豊かな食を食べていてそれより美味く感じるのかと疑問形だったガルガルドは村長や他に行った住民からエグい、ヤバい、キチってるの言葉を聞いてさらに疑問は深まるのであった。
「今日がスイヨウか。」
朝気持ちよく起きたガルガルド。そして村長が宿を訪ねて来て朝定食を食べに行こうと誘った。宿の食事は?と思ったがその店は朝夜明けと共に現れて翌日の夜明けと共に消えるらしい。だから行こうと思えば三食食べて晩酌も行けるとのこと。
「では、行くか。村長。」
「ああ!」
というわけで向かったのは村でも不可侵になっている大樹の洞。村長が自分で掘り、神像の置き場となっている場所。そこに場違いの引き戸があった。
「ここが?」
「ああ、そうだ。」
村長は何も気にせず扉を開けるが、私にはわかる。尋常では無い魔力と、それに呼応する転移魔法。この分だと飛ばされるのは異世界だ。帰ってこられるかという心配がよぎるが、他の住人は帰って来ている。南無三とガルガルドも扉を潜った。
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「・・・・・・・。」
私は何を食った。ガルガルドの反応はそれに尽きるものだった。冷静になって分析する。今食った朝定食と村長が呼んでいた食事。卵と腸詰め、そしてスープとコメ。シンプルな料理だった。だが。
「質が・・・・・・いや、レベルが違うのか。」
「?」
ガルガルドは思案する。まず我々の食事と大樹の村の食事。それは質が違うことからの美味さだった。もちろん鬼人族メイドの腕もあるだろう。だがそれでも村長の作る質の違う農作物があってこその美味さである。だがあの店はどうだ。質はもう問題外に高い上に、調理のレベルが違う。明らかに我々の文明レベルとは違う食事だった。異世界。確かに異世界だ。
「これは・・・・・・昼餉や夕餉が楽しみだ。」
「だろ?」
村長はニコニコと笑っているが次元を超えた先にあれほどの文明を持つ種族がいることに恐れおののいた。食事のレベルは文明のレベルに比例する。どうか攻めて来ませんようにと祈るしか無い。
「じゃ、昼ご飯までにゲームでもしないか?」
「いいだろう村長。久しぶりに麻雀しないか?」
「お!いいねぇ。」
「最近ツキが来てると思ってな。」
麻雀は負けた。
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昼餉を食った。ラーメンは夕餉に残しておこうと言うので別な定食を。素晴らしく美味かった。それしか表現が出来ない。しかも読めないがあの分厚いメニュー。どんだけ美味いものがこの店にあるのかと恐怖も感じるほどだ。
「魔王。なんか、大丈夫か?」
「ああ、いや、村長。少し、美味すぎてな。」
「なぁーんだ!そっかそっか!ここはめちゃくちゃ美味いよな。」
村長はニコニコとしているが、今度は客層に注目してみた。人間やエルフはまだ良かった。だが身体に魔の特徴を大きく残す強烈な魔族が入ってきた時は目が飛び出るかと思った。あれほど強力な魔族はこちらの世界にもなかなかいない。それだけではなく神の痕跡を身体に宿す人間が入ってきた時は腰が抜けそうになった。しかも一人では無く複数。よく見れば給仕の二人もそうだった。怖すぎるなんだこの異世界。
「これに気付いてる住人は何人かいるだろうな・・・・・・」
「え?」
「いや、何でも無い。」
そういえば、朝入ったときに言われたっけ。喧嘩は御法度。暴れたら出禁。皆それを律儀に守っているからあの店なのだろう。その点は安心して良いかもしれない。
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「らっしゃっしゃせい!!!」
「いらっしゃいませー!」
「いらっしゃいませ!」
「・・・・・・・いらっしゃいませ。」
夕餉の時間。三回目の来店だが気持ちいい笑顔で出迎えてくれた。
「おお!ヒラクさん今日は随分来ますね。きょうは一日ウチですか!ありがとうごぜーやす!!!」
「うん!今日は大将づくしだよ。最後はラーメンもらおうかな。」
「うす!!おデジ!!席案内して!!」
「・・・・・・・はい。」
カウンターがいっぱいだったので座敷に案内されたが村長が壁のメニューを見ている。あれを読めるのは不思議だが、村長の不思議なところはいくつもあるなとごちるガルガルドなのであった。
「魔王、ラーメンは醤油、味噌、塩、とんこつがあるけどどうする?」
「そうだなぁ。」
朝と昼はさっぱり系だったからとんこつにするかと決める。
「とんこつ大盛りにする。」
「トッピングは?」
「卵とメンマ。」
「了解。すみませーん。」
村長が注文を済ませると、ガルガルドは何気にきになっていた本棚の派手な本を手に取る。1ページ1ページが恐ろしく薄く、そして揃って製本されてるこの本はこの異世界の技術力の高さがうかがえる。中の印刷も魔王国で行っているものとは比べものにならない精度であった。
「はいよぉ!!!醤油チャーシュー麺ととんこつ卵メンマトッピング大盛り!!!」
店主が運んで来たラーメンは村長のラーメンと比べて美しかった。村長のラーメンが無骨で強靱な騎士ならばこの店のラーメンは深窓の令嬢といった感じだ。まるでラーメンとはこうあるべきという規範を知っているかのようであった。
「うおおおお!!!ラーメンラーメン!!!」
「はははは。落ち着け村長。」
ずぞぞと啜ってわかった。麺も、スープも、トッピングも遙か高みにいる。村長のは想像で作ったものだと言っていた。だから限界がある。だがこの店のラーメンは限界が無い。美味・・・・・・・それ以上の言葉は不要だった。
「美味いッ・・・・・・!!」
「とんこつも美味そーだな。つぎはとんこつにしよ。」
あっという間に平らげてお代を払い。店を出る。長居しないのもマナーだ。ガルガルドは本物のラーメンを食べ、本物の味を知った。だが・・・・・・
「村長。五の村のラーメン屋台はいつやるんだ?」
「え?あー当分先だな。材料が枯渇してるから少しストックしないと。」
「そうなのか。じゃあ屋台出すときには言ってくれ。行くから。」
「ははは!魔王はもうラーメンの話か?食ったばかりじゃないか。」
「そうだな。だが本物のラーメンを食べると。村長のラーメンも欲しくなるんだ。」
「そっか。じゃあ屋台引く時は魔王にはこっそり教えるよ。だけど絶対内緒な。」
「わかっているさ。頼むぞ。」
ラーメンは無限大だ。ラーメンを食べた後に、ラーメンを食べる話をしても良いのだ。