・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍しません。
・店主は普通のあんちゃんです。料理以外はできません。
・訪れる客は毎回変わります。ただし常連客もいます。
・アイスの賞味期限はありませんが早めに召し上がりましょう。
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公国には1人の姫がいる。名をヴィクトリア。現公王の姉であり今年で38になる。未だ未婚を貫いており、生涯を独身で貫き通すのはほぼ間違い無い、と言われている。ねこやの定連でプリンアラモードをこよなく愛するヴィクトリアはねこやで聞き耳を立てて聞いたもうひとつの異世界食堂が気になり、公国に自分の居を中心にとある魔術を張り巡らせた。それは極大探知の魔術。魔力の揺らぎを感知したら自分に知らせる魔術を、自分の住む城含め都中に張り巡らせ、異世界食堂の扉出現に備えていた。
「・・・!」
感あり。ねこやで話を聞いてから140日以上、初めてねこやのドヨウの日以外に反応した。間違いない。場所は・・・宮殿から・・・どこだここは?まぁでもここなら行ける。そう確信し出かける準備を始めるのであった。恐らくフタバと呼ばれる異世界食堂。ねこやとの違いは完全に飯を食うのに特化していること。いつも食べているプリンアラモードの様な甘味は期待出来ないだろうとのことだ。まぁでもそれは大した事ではない。ねこやはプリンアラモードを、フタバはまた別な料理で定連になればいいのだ。まさか料理がまずいなんて事は万が一にもありえないだろう。期待出来る筈だ。そう思って。
「よし・・・・・・行こう。」
今日の昼餉は何を食べようかな。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
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・・・・・・・
・・・・・・
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・
「あった・・・・・・!ここだ・・・・・・!」
探知魔法を手繰り寄せて向かった場所。そこは宮殿のもう使われていない馬舎であった。物置になってるのを掻き分け、馬房のひとつにそれはあった。引き戸の扉。そして扉の上にある読めない文字の看板。間違いない異世界食堂・・・!!
「ごくり・・・・・・」
引き戸に手を掛け、開く、そして感じたのはねこやと同じ、夏なのに氷室のような涼しさ。確信に変わった。
「らっしゃいい!!!」
「うん、きた。」
「お好きな席へどうゾォ!!!」
手早くカウンターの席に座り、周りを眺める。おそらくメニューなのだろう壁に貼られた紙らしきもの。入口の横にある派手な色をした恐らく本。天井にどうやってか備え付けてあるなぞの黒い板。ねこやには無いものだらけでワクワクする。
「お客さん初めてですよね。うちは初めての人はタダなんで。」
「ううん。大丈夫。異世界食堂、知ってる。お金はある。」
「あ!知ってる人でしたか!こりゃ失礼!!じゃあ何にします?うち異世界の人が読めるメニュー無いんで。食べたい物言ってくれれば近いもの作りますよ。」
「うーんと・・・・・・」
「あ、すみませんちょっと向こう行ってきやす。決まった頃伺いやす。」
店主らしき人は行ってしまった。よく考えたらここは朝なのに随分繁盛していると思う。7人ほどが10席しかないカウンター席で飯を食べているし、おかわりぃ!と元気な声が響いている。きっと、ねこやと同じでここは美味い。
「お決まりですか?」
「うん。朝だから、さっぱりしてて、でもお腹いっぱいになる・・・そういうの、ある?」
「お客さん、確かエルフさんですよね。そういうのにしますね。」
「あ、待って!」
「?」
「私、ハーフエルフなの。だからお肉もお魚も。食べられる。」
「そうなんです?本当に?」
「ほんとう。大丈夫。」
「じゃあさっぱりして・・・お腹いっぱい・・・結構ガッツリいっても大丈夫です?」
「うん。」
「じゃあ塩ちゃんこ定食にしますね。」
「しお・・・・・・ちゃんこ・・・・・・?」
「ええ、鶏団子が少しに、野菜がたっぷり塩スープに浸ってるんです。あとご飯と味噌汁。」
「うん。それで。」
「はいよぉ!!!」
