私は憧れ、こうなりたいと羨ましいと思った。
見た目がブサイクで、取り柄らしい取り柄もない。
運動神経は苦手だし、勉強も、要領が悪い。
家は貧乏とまでは言わないけど、平均よりやや下回る経済状況。
これで自分のことが好きと言えるほど、私は強くない。
特に、自分の見た目。
これが死ぬほど嫌いだ。
青白い肌。
ガリガリに痩せた体。
鏡を見れば、見返してくるのは頬が痩けて、笑顔を作ればそこに映るのは、虚ろな目をした死人のような顔。
口を開けば不揃いな歯並びの悪い歯。
その中で、犬歯だけがやたら自己主張をする。
流石にこれを努力で変えろなんて無理だろう。整形すれば別かもしれないがそんな度胸はない。
小学校の頃から男子にからかわれ、中学校では本気で煙たがられるようになった。
些細な嫌がらせから、いじめが始まった。
まぁそんなもんだ。小学生、中学生なんて。
一番嫌いだったのは囁かれる陰口。これが嫌いだ。
彼等にとっては軽い言葉なんだろうけど、皆に言われるのはきついものだ。
私は勿論反撃した。
陰から言われた悪口を録音して、雑巾を投げつけられた瞬間の動画を取って、先生や親にチクった。
学校全体で問題になり、何人かは転校する騒ぎだ。
その後、私は避けられるようになった。なんてしょうもないとこなんだろうと思った。
助けなければいけないはずの先生の同情するような顔。するだけでこちらには干渉せず、避けられている私を見ないふり。
私は同情されることが、嫌悪感のにじみ出た遠巻きに眺めている顔が陰口を言い合い笑う顔が殺したくなるほど嫌いだった。
高校から再出発しよう。
なんて、夢見てたけど、現実はそんなに甘くない。
なにも持ってない自分に期待できなくて、
相変わらず自分が嫌いな卑屈な性格まではすぐには変えられなかった。
周りの女子たちが成長して垢抜けて行くのが羨ましかった。
なによりも、私のことをクラスの糞どもは陰でリアルホラー子、略してリホ子なんて呼んでいたらしい。おのれ…
中学の時よりも控えめだったけど、あの顔がいつ見ても気に食わなかった。努力で埋まることなんてない差。勝ち組というやつだ。
なによりも同情するような顔。これが私には受け入れられなかった。プライドがあったのかもしれない。ちっぽけな。
遠巻きに見て、まるで己の方が人生楽しんでますみたいな顔で、お前はつまらなそうだなって顔。
私の個人的プライドからその顔は精神的にうけいれられなかった。苦痛だった。
私の心を最もささくれだたせた、若葉姫色だ。
彼女は私と同じように根暗だし、会話もしない。
その差は容姿の差。
それに、…。
どうすればよかったのか?
顔が良ければ人生違ったのか?
それは生まれた瞬間から私の人生が間違いだったというようなもの。
ただ、私のこの性格を作ったのは容姿だった。
見た目が醜いから中身も醜いんじゃない。
見た目が醜いから、中身を醜くする環境があるんだ。
見た目は気にしない、なんてことを言う奴は、ただの偽善者だ。
それが私の出した結論。
分からないんだ。もし生まれ変わって普通だったら。……今のままじゃ私は変われそうになかった。きっかけが欲しかったんだ。
まさか実現するとは思わなかったけど。
私は低血圧で朝に弱い。
学校の授業の1時間目は起きていられないことが多い。
二時間目から来ればいいって思うかもしれないけど、まぁ良いでしょ別に。
その日も私はだるい体を支えきれず、机に突っ伏していた。
岡崎先生の古文を朗読する声が、子守唄のように聞こえる。
岡崎先生は中学の時の担任と違い、私にも目を向けてくれるいい人だ。別に好きではないけど。はぁ、己のひねくれた性格が嫌になる。
その声を聞きながら、私は意識を手放した。
次に目が覚めたら知らない天井だった。
学校の教室じゃない。
保健室でもない。
貧血で倒れて何度か保健室に訪れたことはあったけど、そこの天井とも違う。
ここがどこだか、体を起こして周りを見回してみようとして、それができなかった。
体が思うように動かない。
力が全く入らない。
知らない天井だ。
うん。
何がなんだかわからない状況で、ふと視界に飛び込むものがあった。
手だ。
小さな小さな、手だ。
それはまるで赤ん坊のもののようで。
私は混乱した。