しおちゃんこが何かはわからない。とり団子と、野菜を塩のスープと言っていた。何と無くだが宮廷料理の様だったねこやと比べると庶民的な店という事になるだろう。異世界の料理だから美味いのはわかるが少し期待は下げて良さそうだ。
「塩ちゃんこ定食お待ちぃ!!!」
「・・・!」
前言を撤回しよう。なんだこの香りは。まるで一等級の料理人に作らせた料理のような香り。だがその料理人に庶民の料理を作らせたようなちぐはぐさ。思ったよりとんでもないのが出てきてしまったと息を飲む。
「・・・。」
「おあがりよ!!!」
まずは、この白くて匙より深い食器。匙に近いが匙では無さそう。ねこやでも見たことなかった。いや・・・誰かが使ったのを見たような・・・・・・どうだったか・・・いやそれよりも食べよう。
「・・・!!!・・・・・・!?」
まずはスープからと一口飲んで驚いた。先ほど一流の料理人に庶民の料理を作らせたと言ったが。それをより強く言おう。最高級の料理人に、最高級の食材で、庶民の料理を作らせたが正しい。なんという料理だこれは凄過ぎる。
「はむ・・・・・・!はふ・・・・・・!」
温かい・・・朝に食べるのに少し多いかと思ったけれど何ということはない。吸い込む様に食べられる。とり団子という肉のすり身も実に美味い。野菜も多く入っていて食べ応えがある。ご飯も美味い。上手くは言えないのだが、ねこやとはまた味が違うように思える。ねこやのは優しく包み込む様な味のご飯だったがフタバのは力強く大地の味がする。同じご飯がこれほどまで様相を変えるのは研究するのも楽しそうだ。
「むふー!」
味わった・・・・・・美味だった。異世界食堂の名に違わず。美味だった。
「ごちそうさま。」
「お粗末さまぁ!!・・・ん?」
食器を下げてもらい口を軽く拭く。さて・・・堪能したというにはもう一歩。そう。デザートだ。デザートが何か無いか店主に聞こうとした。
「デザート?」
「そう。」
「うーーーーん・・・うちは定食屋ですからねぇ・・・デザートらしいデザートっつーもんは無いですねぇ・・・」
「しゅん・・・・・・そう・・・・・・」
「あーでも一応デザートに出来るものありますよ。」
「!」
「えーといくらにしたもんかな・・・・・・銅貨一枚です。ちょっと高いけど。」
「それ、欲しい。」
「じゃあはい入口の横の冷蔵庫にあります。アイスキャンデーソーダ味です。」
「あいす、きゃんでー?」
「ええ。ガリガリかじっても美味しいですしペロペロ舐めても美味いです。舐めてるとすぐ溶けちゃいますけど。」
アイスは知っている。ねこやで見たから。キャンデーもわかる。パフェに飴細工があるのを見たから。だが、アイス、キャンデー?アイスとキャンデーが合わさるとどうなるのか全く想像出来なくて渡されたのはひんやりとして少年?だろうか?が描いてある青い袋。どういう素材の袋なのか全く見当がつかないが、開け方を教えてもらって取り出すと棒が付いた青い板状の菓子・・・?菓子、なの・・・?菓子か。が出てきた。
「?・・・・・・???」
「そのままがぶっとですよ。」
「わかった・・・」
齧り付けと言われたので角の方を齧る。するとどうださわやかで甘くてスッキリとした味が口の中を駆け巡る。次は思い切って大きく齧り付くと、中にはどうやら砕いた味付きの氷が入ってるようでまたまた驚いた。どうやって作るのか全く想像出来ない。外側の氷も、内側の氷も氷魔法ですらこのように構築するのは至難の技だ。異世界の魔法使いというのはとんでもない技術を持っているものだと感心した。
「がり。むしゃ。がりがり。むしゃ。」
あっという間にアイスキャンデーを食べきり店主が袋を回収すると言い出したので手渡す。後で気づいたがあの袋もらって研究したかった。
「ふぅ。ありがとう店主。これお代。」
「まいどぉ!!!」
「店主・・・あとね。」
「?」
ねこやにもやったように、メニューを作る手伝いを申し出た。だが店主はうちはメニューが多過ぎるからと言っていた。待って欲しいと、こちらの言葉のメニューが出来ると私も助かるのでやりたいと強く推した。そして4回の押し問答でメニュー制作の任をもぎ取り、次のスイヨウの日からメニューを食べてこちらの世界での説明付きメニューを作り始めた。だが安請け合いしたことを後悔した。このフタバという異世界食堂はねこやの比にならないほどメニューが多かった。説明付きメニューが完成した後、私は腹の肉を憎らしげに摘むことになるのだった。